日本代表/試合観戦記/1997年


97.11.8 対イラン ジョホールバル(マレーシア)

第五話 「 ライジングサン 」  

 

 岡野のVゴールが決まり、ベンチ前で記念撮影を終えた選手達がグランド一周して私たちの所に来ます。名良橋がグランドに投げられた紙テープをスタンドに投げかえしおどけます。その後ろを本田が両手を挙げて歓声に答えます。秋田がスタンド近くまで来て喜びを表します。山口がJリーグの旗を振り回し、呂比須が日の丸を高く掲げます。ベンチに入れなかった高木、小島、森島達も喜びながらスタンドを周ります。カズ、城、北沢、能活、井原は、私たちマリサポのスタンドの近くまで来て金網ごしに握手をしてくれます。中山が来て、気合をいれるポーズで喜びを表します。本当に良かった、勝って本当に良かった。

 マリオ、フラビオ両コーチがグランドで日の丸を振りかざしながら踊ります。勝利の宴はまだまだ続きそうでしたが、選手が徐々に引き上げていきスタジアムも徐々に人足が減っていきます。私は友人と記念のスコアボードをバックに写真を写し、改めてがっちりと握手と抱擁を繰り返して、マリサポの友人達と別れてバスへ戻りました。

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 同じようなバスがいっぱいある中で、なんとか乗って来たバスを見つけて乗り込みましたが、まだ数人しか戻っておらず、その数人と”やった〜!お疲れ様〜!”と声を掛けて固い握手を交わしました。後からバスに戻ってくる人達とも、歓喜のハイタッチを繰り返します。全員がバスに戻って来てバスが出発しました。添乗員さんのコメントにも喜びが溢れています。ホテルまでの行程を簡単に説明して終わり、通関に向かいます。バスが戻る道路に、ツアー以外で来た人達が近くの駅まで歩いて戻っていきます。バスに向かってガッツポーズをする人や、日の丸を振る人などがいました、それに答えるように、車内から青いタオルマフラーを掲げたりして、お互いの健闘を称え合います。通関をほとんどノーチェックで通過してホテルに2時頃に到着。翌日の集合時間を確認して部屋に戻ります。部屋に戻って、同室の人とビールで乾杯します。とりあえずシャワーを浴びて、一緒のツアーで行った人が、ホテル横のオープンカフェで祝勝会をやるからと言っていたので顔を出しましたが、早々に引き上げて、ホテルのベッドに潜り込みます。ベッドで遥か昔のワールドカップをテレビで見たことを思い出し、あの場所に立てるんだな〜と感慨に更けながら、今日の試合の1シーン1シーンを心の奥底に焼き付けるようにして眠りにつきました。心地居眠りが私を包んでくれます。

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 翌朝、9時過ぎに目を覚まして朝食を摂ります。部屋に戻ってぼーっとテレビを見てるとニュースでサッカー放送が始りました。欧州のワールドカッププレイオフの模様の後、日本の試合は結果だけかな〜っと思っていると、中山の先制点、ダエイの逆転ゴール、城の同点ゴール、岡野のVゴールと立て続けに流れていき、前日の感動が蘇ってきます。少しして、空港への出発が夜の20時のため観光に出かけて、マーライオン公園、セントソーサ島、そごうとかに行って買い物や観光を楽しみました。しかし何処へ行っても心ここに在らずで、昨日の試合は夢だったんだろうか?と思っていました。

 集合時間が迫り、地下鉄を乗り継いでホテルに戻ります。ホテルに集合して、チャンギ空港へ出発。空港で少し買い物をして、空港へチェックイン、両替をしようと思いましたが、”JAPAN”はSOLDOUTになっていました。空港内でぶらぶらしてると、インターネットカフェが有りましたが、結局止めて空港内のテレビを見てると、欧州W杯プレーオフのイタリア対ロシアの試合が始り(録画)、出発まで見ていました。出発時間が迫り搭乗ゲートまで移動して、機内へ。機内に今日の新聞が有るか期待したんですが、シンガポール航空には置いてなかったです(残念)。機内ではゆっくりと睡眠を取りました。 

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 成田空港への到着時間が迫り、飛行機が下降を始めます。着陸して旋回している時に、機内の窓から、地平線を昇ってくる大きな大きな太陽がはっきりと見えました。やっと世界の桧舞台に日本サッカーが立てるんだという事を改めて感じて、実感が込み上げてきました。

 18日早朝6時30分に成田に到着しても代表選手が帰国する第二ターミナルではなく、第一ターミナルだったため、空港内もがらーんとした雰囲
気でした。チェックアウトを済ませて、駅へ向かいます。どうしようか考えた末にJRで横浜まで行く事に決めてJRに行きますが、空港内も駅も売店が空いていなくてスポーツ新聞が買えません。無性にスポーツ新聞が読みたい感情にかられて、ふと考えて、普段絶対やらない駅のごみ箱を覗くと…なんと前日月曜日(17日)発売のスポニチが捨てて有りました。電車内に座り、記事を読んでいくうちに、改めて本当に勝ったんだ!という実感が感じられて、自然と涙が溢れてきました。電車はいつのまにか出発していて、涙を溜めながら記事を読み進めていくと、成田空港駅から2つ目の成田駅で、ラッシュアワーの人達がいっぱい電車に乗ってきました、慌てて涙を拭いて帽子を目深にかぶり寝たふりをしました。東京駅近郊で徐々に人が減っていき、横浜で電車を乗り換えて自宅に到着しました。自宅に着いてから録画していたイラン戦を一度だけ見直して深い眠りにつきました。長くて短かった今回の旅を思い出しながら…

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 長くて短かった今回の旅でしたが、いままでの自分の代表への思いがマレーシアまで足を運ばせたのだと思っています。私以外の2万人の日本サポータも同じような思いだったと信じています。その思いが日本イレブンに伝わって、強くて楽しいサッカーを展開してくれました。

 

 フランスで、日いづる国のサッカーチームが素晴らしいサッカーの歴史の1ページに刻まれるよう、これからの戦いも我らの日本代表チームに声援を送り続けたいと思います。ライジングサンの様に…

 

〜 fin 〜