踊る麻酔科最前線

匿名は許されるか?

インターネットにおける情報公開と匿名性に関して考えてみました。
皆さんのご意見も掲示板あるいはメールにてお聞かせ下さい。

   


天下の朝日新聞に「インターネット最新事情/情報が凶器に変わる日」という連載記事がある。神戸小学生殺人事件において、犯人の実名や写真を掲載した個人の掲示板やプロバイダー各社に「圧力をかけた」と噂される新聞社の企画であるから、興味深く拝見している。1997/9/27日付の記事で「実名でものを言うのが、民主主義の基本である。匿名では責任ある発言が期待できないし、発言の信頼性にも不安が残る」という主旨の発言があった。反論を試みる。

反論の前に、事実として皆さんに知っておいて頂きたいことがある。「電子メールや掲示板の身分確認は、現時点では技術的に不可能である」ということを。電子メールの署名は自由に設定可能だし、掲示板ではリモートホストしか分からない。発信元のプロバイダーに確認するには裁判所命令が必要であろう。しかも海外には、メールアドレスやホームページのURLアドレスを匿名で取得できるプロバイダーや、架空のアドレスをプロキシしてくれるサービスまで存在する。そうなったらもうお手上げで、相手の身元はまず知ることは不可能である。
ネットや掲示板では、身分詐称や性別詐称などのトラブルは頻発する。他人の名前やニックネームを無断使用したり、一人で複数の発言者を装ったり、大体どこかでボロが出るものであるが、確かに不愉快である。しかし、今の所それを阻止する手段はないので、無視するのが一番である。ほとんどの場合、いたずら目的の愉快犯であるから、無視していれば自然に沈静化することが多い。もちろん、掲示板の主催者には定期的なチェックをお願いしたいが、個人にそれを強制するのは酷であろう。
という訳で、「踊る掲示板」は、ハンドルネームでも可能です。無理に実名にこだわっても始まりませんから。みんなマナーを守って遊びに来てね(^^)

さて本題です。
反論1)民主主義の基本は実名での発言?
 民主主義の基本中の基本である選挙を思い出して下さい。投票は匿名(無記名)が原則ですね?匿名というのは、個人の自由意志の発現に不可欠なものなのです。会社組織などで会議の議決に記名投票を強制するところがありますが、権力の横暴というのは、そういうところから発生します。国会の議決だって、記名投票にこだわるから、党意党則に縛られて自由な投票ができなくなっているではありませんか。

反論2)実名に意味があるか?
 有名人や作家などであれば、みんな実名を知りたいと思うかも知れないが、無名の一市民の実名に興味を持ったり、こだわる必要があるかどうかである。新聞記事の発言者も「大学助教授」という肩書きが発言の信頼性を高めているのであって、個人名には興味がない読者がほとんどである筈なのだが、本人はそれに気付いているのだろうか。
医師を例にとって考えてみよう。患者さんにとって本当に大切なことは、彼がどういう知識と技術を持っていて、医療というものをどう捉えているか、ということである筈だ。そのために、年齢や経歴などを知ることはある程度有用であろうが、出身大学や所属病院などは殆ど意味がないことだし、名前や住所、電話番号などに至ってはお礼の手紙を出すときに役立つくらいでしかない。

反論3)個人情報の公開には危険がつきまとう。
 赤の他人の個人情報に執着する人には、何らかの下心があると思った方がよい。セールス目的やストーカー被害を想像して欲しい。


朝日新聞もしつこいなあ(^^;
「続・情報が凶器に変わる日」(12/3)を読んで感じた矛盾。
自分の個人情報はできる限り漏らさない。匿名(所在をはっきりさせない人)は相手にしない。
のが、自分の身を守るコツだそうですが.....要するに「自分のことは秘密だけど、正体不明の相手とは付き合わない」ってことですよねえ?虫が良すぎませんか?
インターネットは「マスメディアに対する、個人が始めて手にした武器(反論権)」でもあります。玉石混淆ではありますが、いずれ淘汰されて行くでしょう。「敵は芽のうちに摘んでしまえ」というマスメディアの抵抗なのでしょうか(考えすぎ)?

>いや〜。ある事件のおかげで考えかわりました。正体不明の完全匿名は、確かに時と場合によっては非常に危険です。特に、マナーを守らない相手とトラブルになっているときは!

11月29日朝日新聞夕刊の窓(論説委員室から)の「赤いリボン」には感動した。さすがに天下の朝日新聞である(反論ばかりじゃなんだしね)。


匿名でいたいあなたへ 

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