アバン


艦長候補生の練習航海のはずが、いつの間にか火星の後継者の残党を退治するハメになったのがかれこれ半年前の事。
わずか1年で2度も反乱を起こされ、統合軍の威信はぐらつき、相対的に宇宙軍の地位は向上したのだけれど、2度あることは3度あるってことで何やら物騒な世の中。

まぁ、私はアキトさんを連れ戻す口実が出来ればそれで構わないんですけど・・・

ああ、一応このSSってPrincess of White とDC版The Missionの続編ですので
よろしく



Nadesico Second Revenge
Prelude あの人は変な艦長さん



「The Mission」ご紹介代わりの座談会


久しぶりの同窓会に集まった一同はかつて訓練艦ナデシコBに艦長候補として赴任していたテンクウ・ケン大尉の事を話題にして盛り上がっていた。
ちなみに彼は現在、艦長見習いとしてアララギ大佐の元で副長業に精を出している。



まずは人物評価


ハーリー「変な人でしたよ、あの艦長さん」
ルリ「そうですか?ナデシコには珍しい真面目で常識的な人ですよ」
サブロウタ「けど普通の艦長候補生ってエステバリスには乗りませんよ?」
ユリカ「あ、でもでもユリカも乗れるよ、エステバリス」
ユキナ「そういえばジュンちゃんも乗れるんだって?」
ジュン「そうだけど、本来、幹部候補生はIFSなんてつけないよ。僕やユリカは単にその場の勢いというか、見境を失ってつけただけで、艦長になってまで乗ろうとは考えてないよ」

ゴート「まぁ、そうだな。戦艦指揮が出来なくなってしまうからな」
ミナト「でも、その割りにあの人、エステバリスに乗りながら器用にナデシコCの指揮してたわねぇ」
プロス「あの方の場合、前線にいたほうが戦場を見渡せてかえってよいのではないでしょうか?」

リョーコ「だがあいつのエステの操縦の腕は半端じゃないぜ。多分本気でやればオレやサブだって敵わないじゃないか?」
ヒカル「確かに、あの夜天光に乗った南雲・・・って敵の大将さんだっけ?あの人にタイマンで勝っちゃったぐらいだからねぇ」
イズミ「だから、そんな人が何故艦長候補生ってことなのかが問題じゃないの?」



いつの間にか歴代艦長評


ルリ「でも艦長としての才能もありますよ。真面目ですし、沈着冷静ですし」
ユキナ「でもナデシコって真面目な艦長さんって勤まるの?こんな変人の巣窟で」
ミナト「こらユキナ、そういう言い方はよくないよ」
ユキナ「でも歴代の艦長を見てみれば・・・」
ユリカ「ええ〜〜ユリカ真面目だよ!」
ジュン「・・・ごめん、ユリカって自覚ないんだ・・・」
ルリ「私も不真面目にみえるんですよね・・・」
ハーリー「艦長は真面目ですよ、艦長は!」
ユリカ「え〜〜ハーリー君、ルリちゃんだけ〜!!」
ハーリー「いえ、そういうわけじゃなくてですねぇ・・・」

サブロウタ「まぁ、真面目不真面目は置いとくとして、並みの神経じゃ勤まらないことは確かっすねぇ」
エリナ「ふうん、自覚はあるんだ。自分達がラジカルだっていう」
サブロウタ「そりゃ。でも実際難しいっすよ、ナデシコの艦長業」
ミナト「確かに。これだけの個性的なクルーを野放しにしているように見せて肝心な所で自分のいう事を聞かせているし」
リョーコ「そりゃ、絶対的にその能力を信じてるからさ」
ヒカル「まぁ、3人とも戦艦指揮に関してはピカイチだしね」
プロス「お三方とも戦略シミュレーションの成績は3Aレベルですからねぇ」
イネス「でも全然タイプは違うわね。
 ミスマル・ユリカはその有無を言わせぬ性格で周りを従わせてるし、
 ホシノ・ルリは圧倒的な論理の正しさで相手を追い詰めるし、
 テンクウ・ケンはあまりのクソ丁寧さと度量の広さで相手をその気にさせてる」
ウリバタケ「まぁ、オレは発明を許してくれてるなら別に誰でも構わないけど・・・」
ゴート「まぁ、ガチガチの官僚タイプが来ても務まらないという事か・・・」
ユキナ「ふうん、ジュンちゃんがナデシコで副長止まりだったわけ、わかる気がする」
ジュン「黙れ、ユキナ!!人が気にしている事を!!」



でもやっぱり変ですよ


ヒカル「思ったんだけど、何でテンクウ・ケンって名前なの?」
ミナト「そういえば天空ケンってゲキガンガーの主人公の名前じゃないの?」
ユキナ「そうそう、お兄ちゃんが真似しちゃってて」
ジュン「もしかして・・・ゲキガンマニア?」
ウリバタケ「実は偽名とか?」
サブロウタ「かもねぇ。落ち目の宇宙軍でこれ以上艦長候補生を育成しても仕方ないし」

イズミ「もしかして、テンカワくんだったりして・・・」
リョーコ「ええ!冗談!!」
ハーリー「でも最近の整形手術ってすごいらしいですよ。背格好さえ似てれば別人になれるって」
ヒカル「まぁ、エステの操縦はアキト君に匹敵するかも」
ユリカ「でもでも、わたし、アキトなら一発でわかるよ」
リョーコ「犬じゃないんだから・・・」
ルリ「ユリカさんの言うとおりですよ。私が一応戸籍とか確認してますし、第一メリットがありません」
サブロウタ「まぁ、テンの二文字しか合ってないし」

ジュン「でも訳ありなのは確かだね。じゃなきゃ、いきなり艦長候補としてわざわざネルガルが資金援助してまで訓練支援したりしないよ」
ミナト「この際だから直接聞いてみれば?ネルガルの関係者もいる事だし」
エリナ・プロス・ゴート「「「ギク!」」」

エリナ「まぁ、おいおいわかるわよ」
ルリ「また、お茶を濁す・・・」
エリナ「アキト君じゃない事だけは確かよ。そんな猛獣の檻に餌を放りこむような事するわけないでしょう?」
ユリカ・ルリ・リョーコ「「「猛獣って?」」」
エリナ「・・・今返事した人よ」
プロス「まぁまぁ、ここで議論していても答えの出る類の話ではないでしょうからお呼びしておきましたよ、ご本人を」
一同「え?」



で、本人ご登場


ケン「どうも、遅れまして申し訳ありません」
ユキナ「ひょっとして・・・聞いてました?今までの話・・・」
ケン「いえ?猛獣ってあたりからしか。」
ユキナ「・・・よかった。ところでテンクウ・ケンさんって本名ですか?」
ケン「何を藪から棒に・・・」
ユリカ「たとえば魂の名前・・・とか」
ケン「ハハハ、何ですか?それ」
ヒカル「やぁ、天空ケンってゲキガンガーの主人公の名前なんで・・・つい山田さんみたいな人かと」
ルリ「ちなみに、山田さんって人は大のゲキガンガーファンでご自分もダイゴウジ・ガイって名乗ってらっしゃったんです」
ケン「ああ、その話?まぁ私も似たようなモノですけど」
リョーコ「ゲ!やっぱり魂の名前?」
ケン「いえ、私じゃなくて父さんがですよ。子供に天空ケンって名前を付けるんだって・・・名字まで変えて・・・」
ルリ「バカ?」
ケン「ハハハ・・・そう思いますよねぇ・・・おかげで子供の頃苦労しました・・・」
一同『それでよく真っ当な人間に育ったなぁ』



んで、真相の核心へ


ハーリー「でも大尉、なんでエステバリスライダーなのに艦長候補生なんです?」
ケン「さぁ?」
一同「へ?」
ケン「いえね、私は元々はスバル君と同じでパイロット配属だったんですよ。ただ、ワンマンオペレーションってやつですか?あの計画が本格化してパイロットがダブついちゃったんですよ」
ジュン「それで配置換えの適性試験を受けたと?」
サブロウタ「だから艦長候補生に?」
ルリ「それだと、艦長さんをやらせてしまった間接的な原因は私にもありそうですね」
ケン「いいえ、それは違いますよ。艦長候補生は最後の最後です」
ウリバタケ「最後・・・って?」
ケン「たらい回しにされたんですよ。諜報部とか色々ね。それで最後に残った戦艦指揮にかろうじて適正があっただけで、本当は落ちこぼれなんですよ」
一同『いやぁ、あれだけ出来りゃ十分でしょう・・・』

ルリ「で、どうなんです?エリナさん」
エリナ「何が?」
ルリ「まさか、どこからもお荷物とされる人をネルガルが資金援助までして天下のナデシコで訓練させたりしませんよね?」
エリナ「何が言いたいわけ?ホシノ・ルリ」
ケン「あの・・・お二人とも何をおっしゃってるんですか?」
ミナト「・・・ひょっとして艦長って天然ボケ?」

ルリ「お荷物どころか実はその逆で、激しい引き抜き合戦があったのでないかと・・・あるいは来る任務の為に広く見聞を深めさせたとか・・・」
エリナ「さぁ、私はただのお使いよ。そんなことはあなたの義祖父かうちのバカ殿にでも聞いて」
(筆者注:ミスマル・コウイチロウとアカツキ・ナガレの事です)
ユリカ「ピポパ・・・あ、お父様!どういうことなんです!え?ちょ、ちょっと!!」
ユキナ「あっさりかわされたね・・・」
ルリ「じゃ仕方ありませんね。バカ殿の方を呼び出しましょう。あの人、口軽い方ですし」



そしてアカツキ登場


アカツキ「やぁ、呼んだ?」
プロス「会長・・・もう少し自重を・・・」
アカツキ「いいって、いいって。それよりグッドニュース。テンクウ・ケン君。
 君に預かりモノだよ」
ケン「私に・・・ですか?」
アカツキ「そ♪」
ヒカル「なになに?」
リョーコ「辞令?何で宇宙軍の辞令をロン毛が?」
アカツキ「ミスマル指令から。まぁ僕の用事もそれに絡むんだけどさ」
ミナト「どう言うこと?」
アカツキ「まぁ、テンクウ君、先に辞令を開けてみて」
ケン「ええっと、第2艦隊旗艦ライラック副長テンクウ・ケン大尉、本日付をもって少佐に昇進・・・ナデシコB艦長に任命する・・・ですって」
一同「おおおお!」

サブロウタ「少佐、昇進おめでとうございます!」
ルリ「はぁ、現ナデシコB艦長の私はお払い箱ですか・・・」
アカツキ「早とちりしちゃいけないよ、ルリ君。第一、君はナデシコCの艦長でもあるんだろ?」
ルリ「ま、そうですけど。たまには黄昏とかないとファン受けしないもので・・・。それにアカツキさんの本題、これからなんでしょ?」
アカツキ「まぁいっか・・・。はい、ユリカ君とルリ君に同じく辞令だよ」
ユリカ・ルリ「「私達もですか?」」
アカツキ「そ♪」

ユリカ「テンカワ・ミスマル・ユリカ大佐、本日付をもって准将に昇進・・・」
ルリ「ホシノ・ルリ少佐、本日付けをもって中佐に昇進・・・」
ユリカ「独立ナデシコ艦隊提督に任命する・・・」
ルリ「同旗艦ナデシコC艦長に任命する・・・」
ユリカ・ルリ「両名はただちにナデシコフリート構想に基づく独立ナデシコ艦隊の編成にあたれ・・・今度は地球半分を敵に回すからそのつもりでベストを尽くすように。あらゆるリソースの使用を許可する。 宇宙軍総司令ミスマル・コウイチロウ大将」
一同「ナデシコフリート!?」

アカツキ「そ、ネルガルが全面的にバックアップする。人材集めはプロス君とゴート君を使っていいよ。それとウチからも一隻提供させてもらうからよろしく♪」
ルリ「どういう事なんですか?アカツキさん」
アカツキ「どういう?二度あることは三度あるってね」
ユリカ「それって・・・」
アカツキ「そう。『新たなる秩序』三度ってやつ。いいかげん壊れた夢から卒業して欲しいんだけど・・・」
一同「・・・・・」

ルリ「あの・・・あの人もかかわってるんですか?」
アカツキ「さてね。それは自分の目で確かめれば?」
ユリカ「わかりました。やりましょう、ルリちゃん」
ルリ「ええ。」

かくして戦士達の休息は終わった。

See you next Chapter...



ポストスプリクト


って言うことで劇ナデアフター開始です。
今回は座談会形式でストーリーを進められるか?という実験もかねてやってみましたがいかがでしょう?
次回からは普通の形式で進めるつもりです。

一応は敵の新キャラ以外はほぼ今回登場のキャラクターが出る予定です。そうそう、ここに出てきてないあの二人も出る予定です。

テーマはズバリ『アキトの帰還』です。前向きに努力しているアキトを書きたくて始めました。んなもんでユリカが死んじゃうとか、アキトが死んじゃうとかありません。過去にも行かないし、未来にも行きません。
可能性のジャンクションも禁じ手にします。
たぶん・・・。
そういう前向きなお話にしようと考えてます。ハードボイルドは目指しますけど。

ただこの物語、プロットが幾つか出来てる段階で書き進めてるのでどういう展開になるか筆者にもわかっておりません。従って少し長い目で見ていただくと幸いです。

なお、DC版The Missionをされた方(あるいはストーリーブックを読まれた方)はわかると思いますが、『艦長候補生がエステバリスに乗る』という設定以外はほとんど私の創作です。
ただ時間軸的にはThe Missionでの出来事が起こった後であり、可能な限りその史実に沿うつもりですが、なにもThe MissionのIFモノをしたいわけじゃないので細かいところの違いはご了承のほどを。
(それに、The MissionのIFモノは既にミズキ=ロイさんの『出会い』『別れ』そして・・・という秀作がありますから。)

では、以降こうご期待ということで