■タイトル:悪夢 神、あるいは悪魔と呼ばれし存在
■Note:
私のCG第12作目です。
クライマックスシリーズ第3弾なのですが、CGとしてはいまいちでした。ストーリーだけはいくらでも浮かぶんですが、それと作画に伴っていないという(汗)
ポイントはドローンとした目元と両手で光と闇を弄んでいるという構図なのですが、黒を主体にして色を稼いでいるにも関わらず、効果的に使用できているかどうかが怪しい(--;)
まぁ、その分、ストーリーで想像力を高めて下さい・・・ってことでお願いします。
あと、時間に関わるストーリーが出てきますが、白プリやリベ2あたりの考察はこの頃あたりからあって、ナデシコSSに使ったのはこのアレンジに近いです。なんかこの頃からいろいろこねくり回して考えるのが好きだったようで(笑)
■投稿時のドキュメント
なるべく当時のまま収録します。
1.虚しさという名の勝利
「くそ!!」
エターナの怒涛の攻撃は空磨に軽く防がれている。まるで駄々っこの子供が大人に諌められているように。
「結果を見るほど空磨の力がエターナを陵駕している訳じゃない。」
その様子を見て水城は感想を漏らす。
「確かに、今の空磨の力が段違いに上がっているとはいえ、姫とやった時のエターナの力と五分かやや上ぐらいの力しかないはずだ。あそこまで力の差が開くほどじゃない。」
紫嵐の言葉に水城も肯く。
「明らかに今のエターナの力が落ちて来ている。」
「光の力が弱まったから?」響が尋ねる。
「いや、混乱はしているが衰えてはいない。それよりもエターナ本人の問題だろう。あいつ自身が光の力はおろか闇の力すらその使い方を忘れ始めている。それ程あいつは不安定になっている。」
「不安定?」
「自分の半身を殺した事もあるだろう。しかし、他人の為に飛び出したルカの行動が彼女の理解を超えていたんだろう。自分の信じていた醜い人間像からすれば、自分の死をいとわなかったルカという人間は彼女の信念すら揺るがしたはずだ。」
「……」
「そこに空磨が闇の異次元から帰って来た。自分の力を否定されたのと同じぐらいのショックがあったろう。」
水城は呟いた……あいつの死は無駄じゃなかった……。
「いいかげんに悪夢に脅えて喚き散らすのはやめろ。」
空磨はエターナの両手をつかんで彼女の瞳を覗きこんだ。別にすごんだ訳ではない。しかしその瞳を見つめているうちにエターナの心の中に恐怖とはまた違った……畏怖が沸き上がっていた。
「いやぁぁぁ!!」
その感情が一気に膨れあがってエターナの心を破裂させた。エターナの体から力がぬけ気を失ってしまった。
「お願いです、エターナ様を助けてください。」
響とリズリーは空磨にすがった。空磨は無言のまま彼女達の主の体を二人にあずけた。
「空磨、とどめをさせよ。」水城はそう詰め寄った。
「もうこいつに戦う力がない。」
「姫と……ルカを殺したんだぞ。おまえは平気なのか!?」
「平気じゃないさ。」
そう言って空磨はルカの遺体に歩み寄って行った。
「よくやったな、ルカ……いつまで寝てんだ!さっさと起きろ!!」
あっけにとられたみんなをよそに空磨は死んでいるはずのルカに向かって怒鳴った。気が違ったんじゃないかと思っていたみんなは次の瞬間、自分の方が気が違ったんじゃないかと思うようになった。
「耳元でうるさいわよ!!」
ひょっこりルカが起き上がって非難めいた事を行ったからである。
「ルカ……おまえ死んだんじゃ……。」
あっけにとられた水城の声で我にかえったルカが自分でも不思議そうにあたりを見回した。
「あれ?
あたし……姫を助けようとして撃たれて……
血がいっぱい流れて死んだはずじゃ……。」
「血なんか流れてないぜ。」
空磨の声に改めて地面の跡を見回したが血の跡すらない。
「あれ? あれ?」
「時間削除、おまえの新しい力じゃないのか?」
「時間削除?」
「過去を削る能力。おまえは無意識のうちに自分の死後に自分達が撃たれる前の時間までの間の時間を削りとったんだろう。」
「んな、非常識な!」水城が声を上げる。
「非常識と言えばその通りだ。現在進んでいる時間に食い違いを残しながらも物質個体の時間だけを過去に引き戻し、しかも空間的に矛盾を引き起こさない。もしかしたらこれはとてつもない能力かもしれない。」
紫嵐のお約束の説明的な台詞をいう。
「早速で悪いけどルカ、おまえのその力を使ってエターナを助けてやって欲しい。」空磨は頼んだ。
「へ?」
「あいつは過去に母親の事で何かあるはずなんだ。おまえにしか出来ない事なんだよ。」
「なんで……。」
そう言おうとしてルカは口をつぐんだ。空磨に促されて振り返ったそこには居たたまれない顔をした姫が立っていた。光の支配者の立場として闇を許してはならないという戒めと、姉として妹を救いたいという感情の狭間で押し潰されそうになっていた。
「別にこいつに同情する訳じゃないが、姫にあんな顔をされているほうが後味が悪い。それにこいつを放っておくと”本当の闇”に取り込まれかねない。」
「”本当の闇”?」
「あぁ、それはあいつに聞いたほうが速いかもしれないな。」
そう言って空磨はあらぬ方向を見る。そこにあるのは一つの遺体……。
「おい、いいかげんタヌキ寝入りはよせ。時間の無駄だ。」
『よく気付きましたね』
”それ”はしゃべった……絵夢の声で……。
2.悪夢 ……神、あるいは悪魔と呼ばれし存在……
「おまえは私が確かに止めを差したはずなのに。」
ルカが叫んだ。しかしそれにかまう事なく”絵夢”は立ち上がった。
『どこで気付きましたか?』それは”絵夢”の声でいう。
「あれだけ闇を漂わせていれば嫌でもわかるぜ、絵夢……いや、絵夢を羽織るものよ。」
『わかりますか?』
「あぁ、くそ爺に聞いたことがある。『悪夢』という名の”D”を」
「悪夢……ナイトメアか!!」やっぱりといった顔で水城が叫んだ。
「”D”?」ルカは首を傾げた。
「あぁ、お前達にわかる言葉でいえば神”G”あるいは悪魔”D”と
呼ばれる存在だ。遥か異世界の住人……。」
共に一つの種族であった。しかし彼らはやがて二つに分化していった。
一つは”欲望”を捨てていったもの
……それらはより崇高な魂になり……
今一つは”欲望”を追求していったもの
……それらはより貪欲な魂になり……
二つの種族は次元の狭間で争い合う。互いの領域を広げる為。
彼らが目を着けたのがこの世界……。
人は自らに益をなすものを”神”と呼び、仇をなすものを”悪魔”と呼ぶ。
しかし、彼らにとって矮小な我等は支配の対象にはなっても尊重するべき存在ではない。
過去、彼らの侵攻を多くの支配者達が追い返した……。
「奴はその中でも”D”の尖兵、あらゆる所に闇を振りまくこずるがしこいやつさ。」
『心外ですね。ただ”混沌”のようにむやみやたらと行動しないだけですよ。』
絵夢であったものはその姿を変え始めた。黒き髪、黒き衣、そして黒き瞳……
闇をまくものの姿がそこにあった。
「混沌?」
「俺のくそ爺、天武が”最悪の争い”で追い返した”D”の名前だよ。」
「最悪の争いって、あの20年前の支配者同士が覇権を争って戦って
結局、天武様と母上以外ほとんど生き残らなかったってあの戦いでしょ。」
「あぁ、現実にはそいつが元凶だったって話しだ。
それでこいつは正攻法をやめて別の方法を考えた。そうだろ?」
『そうですよ。過去何千年、我々と”G”は同じ事のくり返しでしたからね。
私は効率の悪い事は嫌いなんですよ。そこで目を着けたのがその当時生まれてくる一つの魂でしたの。』
彼らはこの世界で力を振るう為に必ずこの世界の”器”を端末にしなければならない。低俗なものは動物などに憑依して妖魔や怪物等と呼ばれる事がある。
しかし、”G”や”D”と呼ばれるものの端末となりうる”器”はそれ相応の魂の器を持っていなければならない。
『私は”G”と”D”に提案しました。これから生まれるこの至高の魂を二つに分かち光と闇の魂としましょうと。
闇の魂を”G”が、光の魂を”D”が各々の”端末”にしましょうと。
互いの”端末”を己が色に支配出来た時、その”端末”を用いてこの世界を支配しましょうと……。
”G”も了解しましたよ。これ以上互いの端末となるべき魂を潰し合いをしても、この世界に降臨するチャンスを逃すだけでしたからね。
私達はこのゲームを始めた訳です。』
「それが姫とエターナ……ってわけか。」
『えぇ、エターナさんのほうは簡単でしたよ。彼女には人間の醜い部分を少し見せてあげるだけで、面白いように傷ついて行きましたからね。』
「貴様……!」
『怒らないでください。それに私だって思いもよりませんでしたもの。
まさかあの混沌を退けた気の支配者 天武がその事を察して闇の魂を光の支配者に育て上げてしまったのには。
そして今、自分の半身を殺す事によって真に闇の魂”虚無”に取り込めるはずだったエターナを防ごうとしたのがまた気の支配者と時の支配者なのですからね。』
「絵夢に成りすまして私達に近づいて来たのはエターナ様に光の支配者を殺させる為か!!」響は声を荒げた。
『成りすました訳ではありませんが、その通りです。私とて”端末”は必要ですからね。その点、絵夢という人間の魂はコンプレックスの塊でとても心地好かったですよ。私は”絵夢”であり”悪夢”であるのですから。』
「リズリーを操っていたのもそうだな?」水城が問いかけた。
『あれはまったく低級な鏡魔ですよ。それでも使方次第ではあの通りです。』
リズリーは歯ぎしりを鳴らす。たかが低級の妖魔にからだを奪われてしまうような自分の心の弱さを恥じて……。
『さぁ、戯れ言はここ迄でいいでしょう。貴方達が油断した隙に悪夢のうちに取り込んであげようかと思いましたけど、方針を変えましょう。
あなた方は将来我々の大きな障害になります。直接手を下すのは私の仕事ではないのですがこの場で始末させて頂きます。』
悪夢の放つ闇の気はエターナの放ったものよりも数段凄まじいものであった。
『絵夢という端末では本来の力のほとんどは出せませんが、今のあなた方を倒すのには十分でしょう。』
「そうはさせないさ。」
空磨が歩み出る。エターナを倒した時の気よりも更に充実している。
「ルカ、エターナを頼む。真の闇に取り込まれないうちに……」
「わかった、空磨。絶対勝てよ。」ルカはうなずいた。
「あぁ。」
『やはり貴方ですか、気の支配者 空磨よ。天武と同じように我々に立ちふさがるのは。』悪夢は怪しく笑った。
「水城、紫嵐。これから時間の海にもぐりこむ。
でも精神体だけしか行けないから肉体が無防備になるから守って欲しい。」
「わかった。」
「私達にも手伝わせてくれ。」響とリズリーも名乗りを上げた。
「エターナ様を救うんだろ?盾ぐらいにはなれる」
「わかった、頼む。」
空磨と悪夢との死闘が始まろうとしてた。そしてもう一方でルカの静かな戦いが始まろうとしていた……。
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3.悪夢 −ナイトメア− について
”D”と呼ばれる者達の中でもかなりイレギュラーな部類に属する。
まず、”器”となる人間のキャパシティがあまりなくても降臨出来る事。
次に、尖兵としていろいろ布教(?)活動を行うわりに実際の占領実務を自らは行わない事。
かなりいろいろな場所に姿を現しているようである。
他の”D”は神話や時には神(暗黒神)と呼ばれるのに対し、彼女は妖魔として世に名前を伝えている事が多い。
ちなみにわざわざ彼らを悪魔と呼ばず”D”と呼んでいるのは、神=正義、悪魔=悪 と認識して欲しくないからである。
神と悪魔は紙一重であり破壊神として知られているシヴァーはある地方では太陽神として崇められている。
”G”と”D”のイメージとしてはアメリカとソ連のようなものでどちらも自分達の正義を押し付けているだけで押し付けられているほうとしてはどちらも救いの神ではなかったいうのはご存じの通りです。
今後、これらの異世界の住人が登場すると思いますが、今後彼らを通じてこの物語のテーマの一つである”人間の肯定”について語っていけたらと思います。