地底人アンダーテイカー

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嵐の深夜、田舎町レファーツ・コナーズの住人たちは銃に弾丸をこめ、何かに脅えていた。そして時計が12時をまわり、日付が変わる。クリスマス・イブ。聖なるこの日、赤子が安らかに眠るベビーベッドに近づく影は、祝福の手ではなく、鋭い鉤爪のついた土気色の手。おぞましい生き物がベビーベッドを地下へと引きずり込もうとしていた。気付いた母親とその妹が不気味名手に向かって銃を放ち、ベビーベッドの前進は止まる。だが、撃退したはずの魔の手が、油断した妹を地下へ、奈落の底へと引きずり込んでいった。

 ジョン・マルテンスは四年の刑期を終え仮出所の日を迎えていた。マルテンス家、その血筋を引いているというだけで無実の彼は有罪の判決を受けていたのだった。だが、身寄りのない彼は、父親の仲間、こそ泥の仲間を頼るしかなかった。

 ジョンが訪ねてきたのはスケルトン・ナッグス葬儀社。唯一彼を受け入れてくれる父の仲間のところ。だが、彼がやってきた理由はそれだけではなかった。父が隠した金を手に入れるためであった。その隠し場所はレファーツ・コナーズ。呪われた田舎町の墓場の下であった。

 地下に潜む恐怖からこの小さな街を守るため、いや、姉の仇を討つため、キャサリンは躍起になっていた。武器を集め、さらにダイナマイトを手に入れ、この日が来るのを待っていた。地下に巣食う怪物を一掃する決戦の日を。そして、ともすればくじけそうになる彼女を支えてきたのが、酔いどれだがその腕は確かなハギス医師だった。

 ジョンが出ていった後のスケルトン・ナッグス葬儀社は、穏やかならざる客を迎えていた。主人を脅し、棺に納められた遺体に歩み寄った客、ベネットたちは、ナイフをかざし、遺体の腹部を切り裂いた。だが、あるべきはずの臓腑はそこになく、取り出されたのはビニール袋に詰められた麻薬。しかし彼らの狙いはそれではなく、マルテンスの隠した金にあった。そして地図を手に入れた彼らは、もはや用のなくなった葬儀社の主人に止どめを刺し、出ていった。レファーツ・コナーズへと向かって。

 イブの晩をひかえたレファーツ・コナーズの教会では、その準備に追われていた。しかし、神父はあまり乗り気ではなかった。この神聖な教会で行われようとしていることは、神の教えに背くものであると。トラックから降ろし荷物、ダイナマイトを運びこむキャサリンとハギス医師。そして教会の周囲、墓地にしかけてまわる。

 マリア像に向かう神父。だが、彼は祈りをさ下げているのではなかった。聖像に向かい語りだしたのはマルテンス家の末裔のこと。この街を離れ、ただ一人この教会以外に葬られた男。ただ一人残された彼の息子のことを。そして、まるで懺悔のように独白する神父の陰には、人間ならざるものの影が・・・。

 すっかり日も落ち、レファーツ・コナーズには嵐の前ぶれを感じさせる風が吹きはじめた。ようやく教会を探し当てたジョンは、墓地に忍び込み、一つの墓石の前に立ち止まった。そこが地図に示された目印なのだろうか。墓石に屈み込んだジョンはしかし、墓にしかけられたダイナマイトを見つける。だが、ダイナマイトに手を伸ばした彼を不審者だと見て取ったキャサリンは、ジョンに銃口を向けた。そしてさらに、それを遠くから見張っている三つの人影があった。葬儀社を襲った連中もまた、レファーツ・コナーズにやってきていたのだった。

 協会内には、破壊する音と補強する音が響き渡っていた。長椅子を壊し、何かが出てくることを阻止するためにその破片を床に打ちつける音が。そしてそれの呼応するかのように、嵐の音、雷鳴が響き渡り、床板をたたく音、補強する者たちの反対側から、地下から床板をはねのけようとする音が。

 ジョンの尋問を中止し、ダイナマイトを爆破するために出て行こうとするキャサリン。だが、あの三人が教会に押し入ってきた。彼らはジョンに反撃されていた男を撃ち殺し、キャサリンも捕らえられてしまう。そして、マルテンスの隠した金の場所を聞き出そうと、脅しをかけた。金のありかを喋るまで、10分に一人、射殺すると。

 しかし、町の住人たちが金のことなど知る由もなかった。それどころではないキャサリンは、このままではみんな奴らに殺されると言い張るが、逆に化け物のことなど知らぬベネットたちは、キャサリンを床板のすき間に押しつける。あきらめたのか、見かねたのか、ここの住人たちと出くわしたのは偶然だとジョンは説明した。そして、金はまだ墓のどこかに眠ったままだと。

 ついに降りだした雨のなか、ベネットはジョンとキャサリンを連れ、墓地にやってきた。そして、一つの墓、ジョンの祖母のそれに見当をつけ、棺を掘り出す。だが、その中には遺骨以外に何もなかった。罵声をあげ遺骨を投げ棄てるベネットのすきを見て逃げ出すキャサリンは、腕に銃弾を浴びてしまう。ベネットの銃口はジョンにも向けられるが、彼は祖母の遺骸を盾にして防ぐ。だが、掘り返された墓穴から突き出た何者かの腕が、ジョンを地中へと引きずり込んでしまった。あっけにとられるベネットたちだが、とりあえずキャサリンをひきずって教会に引き返した。

 地中に引きずり込まれたジョンは、彼を襲った怪物を殴りたおしてなんとかその場を逃れていた。そして出口を求めてたどり着いたのは、教会の床下。怪物と間違われるジョンだったが、なんとか床板を跳ね上げて教会内にはい上がる。そして、再び教会に集まった彼らは膠着状態に。

 緊張の張り詰めるなか、埋葬記録から何か分かるかもしれないと踏んだ神父は、その情報と、自分の命とを引き換えに、キャサリンたちの命を助けてくれるよう、ベネットに要求する。

 埋葬記録を調べたベネットは、その中から一人だけマルテンス家の名前を騙った者の墓を見つけ出し、そこに金が隠されているのではないかと推測する。しかしその金とは、ジョンの父親がベネットのところから盗み出した物だった。そして、マルテンス家の最期を示唆するベネットだったが、神父は意外なことを口走る。まだ一族が残っていると。

 一方ジョンは、隠し場所を示した地図を渡すといってベネットの手下ピアスをそそのかし、なんとか反撃に出ようとしていた。そして隙をついてピアスから銃を奪い、形勢は逆転したかにみえたが、引き金を引くことができず、銃は蹴り落とされてしまう。ジョンがあきらめかけた時、ピアスの背後のステンドグラスを割って現われた怪物がピアスを連れ去っていった。

 ホールに戻ったベネットは、隠れていたジョンに背後を取られる。しかしその瞬間、窓を破ってピアスの死体が投げ込まれた。さらに、投げ込んだ死体の後に続いて入ってこようとする怪物。だが、ジョンは火炎瓶を投げつけて撃退する。

 形勢逆転したキャサリンたちは、ベネットともう一人の仲間を縛り上げ、再び怪物退治の計画を練る。すでに夜も更け嵐となった今、ダイナマイトを仕掛け直す時間がないと考えたキャサリンは、タンクローリーを取りに教会を出ていった。

 静けさを取り戻した教会の一室で、神父は再び祈りを捧げていた。しかし、その背後に迫る異形の影。そしてなんと、異形の者は「神父が私を呼んだのだ、おまえの神は悪魔なのだ」を言葉を発したのだ。だが、神父はこの異形のものが現われることを知っていた。それだけではない、その異形がジョンの父であることも、この異形がマルテンス一族の成れの果ての姿なのだと。

 マルテンス家の秘密を、レファーツ・コナーズを恐怖に陥れた原因を知っているこの神父は、自分の命と引き換えに他の者に手出しをしないことを異形に迫る。しかし、神父の負けを宣言した異形の者は、祈りを捧げつつ歩み寄る神父の心臓を抉りだすのだった。

 それに追い打ちをかけるように、手首を結んだロープから逃れたベネットが、再びジョンを使って金を掘り返そうとしていた。

 一人ホールに残された妊婦ベスのもとに戻ってきたハギス医師。だが、何かに脅えるベスの視線の先にあるものを見た瞬間、ハギス医師は怪物に襲われてしまう。

 タンクローリーに乗って戻ってきたキャサリンは、降りしきる雨のなか、ベネットと、墓を掘り返すジョンの姿を見つけた。事態を察知したキャサリンは、気付かれぬように墓に向かい、ベネットに銃口を向ける。しかし、もう一人の仲間に見つかり、銃をけり飛ばされてしまう。揉み合いのさなか、再び銃を手にしたキャサリンだが、人間をうつことはできない。しかし彼女が狙いをさだめたのは、まだ残っていたダイナマイトであった。

 キャサリンの放った弾丸は見事ダイナマイトに命中し、墓地は爆風と火の海に包まれる。さらに、ベネットもその巻き添えに。

 教会に戻ったキャサリンだったが、そこには瀕死のハギス医師が横たわっていた。しかし、あわてて駆け寄ったキャサリンを異形の者が襲う。

 穴の中に難を逃れたジョンは、地下に掘られたトンネルを進んでいた。だが、そこには吹き飛ばされたはずのベネットも入り込んでいた。マルテンスの血を引くジョンならば怪物に襲われることもないと考えたベネットは、ジョンを脅し、この地下から逃れようとする。だが、脆くなっていたトンネルの一部を踏み抜き、落ちた所は地下に作られたマルテンス一族の成れの果ての、異形の者共が集う部屋であった。そしてその部屋には、マルテンスの金と、さらにベスとキャサリンの姿が。

 金に執着するベネットは、ジョンを盾に金を持ちだそうとする。だが、ジョンは隙をついてベスとキャサリンを連れて逃げ出した。それでも金を持ちだそうと怪物たちの真っ只中に居残ったベネットは、その馬鹿げた欲望から怪物の餌食になってしまう。

 外へ出はキャサリンたちは、急ぎタンクローリーからホースをひき、教会の床に空いた穴へとガソリンを流し込む。そしてジョンは、点火したライターをその中へ。巨大な炎の柱をあげて爆発する教会。異形の住む地下もまた、炎の波に飲まれていった。

 地獄の業火に全てが燃やしつくされ、レファーツ・コナーズを恐怖に包んでいた事件は終わった。しかしジョンは、自分の中に潜むもう一人の自分に考えを馳せていた。マルテンスの血を引く自分は、果たしていったい何者なのか。その答えが出るまで、自分に科せられた刑期は終わらないのだと。

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