ダンウィッチの怪

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 出産の苦痛に悶える女性。それを見守る謎の老人と老婆。

 ミスカトニック大学。講義が終わり、学生たちとともに出てくるアーミティッジ教授。講義を称える学生たち。

 ナンシーとエリザベスが図書館にネクロノミコンを返しに来たところへ、青年が一人、その本を見せてほしいとやってくる。大切な本であり、図書館はもう閉まるから見せられないというエリザベスだが、ナンシーは五分だけならと許可する。

 ネクロノミコンに見入る青年。そこには超自然的なことがかかれていた。ヨグ=ソトースは門であり、鍵である。門が開くとき、オールド・ワンズは現われる。過去、現在、未来は一つである。

 そこへアーミティッジ教授がやってくる。本を返すよう迫る教授だが、青年がかつて同じ本を所有していたオリバー・ウェイトリーの曽孫、ウィルバーであることを明かすと、友好的になる。

 ディナーの席、ダンウィッチの町のことや、神秘学のことで親交を深める。ネクロノミコンを貸し出してほしいと乞うウィルバーだが、貴重なものだとしてアーミティッジ教授は聞き入れない。

 最終のバスに乗り遅れ、ナンシーに送ってもらうウィルバー。途中スタンドによるが、ウィルバーが同乗していることに気づいに店員は一ドル分のガソリンを入れて追い出されてしまう。田舎では今だに迷信を恐れていると、ウィルバーは言う。それは自分に向けられた迷信なのだろうか。

 送ってくれたお礼にお茶をご馳走するウィルバー。戸惑いながらもウィルバーの屋敷に入ったナンシー。ホールは息を呑むほどのゴシック調の調度に飾られていた。ナンシーが洗面所に立った後、ウィルバーがテーブルに飾られた半透明の石に手をかざすと、その石はひとりでに半回転し、指輪でノックするとほの暗く黄色い光を放つ。そしてこっそりと玄関を出てナンシーの車に歩み寄ると、ボンネットを開け、イグニッションコードを引き抜いたのであった。キッチンに戻ったウィルバーは、ナンシーのカップになにやら得体の知れない粉末を盛る。

 ホールに戻ってきたナンシーが、テーブルの上で光る石に手をかざすと、それは手を触れてもいないのに転がり落ちてしまった。そしてその時、二階の一室から不思議な物音が聞こえてくる。恐る恐る階段をあがり、ドアノブに手を伸ばしたとき、ノブが回り、中から老人が出てきた。驚いてウィルバーを呼ぶナンシーだが、その老人はウィルバーの祖父であった。老人はウィルバーに話があるといって立ち去る。

 先程聞こえた物音を風か海のなるような音だったというナンシーだが、古い家だからきしみをたてたのだろうとウィルバーは言う。帰ろうとするナンシーだが、車のエンジンがかからない。自分には車を直すことはできず、修理を呼ぶにも電話がないというウィルバー。ナンシーはしかたなく泊まることにする。客室に通されたナンシーは急に疲れが出たかのように、眠気を催すのであった。

 祖父はナンシーが何者であるのかを問うが、ウィルバーはただ自分を送ってきただけだと応える。この家の秘密がばれると忠告する祖父、二人が立つ部屋の扉が、風とは思えない力でがたがたと揺れるのであった。

 眠りについたナンシーは、不可解で不気味な夢を見る。そこは断崖を見下ろす草原。ナンシーのまわりを取り囲む、薄気味悪い化粧を施した、どこか未開の地の半裸の原住民たち。恐怖におののき逃げ惑うナンシーが一軒の小屋に逃げこんだところで目が覚めると、寝室の前に立っていた。

 エリザベスとともにウィルバーの家へ向かうアーミティッジ教授。

 翌日、近くの草原で昨夜の夢について語り合うナンシーとウィルバー。彼はその夢を性的なものだろうと判断する。セックスは好きかとの問いに好きだと答えたナンシーに、自分も好きだとウィルバーは言った。ここは何もない田舎だというウィルバーに、ここは気持ちが安らぐというナンシーであった。

 ウィルバーの屋敷にやってきたアーミティッジ教授とナンシーの友人。彼らを出迎えたのはウィルバーの祖父であった。老人が二人を追い返そうとしていると、ウィルバーとナンシーが帰ってくる。アーミティッジは迎えに来たというが、ナンシーは週末をここで過ごすという。不審に思う教授と友人だった。

 教授たちが帰った後、再び眠気を訴えるナンシー。

自分達のことに詳しいアーミティッジ教授にナンシーがここにいることを知られたことを恐れる祖父は、あの本、ネクロノミコンのことは忘れろと言うが、もう決心したんだとはねつけるウィルバー。その決心とはいかなるものであるのか。

 ウェイトリー家のことを調べるため、ダンウィッチの新聞社を訪れるアーミティッジ教授たち。そこで、ウィルバーの母親の名はラビニアといい、出産に関ったコリー医師がまだ開業していることを知る。

 ダンウィッチの町へやってきたウィルバーとナンシー。ウィルバーはとある一角で曽祖父のことを語った。娘を生贄にした異教徒として、この場所で私刑にされたと。

 コリー医師のもとへやってきたアーミティッジ教授は、さっそくウィルバーについて訊ねる。出生証明に名を記したのは確かに自分だが、それについては一言では言えないとても奇怪なことがあったという。ウィルバーをとりあげたのは、老ウェイトリーであり、その場に立会ったのは得体の知れない老婆なのだと。ウィルバーが異界の存在を呼び出そうとしていると打ち明けるアーミティッジ教授。

 25年前、老ウェイトリーに呼ばれたコリー医師。老人によると、双子であったが一人は死産だったという。しかし、その死体を確認したわけではなかった。そして母ラビニアの参道はズタズタに引き裂かれており、一命を取り留めたものの気が狂ってしまったのだ。そのラビニアは現在も入院しており、その当時からずっと狂気のままだという。病室にやってきたアーミティッジ教授たち。ラビニアはこう叫びつつけていた。

「息子よ、門を開け放て、オールド・ワンズを呼び醒ませ」

そして、話をしたいと問いかける教授たちに、お前たちは皆殺しだと。

 エリザベスが受付けの看護婦にウェイトリー家のことを訊ねると、あそこには老人とウィルバーのほかに、なにか得たいの知れないものが棲んでいるという。噂に過ぎないかもしれないが、あの屋敷にはだれも近づかないと。

 ピクニックに出たウィルバーとナンシー。ウィルバーはいい場所があると、ナンシーをとある岬に案内する。そこには、古い遺跡、言い伝えでは悪魔の庭と呼ばれる遺跡があった。そこでおこなわれた儀式について話しだすウィルバー。ここでは繁殖の儀式がおこなわれたのだ。美しい娘を横たえ、その衣服を呪われた黒衣に変え、暗黒の力を受け入れるのだと。その魔力に見せられたかのように、ナンシーは祭壇に横たわり、かつての儀式の幻影を自分に投影し、垣間見るのであった。その間、ウィルバーは唱える。ヨグ=ソトース、ヨグ=ソトースと。そしてウィルバーがシャツを脱ぐと、そこには不可解な文様の刺青がほられていた。それが刺青であるのかは定かではなかったが。

 一人、ナンシーを連れ戻しにやってきたエリザベスは、追い返そうとする老人を突き飛ばし、強引に屋敷内へ入った。探し回る彼女が二階へあがり、閉ざされた一室の扉を開けると、なにか得たいの知れないものに襲われてしまう。

 その後に戻ってきたウィルバーは、見慣れぬ車があることを祖父に問いただす。祖父は、友人を探しに来た娘が、屋敷の上階へあがってしまったという。本を持っていたおまえに父ですら成功しなかったと、ウィルバーが行なおうとしている何かを止めようと襲いかかる祖父だが、逆に階段からつき落とされて絶命してしまう。その時、夜鷹の激しい泣き声がひびいた。ウィルバーは言う。魂を連れに来たのだと。

 祖父の埋葬のため共同墓地にやってくる。ウィルバーはヨグ=ソトースの名を唱え、不思議な弔い方をする。それはまるで何か魔術的な様相を呈していた。そこへ町の住民たちが押しかけ、異教徒をここに埋葬することを抗議する。が、警官に押し止められ、一応の解決を見る。

 その晩、ミスカトニック大学の図書館へ忍び込むウィルバー。もちろん、ネクロノミコンを盗み出すためであった。しかし警備員に見つかってしまい、殴り合いになった末、警備員を飾ってあった槍で突き殺し、本をもって逃げたすのであった。

 時を同じくして、ラビニアの様子が急変したと連絡を受けたアーミティッジ教授は、急ぎ病院へ向かう。コリー医師と教授たちが見守るなか、夜鷹が騒がしくなきたて、ラビニアは不可解な歌を歌いつつ息を引き取った。そしてラビニアの死と同時に夜鷹は鳴きやむ。ネクロノミコンに関係があるに違いないと悟ったアーミティッジ教授は、急ぎ図書館へ赴いた。

 悪魔の庭、祭壇に意識なく横たわるナンシーに向かって、ウィルバーは儀式をおこなっていた。異界の者を呼び出そうとするその声に呼応したかのように、ウェイトリーの屋敷、上階の一室からおぞましい怪物が扉を破って出た。

 一軒の農家では、平穏な一日を終え、食事を取ろうとしていたとき、犬が急に吠えたてた。ライフルをもって出た主人、電話で助けを呼ぼうとする奥さんだが、その階もなく怪物に家が押しつぶされてしまう。その間も続くウィルバーの儀式。雷鳴がとどろき、時は近いことを宣言する。

 図書館からネクロノミコンが消えていることを知ったアーミティッジ教授は、急ぎダンウィッチの町へとやってきた。すると、潰された農家に住民たちが集まっており、ウェイトリー家を襲おうとしている。警官と教授は自分たちに任せるようにいい、ウェイトリーの屋敷へ向かった。しかし、そうしている間にもウィルバーの屋敷から現われた怪物による惨劇は続いている。街道を車を走らせていた女性が襲われた。

 ウェイトリーの屋敷へやってきた教授たちだが、屋敷は炎に包まれていた。そしてそこで、不気味な鼓動と鳴き声とも息づかいともいえない何者かの声を聞く。そのおぞましい鳴動は移動しており、丘の方角、悪魔の庭へと移動していた。追跡する一同だが、一人集団から離れた男がまた襲われた。そしてまた一人、一人と怪物の餌食となっていく。

 悪魔の庭にたどり着いたアーミティッジ教授は、そこに暗黒の儀式を行なうウィルバーを見つける。呪文を唱えて儀式を阻止しようとする教授だが、ウィルバーの悪しき呪文に押されてしまう。全力を放って対抗する教授。呪文合戦の末、ウィルバーは炎の包まれて崖下に落ちてゆく。そして、開きかけ、異界の者が出ようとしていた門は閉ざされた。

 救い出されたナンシーだが、その胎内にはすでに何者かの子供が宿されていた。それはウィルバーのものなのか、それとも異界のものなのかは定かではなかった。

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