デッド・ウォーター

戻る

 閑静な住宅街に響き渡るパトカーのサイレン。その群は一件の家の前に止まった。有無を言わさず連れ出された青年は、「水だ!全ては水のせいなんだ!」とひたすら繰り返し叫ぶのであった。

 農場を営むネイスン、彼はいくつかの問題を抱えていた。経営は苦しく、その土地を売るように持ちかけられている。そして後妻フランシスとその連れ子ザックとアリスたちと、息子サイラスとの折り合いの悪さ。さらに、ネイスンの目を盗んでは使用人のもとでその体の火照りを冷ますフランシス。

 ある夜、雷のような轟音と光が暗闇を引き裂き、そんなネイスン家の裏山に火の玉が落ちてきた。あわてて駆けつけたザックが見たのは、大地に抉られ、炎を上げている一筋の道と、その先で不気味に光を放っている球体。隕石だろうか、驚いたザックはアラン医師を呼んでくる。かつて隕石の調査をしたことがあるアランは、専門家に調査してもらうまで近づかないようネイスンたちに言い残し帰った。

 翌朝、隕石の調査にやってきたアラン。それはすでに冷え切り固まっており、光を放つこともなくなっていた。アランは知っているかぎりの試験をするが、その正体を分析することはできなかった。しかし、ネイスンの土地を狙う資産家チャーリーに、なんの害もないことを説明するように頼まれる。そしてその晩、隕石のもとへ一人やってきたザックの目の前で、隕石は再び不気味な光を放つ。さらに隕石の中から気味の悪い粘液が流れ出していった。

 ネイスン家の食事の席にやってきたアラン医師は、あれは隕石などではなく飛行機が落とした汚水タンクだと告げる。納得し安心する一同だが、ザックだけはそれが信じられず、その表情は硬い。しかし、今日も変わらず汲み上げられた地下水が畑にまかれ、動物たちの喉を潤していた。

 夕食のためにフランシスは畑から野菜を収穫してくる。しかし、包丁を入れたキャベツの中は変色し、異臭を放っていた。さらにトマトからは腐汁のようなものが吹き出す。異変はそれだけではなかった。フランシスの頬には奇妙なできものができていたのだった。だが、フランシスは腐った野菜は捨て、その異変を隠し続ける。しかし、水の味がおかしいことに気づいたザックは、アラン医師のところからこっそりと水を汲みつづけ、妹のアリスとともに家の井戸水を飲まないようにしていた。さらにフランシスが作った食事もさけるが、ネイスンはそのことに耳を貸そうとはしなかった。

 しかし、農場は異変につつまれていく。突然暴れだした馬、アリスを襲ったあと怪死を遂げる鶏、リンゴの豊作を喜ぶネイスンがその果実を割ってみると、中には大量の虫が繁殖していた。そして、裁縫をしていたフランシスが、気がふれたかのように自分の手をも縫い付けてしまう。驚いたザックはアラン医師を呼んでくるが、家族の問題をおおやけにしたくないネイスンは、フランシスの異変をひた隠しにする。しかしその帰り、井戸水の異変に気付いたアランは、その水を汲んで水質検査に持ち込んだ。

 やがてフランシスの奇行は日ごとに狂気の度合を増し、それに呼応するかのように、家畜も奇怪な病気に蝕まれていた。生きたままに肉が腐り、皮膚が裂け、その中からは不汁とともに虫がわき出していたのだ。

 そんなこととは知らず、ネイスンのもとへやってきたチャーリーと、農場の売買に裏でかんでいたアランの妻。しかし、アランの妻は気のふれた犬に襲われ、地下室に逃げこんだチャーリーは、そこに閉じ込められていたフランシスに殺されてしまった。

 その晩、母の様子を見にきたザックだが、そこにフランシスの姿はなく、ネイスンが待ち構えていた。しかもネイスンの顔にもフランシスと同じ不気味なできものが。ネイスンのもとから逃げ出したザックだが、悲鳴を上げるアリスの部屋に駆けつけると、そこにはサイラスが。サイラスもまた、フランシスと同様に狂い、アリスに襲いかかっていた。サイラスをバットで殴り倒したザックは、アリスをクローゼットに隠す。

 水質検査の結果がかなり危険なものだと知ったアランは、急ぎネイスンの家に駆けつけるが、狂ったネイスンに殴り倒されてしまう。そして助けを呼びに家を出ようとしたザックだが、ネイスンに見つかってしまい絶体絶命のピンチに。

 だが、アランに呼ばれていた河川調査員ウイラスに助けられ、ネイスンも倒される。しかし、その時突然家が何かつよい力で持ち上げられ、崩れはじめた。崩れ落ちる天井、倒壊する壁のなか、アリスを助けだしたウイラスは外へとびだす。一人母を助けようとするザックはサイラスに襲われるもなんとか切り抜け、母の閉じ込められた部屋にたどり着く。しかし、その目の前でフランシスの体は溶けだし、床へと広がり消えつつあった。

 そして、ウイラスに助け出されたザックたちが見守るなか、家はその姿を地中に消していったのだった。

戻る