飯野文彦ホラーコレクション

【作品名】人こひ初めしはじめなり

【収録書籍】小説NON '01/9

【出版社】祥伝社

【定価】¥650

 都会の片隅で、堕落し、崩壊し、消えてゆく男の物語。しかも、男の所業には同情の余地すらない。つまらぬ験かつぎのために娘を見殺しにし、その慰めを幼少の思い出に見出す。さらに自己を正当化するためによからぬ諸行を重ね、再び殺人を犯す。歓楽街の喧騒に言い訳を吐き散らした男の、自業自得の物語。

 アルコオルノヰズの再来、といったところか。短編ということもあって、その文章にはやや洗練された印象もあるが、そのストーリーにはなんとも厭な読後感は否めない。イタリアンホラーのグロテスクさと、日本怪談の情念深さが混ざり合ったようなと言えなくもないが。島崎藤村の詩が思いのほか効果的で、蛆の洪水がどうにもフルチのような(爆)

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