私のクローン病の経過紹介


 そもそも、クローン病とはなんぞや?と言われると、私自身もどう説明して良いものかわからない。なにせ、現状では原因も治療法もわからない病気ですから。 かなりおおざっぱに言うと、消化管の炎症性疾患で、主に小腸や大腸におこるが、口腔から肛門までの全ての消化器官で起こりうる炎症性疾患です。20歳前後の人が発病しやすく、腹痛や下痢、貧血、痔瘻などが自覚症状です。
 非常にまれな病気のため、病院に行ってもうまく診察されずに、盲腸と間違えられて手術してはじめてわかったとか、病院をたらい回しにされたと言う話もよく聞きます。

 そんなわけで、ここからは私の発病から現在までの経過を紹介したいと思います。まぁ、自己紹介みたいなものです。病気の性質上、下の話もありますが、お気を悪くなさらないようお願いします。



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・1993年9月初旬(当時20歳)

 元々おなかが弱い方だったが、このころから今までとは質の違う立っていられないほどの腹痛におそわれるようになる。痛みは滅茶苦茶痛いんだけど、1分ほどですぐに元に戻り、また数十分後に再び1分ほどの激痛がおそう。と言うのが1日に何回もあった。
 また、便に血が混じるようにもなったが、元々痔の気があったのであまり気にしなかった。(もっともこの痔と言うのがクローン病の症状なのだが、その当時は病名すら聞いたことなかったのでそんなこと知るよしもなかった)
 結局あまりにおかしいと言うことで地元の病院に行く。検便をしたが、何やらこれだけではわからないと言うことで注腸検査を行うことになる。

・9月27日

 注腸検査のために夜に2リットルもの下剤を2時間で飲まなければならなかった。水だけを2リットルでもきついのに、この下剤がまたえらくまずい。泣きそうでした。

・9月28日

 午前中に注腸検査をする。注腸とは下からバリウムをいれて大腸を検査するものである。なんというかあんまり気持ちいいものではない。午後に結果が出たが、まだ、はっきりとした結果が出ず、結局内視鏡検査をすることになる。

・10月4日

 内視鏡による検査の当日である。やっぱり下剤を大量に飲まされ、点滴をされたあとに検査になった。はっきり言ってこの検査は地獄だった。ただでさえ腸内に炎症が起こっていたのに、そこにカメラが当たるわけである。腸は曲がっているのにカメラは当然まっすぐにしか進もうとしないわけで、当然腸をこすっていくのだ。良い歳して検査中は騒ぎまくって大暴れ状態だった。結果は当日には出なかった。

・10月14日

 検査結果がでる。ここではっきりとクローン病だと診察された。が、どうも病院の説明に納得がいかない。いろいろ聞いても検査は別の人がやったからよく分からない。とか訳の分からないことを言うし、治療もサラゾピリンを出されただけでそれ以外何も言われなかった。さすがに納得いかず別の病院に見てもらうことを決心する。

・10月18日

 自宅から50kmほど離れた、救急車も危なくなったらそこに行くという、まぁ有名な病院に行ってみる。「前の病院でクローン病と診察されたが、今一はっきりしないのでもう一度こちらで検査して欲しい」と言うと、「一度診察が出ているのに無駄な検査はしたくない。前の病院から紹介状を書いてきてほしい。」と言われ、仕方なく、地元の病院に戻り紹介状を書いてもらう。

・10月20日

 紹介状をもって再び病院に行く。紹介状には注腸の時のX線写真が入っていたが、それを見て開口一発「即入院」と言うことだった。現在何百人だかがベット待ちだけど最優先して入院させると言うことだった。
 因みに、何も治療されていないので、この時点での自覚症状も全く最初と変わらず、一日数十回の腹痛におそわれていた。ただし、便の方は一日何回も行ったという記憶はあまりない。

・10月21日

 そんなわけで、早速明日から入院できるという連絡が入る。ホントに最優先だったようだ。
 

・10月22日

 いよいよ入院の日である。とりあえず他に部屋が無いと言うことで個室に案内される。そして、早速体温、血圧をはかったり、後は、家族構成を聞かれたり、家族や親類に病気の人間がいないかとかいろいろ聞かれた。更に、その後血液検査と心電図と胸のX線検査をした。
 この時点では、特に治療というものは無く、低残さ(要するにお腹に残らない消化の良いもの)、低脂肪の食事を一日三食食べるという感じだった。

・10月26日

 またまた大腸の内視鏡検査をした。一度やっているのである程度覚悟は出来ていたがその覚悟を上回る痛さだった。またもや大騒ぎ状態で、結局本来なら回腸付近まで見なければいけないのに、あまりに痛くて大騒ぎするので結局横行結腸の途中くらいまでしか見られなかった。はっきり言って地獄である。

・10月28日

 今度は小腸造影であった。これはまだ経験したこと無かったのでどんなものかわからなかったが、はっきり言って滅茶苦茶辛かった。「一番痛い検査は?」と聞かれたら間違いなく大腸の内視鏡と答えると思うけど、「一番辛い検査は?」と聞かれたらきっとこの小腸造影と答えるほど辛かった。
 何が辛いって鼻から管を入れられて鼻は痛いし、管がのどにあたるので「オェッ」ってなるし、せっかくしばらくしてなれてきても、台の上で横にされたり逆さまにされたりと動かされる度にまた管がのどに触って「オェッ」てなるし、空気入れられてお腹は張るしで、もう滅茶苦茶辛かった。管入れられた方の目から涙ぽろぽろの状態だった。 この病気やっている人の中には栄養剤を経管でとっていらっしゃる方もいると思いますが、毎日管を入れるなんて本当に頭の下がる思いです。

・10月29日

 また検査である。今度は胃の内視鏡。病気が経口から肛門まで起こりうるだけに、この検査で上から下まで全部見ることになる。 はっきり言って胃の内視鏡も口の中の麻酔が異常にまずいし、カメラが喉とおるときはやっぱり「オェッ」ってなるしで、なかなかに辛かった。ただ、前の二つに比べれば全然楽だった。随分前に胃のX線でバリウムを飲んだことがあるけど、あれ飲むなら個人的には内視鏡の方がまだ楽って感じだった。
 結局、検査の結果は、大腸の一部に炎症などがある感じで、小腸や胃などには特に病変は認められなかった。これで、もう小腸造影はしばらく無いだろうと思うと非常にうれしい。
 

・11月初旬

 とにかく退屈なのである。私の場合、カメラで見るとお腹の中は相当酷いことになっているらしいのだが、症状が非常に出ないのである。医者によく「なんでそんなに元気なんだ?」と言われる位で、便の回数も一日何回もあるわけじゃないし、腹痛もそんなに無いしで非常に順調なのである。しかも、骨折とかしているわけでもないから体は自由に動くしほとんど健康な人と同じ状態なのに退院出来ず、する事もなくで、とにかく暇なのである。結局毎日毎日起床から就寝まで延々とテレビ見るばかりだった。
 そして、食事だが、はっきり言ってまずいのである。私が入院した病院はかなり病院食がまともらしく、たまたま入院中に見たニュースの中で私の病院が紹介されており、冷たいものと暖かいものはきちんとわけて持ってきたり、パンとご飯で選べたりととにかく確かにまともそうなのである。 ただし。これはあくまで普通食の人の場合である。この病気は決定的な治療法が無いため、結局食事を制限して出来るだけ症状を出さないようにするという非常に消極的なことしか出来ず、当然パンとかご飯をえらんだりなんてことは出来ないのである。 で、致命的なのが、私がお粥を嫌いなことである。なんというかあのお粥独特のにおいがどうも苦手なんです。おかげで、はじめの頃は何とか食べていた食事も、この頃になると食事の匂いがしてくるだけで吐き気をもようしてしまい、食事がほとんどとれない状態になってしまいました。

・11月23日

 そしてついに。 あまりに食事を食べない、そして、血液検査でもどうしてもCRP値が下がらないと言うことで、この日から完全絶食。24時間点滴生活が始まるのである。そもそも点滴自体そんなに経験無いんだけど、この点滴は鎖骨のところから管を入れて鎖骨下静脈に入れるという非常に驚きの技でびっくりしました。話によると、普通の点滴みたいに手の静脈とかに入れるとカロリーが高すぎて炎症を起こしちゃうとかなんとか説明されました。ただ、これが本当なのかは定かではありません。
 で、こいつは非常に邪魔なんです。なんてったって寝ている間も鎖骨のところから管が出てるんだから。しかも、なんか針金みたいなので肉にくくりつけてあるんだけどこれがかゆくて。で、寝ている最中にひっかいたりして抜けたらもう一回入れ直しだよ。って注意されているしで、しばらくは寝返りもままならない状態でした。
 しかも、点滴の管の途中に何やらスピードとかを調整する機械がついているんだけど、こいつのバッテリーがおかしくて、トイレに行っている最中にもバッテリー切れでブザーが鳴るし、なんだかわからないけど夜中に突然ブザーが鳴り出したりととにかく大変でした。

・12月10日

 やっとの事で点滴から解放される。今こうして書くとあっという間だが、当時はほんとに長かった。因みにこの時の点滴の管が通った後はいまだに残っています。
とにかく、点滴は終わりましたが、1日3回の食事は無理だろうと言うことで、この日からはエンシュア6缶と食事一回という生活に変わります。はっきり言ってエンシュアもまずかったけど、病院の食事とどっちを取ると言われたらまだエンシュアの方がましなので、そんなに苦痛ってほどでもなかったです。
 

・12月15日

 再びの内視鏡検査だった。約2週間の絶食のおかげでお腹の中の炎症がおさまっていたおかげか、過去2回の検査よりも痛さは少なく、特に暴れることなく検査は終わった。とりあえず結果の方もなかなか良好なようで退院も近い感じでうれしい限りである。なにせ、この時点ではもう完璧と言っていいくらい腹痛もないし、自覚症状ほとんどなし状態だったから、早く退院させてと先生にいっつも言ってましたから。

・12月22日

 退院前の注腸検査だった。ここでの結果が良ければすぐにも退院できたのに無情にも腸が少し細くなっていると言うことで若干の延期に・・・。絶対問題ないと思っていたから結構ショックである。

・12月27日

 とにかく年内に退院したいと言っていたおかげか、最後のチャンスと言うことで再びの注腸検査をした。とりあえず、結果もそこそこだったらしくなんとか明日には退院と言うことになった。うれしすぎる。

・12月28日

 当初の念願通りなんとか年内に退院と言うことになった。しかし、約2ヶ月だったけど、人生の中で2ヶ月がこんなに長く感じたのは後にも先にもこの時が最高に長く感じたなぁ。とにかくきつい2ヶ月だった。



あとがき 
 
 そんなわけで、以上が私の発病から入院、退院までの経過です。もう4年も前の話なんで、当時電子手帳にちょこちょこっと書き込んであったのをみて作りました。とりあえず、退院してから現在までたまに調子の悪いときもありますが、毎日エンシュア6缶+低残さ、低脂肪の食事を一回という生活でなんとか再入院せずに済んでいます。そのかわり、2週間に1回、50km離れた病院まで通院していますが・・・。
 因みに、いろいろ話を聞いていると私なんかクローン病の中ではかなり症状が軽い方のようです。なかには食事は一切とれず毎日経管だけで栄養剤をとっている方や何度も手術された方などもいるようです。
 現在、クローン病は日本ではかなり少ない病気で一般の方では名前すら聞いたことのない人がほとんどでしょう。当然私も知りませんでした。しかし、先生のお話では、今あらゆる病気のなかで患者の伸び率が一番多いのがこのクローン病なのだそうです。年間15%ほどずつ伸びていると言うことでした。残念ながら現在はこの病気の原因も治療法も分かっていないので気をつけて下さいと言っても気をつけようが無いのですが、もしこの病気について何も知らない人がこのページを見てちょっとでも「こんな病気があるんだなぁ」と思っていただければ幸いです。
 以上長々とおつきあいありがとうございました。

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