マチュピチュ6日目


5月4日

疲れたのですぐ就寝したのに、夜中に目が覚めました。息が浅くハァハァという感じで、心臓の鼓動もかなり早い。
すわ、高山病か?としばらく深呼吸をしていたのですが、ゾクゾクとした寒気も感じる。顔もなんだか熱い感じ。自分では熱がでているかどうか良くわからないのだが、これは発熱したときの症状に良くにている。
あー、やっちまったか。カナダのオーロラにいったときもそうだったけど、今までの体調不良が過労であることをこのとき自覚。高山病も併発しているようです。
とにかく、なんとかしなければならないので、しばらく様子を見たあと、スーツケースを漁って薬を取り出します。
まず、漢方薬で1丸5000円もするシロモノ。これは、アメリカに長期研修していたときに渡された「ドラゴンボール」こと滋養強壮薬です。五黄というとおっても高価なものがメインになっている奴で、金箔でつつまれているというすさまじいもの。まさか、ここで飲むはめになるとは思わなかったなぁと思いながら服薬。
そのあと、バファリンを飲む。これ、解熱まで入ってたんだ〜、念のために持ってきて本当に良かった!
服薬した後は、ひたすら眠ります。発熱しているので、苦しくて眠れないのですが、とにかく眠る努力をする。

この服薬が良かったのか、かなり症状は軽減。朝食の時間になったのでおきだして、とにかく食べます。食欲は当然ないのですが、食わないとそれだけ体力がなくてやられる!下痢も続いていたので、どれだけ栄養が吸収されているか不安だったのですが、食う量が多ければそれだけ栄養も取れるだろう、と開き直って口にしたいと思ったものだけ取ります。
トーストとベーコンはなんとか少し口にしたのですが、どうもパンチにかける感じだったので、思いついてバナナを食べてみました。これは大正解だった!
スポーツ選手は急いで栄養を取りたいときにバナナを食べるそうですが、エネルギーになるのが食べた瞬間にわかってすごくほっとしました。なんと、下痢も少しおさまってきたのです。バナナは素晴らしい!

前にも書きましたが、わたしは旅行でなくてもストレスや過労でよく発熱や下痢をしてしまうのですが、そういうときにはひどい食欲不振も伴います。栄養を取るべきときに、食べ物がのどを通らず、結局熱によって体力がひたすら奪われていくという悪循環になるのですが、何年か前にその状態でふらふらと職場にいったときに「だまされたと思って食ってみろ!」と強力にすすめられたのが、カレーライスでした。こんな油っぽくて重いもん食えるか!と思ったのですが、これが大正解。
香辛料が食欲をそそってくれて、何日かぶりに完食できたのです。それ以来、わたしの中でカレーは「聖なる食物」だったのですが、今回バナナも仲間入りです。

食堂には、日本人の方もいたので「突然すみません!熱があるみたいなんだけど自分ではわからないので測ってくれませんか?」とお願い。
「そんなに熱くないと思いますよ」と言われて、少しほっとします。
まぁ、なんとか落ち着いたようなので荷造りしてチェックアウト。約束の時間になったのでジミーさんは.....コナイ。
なんだかいやーな予感がして、日程表を確認したら1時間も早かった(泣)。
具合が悪いのにホテルのロビーで待っているのは辛すぎる。慌ててホテルの人に、時間をまちがえてしまったので、時間まで部屋にもどっていいか?と確認。
幸い、大丈夫だったので、そのまま部屋にもどって横になります。しばらくうとうとしてから、時間になったので再びロビーへ。

「体調大丈夫ですか〜?」
「熱でました」(どうやら寝起きで顔色も真っ白だったらしい)
「おなかはどうですか?」
「だめですね」
「.....車の中で、寝ててくださいね」

というわけで、ジミーさんも心配するなか、チチカカ湖に向かって出発です。さらに標高が高くなるのか〜。

今回は専用車といっても、チチカカ湖の町プノまで行く人に便乗して乗せてもらうという感じだったようです。日本にいたときに、「観光バスに乗りますか?専用車にしますか?」と言われて迷わず専用車にしたのですが、観光バスだった場合には10時間かけてゆっくりプノまで行くようですね。わたしたちは専用車で5時間くらいの旅です。
途中いろいろと観光ポイントはあったのですが、車の中ではひたすら寝ていました。

まずは、アンダワイリーヤスの教会を見学。これは小さな町の中にある教会なのですが、静かで美しいです。壁面やひさしの屋根の内側にもびっしり絵が描いてあります。
中央にある祭壇の下には、鏡がたくさん貼ってあるのですが、これは、朝日を反射して教会内を照らすためなのだそうです。だから、ミサは朝早くしかやらないんだそうだ。

ゆっくり堪能した後は、トイレを使わせてもらいに中庭へ。中庭に入ったとたんにシェパードの熱烈歓迎を受けびびりました(だってどう見てもわたしよりもでかい!)が、無事使ってバスにもどります。
ジミーさんが何か買ってるなぁと思ったら、ペットボトルに入ったお茶でした。どうやら、道端でペットボトルを再利用して甘味をつけたお茶を入れているらしい。
「ちょっと飲んだら?」とすすめられたので、少し口にしましたが、露店だというのが気になって(オスカルの教育の賜物(笑))それ以上は飲みませんでした。紅茶だったみたいです。おいしかったのですが、やはり衛生状態は気になってしまいます。

次は、峠の途中のおみやげやさん。アルパカ製品をたくさん売っています。いろいろあるのですが、ほしいなぁというデザインのものはない。安いんですけどね!100%アルパカ製品で1500円くらいですから、ためしに買ってもいいのですが、日本のオフィスでは着ないし、洗うの大変なんだよなー。どうせ毛100%買うなら、グレードが高いものがいい。
中庭にいるリャマなどを眺めて、トイレに行ってからまたバスにもどります。
またジミーさんが何か買ってるな、と思ったらすごい色のスポーツ飲料を渡されました。「あのおばさん(露店の人でしたが)、おなかの調子が悪いならこれがいいと言ってるよ」と手渡されます。そうか、さっきのお茶も本当はわたし用だったんだ。
スポーツ飲料は、一口飲んだ瞬間に体に染み渡るのがわかる感じがしました。どうやら、脱水症状も出ていたらしい。相変わらずトイレが気になるので、少しずつ口に含む感じでしたが、これは大変良かった。
旅先でただミネラルウォーターを飲むだけでは脱水症状になることもあるので、ポカリスエットとか、スポーツ飲料の元を持っていったほうがいいですね。

次はこの旅行で一番の高地ラ・ラヤ峠でトイレ休憩。4335Mです。すげー、富士山よりも高い。3日目なので、標高が高くてもかなり慣れましたが、空気の薄さは感じます。峠には露店があるのですが、平日なのに子供たちがいるのです。
ジミーさんいわく、このへんの子供たちは学校に行っていないだろうとのこと。

※ ペルーの学校事情
ジミーさんの話では、ペルーの就学率はあまり良くなく、20%くらいの人は字が読めないそうです。田舎に行けばいくほどそれは顕著で、貧しいため学校に行かずに働く人が多いとか。
国立の大学は無料なのですが、成績優秀な学生がたくさん集まるので倍率は大変高いらしい。私立の大学は1ヶ月で50万円くらいかかるみたいで、相当の金持ちでなければ行けない。
大学の中でも、旅行ガイドのコースは大変人気があるのでこれまた倍率がすごいらしい。わたしを案内してくれたジミーさんは大学出身のようなので、大変優秀ということになります。
医者の給料は大変安いので、あまりなりたがる人がいないのだそうです。なんだか意外。だから医者は少なくて、病気になると大変だと嘆いていました。
南米の中で、一番就学率が悪いのは隣のボリビアで、次にペルーとエクアドルなんだそうです。チリやアルゼンチンは就学率が高く国も豊かだと話していました。
そうはいっても、ペルーは天然ガスというエネルギー資源があり、アンデスやアマゾンの自然、そして自給自足している人が多かったので、貧しい国という感じはあまり受けませんでした。

峠の頂上から少しいったところで、昼食です。寂れたレストランで、ここでもペルー料理です。あぁ、食べるだけで体力を使う。でも食べないと。
この地方で獲れるというマスを揚げたものを食べたのですが、なかなかおいしいです。でも、量が多いので食べきれない。ジミーさんも残していました。なんでも、ペルーの人は足りないものを出すほうが失礼と感じるようで、残すのは気にしなくてもいいのだ、とのこと。観光客の中で多いのはアメリカ人と日本人、ついでスペイン人だそうですが、アメリカ人にはちょうどいい量のようです。
日本人が食が細いのはみんな知っているので、残しても驚かないだろうとのこと。
食事の後は、トイレを使ってホテルへ急ぎます。

専用車を運転する人は、イレギュラーでわたしを乗せることに同意した人だったようで、二人組だったのですが、すごく飛ばすのです!
たぶん、150km/hくらい出てたと思う。途中で、事故も見ました。あれは、死亡事故だったと思うのですが、バイクと車の正面衝突で、道路に何か転がってる。あえて凝視しなかったのですが、どうやら人間っぽいのです。
ペルーはカトリックの国なので、運転手さんは十字を切り、お守り(マリアさまらしい)に無事を祈っていましたね。

その割りに、スピード落ちねぇんだよ!(半泣)

なんだか急いでるし。一応わたしは客なはずなんだが、運転荒いし!
途中の街フリアカでトイレ休憩のリクエスト聞いてくれないし!

まぁ、そのぶん早く着いたからいいですけどね。どうせほとんど車中は寝ていたので、荒い運転でも怖い思いはあまりしませんでしたし。(こういうところは、わたしって神経太いなぁと思う)

リマにもどってから、NHKでボリビアの事故(ウユニ塩湖で車が事故にあい、炎上して日本人5人が亡くなった)を見てぞっとしましたけどね。
わたしたちも、十分その危険はあったのですから。

ホテルに着いて、少し休んでから今日のメイン、チチカカ湖の観光です。
ここで、チチカカ湖担当のガイドさんが新たに加わります。彼はスペイン語しか話せないので、ジミーさんが通訳。
チチカカ湖は、標高3890Mで、隣のボリビアに接しています。その湖畔の町のプノには、ボリビアからの物資がたくさん入ってくるんだそうです。特に砂糖はボリビアで安く仕入れてペルーで売るんだとか。また、携帯電話もボリビア製はすごく安いみたいで、通話料金がただになると言っていました。確かに、プノの街はわたしの携帯電話が通じない。
今回観光に行くのは、ウロス族という、トトラ葦でできた浮島に住んでいる民族の集落です。
船に乗って、トトラ葦の間を抜けていくと、浮島が見えてきます。


トトラ葦の浮かぶチチカカ湖

島に上陸してみると、なんだか足元がフカフカしています。浮島は、トトラ葦を積み重ねて作っているものだそうで、下の葦が腐ったり減ってくると、上にまた敷き詰めて維持していくんだそうです。厚さは15Mくらいあるみたいです。
ひとつの島は家族と親戚で住んでおり、太陽光発電によって電気もある。
葦につられるのか、細かい虫がたくさんいましたが、葦の乾いた匂いとのんびりとした雰囲気の島です。なんだか、ここだけ時間が止まってしまっている感じ。家族の中で独立する人がいた場合には、島を切り離すのだそうです。なんとも、合理的。
また、集落(集島というか)の中には大きな島を作って学校や教会を作っていることろもあり、ホテルもあります。プノは高地なので朝晩は大変寒いのですが、トトラ葦でできた住居は暖かいんだそうです。
太陽光発電は、フジモリ大統領の時代に整備されたものだそうで、この地域では、フジモリさんは人気があるらしい。
土を運んで島の中に畑を作ったり、家畜を飼ったりしていて、地面が葦になるだけで普通のアンデスの人と暮らしぶりは変わりません。


島の風景

家の中を見せてもらいましたが、家族が雑魚寝しているみたいでなかなか狭い。民族衣装を着せてくれるというので、ちょっと着てみました。結構、あったかい。首に掛けている毛糸の飾りは、既婚未婚で変わるのだそうです。
わたしは、どっちをつけていたんだろう.....。
また、この島には赤ちゃんコンドルを飼っているということでそれも見学。でかいです。ベビーのくせに。
鼻のあたりが、なんだか輪っかになっていてちょいと不気味。おまけに肉食系なので、島で飼っているのにみんな怖がっている。飼い主のお父さんをくちばしで甘噛みしているのを見て、「あ、人に慣れてるから変なちょっかい出さなければ安全だろう」と思って、わたしはひょいひょい近づいていたのですが、ジミーさんはびびっていました。
バサーっと翼を広げると3Mくらいある。でかい(でもまだベビー)。コンドルってでかいんだなぁと感心。

コンドルを見た後は、ジミーさんに「チップ代わりにおみやげ買ってあげると喜ぶよ」と言われたので、おみやげを見ます。そうか、民族衣装は観光用か。
葦でできた船の模型はなかなかきれいな出来です。そして、マチュピチュのお土産やでも気になっていた、ひょうたん?ウリ?に彫刻がほどこしてある楽器を発見。手にとって見ると、レインスティックのような音がする。しかも、やさしい音で一発に気に入りました。小さめのほうが音は好みだったのですが、大きなほうが彫刻がきれいだったので、そっちを購入。

おみやげ購入のあとは、別の島へ移動します。こちらはホテルがある島です。
ホテルといっても、島の住民が住んでいるような葦でできた小屋に泊まるのですが、虫がいそうだなぁ。暖かそうではあるけど。
ここにもおみやげやがあったので、葦船の模型を検討。気に入ったものがあったので、購入します。これは、ふみふみ用です。

のんびりした雰囲気を堪能した後は、船にもどってプノに帰ります。船が通ると、湖に浮いているトトラ葦が波になびいてなんとも幻想的です。ゆっくり観光すると、楽しいんだろうなぁと思う。
港についてから歩いていたら、黒猫に前を横切られた。不吉だ。このときの予感は、後から思うとあたりだったかも。
ペルーに限らず、TOYOTAの文字は良く見かけるのですが、港付近で日本のメーカー名が書いてある車を発見!どうやら社用車だったものが、廃車後ペルーまで流れてきているらしい。

プノの街にもどってから、少しおみやげを探して街を探索しました。
「アルパカ製品がほしい」とジミーさんにリクエストして、いろいろ見てまわったのですが、なかなかない。今思えば、気に入ったものも少しあったので買ってしまえばよかったのですが、「リマにはもっといいものがあるかもしれない」と思って買わないでしまいました。アルパカ100%じゃなくても、きれいなセーターとかあったのに。残念。
街を歩いていると、ジミーさんにガイドしてもらったという日本人の女性に会いました。ホテルも一緒だったので喜んでいたのですが、結局一緒に食事できなかった.....。一緒に街探索すればよかったなぁ。
アルパカ専門の高級店もあったのですが、この日は休みということで見れず。
本当にいいものは簡単に2〜3万円はする代物なので、なかなか手をだしにくかったです。かといってやっすいアルパカ製品は品質がいいのかどうか判断できない。プノのものはイマイチだとジミーさんが言うので、買いにくかったです。

夕飯は、わたしはホテルのレストランだったのですが、ジミーさんの分はついていないということでまた一人でした。
メニューを決めるまではつきあってもらったのですが、スペイン語ではさっぱりわからない。「英語のメニューが後ろにあるよ?」と言われたので、見たのですがこれまたわからない単語がズラリ。ジミーさんにもわからず、必死になって電子辞書で検索していたら、ウェイターさんに「それ、フランス語だよ」と指摘を食らいました。どうりでわからないはずだ!
魚料理と野菜のスープはものすごい量でしたけど、おいしかった。でも早い時間だったのでわたしの周りには誰もおらず、ストーブを一人占めしながらさびしく食べました。
途中で、アメリカ人らしい老夫婦が入ってきて、ストーブがそちらに移動したら、くしゃみ連発。「寒いのか?」と聞かれましたが、これはどうやら花粉症が再発したらしい。疲れるとなるんだよね。というわけで「大丈夫です〜」と答えてモクモクと食事を続け、一人さびしく部屋にもどりました。こういうときに、一人は辛いなと思う。

幸い、下痢もだいぶおさまってきて(どうやら薬とコカ茶、そしてスポーツ飲料がすばらしく効いたらしい)、ちょっと一安心。やはり、過労だったんだなぁと再確認。
もう観光はほとんど終わりなので、のんびりした気分です。
部屋のバスルームには珍しくバスタブがついていたので、喜んでお風呂を入れます。が!お湯の出し方がわからない!
慌てて、ジミーさんに来てもらいます。蛇口が三つあるのですが、どうやらそのうち二つでお湯を調節して、真ん中の蛇口をひねるとシャワーが出るらしい。なんてややこしいんだ!
ようやく、バスタブにお湯を張って(水がビミョウに茶色かったのですが、この際しかたがない!)、ゆっくりとつかると生き返ったような気になります。あぁ、日本人だなぁ。
そういえば、過労でぶったおれた割には、筋肉痛にはならなかったですね。過労で、筋肉に疲労物質がたまらなかったのか?
そのあとシャワーを使ったのですが、水がなかなか落ちてくれない。業をにやして、排水栓をほとんどとっぱらって排水。下のほうで、洪水になってたらどうしようとちょっと気になったけど.....。
お風呂のあとは、さっさと寝ます。明日も早くから出発です。

それにしても、ペルー人ってトイレに凝るんですかねぇ。
トイレットペーパーの折り方が凝っているということは書きましたが、トイレットペーパー自体がなぜか犬模様が多い。峠のレストランのさびれたトイレですら、犬模様。なぜだ。