マチュピチュ4日目


5月2日

日本は2日ですが、14時間の時差があるペルーでは、今日がメーデー。
休みだということで、夜遅くまで騒ぐ人が多く、うるさくて眠れない!なのに今日は3時前に起床して空港に出発です。
食欲なんて当然ありませんが、朝食を食べて空港へ。朝一番の飛行機なのですが、結構人がいます。日本人のツアーは、ペルーまでの飛行機の中で2つほど見かけましたが、そのツアー客はいません。また、個人旅行の日本人も結構みかけていたのですが、この早朝のフライトにはいませんでした。
そんなわけで、クスコまでの短いフライトには、日本人はわたしくらい。まぁ、変に日本人がいるよりはいいけど、あまりにもいないので、ちょっと複雑な気分です。
出発前に空港税というものを支払いましたが、これは初めての経験。今まで、税金払ったことないなぁ。それとも、ツアーで払っていたんですかね?

フライト自体は順調で、無事クスコに到着。ここは、標高3000Mを越す高地です。空気が薄いのは覚悟していたので、あまり息苦しさは感じませんでした。荷物を受け取ってまたビクビクしながら外に出ます。
うわぁ、ここにもいっぱい出迎えの人が!リマよりはずっと治安はいいはずですが、南米ですから油断はできません。
ビクビクとガイドさんを探していたら、ガイドさんのほうで見つけてくれました。
今日のガイドさんは、フェリペさんというらしい。.....またフランスか。スペインの領地だったはずなのになぁ。
このフェリペさん、オスカルと違って生粋のペルー人らしいのですが、小柄でなんとなくわたしの先輩に似ている。
心の中で、
「鼻毛が長い○○さん」
と呼ぶわたし。(だって、鼻毛長いんだもん!)
オスカルも日本語上手でしたが、フェリペさんはさらにお上手です。後からわかったのですが、日本に15年くらい住んでいたそうで。

さて、このフェリペさんに連れられて、早朝5時から観光開始です!
まずは、クスコのアルマス広場に連れて行かれて、カテドラルを見ます。クスコは町全体が世界遺産のアンデスの石組みの街です。カテドラルはリマほど美麗ではないですが、赤土レンガを使った重厚なつくりです。

早朝だったのでミサが行われており、「見てきたら?」と言われたので、少し中に入ってみました。
外国人のわたしが入ると、みんなチラチラこちらを見ています。ごめんよ、観光なの。わたし、仏教だし(爆)。
というわけで、ひととおり見たあとはすぐ外にでます。この日は、何か行事がある日だったらしく、朝早くからマーチングが先導して、マリア様かなにかの像を運んでいました。

車の中に入ると、フェリペさんが朝食を仕入れてきたとかで、「試食してみる?」と差し出されました。露店で買ったものだったようなので少し迷いましたが、現地の食べ物には興味があったので少し試食。
ジャガイモのようなものが、とうもろこしの皮にくるまれて蒸されたもので、中にひき肉が入っていておいしい!
とうもろこしの粉をこねて蒸したものだそうで、後から調べたらタマリスというものだったようです。不思議な食感で、香辛料がきいたひき肉が大変おいしかったです。

さて、カテドラル観光の後は、クスコ近郊の聖なる谷の遺跡めぐりです。
まずは、チンチェーロ遺跡。ここも標高は3000Mを越える高地です。静かな田舎の街で、クスコ同様、インカの石組みが町全体に見られます。石畳の道には真ん中に水路のあともあり、なんとも風情があります。観光客はわたしたちくらいしかおらず、とても静かでした。
車から見る風景もそうですが、人々の服装や顔つきなど、一気にアンデスの民族のものになります。写真で見ていた風景が目の前にあるという感じ。
ゆっくりとのぼった先に広場があり、やはりカテドラルがあります。リマやクスコの教会と違い、古びた感じなのですが、町の人がミサに使っている大事な場所のようです。
周囲はきれいな田園とインカ時代の段々畑が残っていて、大変きれい。クスコ観光もいいですが、この遺跡は静かでおすすめです。

というわけで、きれいな風景にうっとりしていたのはいいのですが、適度な運動をしたせいか、おなかがあやしい。
あわてて、トイレに行きたいと告げます。
一番下までもどらなければならないかと焦ったのですが、幸い小さな博物館が教会の向かいにあり、そこでトイレを使うことができました。助かった!
トイレ休憩のあとは、車に乗って次の観光地へ。

次はモライの農業試験場跡です。
インカは、農業が主流の民族なのですが、この試験場では円形の段々畑にさまざまな農作物を植えていたようです。
高低差があるため、上と下の温度差が大きく、段ごとに違う作物を植えていたとのこと。合理的ですね。
この円形段々畑、結構大きいのですが、観光するのに歩く歩く!合計4つの試験場を見てから、下に下りて上に登って.....上り下りはインカの階段(垂直な石壁にボコボコと石が飛び出しているだけ)を使うのですが、かなーり疲れました。おまけに、やはり標高は3000M。


円形の農業試験場。下には背が高く気温が低くても育つものを、
上には暖かい土地で育つものを植える。

ここから、知らず知らずのうちに、ムリしてたんですよねー。フェリペさんは、もともとトラッキングの案内人が専門なんだそうで、サバイバル専門の人だったのです。なので、連れていってくれる場所がマニアックでなかなかいいのだけど、ツアーと違って「疲れた!」という人や遅れる人を待ったりする時間がなくて、どんどんペースがあがっていくので、ついていくだけで大変でした。今から思えば、ここであんなにムキになって観光しなければ良かったんですけどねぇ(苦笑)

びっしり歩いたあとは、マラスの塩田へGO。朝5時からの観光だったので、まだ10時くらいです。でも、日はだんだんきつくなってきました。高地で空気が薄いので、日光もきつくなります。
マラスの塩田は、プレ・インカの時代から今でも塩を作っています。もともと温泉が出るのですが、塩分が多いその温泉を天日で干すときれいな塩になるのです。
フェリペさんいわく、
「山の向こうの洞窟に住んでいる背の低い民族が塩を作りにやってくる」
のだそうで、その話を聞いたわたしがよほどビミョウな表情をしていたらしく、
「本当!本当!」
と力説していました。
途中で谷の上から塩田の様子を眺めていたら、男の子がなにか鉱物のかけらを売りにきました。物売りは、どこにでもいるのです。でも、鉱物はいらないなぁ。
塩田は、ちょうど塩作りの季節だったので、棚田一面が白い状態で、すごくきれいでした。温泉の水路の脇にもびっしり塩がついているのでなめてみたら、なかなかおいしい。ミネラル豊富そう。


谷間にびっしりと並ぶ塩の棚田

おみやげやでは、塩の固まりで作った像なども売っていてそそられたのですが、湿気の多い日本で長くはもたないかと思い、断念。
フェリペさんが、とうもろこしのスナックの試食をくれました。やはり露店だったので、気になりましたが、揚げてあったのでまぁいいか、と試食。おいしかったです!
アンデスではたくさんのとうもろこしの種類があり、ぎょっとするような模様のものもあります。ジャガイモの原産地で、いもの種類もすごく多いのだそうです。
日本では甘くてやわらかいとうもろこしが好まれますが、アンデスでは固めのものが味があって(かみしめると味が出るという意味らしい)いい、ということです。揚げたとうもろこしも、味があっておいしかった。
また、なんという名前かわからないのですが、日本で買うと高価な果物が100円くらいで売っていたので、フェリペさんにすすめられて購入。ガイドブックに、自分でむいて食べるのは大丈夫って書いてあったし、いいよね。
そのあと、とうもろこしの皮で編んだなべ敷きも購入。フェリペさんは、「見たことない!」と喜んでいましたから、ペルーのおみやげとしては珍しいんでしょうねぇ。(どこでも良く見るような気はしたが)
なべ敷きを買ったら、おみやげに塩をつけてくれました。マラス塩田の塩です。ラッキー!

さて、ここでようやくお昼近くになったので、昼食を食べにウルバンバへ。今日はここに泊まります。それにしても、まだお昼だというのにかなり疲れた。
クスコほどではないですが、ここも標高2800Mくらいある。昨年のブータンのパロが同じくらいで苦しく感じていたのだから、今日の強行軍のほどが知れます。
お昼はビュッフェ方式だったのですが、体力消耗しているうえに、ペルー料理なのであまり食が進まない。フェリペさんが一緒に食べてくれたけど、会ったばかりで、親しく話すほどではないしなぁ。オスカルがインテリっぽい人だったので、いろいろ教えてもらえて話も楽しかったのですが、フェリペさんは山男なのでマイペースだし.....。
というわけで、もくもくと二人で食べてぼーっとします。
このレストランにはビクーニャという動物を飼っていたようなのですが、このビクーニャちゃん、大変高価な毛織物になるようで、マフラーだと数万円は平気でするらしい。うーむ。毛織物はほしいけど、数万円のマフラー。たんすのこやしだな。
100%アルパカのセーターだと、2〜3万円くらいでした。なかなか高い買い物です。

昼食を食べ終わったので、移動する前にトイレに行って出てきたら、なんと飲み物代を支払うのを忘れていた。ウェイトレスさんががっつりフェリペさんをキープしていました。フェリペさん、苦笑い。

さて、午後はオリャンタイタンボの遺跡見学です。今日のハイライトです。
このオリャンタイタンボはかなり大きな遺跡で、要塞の跡らしい。遺跡の向かいの山には、自然の地形を利用して顔が彫られており、神を意味しているんだとか。

インカの遺跡には、必ずといっていいほど、太陽や冬至・夏至といった季節を知るための仕掛け、そしてインカの聖なる動物であるコンドルやピューマ、リャマなどのモチーフが見られます。ピラミッドも、いたるところにある。
このオリャンタイタンボは、夏至の日に山のすきまから朝日が入り込むと、ピラミッド形に開墾された段々畑の真ん中に線が入るように工夫されているのです。すごいというか、神秘的というか。その計算能力に恐れ入ります。遺跡全体やリャマの形に見えるように作られているし、なんともスケールが大きいです。
インカの精巧な石組みもここでは見られます。カミソリすらも入らないびっちりとした石組みは、地震が多いこの地域でも石組みが崩れないようにと、わざと複雑な形で組み合わされ、石と石が密着するようにとピカピカつるつるに研磨したあと、重ねられるのです。すごい技術ととんでもない労力をかけて巨大遺跡が作られたのだと思うと、ロマンですねぇ。


複雑にカットされ、カーブを描く石組み

インカには文字がないので、伝承と遺跡の研究でしか当時を知ることができないのですが、複雑にカットされた石は何かしらの数学的な計算ができないと不可能な技術なのだそうで、高い知識をもっていたことが伺えるそうです。頂上の広場には巨大な石組みがあるのですが、これも謎だそうです。太陽の神殿のつくりかけだとか、儀式の場なのだとか.....すべてに意味があるインカ文明の遺跡ですから、何かあるんでしょうけど。この巨大な石をどうやってもってきたのか、それはまだ良くわかっていないのだそうです。

それにしてもフェリペさん歩く歩く!登る登る!とにかく急斜面に作られた遺跡なので、観光するだけできっついです。
でも素晴らしい石組みや興味深い遺跡につられてどんどん歩いてしまいます。あぁ、個人旅行だと歯止めがきかない。角が丸くカーブをえがいて加工されているのなんて、本当、どうやったんでしょう!今の技術だって難しいのに。
入り口は台形に作られていて、地震がきてもすぐには崩れないように工夫されていたのだそうです。
予想以上のインカ文明の奥深さに脱帽、という感じです。

ぐるりと回って下に下りてきたら、広場のほうで叫び声が聞こえます。はっとしてみたら、なんと竜巻ができていました。生たつまき、初めて見た!
途中で道端にハーブがたくさん生えているようで、いろいろと教えてもらいました。みんないい匂いです。

さて〜、ハードな遺跡観光が終わって、さぁホテルだと思ったら、「モルモット見にいかない?」とフェリペさん。
ペルーでは、モルモットを丸焼きにする料理があります。なので、ペットじゃなくて家畜なんですね。たぶん、日本人の反応がいい(キャーとか言うんでしょう)ので、連れていきたかったんですね。
まぁ、動物を見るのは好きなので、OK出してGO。
モルモットは.....巨大でした。小さいのもいるんですけどね。物置小屋のようなところに、枯れ草が置いてあって、なんだかもぞもぞ動いているものがいる。それがモルモット。でかいのは、うさぎくらいあります。ううむ、40〜50匹はいるぞ。
「逃げないの、これで?」(ちょっとした段があるだけの仕組みなので、いかにも逃げそう)
「逃げないよ」
「これ、食べるために飼ってるんだよね」
「もちろん」
「食べるのか。.....かわいいのに」
「んー、牛も羊もみんな可愛い」
「んー。日本では、これペットなんだよ。」
「こんなに大きいのはいる?」
「ペットショップで、大きいのも見たことあるよ」
「え?いるの?」(びっくりするフェリペさん)
「うん、見たことある」(本当です。でかいのを売ってました)
と、ふたりでぼーっとモルモットを見ながら会話します。

その後、とうもろこしで作ったお酒というのをすすめられたのですが、ただでさえ体調まずいのにアルコールはまずいだろうを固辞。フェリペさん、残念そう。ごめんね〜、ふみふみだったら絶対飲んだと思うけど、わたしはだめなのよ!
この場所は、観光客用にモルモットなどを見せている場所だったようで、わたしのほかにアメリカ人っぽい人がコインを投げる遊びをしていました。

さて、今日の観光はこれで終わり。ホテルに向かいます。リマのホテルと同じ系列ですが、広々した感じです。
ここでフェリペさんとはお別れ。なんでも、明日からのガイドさんが夜には到着するとのこと。フェリペさんは、臨時だったんですね。
握手をして別れた後は、そうそう部屋でゆっくりします。部屋は清潔で静かでよかったんだけど、なぜか大きなハエが4〜5匹いた.....。
ハエを追い出すために窓をあけながら、途中で買った果物を試食。指で簡単にむけたのでもしゃもしゃと食べます。甘くておいしかった!日本だと5000円くらいするよ〜と言われたので、後で果物やさんで値段見てみよう。
少しお昼寝したあと、夕飯です。
ホテルでの夕食はビュッフェだったのですが、予約しているといったらコースか?ビュッフェか?と問われて大混乱。
お互い、英語がうまく伝わらずに苦労しましたが、最終的にホテルのバウチャーに入ってるよ、と説明して双方納得できました。疲れた。
夕食もペルー料理だったので、やはり食欲が出ず.....まずいなぁとは思うのですが、一人だといさめる人もいないので、どうしても食べられない。
水を購入してから部屋に帰ろうとしたら、新しいガイドさんが待ち構えていました。今度のガイドさんはジミーさんです。ジミーさんも生粋のペルー人で、クスコに住んでいるらしい。現地のケチュア語とスペイン語、英語と日本語を話すガイドさんです。すげぇ。
明日はいよいよマチュピチュ。昼間はお湯が出なくて心配したけど、夜は無事お湯が出たので、暑いシャワーを浴びて汚れをとってすぐ就寝。