ブータン6日目


5月3日

犬は相変わらず鳴いていましたが、こっちも耳栓でバッチリガード。パロのホテルは、町から少し離れた山の上にあるので、集団ですぐ近くを通るということもなく、きちんと眠ることができました。

今日は、いよいよタクツァン僧院です。これのためにブータンに来たといってもいい!
標高3000Mを越える場所までの登山になりますが、そろそろ息苦しさにも慣れてきました。朝食を食べた後、さっそく山に向かいます。
標高2400Mの駐車場までバスで行ってから、いよいよ登山です。でも、その前にトイレトイレ。
青空トイレかな、と思ったらひゅートイレがありました。残念ながら、落ちていく先は河でも谷でもなく、ゴミ溜めでしたけど。(^^;
でも、ひゅーっとかなりの距離を落ちていくのが見えるので、なかなかおもしろい。変に楽しみながら用を足してしまいました。

さて、トイレの後は登山開始です。展望台までは1時間半、そこからさらに1時間登るという行程です。
始めは随分ゆっくりな歩調だなぁと思っていたのですが、これが甘かった!
実は早かったのです。登山のときには、じれったいくらいの速度で歩かないと息が切れてしまう。10分も歩くと、ぜいぜいと呼吸が苦しくなってきました。列の前のほうにいたのに、どんどん追い越されていく。
40分くらいたったときに一休みしたのですが、その時点でかなりヘトヘトです。
「もしかしたら、ペース早くないですか?」
「早いよ、これ!」
あぁ、やっぱり。(泣)
でも、みなさん元気に登っていく。わたしたちよりも年齢上だと思うんだけど、なぜにみなさん健脚なんですかー!?
というわけで、やはりブータンに来ようという人たちは只者ではなかった。健脚&タフ。
展望台までの後半は、ゲンボさんを先頭に歩く健脚組と、ご高齢の参加者(70代後半。十分すごい!)と、ばてたわたしたち他2人のゆっくり組に分かれて登ります。かなり引き離されてしまったので、最後のほうは開き直って、景色を眺めながら登りました。

展望台についてみると、すばらしいタクツァン僧院の眺めが!あああ、頑張って登ってよかった!(まだ半分だけど)
展望台は標高2800M、タクツァン僧院が良く見えます。トイレに行って飲み物を飲んで、また出発です。

 
断崖にへばりついているように建てられたタクツァン僧院

ところで、この登山の道中、隣に犬がついてくるんです。どうやら、お菓子などもらえると思っているらしい。でもこっちは構っている余裕はないよ!

ホコリっぽいし、傾斜はきついし、すべりやすいし、馬糞多いし。
この馬糞、どうやら乗馬して登山するときに、馬が落としていくものらしい。ううう、よけるの大変なんだよ!
ひざは大笑いです。だんだん近づいてきてうれしいんだけど、最後に気が遠くなりそうな階段も見えてきました。
いったんかなり下まで階段で降りてから、一気に上るのです。

へろへろへろと下まで降りてみると、一番降りきった部分に水で動くマニ車がありました。山の上から細い滝が落ちてきていて、その水を利用しているのです。なんとも風情があります。
タクツァン僧院よりも上の断崖にまで、ルンタが張り付いています。どうやって寺を建てたんだろう、というくらいに断崖の上に建物があるのもすごいですが、そのさらに上にどうやって登ったんだ?
さて、これからは登りです。健脚組はうえから「頑張れ〜」と励ましてくれますが、ゆっくり組はぜーはーぜーはー。
ようやくたどり着いたときには、拍手までしてもらいました(笑)。

少し休んだ後は、いよいよ僧院の中に入ります。
タクツァンは「トラの巣」という意味だそうで、ブータンに仏教を広めたパドマサンバヴァがトラに乗ってここまでやってきて、瞑想したとされているらしいですね。このパドマサンバヴァさん、八変化相というから8つの姿に変化しているらしい。ううう、ややこしい。ここにいる姿はトラに乗ってます。
僧院の中にはパドマサンバヴァの洞窟(瞑想した場所らしい)、グルスンジェンの仏間、仏舎利塔と3ヶ所拝む場所があり、それぞれで「五体投地」をして、お祈りします。ゲンボさんのお祈り具合もかな熱心です。そりゃそうですよね、ブータンだけではなく仏教の聖地として有名な場所。ブータン人は、ここに来たら後はいつ死んでもいいとまで思うそうです。ありがたや。
中では、お守りも売っていたので、家族全員分を買いました。もちろん、パドマサンバヴァで!(いろいろ種類があるんです)
お祈りが終わったあとは、外にでてすばらしい景色を少し堪能。でも、時間がないので、サクサク下山開始です。途中で、山道に落ちていたタクツァンの雲母石を拾います。これは、母へのおみやげです。

下山も苦しかった!まずはせまい階段をひたすら登らなくてはならない。もうこの時点でヘロヘロです。健脚組は、ドンドン行ってしまう.....。

途中、乗馬して登山しているグループに会いました。子供がぎゃんぎゃん泣いてましたが(^^;
この馬たちが馬糞を落としていくのか.....。

帰りのゆっくり組は、わたしたち他1名と、添乗員さんだけです。添乗員さんがジグザグに歩いているので、真似してみたらかなり楽に歩けることがわかりました。足に余計な負担がかからないのです。
展望台まで戻ったら、そこで昼食です。みんなホコリまみれで汗だく。ドロドロの状態でしたが、タクツァンまで登ったという満足感でいっぱいです。
わたしたちのほかにも、日本からのツアー客が2グループいたのですが、1つのグループはもうすっかり日が高くなった時間帯なのにこれからタクツァンまで登るらしい。うわぁ.....朝早くから登山したわたしたちでさえ、脱水気味なのに、これからなんて地獄だぞ(汗)
もう1つのグループでは、途中で捻挫した人がいるみたいで、足がとても痛そうでした。
わたしたちのツアーは本当に恵まれていたんだなぁと思います。旅行会社さんの方針で涼しいうちにスタートしたし、怪我もなかった。一人も脱落しませんでしたしね。

後半も、ジグザグジグザグと歩いていたら、それでも足腰がもたなくてステンと転んでしまいました。

げ、そこに乾燥馬糞が!

.....幸い、手をついた場所だけでしたけど。乾燥していて良かった.....!(せめてもの救い)
生みたてホヤホヤだったら、目も当てられません。

その後は、ゆっくり歩きます。添乗員さんは、途中山に捨てられたゴミを拾っていました。なんとなくわたしたちも真似をしていたら、これが結構夢中になるのです。
結局、健脚組よりもかなり遅れて下山しました。

もうこの日はタクツァンだけで満足してしまって、あと2つほど観光したのですが、おまけという感じでした。
まずは、国立博物館です。これは、タ・ゾンという名前で、もともとはゾンの見張り台のような役目だったようです。中には、タンカ(仏画)や切手、チベット仏教4大宗派の集会樹などが展示されています。もともとがゾンなので、薄暗くて涼しい。
みんな疲れているので、ゆっくり見学します。
ゾンの外にはエニシダが黄色の花をつけていてきれいでした。なんだか見たことあるなぁと思ったら、タヒチ(イースター島?)にたくさんあった、あの黄色の花のようです。家畜が食べるとだめだったはずなので、ブータンで増えないといいですが。

最後の観光は、パロ・ゾンです。映画「リトル・ブッダ」の舞台にもなった場所らしいですね。ここには、300人ほどのお坊さんが住んでいます。

最後なので、みんなゆっくり見学します。門の中に、六道輪廻図という壁画があるのですが(これはどこでも結構みかけます)、ゲンボさんが意味についてかなり詳しく説明してくれました。

天国、地獄という日本でもおなじみのものから、人間界、畜生界、餓鬼の世界、修羅の世界など、なじみの薄い表現もある。どうやら、この6つの業をグルグル回っているらしい。天国は一見するといいんですが、楽しい楽しいと何もしないので、次には地獄に行っちゃうんだとか。あらら、という感じ。そういうふうに見るんですね。
この輪廻から解脱できるチャンスが一番高いのが人間なんだそうです。畜生界は次には人間になれるんだとか。へぇ。
人間のうちに、徳をつむと解脱して仏様の世界にいけるということらしい。
日本の仏教の考え方とかなり違っていて興味深かったです。
帰り際に通った中庭では、雑草とりをしている人たちも見ました。

いつもどおり、中を見学し、最後の「五体投地」をしてから外に出て、やはり映画「リトル・ブッダ」の撮影に使われた木の橋を渡ります。

VTRを撮影しながら歩いていたら、後ろから子供たちに覗き込まれました。ちょうど、下校途中の子供たちを撮っていたので、たぶん「写ってるぞ!」とでも言っているのでしょう、子供同士でやりとりしています。なんとも無邪気です。


子供たちはカメラはわかるらしく、写そうとすると意識する(笑)。

ホテルに帰る前に、パロの町で最後の買い物です。
ひととおり見ましたが、ティンプーほど大きくはないので品揃えもいまいち。ふみふみは、ブータン製のお茶を探していたのですが、なかなかありません。
食料品を売っていそうな店に入って英語で話しかけたら、おじいさんが慌てています。どうやら、英語が話せないらしい。
孫らしい小さな子を指差すので、その子に話しかけると、英語がきちんと通じました。教育のたまものですねぇ。
残念ながらそこにもなくて、どうせないだろうとあまり期待せずに入ったスーパーで、ハーブティー発見!ブータン製だ! 大喜びでレジに持って行きます。「ブータン製のフレグランスもあるよ」と言われたのですが、重いものはいらなかったので、お茶だけGET。あぁ、すっきりした!

ホテルに戻ってから、グループに分かれてドツォの体験入浴です。これは、焼けた石を水の中に入れてお湯を沸かすブータン式のお風呂のことです。この日は足がかなり疲れていたので、お湯につかれるのはありがたい。

ドツォは、結構熱かったです。グループできゃっきゃとはしゃぎながら入ります。と、突然「もう少し熱くするか?」と男の人の声が!
みんなびっくりして、「ちょうどいいよ!」と慌てて答えます。これ、後でわかったのですが、サービスで石を入れてくれるものだったのです。それがわかっていたら入れてって頼んだのに!
でも、みんな満足して入浴を終え、ブータンで最後の晩餐です。
ブータンの現地ツアー会社(ゲンボさんとコタさんは社員)の社長さんが顔を出して、ツアー客みんなに飲み物をごちそうしてくれました。やるな!
本当にこのツアーはサービスが良くて、みんな大満足でした。みんなでワイワイと夕食を楽しんだ後は、ベランダでパロの夜景を楽しみます。パロ・ゾンとタ・ゾンをライトアップしているのです。

その後部屋に帰って、またちょっと苦労してシャワーを浴びて、就寝。
明日は、とうとうブータンを離れます。