11-5-1 ピアノについて
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写真11-5-1 グランドピアノ |
その後イタリアのクリストフォリという人が1698年に打弦式という現在のピアノ・メカニズムを発明し、「クラビチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」(弱い音も強い音も出せるチェンバロ)という名前を付けた。これを大幅に省略したのが現在の「ピアノ」という名称だ。だから、音楽記号で弱音を表す「ピアノ」のほうが先にあった名前なのだよ。その後数々の改良を受けて現在に至る訳なんだけど、鍵盤数が現在の標準の88鍵になったのは第一次世界大戦後と比較的最近だ。
この伝統的な流れにのっとって作られているピアノの事を「グランドピアノ」といい、その中でも大きくしっかり作られた物(簡単に言えば高い物)を「コンサートグランド」という。また主に家庭用として親しまれている縦型の箱形ピアノは「アップライトピアノ」とか「トラックピアノ」と呼ばれている。 メーカで有名なのは国産では「ヤマハ」と「カワイ」。その他だいぶ廃業してしまったけど、浜松にはピアノメーカが点在していて、中でも「ディアパーソン」(現在はカワイの傘下)は有名。
外国産ではやはり「スタンウェイ」が有名。(ドイツハンブルグ製とアメリカニューヨーク製がある)だいたい中規模の公共ホールには、「ヤマハ」と「スタンウェイ」のグランドピアノが1台づつおいてあることが多い。(使用料はスタンウェイの方が倍くらいする)近年は朗々と鳴るタイプのピアノが好まれることもあって、高級ピアノの代名詞になっている。
以前は「ベヒシュタイン」(ドイツ製)のレスポンスのよい音が主流だった。今ではビンテージ扱いのピアノと言っていいだろう。その他では「ベーゼンドルファー」(オーストリア製・現在はアメリカのキンボール社の傘下。97鍵のお化けピアノ「インペリアル」を作っている。)や「ブルーツナー」(ドイツ製・中高音でさらにもう1弦共鳴用に弦が張ってあるアリコットシステムで有名。共産圏系(笑))などがブランド品だろう。
11-5-2 ピアノのペダル
(グランド)ピアノには3つのペダルが付いていて、ピアノの演奏と深く関わっているので、ざっとふれておこう。
向かって一番右側に付いているペダル。ダンパというのは通常弦を押さえ込んでいる物で、これが解放されることによって、弦が自由に響くようになる。一番の効果は、弾いた音がずっと残ることだけど、このペダルを踏むとすべての弦のダンパが解放されるので、打鍵によって全ての弦が共振して倍音が鮮明に聞こえるようになり、音全体に響きが増して音量も大きくなる。
真ん中にあるペダル。グランドピアノにしかないペダルで、しかもめったに使わないペダルなので、ピアニスト以外にはなじみがないと思う。(たとえキーボード奏者でも)このペダルはダンパペダルとは違って、特定の音のみ指を離しても残るようにしたもの。残したい音を弾いた後、指をはなす前にこのペダルを使うわけだな。
左側に付いているペダル。大ざっぱには「音を弱くするペダル」と考えていい。(実際アップライトピアノは、ハンマがペダルを踏むことによって少し弦の方に引き寄せられ、同じように打鍵しても音が弱くなるという構造か、フェルトを弦に押し当てる構造になっている。)グランドピアノの場合正確には鍵盤ごとアクションを動かして、ハンマのフェルトのやわらい部分が弦に当たるようにするペダルだ。これによって「柔らかい音色」を出すという意味合いになるわけだな。
11-5-3 調律
鍵盤楽器とか打鍵楽器とは言われても、ピアノには弦が張ってある以上、弦楽器と同じくチューニングをする必要がある。ピアノの場合はこの作業を調律という言い方をする。調律にはピッチと呼ばれる周波数があって、「A」の音の周波数をとって「ピッチは442Hz(よんよんに)」という言い方をする。「ピッチは?」と聞かれて「え?DDIですけど・・」とかいうボケはかまさないように。一般に弦楽器はこのピッチが高いほど弦のテンション(張力)が高くなり、張りと音量のある音になるので、ピアノソロの場合やオーケストラのピッチは最近高めが好まれる傾向にある。(といってもA=444Hzより上には余りしない)逆に電子楽器やバンドものの楽器は、キリの良さからかA=440Hzが一般的。
今は性能のよいチューナがでているので、それにあわせれば誰でも調律が出来るのかというとそうでなく、やはりそこは職人芸の域の事柄もたくさんあるわけだ。一番機械で割り切れないところは、「聴感」で合わせていくと、高域や低域になるに従って、音程がだんだん広がって行く傾向になるんだな。その他うなりをとったり、ほかの弦との「鳴り」を調節したりと、よく聞くと私のような素人でも調律師の腕の違いはわかる。
その他、一般に「調律」と呼ばれている作業のほかにも、タッチのばらつきを直す「整調」や、音質のばらつきを直す「整音」や、ピアノ全体の鳴り方をコントロールする「発音」などの作業もある。あ、直接関係ないけど、グランドピアノの3本の足に付いているキャスターは、通常ピアノが置かれているところの木目に沿うような方向に向ける。こうする事によって床をも反響版の一部として使用してしまおうという発想だな。まあでもこれはクラシックの様にピアノの生音を非常に重視する場合での話なので、普通はあまり気にする事はない。(仕事をするときなんかに、相手になめられないように、「俺は経験豊富なんだぞ」というはったりをかます時には使える)
11-5-4 電気ピアノ
通常エレクトリックピアノ、略して「エレピ」と呼ばれることが多いんだけど、分類的にここではあえて「電気ピアノ」と「電子ピアノ」に分けよう。
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写真11-5-2 Fender Rhodes |
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図11-5-1 トーンバー |
ローズには大きく分けて、「ステージピアノ」と「スーツケースピアノ」があり、違いを簡単に言えば、ステージピアノにスタンド兼アンプを付け加えたものがスーツケースだ。(写真11-5-2はスーツケースピアノ)で、いわゆる「ローズの音」というのはスーツケースピアノでないと出しにくい。その理由は専用アンプとスピーカによる音質変化(単に周波数特性が悪くて歪んでいるだけなんだけどね)と、トレモロ回路によるところが多い。
トレモロとは周期的な音量変化のエフェクトなんだけど、これが見事にローズの音に「はまった」わけだ。スーツケースのアンプはステレオ仕様になっていて、このトレモロで音が左右に揺れるので、弾いていてすごく気持ちがよい。ただし、内蔵されているトレモロのモジュレータが矩形波なので、「右」「左」を繰り返すだけで、右からなめらかに左に音像が移動するわけではない。よってライン録音をするときにはバカ正直に右左にパンを振ると、気持ちの悪い録音になってしまう。かといってパンを余り狭めずに使うと今度はトレモロの効果が無くなるので、ローズのトレモロを活かしたい時には、マイク録音をすることをおすすめする。ローズのトレモロの気持ちよさは、(2つのスピーカから)交互にでた音が空間上で混ざった音を聞いているからに他ならない。
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写真11-5-3 ウイリッツァー |
ステージではアコースティックピアノの代用品として使われていたCP-70だが、レコーディングではその歯切れのいい音で、新しい楽器として認識されて使われていた。でもまあ、アコースティックピアノが問題なく使えるレコーディングの世界では、中途半端な存在ではあったので、ステージのように大ヒットはしなかった。
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写真11-5-4 CP-60M |
11-5-5 電子ピアノ
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写真11-5-5 RD-1000 |
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写真11-5-5 クラビノーバ |