11-3-1 エレクトリックベースについて
![]() プレシジョンベース |
![]() ジャズベース |
写真11-3-1 フェンダー社のベース |
それに対してエレクトリックベースには様々なものがあるんだけど、大元になるのは、エレクトリックギターの時と同じく、フェンダーが1951年に発表したプレシジョンベースだ。(その後1957年に大幅なモデルチェンジをして現在の形に落ちついている。)なんせそれまでベースの音を大きく出すのには、アコースティックベースにピックアップを付けるしか方法がなかった訳なんだけど、元々アコースティックベースには、弦の振動を増幅するための共鳴胴があるわけだから、ちょっと音量を上げるとすぐハウリングを起こしてしまうわけだ。ところがこのプレシジョンベースは、ソリッドギターと同じ構造をしているので、ハウリングマージンは比べものにならないくらい大きい(ハウリングしにくい)ので、より大きな音量を出すことが出来た訳だな。
それ以外の点で画期的だったのは、「ベースにフレットが付いている」ということだ。これによりベースという楽器が、簡単に正確な音程を出すことが出来る、つまり取っつきやすい(演奏しやすい)楽器に大変身をしたわけだ。プレシジョンとは「正確な」という意味で、プレシジョンベースとは「どんな人でも正確に音程が出せるベース」という意味なのだ。さらにフレットが付くことによって弦のサスティンが長くなると言うメリットも見逃せない。
現在では余り使っている人はいないけど、地味に人気はある。そうそうセックスピストルズの故シドヴィシャスの影響かパンクバンドのベースは大体プレシジョンベースを持ってるな。上手いプレーヤが指弾きするとものすごく味のある音がするが、下手が指弾きすると最悪。ピック弾きすると結構だれでもそこそこの音が出せる。
その後フェンダーはもう一つの大ヒット作を1959年に発表する。それがジャズベースで、現在のエレクトリックベースはこのベースの改良型と思って間違いがない。2つのピックアップによるサウンドバリエーションの広さも大きな魅力だったんだけど、2つのピックアップを両方ともボリューム全開にしたときの、適当な太さと堅さを備えた音質と、そのノイズの少ない音は、レコーディングにおけるベースの音のスタンダードとなった。
ギブソンもエレクトリックベースには比較的力を入れていたんだけど、そのほとんどがギターをベースにしただけというもので、(レスポールベース、SGベース、ファイアーバードベースなど)ピックアップもハムバッキングタイプだった。ギターの場合は「音が太い」というようなメリットの目立ったハムバッキングも、ベースの場合は「ぼわぼわして芯のない」という評価を受けてしまい、「そのぼわぼわが、いいんじゃん」という変わり者のマニア以外に余り使う人はいないな。その後時代の徒花的に、色々なものが登場したけど、(リッパーベースとか)決定的な評価を受けるまでには至っていない。
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写真11-3-2 リッケンバッカー#4003 |
11-3-2 アクティブサーキット
ギターでは余りよい評価を受けなかったアクティブサーキットも、ベースでは市民権を得ている。アクティブサーキットを内蔵したベースをアクティブタイプのベースと呼び、従来のものをパッシブタイプのベースといっている。アクティブサーキットとは、トランジスタやICなどの「能動素子」を使っている回路のことで、その能動素子を使うために必ずベースに電源が必要になる。(ほとんどの場合は電池を内蔵する)アクティブタイプのベースはピックアップの信号をプリアンプで受けて、ある程度ローインピーダンス化して出力するので、芯のある音が出やすくエフェクターののりもいい。またイコライザでは、低音を強調して出力したりすることもできるので、割とプレーヤによる音作りがしやすい。(パッシブタイプのイコライザは、高域を削ることしかできない)
ただこれも善し悪しで、たまにとても迷惑な音作りをされて(例えば極端に低音が強調されていて、歪んでいるとか)音響屋が困ることもある。それでなくてもアクティブタイプのベースは出力がでかいので、エフェクターやD.Iをつなぐ場合は、ベースの出力で歪まないように気を付けなければいけない。(よく使われるカントリーマンのD.I.#85では、アクティブタイプのベースを受けるのにはつらいことが多い。(PAなどの現場ではほかのパッシブベースと音量を合わせるために、ベース本体のボリュームを少し下げてもらうとかしなければならないこともある。)またベースアンプによっては、パッシブ・アクティブそれぞれ専用の入力があるものもある。
11-3-3 ベースアンプ
ベースアンプはギターアンプと違って、クセがないほうが一般的に好まれるので、大スタンダードなアンプは生まれにくい。またベースの音を歪ませることはギターほど一般的ではないことと、とにかく大出力のアンプでないと低域を十分に再生できないという理由から、真空管式のアンプは少数派だ。