7-7-1 私論
これ以降の解説は、私がロック系のバンドものを録音するときの方法論なので、あくまで参考にとどめるように。但し初心者の人は、一度私の方法を模倣することをすすめするぞ。(えらそうだが)ライブ感のある音・ラフな音作り・シンプルな録音等は、最初は目指ないほうがいい。音楽的にどうこうは置いておいて、技術的にはこれらの録音は、比較的それらしいのが容易に録れてしまうからだ。(もちろん極めれば難しいのはいうまでもない)最近は、流行の音楽がそれを求めないこともあって、きれいな音作りが「悪者」扱いされ易い風潮があるけど、とりあえずきれいな音作りが出来てから、ワイルドで荒削りな音作りに挑戦するようにしたほうが絶対にいい。
で、このレベルをクリア出来たなら、今度は技術偏重になっていないか常に気を付けよう。一部のオーディオマニア以外にとっては録音技術は、音楽という「目的」を果たすための「手段」でしかないのだ。音響技術は音楽をもり立てるための脇役に徹する事。(ま、最近は音響屋さんの立場は弱いので、言わなくてもそうなることが多けどねえ・・・(^_^;)
7-7-2 調整
ミックスダウンの時に一番重要なのが「音の大きさ」のコントロールなのだが、これには「音量」「音質」「定位」という3つの要素が絡んでくる。
基本的には「感覚」を頼りにするしかないんだけど、馴れないうちはどうしても「全てが大きい」ミックスを作ってしまいがち。「才能」か「経験」しか特効薬はないのだけれど、一言だけ言うなら、引き算のミックスが出来るようになれという事かな?
つまり、馴れないうちはこういうことをしがちなのだ。
この場合最初にボーカルを少し下げればよかった訳なのだが、なかなかそれに気付きにくいのが初心者というもの。何が小さいを聞き分けるのは簡単だけど、たくさんの音の中から「何が大きい」というのを聞き分けるのは結構難しい。
それぞれの音源の音作りの所で、イコライジングはしているんだけど、音源単体で聞いたときと、全体を混ぜたときではイメージが違うのが普通。音響心理学で5kHz近辺の音を3dBブーストすると、音量感が2倍になったのとほぼ同等な結果が得られるというのもあるくらいで、2kHzから8kHz辺りの周波数帯域は、音量感にかなり影響してくる所なので、慎重に決めていきたいところだ。(昔のドーナツ盤はS/Nの悪さをカバーするために、5kHz近辺をブーストして録音していた。)
また混ぜて聞こえないような周波数帯域は、思い切ってカットするのがクリアに仕上げるコツだ。特に低域は、音の濁りにつながりやすいので、ばしばし切ってしまう。(もちろん程度問題だが)
あえてモノラルミックスをするのでなければ、ステレオ録音を基本としてミックスダウンをする。この時に重要なポイントが定位だ。ちょっと注意して聞いてみれば分かるけど、最近の録音って低音楽器が必ず中央にあるでしょ?これには3つの意味があるのだ。
逆に言えば低音楽器のキックとベース以外は、左の端から右の端までどの様な場所においてもOKということ。
基本的な考え方は、
という2点だ。
以上のことをふまえれば、例えばギターがボーカルの邪魔をしているように感じた時は、
という「音量」「音質」「定位」の3つ、もしくはその組合せによるアプローチが考えられると言うわけだな。
7-7-3 ドラムの調整
各音源の音作りが終わったら、ドラム・パーカション関係の定位(パンニング)と、バランスを取ってみよう。定位はよっぽど特殊な効果をねらわん限りは、キックとスネアは中央にして、あとのものは中央以外のところにしとなさい。中央に定位していいのは、キックとスネアとベースとボーカルとソロ楽器だけ。
ドラムの他の音源の定位の決め方が今一つ判らない時は、タムは低い方から左から右に、ハイハットは少し右にというように、正面からみたドラムセットのならびと同じように振ればいい。
タムは、定位的に結構「遊べる」ので、エンジニアや曲想によって、見た目のならびとは異なる定位のさせ方をする事もある。
図7-7-1 タムの定位 |
1と2は右利きのドラマーのドラムセットを、客席側から見たときのならび順にするオーソドックスな方法だ。1の方法は実際のドラムセットの定位からはかけ離れた(横幅10メートルくらいのドラム)になってしまうけど、ステレオの音場を左右に使い切るということで、ポピュラー系の音楽では一般的だ。2の方法は少しおとなしめに定位を振り、自然な定位に近づけたものだ。
3は1を全く逆にしたパターン。(右利きのセットの)ドラムをプレーヤ側から見たならび順と一緒だ。どちらかと言えば(多数派の)右利きの人は、左よりも右に重い(低い)音が来た方が快適だという事を考えると、この定位も悪くない。
4はどの様な順番でタムをたたいても、それなりに定位が動くようにしたもの。タムは常に高い方から順番に叩かれるとは限らないので、タムを多用するドラマーなどにはこの方法も面白い。
5は一番低い音のタムは中央にして、その他を均等に振ったパターンだ。一番口径の大きい(低い音の)タムは低音を多く含むので、あまり定位を左右に寄せると全体が不安定になってしまうという考え方だな。
もちろん別にタムの定位には決まりはないし、またタムの数が少ない場合や多い場合もあるので、色々試してみて気に入ったところにすればいい。
定位が決まったらタムの音を出して、タムだけのバランスを取る。VCAグループが組めるミキサであればこの時点でタムミックスグループを作っておく。タムにゲートリバーブを使いたい場合は、タム用のゲートリバーブを用意するけど、リバーブがあまりないのと、最近あんまり流行らんという理由から、タムのゲートリバーブはパスすることが多いな。タムの音量はキックとスネアに比べて、あおったり小さくしたりと、曲中で操作することが多いので、最初にシビアに決める必要はないけれど、基本的には聴感上スネアと同じくらいか少し小さめでいいだろう。
タムのバランスが取れたら、とりあえずタムの音が入っているチャンネルのスイッチを全て消し、キックだけの音を出す。(定位は中央)それから2MIXのVUメータが−5VU程度になるようにキックのフェーダーを調整し、そのキックの音が程良く聞こえるくらいにモニターの音量を調整する。(このレベルは基本的にミックスダウンが完了するまで変えない。聴感上で「さっきより大きい」とか判断できるからだ。)で、コンプレッサやイコライザーで音作りをしてあったとしても、このままでは音像が点になってしまって面白くないので、アーリーリフレクションで(場合によっては専用のゲートエコー、リバーブタイムの短めのリバーブなどを使って)音像を広げて迫力を出す。アーリーリフレクションはだんだんかけていって、「少し違和感があるかな」という程度にしておけばよい。(結構混ざってしまえば、気にならないことが多いからだ。)またジャズなどの音楽の場合は、アーリーリフレクションなどはかけないほうがいい。これはキックの音が、全体の中でさほど重要な位置を占めないからで、ミックスダウンの基準の音も、ベースにしてミックスを始めた方がやりやすい。私の場合はさらに気が向いたら、キックにもエキサイタをかけることがある。
次にそのキックの音に合わせて、スネアを聴感上同じくらいのレベルまで上げる。リバーブ系のエフェクトもここで大まかにかけてしまおう。今風の音にするためにはゲートリバーブが必需品。といっても、ぱっと聞いただけでは、ゲートリバーブと判らない程度にかけるのが今風だ。このゲートリバーブはスネア専用にして、スネアにエフェクトがかかっているというよりも、スネアの音の一部分のような感覚で使うのがコツだ。この時点では「少しかけすぎかな」と思うぐらいで丁度いい。
次にオーバートップを録音してある場合は、音作りをすませたオーバートップの音を混ぜる。バランスや定位はオーバートップの音をシンバル用として使うのか、全体のオフマイクとして使うのかによって変わってくるけど、シンバル用として考える時にはクラッシュシンバルを叩いた時に、聴感上スネアと同じくらいの大きさかやや小さめの音量にしておく。定位はLRの場合振り切らずに少し定位を狭めておかないと、シンバルだけが左右に広がりすぎて気持ちが悪い事が多い。
全体のオフマイクとして使う時には、オーバートップの定位を振りきりか、少し狭める程度で広がり目にしておき、音作りの終わったスネアとキックの音が好みの音に変わるまでオーバートップの音を足していく。足した状態でシンバルの音が妙に耳に付いたら、オーバートップの音量を少し下げるか、イコライザーでオーバートップの3kHz近辺を少しカットする。
余談だけど日本人のエンジニアのミックスは外人に比べてシンバル系が小さめのミックスが多い。(国民性だろうか?)一般的にオフマイクで使用する場合のオーバートップの音量が、大きければ大きいほど、ライブ感のあるルーズな音になるし、少なければ少ないほどコントロールされたタイトな音になる。もちろん音楽や好みによってバランスには自由に設定してよい。
オーバートップのマイクにリバーブはとりあえずこの時点ではかけない。オーバートップのマイキングは普通オフマイクなので、それだけである程度の残響感(部屋鳴り)の成分があるからだ。どうもシンバルの音がなじまないと感じたときなどに限って、リバーブをかけてやればいい。ただしオーバートップのマイクが拾ったタムやスネアの音にも、リバーブがかかることになるので、リバーブを深めにかける場合は要注意だ。
次にハイハットを足していく。ハイハットのバランスはエンジニアによって結構違いが出る部分なのだけど、聴感上スネアの音よりは小さくした方が、私好みのまとまりがある音になる。で何故ドラムの中で比較的重要な音源であるところの(関係代名詞)ハイハットを後回しにしたかというと、スネアやオーバートップにハイハットの音がかなりかぶっているからなのだよ。よってハイハットのマイクで録音した音は、ハイハットの音を作るというよりも、オーバートップやスネアのマイクにかぶって、定位感のぼけてしまっているハイハットの音に、芯と定位感をつけるものと考えた方がいい。定位を中央より少し右側にして、ハイハットのマイクの音をじわじわ上げていって、芯と定位が感じられたなと思うところで止めると大体ちょうどいいくらいの音量になっているはずだ。(ベーシック録音の時に下手な録音をしていなければね。)
ここまで来たら一度ドラム全体の音を混ぜて聞いてみて、違和感がなければとりあえずドラムのバランス取りは終了だ。ここで気に入った音が出ればやる気も起きるというもんだ。ミックスダウンの中で、もっとも難しく楽しいのが、このドラムの音決めだな。
7-7-4 ベースの調整
ほとんどの曲で、キックとベースのコンビネーションが考えてあるアレンジである以上、基本的にベースとキックは聴感上同じくらいの大きさにする。これも定位は中央だ。最近ではベースよりキックの方を少し大きめにミックスするのが流行だけど、ロックンロール系の音楽なんかでは、少しベースの方を大きめにした方がそれらしい雰囲気出る。またジャズなんかではベースの方を確実に大きくすることが多いし、レゲエなんかでは、ベースの音かキックの音かどちらかをメインで大きく出して重低音を作り出している。(キックに『ヤオヤ』(ローランドの初期のリズムマシンTR-808のこと)の音を使っている場合はキックをメインに、その他の場合はベースをメインにすることが多い)とにかく音楽の土台を支える部分なので、キックとベースのバランスはとても重要だ。少しバランスを変えるだけで、ミックスのイメージがかなり変わってくるので、とりあえずバランスを決めておいて、一度全部の音源を混ぜてたあとに再びバランスを取り直すのがいいと思う。
ベーシストからは顰蹙を買うかもしれないが、私は基本的にベースを、遠慮なくコンプレッサで思いっきりぶっつぶしてやる事にしている。よっぽど巧いプレーヤでない限りコンプレッサをかけることによるデメリット(=音のヌケが悪くなり、自然なダイナミクスがなくなる)より、メリット(音のばらつきが無くなり、全体の音がまとまる)の方が大きいと思うからだ。この場合コンプレッサによってヌケの悪くなった部分は、イコライジングやエキサイタで補正すればよい。またベースの音をラインとマイク2トラックに分けて録音してある場合には、ラインの方をコンプレッサでぶっつぶして、マイクの方をそのまま出すというようなことも私はよくやる。基本的にはこれでほとんどフェーダーを動かさないんだけど、ベースが「おいしい」フレーズを弾いている部分では、フェーダーワークで持ち上げてやることを忘れていかんぞ。ベーシストはそのフレーズに「命」をかけているのだ。(笑)
ベースにもアーリーリフレクションをかけてやると、音像がぼけずに広がりを出すことができるので、キックと同じかやや薄めにかけるといい。一応リバーブは御法度と考えておこう。なぜなら、ベースには、はっきりと音程があるので、前の音がリバーブで伸びてしまうと、ローワーインターバルリミット(許容できる低域での和音の限界のこと。基本的にオクターブと5度和音以外は、低域で和音を作ると不協和音にしかならない)にもろにひっかかってしまい、音が濁りまくってしまうからだ。とにかくベースの処理は、「腕」の差が出る部分だ。まともな音のCDなんかを聴いて、ベースの処理を研究しよう。
7-7-5 コード楽器の調整
コード楽器とは伴奏を担当するパートのことで、ソロパート以外の、ギターやキーボードなどのことだ。このバランスは一口でいえるほど簡単じゃないのだけど、一つ言えるのは、ボーカルやソロパートよりは小さくするということだ。(伴奏楽器なんだから当たり前だな)目安としてはコード楽器全体の音量が、ドラムとベースを合わせた音量とほぼ同じになるようにするって事くらいだろうか。ただしなるべく定位は中央にしないこと。そうすれば同じ音量でも、定位を中央にした場合に比べてボーカルやソロパートの邪魔になりにくい。またステレオで録音された音源や、エフェクトのステレオリターンなんかは、パンの振り方によって音の広がり感をコントロールできるので、全てのステレオ音源を左右に振りきってしまうのではなく、必要に応じてパンを狭めたりするように。
とりあえずドラムベースと混ぜてみて、ぶつかっている周波数帯があれば、ギターか、ドラムベースどちらかのイコライジングを再調整する。特にベースとギターの低域がぶつかることが多いので注意しよう。まれにベースとギターの低音がぶつかった濁りが、かっこよく聞こえることもなきにしもあらずだけど、基本的には濁りは禁物だ。
定位はバッキングギターが2本ある場合や、キーボードなどがギターと同じようにバッキングをしている場合は、シンメトリー(対称)に配置する。左右にそれぞれ振ったりするわけだ。この場合も完全に左右に振りきると、ちょっとやりすぎなので、パンのつまみは9時と3時ぐらいが丁度いい。バッキングギターが1本で、キーボードもステレオで中央に定位させる場合などは、ディレイでダブリングしたり、少し右か左に定位をずらして、とにかく中央には定位させないのが鉄則。ギターは一番ボーカルの邪魔をしやすい楽器なのだ。
70年代のロックなんかでは、キーボード(といってもアコースティックピアノとオルガンぐらいしかなかった)はアレンジ上ギターと対等な立場だったので、ギターは右でキーボードが左なんていう定位が多かったんだけど、最近のキーボードは、ゴージャスな音を出すのを第一と考えていることが多いので、下手に定位を左右どちらかに偏らせてしまうとださださになる恐れがあるんだな。だからストリングスとかシンセブラスのような音色は、キーボードのステレオアウトをそのままいただいて、そのままパンを左右に振ってしまうのが一番無難だ。この場合定位は中央になるんだけど、このような音色はキーボード本体でコーラス系のエフェクトがかけてあるはずだから、音が左右に広がってそれほどボーカルの邪魔にはならないのだ。もしこのような音をモノラルで録音してあったら、コーラスやディメンジョンをかけて左右に広げてやればいい。その他の音色は中域成分の多いものはギターと同じ方法で中央には定位させないようにするといい。(キラキラ系の音なんかは中央にしてもボーカルと帯域がぶつからないのでさほど問題はない)
さてここまで来たらいわゆるカラオケ(完成品から歌を抜いた状態)を作ってみよう。
7-7-6 ボーカルとソロパートの調整
ボーカルとカラオケのバランスは音楽の形態によってかなり違うし、ボーカルを大きくすると聞き易くなるが迫力がなくなり、カラオケを大きくすると何を歌っているのか判らなくなるといったジレンマがあるけど、基本的には歌詞が聞き取れるバランスを基準にする。ボーカルメインの曲の場合は、「必ず」歌詞が聞こえる状態、ロックなどでは聴く気になれば、全て歌詞が聴こえる状態だな。(正しい「聞く」と「聴く」の使い分けだな(^_^;)バランスをとるときには、静かな部分ではボーカルの音量が小さくなるし、盛り上がる部分では大きくなるので、その辺りにも気を付けて、ボーカルを上げるのか他を下げるのかを良く考えなきゃいかんぞ。またボーカルメインの曲ではボーカルとスネアが大体聴感上同じくらいの大きさになることが多い。
ボーカルはオーバーダブの時に、複数のトラックにまたがって録音されていることが多いので、歌詞カードを用意し、どの部分でどのトラックを使うかを決める。で、さらにカラオケにざっとボーカルを混ぜてみて、フェーダー操作の必要なところを歌詞カードにチェックしとくわけだ。場合によっては、「あいうえお」という歌詞の「い」を上げて「お」を下げるというようなかなり細かいフェーダー操作を行う必要があるぞ。とにかく、ボーカルのフェーダは常にコントロールしている状態にならなければ嘘だ。
ソロパートはボーカルと同じ扱いにして、カラオケの上にソロパートかボーカルのどちらかがのっかっていると考えるといい。
7-7-7 全体の調整 祝!確変
まずは音量感のばらつきが出ないように注意する。下の図7-7-2のように、ボーカルがない部分でボーカルの分の音量感が減ってしまわないように、ボーカルの代わりにソロ楽器を入れたり、バッキングの音量を上げるという事だ。図では極端に音量を平坦化してあるけど、これはあくまで説明上そうしているだけだからね。もしこんな曲があったならこんな音量感のメリハリのない音楽などつまらなくて仕方がないぞ。
図7-7-2 音量の平均化の概念図 |
図7-7-3 各パートの調整 |
7-7-8 ミックスダウンの手直し
ボーカルをカラオケの上にのっけてバランスを取ってみると、聞こえなくなってしまった音や、ボーカルとぶつかってしまう音、エフェクトが判らなくなる音などが、必ずあるので、(必要ならば個別に音を出して)手直しをして、納得のいくまでバランスを取る。文章にするとあっけないが、ここがミックスダウンの作業のメイン部分だ。とりわけボーカルパートは大事で、特に注意を払ってミックスしよう。また常にミキサのVUメーターが適正に振れているかどうかも確認しとこうね。結局このようにミックスには、かなり細かいフェーダーワークが要求されるので、まじめにフェーダー操作を行うとミックスダウンは発狂しそうになるほどややこしい作業だ。最近ではこのフェーダー操作を記憶してくれる、コンピューターミックス(オートメーションフェーダー)装備のミキサが大流行なんだけど、装備されていないミキサを使う場合には、原始的だけどフェーダーの横にドラフティングテープを縦に貼って、そこに曲中の部分部分でのフェーダーの位置を印を付けて、番号をふっておくと、「最初は1の位置で、サビになったら2の位置にする」といったように判りやすくなるので、少しはミックスダウンが楽になるはずだぁ。
7-7-9 プレイバック
一通りバランスが取れたら、DATや2トラックオープンに仮ミックスを録音して、プレイバックを聴いてみる。ミックス中は操作に集中していて気づかないところが判ることが多いので、このプレイバックは数回必ず行うこと。レコーディングミキサには2トラックテープレコーダのプレイバックボタンが必ずあるので、フェーダー等は一切動かすことなくプレイバックを聴くことが出来る。(基準レベルをきっちりと合わせてあればモニター音量も一緒になる)間違ってもチャンネルにテープレコーダの出力を立ち上げてプレイバックを聴くなどというまねをしないこと。ちなみにプレイバックをしてみて明らかにミックスダウンをしていた時と音質が違う時は、何かがおかしいわけだから、テープレコーダ本体やテープ、パッチベイなどを確認しよう。
次に仮ミックスをプレイバックしてみて気が付いた所を(必要なら個々に音を出して)修正する。で必要なら仮ミックスを繰り返して本ミックスに移る。この時にスレートで「テイク1」とか入れておこう。
本ミックスをプレイバックして満足のいくものだったらとりあえず完成だけど、出来るだけ本ミックスをカセットにダビングして、家のラジカセや家庭用オーディオなんかでも聞いてみよう。スピーカや再生システムの違いで音が変わるのは当たり前なんだけど、良いミックスダウンはスピーカを選ばない。
もしこれで音のバランスが極端に変わるようであればミックスダウンの失敗なので、再びミックスダウンし直そう。考えてみれば一般にみんなが聞いているCDなんかは、プロ用のレコーディングスタジオの豪華なシステムでミックスされた物だけど、みんなの家にあるようなシステムで聞いてもちゃんとしたバランスで聴けるでしょ?(一部のCDを除く。(^_^;)