6-1 オーバーダブ

  
  
6-1-1 オーバーダブの手順

  

    オーバーダブ(Over Dub)とは、ベーシック録音の時に同時録音できなかった、もしくは敢えて後回しにした音源を、すべてMTRに録音する作業のことで、カブセともいう。これはMTRを使用した録音特有の作業で、ベーシック録音の時に録音した音源を再生しながら、それに合わせてあらたに音を録音するという、「再生」と「録音」というまったく違った種類の作業を同時に行わなきゃいかん。んなもんでミキサの扱いはちょいとばかしややこやしいものになる。

  1. オーバーダブする楽器をセットし、終わったら必要なマイクやDIを用意してマイキングする。この辺りはベーシック録音の時と同じ要領だ。
  2. マイクをミキサに入力する。通常は、これから録音しようとしているトラックと、同じ番号のチャンネルに入力するか、もしくはエッジチャンネルなど、MTRでは使用していないチャンネルから、ミキサのアサイン機能を使って、任意のトラックに送るかどちらかの方法が使われる。ここでは後者を例にとって説明する。
  3. キューボックスとヘッドフォンを用意する。
  4. 録音済のテープを再生し、ざっとバランスをとる。
  5. マイクやDIを入力したチャンネルの、マルチトラックアサインスイッチを、トラック割に従って押す。(たとえば25番にベースのDIがつながっていて、ベースのトラックを12にしようと思っているのなら、25チャンネルのマルチトラックアサインを12にしろってことだ。)
  6. ベーシック録音の時と同じように、マイクを入力したチャンネルの回線チェックを行なった後、フェーダーを基準位置にして、ゲインつまみで録音レベルを決定する。録音レベルが決まったらアサインされたチャンネルでモニター音量を決定する。MTRのモードは「SEL REPRO」など、テープの再生時以外は、MTRへの入力信号がそのまま出力されるモードにしておく。
  7. プレーヤにリハーサル演奏をしてもらう。この時に録音レベルやモニターレベルの微調整を行ない、プレーヤが聴きにくい音等があれば対応する。これもベーシック録音と同じだ。
  8. 本番録りを行なう。
  9. OKテイクが録れたら必ずプレイバックする。プレイバックは、MTRのいま録音したトラックの、「録音スタンバイ」をセーフにしとけば、あとはなんにもいぢらんでよろし。(アナログの場合は全トラックが「SEL REP」になっていること。)
  10. 今録音したものを残して(「生かしといて」と言う)他のトラックに新たに録音する場合は、マイクやD.I.を入力したチャンネルのアサイン(MTRのどのトラックへに送るか)を変え、アサイン以外の部分はそのままにしておく。アサインされたチャンネルをいままで使用していたチャンネルと同じ状態にして〈フェーダーやCUEのレベル、エコーセンド、EQなど〉、いままで使用していたチャンネルは、チャンネルのON/OFFスイッチでOFFにしておく。
  11. OKテイクが出来るまで録音をくり返す。難かしい曲や長い曲等では、「パンチイン」「パンチアウト」も有効な手段だけど、パンチイン、アウトを行なう場合はパンチイン、アウトするタイミングはもちろんのこと、前後で音量や音質やチューニングの違いがないかにも注意しよう。
  12. ミックスダウンを後日に行う場合は特に、オーバーダブしたトラックの内容を、かならずオビなどに書き込んでおくこと。また複数のテイクがある場合は、どちらがOKテイクかも記入しておくのを忘れないように。「20チャンネルのボーカルと、21チャンネルのボーカルって、どっちがOKテイクなの?」ってことが結構あるのだ。

      

  



     
6-1-2 入力別の注意