5-1-1 レコーディング前に
みんなが気分よくレコーディングするする為もあるけど、これは機材関係、特に生楽器の防湿の意味合いも強い。何故かというと生楽器は基本的に乾燥していたほうが良好な音になるからだ。世界に冠たる我が大日本帝国は、多湿な気候なので、特に夏期は毎日の防湿に注意をする必要がある。かといってエアコンをかけまくればいいのかというと、そういう訳でもなく、国産のアコースティックピアノなどは、多湿な気候を最初から想定して作ってあるので、あまりエアコンをかけると、かえっておかしくなる事もある。したがって毎日がんがんにエアコンをかけまくっている、営業用のレコーディングスタジオなどでは、乾燥しすぎないように加湿器を使用しているところもある。またボーカルの録音の場合、あまり空気が乾燥していると、ヴォーカリストの声の調子が悪くなる。ちょっぴり酒を飲ますと調子がよくなる事が多いぞ。(自主規制)
最近の器材はデジタル化が進んだせいで、電源投入後すぐに安定した動作が得られる物が多いが、中には電源を投入してからしばらくしないと、動作が安定しない物もある。(特に昔の進駐軍産の物が怪しい)だからいっその事、使う予定がなくても、すべての器材の電源を入れてしまおうというわけだ。(電気がチカチカしてきれいだし、ウブな人間を連れてきた時なんかははったりになってよろしい。)地球には優しくないが、まあ仕方がない。明確なる根拠はないけど、たまにしか電源を入れないより、毎日定期的に電源を入れていたほうが器材の故障が少ない。(気がする)あ、でもマイルームスタジオではまねしない方がいいよ。電気代がバカにならないというよりも、しっかりと電源の設計やシールドをしていない状態では、周辺機器一つ一つがノイズ発生器になるからだ。
前に使った人が、使用後にテープレコーダのクリーニングはやっているはずだけど、一応念のためにやっとこう。本当は大事な録音の前にはクリーニングだけじゃなく、消磁や調整もやってしかるべきなんだけどね・・・。デジタルMTRやDATは市販のクリーニングテープを使うしかないんだけど、「乾式」の場合はヘッドを痛める恐れがあるので、必要最低限にしておいた方がよい。
風通しとは、新品のテープをいったん早送りで巻取ってそれを巻取る作業の事。こうする事によってテープをほぐし、不必要な力がテープやテープレコーダにかからないようにするものだ。最近はテープもテープレコーダも高性能になってきているので、以前ほど必要のない作業となりつつあるけど、まあ気は心でやっておこう。ビデオテープなどを使うデジタルMTRの風通しは、フォーマットの前にやっとかないと意味ないかんね。またオープンテープは、わざわざ巻きもどさなくても、早送りで巻取ったら巻取ったテープを裏返してかけ換えればいいよ。ただAMPEXの#456もしくは#457なんかは、頭に緑のリーダーテープが付いていて、終わりには赤のリーダーテープが付いている。リーダーテープで編集しない場合はテープのリーダーテープが緑の場合は通常巻き、赤の場合はマスター巻きと判断される事があるから注意しとこうね。
全く説得力のないサラ金の注意書きみたいなタイトルだけど、スタジオに入って3時間ぐらいするとレコーディング特有の『煮つまり』をおこす。代表的な症状としては「頭がぼ〜っとしてくる」「音が変でも気にならなくなる」「操作ミスが多くなる」「『まっいいかぁ』を多発するようになる」など。この状態は理想のレコーディング環境とかけはなれたものなので、この状況になるのを避けるためにも、事前に出来る事は出来る限りやっておこう。(たとえばタイムスケジュールを組んでおくとか、トラック割を済ませておくなど)これを怠るとセッティングに時間がかかったり、間違えてOKテイクを消してしまうなどの楽しき現実が待っている。
5-1-2 レコーディング途中で
例えば、パッチベイを結線する時とか、ファントム電源を入れたり切ったりする時とか、ミキサからちょいと席をはずす時など。要は何かノイズが発生する可能性のある状態の事だ。どんな馬鹿でかいノイズが発生しようとも、ミキサの出力まではまず大丈夫だけど、スピーカやヘッドフォンの部分は大変な事になる。当然大きい音が出てしまうし、最悪の場合はスピーカやヘッドフォンが劣化したり飛んでしまったりする。この最悪の事態を避けるためにモニターボリュームをしぼれというわけだ。これさえやっておけばたとえ「フェーダーを上げて、マイクのゲインを最大にして、ファントム電源を入れる」という鬼畜のような事をやっても、「振り切ったVUメーターが、ちょっとかわいそうだな。」位で済む。(でもやってみようなんて気を起こすんじゃねーぞ)
録音中はすべての機材が正常に働いているかどうか、常に注意を払う事。自分の操作ミスを器材のせいにするのはよくないけど、100%機材を信用しきってもいけない。PAの場合はリアルタイムで結果が出るのに対して、レコーディングは過去に出た音を記録し再生するという、時間軸のずれた作業なので、後からしまったと思ってももう遅い。レコーディングエンジニアは「ちゃんと録れてて当り前」という因果な商売なのだ。プレイヤーが最高の演奏をした時に限って、録音に失敗してしまった時なんかに、レコーディングエンジニアに浴びせられるみんなの視線は、とてつもなく痛い。
音を扱う作業をしているのだからして当然の事なんだけど、ミキサに内蔵されているトークバック用のマイクは、感度が高く無指向性なので、周りの声などもスタジオ側のヘッドフォンに送られる事があるのだ。自分でスタジオの中に入って、ヘッドフォンをかけてみれば分かるけど、スタジオの中は音的に閉ざされた空間で、ヘッドフォンを通じてしか情報が入ってこない状況なのだ。この状態で意味不明の笑い声などが聞こえてくると非常に不快だ。もちろん演奏にも支障をきたすので、少なくともオペレータがトークバックを使っている時くらいは気を付けよう(今気付いたけど、トークバックって中途半端に省略するとTバックになるな。まあどうでもいいけど・・・)
またコントロールルーム内の調整とかで手間取って、プレイヤを待たせてしまう時などは、「いまちょっと調整で手間取ってますんで、ちょっと外に出て一服でもしてて下さい。」とかいって、決してプレイヤをスタジオで一人ぼっちにしない事。
5-1-3 レコーディング後に
特にミキサについていえる事だけど、使用後は必ず基本状態に戻す。基本状態とは、次に使う人が使いやすく、ミスが一番おきにくい状態のことで、音量に関係するところは一番小さい状態、イコライザやエフェクトなどはかかっていない状態にする。例えばミキサのゲインがいっぱいの状態にしてあって、次に使う人が何気なくフェーダを上げたとたんスピーカを飛ばしてしまうとか、テープレコーダの録音スタンバイが、入ったままになっていて、次に使う人がら録音済みのテープを消してしまうとかという事のないようにって事だな。
使用する前にも行っているはずだけど、使用後にも行う事。営業用のレコーディングスタジオなどでは次にすぐ使える状態にしておくために、必ず行っている事だ。