4-4-1 同期信号について
同期運転とは、単独で動くテープレコーダなどを複数台、同時に動かす事で、この同期運転をコントロールするのが同期信号(タイムコード)だ。この同期信号はテープレコーダに録音が出来るように、オーディオ信号(耳に聞こえる周波数帯の信号)になっている。
現在もっともよく使われている同期信号はSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)信号で、これは本来テレビ用の同期信号。(ちなみに「しんぷて」と読めばよい)各国によってテレビの走査線のコントロール方法が違うので、同じSMPTE信号でもフレーム数が異なる場合がある。フレームというのは1秒間に何コマ動かすかを表す単位で、24、25、30フレームの3種類がある。24フレームは主にフィルム用として使われ、25フレームはヨーロッパやロシア、オーストラリアなどのテレビ用で使われていて、日本やアメリカのテレビでは29.97フレームを使っている。
更にいうと329.97フレームの中でも「ドロップタイプ」と「ノンドロップタイプ」という2つがあって、テレビで使われているのはドロップタイプ。これは1分ごとに2フレームを端折ってしまうもので、テレビの走査線とタイムコードを同調させるための手段だ。みんなの場合は通常、このドロップタイプのものを使う必要はないので、29.97フレームのノンドロップを使えばいいんだけど、テレビ番組などで使う時はドロップを使う事があるから注意しようね。まあでも同期運転の場合に限って言えば、同じ同期信号が録音されてればいいので、同時に同じ同期信号を録音しちゃえばどうでもいい事だけどさ。(この行「同」という漢字が多くて変だ)
このほかに同期信号としてはFSK方式の同期信号があるんだけど、これは比較的単純な同期信号で、1.2kHzと2.4kHzのパルス音の組み合わせで出来ている。基本的に始まりと終わりとテンポしか情報を管理できないので、安価なMIDIシンクロナイザに使われる程度で、同期運転には使われる事はない。このFSK信号を独自に拡張して、曲の途中からの同期を可能にしたものや、シーケンサ独自規格の同期信号があるけど、汎用性を重視する部分では使わない。逆に自宅録音などでは同期するなら、方式なんかなんでもいい。
4-4-2 同期運転の原理
同期運転は、1台のマスターレコーダに、その他のスレーブレコーダを同期させる方式なので、理論上は何台でもスレーブレコーダを増やす事が出来る。基本的な動作原理は次の通りだ。
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図4-4-1 録音時の関係 |
ここで同期信号を発生するのがタイムコードジェネレーターと呼ばれる物で、このタイムコードジェネレーターはこの同期信号を入れる作業が終わったら後は必要ない。同時に同じタイムコードジェネレーターから同期信号を録音しても、別々に入れてもかまわないし、フレーム数さえあっていれば別のタイムコードジェネレーターから入れてもかまわない。さらにマスターレコーダから同期信号をダビングしてもかまわないんだけど、ダビングによる音質劣化のために、スレーブ側が同期信号の読み込みエラーを起こす可能性があるので、あまりお奨めできない。どうしてもダビングしなければならない時は、シンクロナイザのリフレッシュタイムコード機能を使って一旦新しい同期信号に書き換えてから録音しよう。
また、音楽の録音の時にタイムコードを一緒に録音するという手もあるけど、何かの間違いで同期信号が上手く録音できなかったりすると、音楽の録音自体のやり直しになるので(スレーブレコーダにも音を入れていた場合)、タイムコードが音漏れする可能性もあるので、おすすめできない。
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図4-4-2 同期時の関係 |
シンクイネーブルは、スレーブ機をマスター機に同期させるかどうかを選択するスイッチ。これをオフにすると同期運転はされない。チェイスイネーブルとは、スレーブ機に巻き戻しや早送りを許可させるかどうかを選択するスイッチ。これがオフになっていると、スレーブ機は同期するために巻き戻しや早送りを行わないので、これをオフにしてマスター機を早送りさせた場合などは、スレーブ機はプレイモードのまま必死に追いつこうとするが、同期するまでかなりの時間がかかってしまう。まあ通常はオンにしといた方が間違いはない。