ピンポン録音とはその名の通り、卓球の様に1つのMTRの中で交互にダビングをするテクニックだ。ここではピンポンする可能性の高い8トラックのを例にとって説明しよう。
4-3-1 ピンポン録音のメリットとデメリット
メリットは見かけ上のトラック数が増える事。最終的な仕上がりがモノラルでいい場合などは、各トラックのピンポンを1回に限定しても、計算の上では8トラックのMTRで、29トラックが使用できる。さらに音を重ねながらピンポン録音をすると、36以上の音が録音できる。まあでもこれはあくまでも計算上の話で、実際はこれより少なくなるし、ここまでやる事もない。まあやるとすれば一人で「かえるの歌36重奏」を作る時くらいのもんだ。(私は実際やった事がある。完成後虚無感に襲われるのでお奨めしない。)
対してデメリットはというと、ピンポンをする度に1回ダビングをする事になるので、音質の劣化がある事と、一度ピンポンしてしまった音源のバランスや音質などは、後から個々に変える事が出来ない事だ。
4-3-2 ピンポン録音時の注意
ピンポン録音する場合注意する事は、アナログMTRの場合2つあって、出来るだけピンポン録音するトラックはエッジトラックを避ける事と、隣のトラックは空けておく事だ。
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図4-3-1 ピンポンするトラック |
4-3-3 8トラックをしゃぶりつくす方法
INPUT | |
---|---|
1 | 1トラック |
2 | 2トラック |
3 | 3トラック |
4 | 4トラック |
5 | 隣接トラックなので不使用 |
6 | ピンポンL |
7 | ピンポンR |
8 | エッジトラックなので不使用 |
表4-3-1 8トラックのピンポン |
INPUT | 行き先 | |
---|---|---|
1 | KICK | 5&6 |
2 | SNARE | 5&6 |
3 | E-GUIT | 5&6 |
4 | DRUMS-R | 6 |
5 | ピンポンL | |
6 | ピンポンR | |
7 | DRUMS-L | 5 |
8 | BASS | 5&6 |
表4-3-2 こざかしい8トラックの使い方 |
まず1と8のエッジトラックは、高域劣化の影響が少ないキックとベースにする。2・3は普通にスネアとギターを入れて、ドラムのLRは順番を逆にして、RLにして、4・7にして、その間の5・6にピンポンするトラックをはさみ込む。つまり表4-3-2のようにするわけだ。こうすると、1・キック、2・スネア、3・ギター、8・ベースのトラックは、ピンポンするトラックから2トラック以上離れているから問題はないし、4・DRUMS-Rはステレオの右だけの成分なので、ピンポントラックの右のトラック、つまり6トラックだけにダビングする事になる。ということは、4トラックから6トラックにピンポンしているので、ちゃんと1トラックとばしてピンポンしている事になる。7・DRUMS-Lも同様だ。これによって隣接トラックとエッジトラックを避けるという条件を満たしながら、8トラックをめいっぱい使ってピンポン録音をする事が出来るわけだな。(ぱちぱち)
まあ、デジタルMTRでは気にすることはないので(エッジトラックも真ん中のトラックも特性は一緒だし、隣のトラックの音が混入することは、レコーダ上ではない。)昔の小技と化してしまったのが悲しいが・・・
4-3-4 ピンポン録音のその他の利用法
ピンポン録音は、見かけ上のトラック数を増やすのが最大のメリットなんだけど、その他にもミックスダウンの手順を簡略化する時にも利用されるんだな。例えば、ボーカルが3テイク録音してあって、これを言葉単位でフェーダー操作とスイッチングしていく時なんかは、非常に操作が煩雑になって、下手をすると他の部分に気を配れなくなってしまう。そこでまずボーカルの3つのトラックを1つにまとめてピンポンして、それからミックスダウンを行えば、ミックスダウンが簡単になり、コンプレッサなどのエフェクターも1台ですむわけじゃ。
まあでもプロの現場では、ボーカルのような重要なパートをダビングするのを嫌って、この方法は使わないんだよ。それじゃあプロの人はどうしてるかっていうと、オートメートミキシング(コンピューターミックス)というもんがあるんだな。この機能が付いたミキサを使えば、ある部分の操作を記憶させておけば、その部分はミキサが勝手にやってくれるわけだ。(卑怯)