3-3 オープンの調整



   



   
3-3-1 ヘッド

   

   



    
3-3-2 バイアス

   

    



    
3-3-3 録音基準レベル

   

   



   
3-3-4 イコライザ

   




   
3-3-5 掃除と消磁

   




    
3-3-6 調整の手順

   

     



   
3-3-7 再生系の調整

   

  1. 写真3-3-2 VUメータ調整用ネジ穴
    掃除と消磁を済ませた後、テストテープが調整しようとしている規格に適応しているかを確認して、さらにテープレコーダのスイッチのイコライザ規格(パネル上、もしくは基盤上に切替スイッチがあることが多い)、テープスピードなどを確認する。同じNABでもNAB-Jとは違うものなので注意しよう。またテープレコーダのVUメータが無信号時に正しく0%の所を指しているかもチェックしておこうね。もしずれていたら、小さいマイナスドライバーで、VUメータの下にある調整ネジであわせておこう。(写真3-3-2)
  2. 巻き取り時の変形を避けるため、あらかじめテストテープの最初と最後に、リーダーテープを充分に追加しておく。またテストテープは大変高価で痛みやすいので、極力早送りや巻き戻しはしないようにする。

    テストテープをかけて再生し、8kHz0VU(MRLの7.5ipsテストテープの場合は8kHzの-10VU)の部分を再生する。この信号でオシロスコープの波形を見ながら、波形がなるべく大きく右上がりに一直線になるように再生ヘッドのアジマスを調整する。さらにテストテープの16kHz0VUの部分で微調整をする。ただしよっぽど運が良くないと16kHz0VUでリサージュ波形が直線になってくれることはないので、なるべく直線に近くなるようなところで妥協するのがコツだ。(7.5ips以下のスピードの場合はストレスがたまるので、やらない方がいいかもしれない。)

    これで再生ヘッドが正常な位置に調整されたことになる。もしテープレコーダにSEL REPRO(SYNC)機能(録音ヘッドを再生ヘッドとして使える機能)があるんだったら、同じ方法で録音ヘッドのアジマスも合わせてしまおう。

    これが理想の波形。右上がりにきれいに一直線になっている状態。通常はこの状態を中心にぶれる程度でよしとする。

    ヘッドアジマスがイマイチ合っていない状態。15ips以上のスピードの時はこれでは問題だが、7.5ips以下のテープスピードでは上の状態とこの状態が交互に現れるぐらいが、調整の実質的限界。

    ずれている状態。(右と左のトラックで90度位相がずれている)

    上よりも更にずれている状態。(右と左のトラックで180度位相がずれている)

    BOTTOM
    普通では考えられないが、調整を何年もしていなかったテープレコーダや、誤って調整したものなどは、このように一見合っているような波形になることがある。これは360度位相がずれている状態だ。線が短くなるので、ちょっとずらせばすぐ判別がつく。
    表3-3-3 オシロスコープの変化

      

  3. ミキサをテープのプレイバックモードにして、テストテープの1kHz0VUの部分を再生する。これでテープレコーダのVUメータをOUTPUTボリュームで0VUに合わせ、その状態でミキサのVUメータが0VUを指すようにテープレコーダのOUTPUT GAINトリマを調整する。(正式にはテープレコーダで0VUを取った後、テープレコーダの出力に600オームの負荷をかけた状態でバルボルをつなぎ、バルボルが+4dBを指すようにトリマを調整するんだけど、ここではミキサのテープ入力が正確に600オームの+4dBと仮定して手順を省略している。)

    キャリブレーション1
    テストテープ(基準)に0VUのレベルで録音されている信号を、再生するときにテープレコーダのVUメータが0VUを指すように調整する。
    キャリブレーション2
    テープレコーダのVUメータが0VUを指しているときに、ミキサのVUメータも0VUを指すように調整する。こうするとテープレコーダとミキサのメータは同じ値を指す。
    図3-3-3 基準レベルの調整


  4. 再生イコライザの調整
    図3-3-4 再生イコライザの調整
    上記の状態(テストテープの1kHz0VUでテープレコーダが0VUを指す状態)のまま、テストテープの10kHz0VUの部分を再生して、同じようにテープレコーダが0VUを指すように再生イコライザのトリマを調整する。これで再生の周波数特性が正常に調整された事にするわけだな。
  5. 調整する部分の狂いがひどかったときには2に戻って再び調整する。
  6. 低域の調整があるものは、50Hz以下の部分を出して、いちばん周波数特性が平坦になるようにする。単純にスイッチ式のものは低域の周波数特性に乱れが少ない方にすればよい。
  7. 最後にテストテープの1kHz0VUの部分をもう一度再生してOUTPUTのボリュームをテープレコーダのVUメータが0VUを指すように調整する。もしかなりのずれがあった場合は、に戻って再び調整する。これで再生系の調整は終わりだけど、終了したらOUTPUTのボリュームは録音系の調整が終わるまではそのままにして絶対に動かさないこと。
  8. テストテープをマスター巻きで(再生状態で)巻き取り、大切に保管する。

    



    
3-3-8 録音系の調整

   

  1. 録音に使う同じ種類のバージン(未使用)テープを、テープレコーダにかけて少し送っておく。(巻はじめはテープ走行が不安定になり易いため)
  2. バイアスの調整1
    バイアスの調整2
    バイアスの調整3
    図3-3-4 バイアスの調整
    ミキサのオシレーターか、テープレコーダのオシレーターで10kHzの正弦波を出し、テープレコーダをINPUTモードにして、INPUTボリュームで大体-2VU位の入力レベルにしてから、録音しはじめる。録音状態のままテープレコーダをREPROモードにして、VUメータの振れが最大になるようにBIASを調整する。この時点ではメータの振れを最大にするのが目的なので、VUメータが振り切ったり振れが小さすぎたときは、再生のOUTPUTボリュームを見やすいように適当に動かしていい。

    メータの振れが最大の所がトップバイアスの状態なので、ここからバイアス調整のトリマを右に回してオーバーバイアスをかけるんだけど、正式にやると出力用の負荷とバルボルが必要になるので、ここでは怠慢こいてテープレコーダのVUメータで代用してしまおう。トップバイアスの状態で、再生のOUTPUTボリュームを0VUになるように合わせて、そこからオーバーバイアスをかけて(トリマを右に回して)7.5ipsの場合は-3VU、15ipsの場合は-2VUを指すようにする。(AMPEX #456の場合)調整がすんだら録音を停止する。これはあくまで怠慢こいたやり方なので、「こんな方法が書いてあった」などと他のスタジオでいわないよーに。(^_^;

  3. ついでにこの状態で録音ヘッドのアジマスを合わせてしまおう。再生ヘッドのアジマスはもう合わせたんだから、録音して再生した音のリサージュ波形(オシロスコープの波形の形)が右上がりの直線になっていないのならば、録音ヘッドが悪いという考え方だな。(もし前述のようにSEL REPRO機能があるテープレコーダならば、再生ヘッドのアジマス調整をするときに一緒にテストテープで合わせた方が正確だ)
  4. 一旦テープを止め、ミキサかテープレコーダ内蔵のオシレーターから1kHz0VUの信号を出して、テープレコーダをINPUTモードにして、テープレコーダのVUメータが0VUを指すようにINPUTボリュームを調整する。その状態で再び録音を開始し、テープレコーダをREPROモードにして、(OUTPUTのボリュームを動かしていないことを確認して)テープレコーダのVUメータが0VUになるように録音レベルのトリマを調整する。ここで他のつまみを回すと最初からやり直しなので、注意しよう。これで0VUの信号が入力されたときに、テープレコーダのメータが0VUを指して、今録音している種類のテープでそれを録音し再生すると、再生時に0VUの信号が出力されるということになる。つまり、テープレコーダが正しい状態で動き、かつミキサともレベルが合っている状態になったわけだな。(ちなみにちゃんとバランス方式で600Ωのインピーダンスになっている場合、0VUの信号は+4dBmとなる。)
  5. 録音イコライザの調整
    図3-3-5 録音イコライザの調整
    ミキサかテープレコーダ内蔵のオシレーターから10kHz0VUの信号を出して、テープレコーダをINPUTモードにして、テープレコーダのVUメータが0VUを指すようにINPUTボリュームを調整する。(多分4の時点で合わせているのでそのままでいいと思うけど)その状態で録音してテープレコーダをREPROモードにして、VUメータが0VUを指すように録音イコライザのトリマを調整する。
  6. もう一度ミキサかテープレコーダ内蔵のオシレーターから1kHz0VUの信号を出して、テープレコーダをINPUTモードにして、テープレコーダのVUメータが0VUを指すようにINPUTボリュームを調整する。その状態で録音を開始し、テープレコーダをREPROモードにして、(OUTPUTのボリュームを動かしていないことを確認して)テープレコーダのVUメータが0VUになるかどうかを確認する。もしずれのひどい場合は2に戻って再び調整する。狂いのない場合は調整終了となるけど、その他に調整が必要な機種についてはその部分の調整を行う。

    とまあこんなところが調整の手順だ。『こんなもん30分で終わる訳無いやんけぇ』と思った人、あなたは正しい。確かに慣れないうちは1時間以上かかると思う。でもこれは定期的に調整を行っているテープレコーダを、調整になれた人がやると15分程度で終わってしまう作業なんだよ。