鶴屋千年堂を捜して

since 1998/08/04
updated 2007/09/20

発端

亀屋万年なら、鶴屋千年があったら面白いなと言ったら、元KOボーイから
「鶴屋千年堂あるよ」の発言、サーチエンジンにかますと、オヨヨ(死語)準備中だけどHPまであるよ、、、どうやら大倉山にあるらしい、ということでもう行くしかないでしょ。

104のオペレータ

鶴屋千年堂を捜し求め東横線大倉山に赴く、すぐ見つかるだろうと、タカを食い、イイ加減に駅前をうろつくが、それらしき店は発見できない。それではと電話帳を調べると、よしよし、ちゃんと載ってる、楽勝々々
早速tel、「お掛けになった電話番号は現在、、、」
アレ?落ち着いてもう一回、「お掛けに、、、」
一瞬、嫌な予感がよぎった。しかし、その時の僕は事の深刻さに未だ気付いて居なかったのだ
仕方ないと思いつつ、104する
「045で、鶴屋千年堂を」
「鶴屋ですね」
「いや、鶴屋千年堂です」
「千年堂ですか」
「いや、ツルヤセンネンドウです」
数回の問答の末ようやく伝わる(やれやれ)
「045では、お届けありませんね」
「えっ(一瞬思考停止)範囲拡げてもらえます」
「鶴屋千年堂ではお届けはありません」
「えっ(一瞬錯乱)分かりました、有難うございました」

親切な巡査

不安が段々と現実味を帯びてくるが、これしきで、引き下がる俺では無い
何せ自慢じゃないが、大倉山で降りたの初めて、手ブラで引き返す訳には行かないのだ
と云うことで、駅員に交番の場所を尋ねる、教えられた場所は、何か遠そうだ
でも歩く、5分位歩く、ついに発見
以下要約

「大倉山で鶴屋千年堂って云うお菓子屋さんを探しているんですけど」
「鶴屋千年堂ねえ、聞いたことはあるような気がするんだけど、、、大倉山にはないね、聞いてあげようか、NTTには」と電話機に手を伸ばしかける
「あっ、104は聞いたんですけど届けは無いそうで」
「そうか、じゃあ分からないなー、どう他のお菓子屋さんに聞いてみたら」
「そうですね、そうしてみます、どうも有難うございました」

菓子屋のおかみは語る

ふうむ、駅から遠いけれどなかなか親切なお巡りさん
そして、こういう時は、素直にアドバイスにしたがう僕
駅前に引き返し、歴史が有りそうで、何か買えるものがありそうな店を探す
目に留まったのは、駅左スグの「青柳」、早速入り、店内を一瞥し、白玉ぜんざいを2ヶ購入、そして、おかみさんに
「つかぬことを、、、」と切り出すと
「ああ鶴屋千年堂さんですね」とその口から、私の全く予期しなかった悲劇が語られ始めた

「火事でねー、ええ今年の初めころだったかしら、何でも放火だったそうですよ、周り4件全焼で、ほらその先の路地を曲ったところ、まだ空き地になっているでしょう、だいぶもめてるらしいですよ」
何といきなり衝撃の事実
「ご主人が、以前、ほら、亀屋万年堂にいらしたそうで、それで、鶴屋千年堂って、もう30年ほどやってらしたかしら、でもね息子さんが跡をつがれなくて」
そうか、亀屋が先だったんだな。そして、鶴屋はチェーンでなく、ここにあった店だけ。そして、再建のメドは立っていないらしい
それにしても、何故僕の探す菓子屋はつぶれて行くのか!(まあ、菓子屋全体が減少傾向にあるような気もするのだが)罪悪感すら感じられる、、、
帰り道、ひとけの無い焼跡の前を通った、さようなら、鶴屋千年堂

後日譚

その後、読者からたれ込みが寄せられたので報告させて頂きます(りかさん、感謝)。
やはり、お店は復活していないそうです。跡地は現在、コイン駐車場となっているそうです。まったく寂しいことです。

後日譚2

何と八年ぶりの更新です。
私はついに鶴千への対面は叶いませんでしたが、往時の店を知る方から貴重な情報が寄せられたので以下紹介させて頂きます(ありちゃんのママさん、感謝)。
鶴屋千年堂のご主人は、亀屋の一番弟子で、独立の際に亀屋の店主から「鶴屋千年堂」名前を戴いたそうです。
店先には、二人がけの小さな椅子とテーブルがあり、買った和菓子を食べることもでき、
亀屋のナボナに対し、鶴屋にはクイーンというそっくり洋菓子があったそうです。
また放火以前には、息子さんが、大倉山から程近い大曽根に支店を出していらしたそうですが、経営がはかばかしくなく支店はたたまれていたそうです。
ありちゃんのママさんの鶴千さんへの温かい想いを、以下はメールから直接引用させて頂きます。

私はあの鶴屋の、月見団子が大好きで、600円でお団子を1セット買い、
店先にサービスで置いていあるススキを貰って自宅で飾り、お団子を食べるのが大好きでした。
今でも、秋になると悲しく思い出されます。

和菓子やさんって、季節感のあるお店じゃないですか。桜餅に柏餅、七五三の飴なども扱いますよね。
その中で、まさに柏餅、なのですが、世の中で柏餅といえば、こしあん、粒あん、みそあんがあって、
鶴屋にも、その3種類がありました(みそあんだけ皮がピンクでした)
私は和菓子では、こしあんが好きではなく、粒あん派だったので
あるとき、店先で買うときに、粒あんが売り切れで、「粒あんが好きなのにな・・・」みたいにつぶやきながら
こしあんと、みそあんを何個ずつ買おうか、迷っていたんです。
そのとき、応対してくれていたのは、職人さんである店主でした。
(ご夫婦ふたりでなさっていたお店なので、普通は奥様だけが店先に出ていらしたのですが、休憩のときにはおじさんが出ていました)
私のそのつぶやきを聞いたおじさんが、
「そうか、でもね、和菓子には皮と中身の相性があってね、柏餅は本来、こしあんだけのお菓子なんだよ。
柏餅の皮には、さらりとした、アクのない、こしあんが合うんだ。でも粒あんやみそあんが好きだ、ってお客さんがいるから
作って売ってるけど、私としては、柏餅はこしあんで食べて貰いたいんだよ。」とおっしゃったんです。
それを聞いてなるほど、と思った私は、もちろん、こしあんを沢山買い(父がみそあん派なので、みそあんも買いましたが)
それ以来、鶴屋が無くなっても、どこかで柏餅を買うときには、おじちゃんの言葉を思い出し、こしあんを買うようになりました。

また、これは昔、両親が言っていたことなのですが、
父が水羊羹が好きで、何か形にこだわり、何かしらの形の水羊羹はつくれないか、と聞いたことがあったそうなんです。
そうしたら数日後、その水羊羹を作ってくださったのですが、なんと、ちゃんと木型まで発注して作り、それを使って作ってくださったそうで、
でも父には、木型の代金は請求しなかったそうです。
「うちにある道具では、こしらえることができなかったけど、和菓子として無理なことではなかったので、お受けしました。」と、おっしゃったそうです。

本当に温かい、お人柄溢れるお店でした。
濃い、水色の包装紙で、黒い文字で、斜めあちこち、に鶴屋千年堂、と書いてあって。


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