名古屋と言えば、ヒマラヤのケーキ

since 1998/10/14
added 2003/01/06

プロローグ

新幹線で大阪から東京に行く機会が結構ある。その道程で、ずっと気になっていた景色、というか看板があった。名古屋駅の手前(大阪寄り)にある「ヒマラヤのケーキ」「ヒマラヤ美術館」の2枚である。「間もなく名古屋、、」のアナウンスにひょいと窓の外を見る、するとヒマラヤが目に入るのである。京都や新横は発着駅に近すぎるが、名古屋は必ず停車するし降りることも稀、じっくりと車窓を眺めるちょうど良いタイミングなのだ。
それにしても、ヒマラヤのケーキは分かる。きっと、そう言う名前のケーキ屋があるんだろう。でも美術館とは何ごとか?幾ら思いを巡らせても、わたしには何の繋がりも想像できない。ずっと気にはなっていたが、その気持ち私を名古屋で途中下車させるほどは強く無かった。

調べてみる

そうやって日々が過ぎていったが、先日名古屋に数日滞在する機会が生じることになった。まさに千載一遇の好機である。そこで、サーチエンジンで下調べを行った。そしたら、まあ、あっけなく会社紹介のHPが見つかり、美術館の謎も解けてしまった。
ヒマラヤは名古屋を中心に、十数店鋪を展開する製菓+喫茶のチェーンということ。まあ、名古屋近辺にしかないわけだ。そして美術館は創業者である先代の社長が道楽で蒐集した美術品を、せっかくだからということで公開しているものなのだそうです。先代の社長が、というところが、あの大阪の店を思わせる。古き良き時代ということか。

名古屋へ

ということで、実際に店へ行ってみた。名古屋駅から徒歩5分くらい。中村警察署のそばに、その看板を持つ建物はあった。1Fがケーキ売り場と喫茶、2Fより上が美術館になってる。とりあえず、入場料300円を払ってへ美術館へ。パンフの呼び方に従うと、2Fには、杉本健吉展示室、近代日本洋画室、3Fには三岸節子作品室、展示数、広さともに小規模であるが、空調などはしっかりとしていて、そして何せガラガラなので非常にくつろげる。展示は上記の2人の作品が主であるが、梅原龍三郎など私でも知っている画家の作品もあった。ちなみに年中無休だそうだ。
鑑賞の後、1Fの喫茶で昼食にサンドイッチセットを注文。内容はミックスサンド+コーヒー+ケーキ(薄く切ったショートケーキ)。他のメニューもピラフとか本当に普通の喫茶と言う印象だった。味はまずまず。帰りしなに覗いたケーキ屋の値段設定もそこそこで、パルナスのように激安ではなかった。商品のラインアップもあまり特徴が無かったが、その中ではお土産仕様の名古屋プリンが目を引いた。

エピローグ

その後の滞在期間中、名駅の地下街、栄の地下街、などでもヒマラヤを見かけた。そして、くやしいけどそこそこ売れているような印象を受けた。結論、ヒマラヤは店名の意外性と美術館を除けば、ごく普通のケーキ屋だった。
帰る日に、名古屋プリンを買って帰った。以前、パルナスの詰め合わせを持っていったら「これは、ちょっと、、、」と一蹴した母が、今回はうまいと言ってた。やっぱり味なのだ、問題の本質は。
私的に「大阪あんプリン」「京都抹茶プリン」「神戸プリン」に「名古屋プリン」を加えた4つをプリンの四天王と認定することで、今回のレポートを勝手に締めることにする。
(1998/10/14)

後日譚

私をヒマラヤ美術館との邂逅から、数年の月日が流れた。その間、何度か名古屋を訪れたが、山本で味噌煮込みを食すことは有っても、再びかのミューゼアムに足を向けることは無かった。
そして、その悲報を告げる新聞記事は、突然もたらされた。何たることか、まさかこんな事態になっていたとは。
「名古屋のヒマラヤ美術館、閉館へ 所有の名画が担保流れ」
記事を読むと、本業の洋菓子店の経営不振の穴埋めのため。借金の担保となり多数の作品が担保流れとなったそうです。
こうして、名古屋駅至近の名物美術館は、再び訪れる機会を得ぬまま、2002年12月をもって閉館したそうです。
私は事の仔細を知るものではない、でも、諸悪の根源は『ケーキの売れぬ浮世』にあるように思えてならないのである。
(2003/01/06)


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