text by Toshio Mizuno●● ●データ● 毎回一つのマンガ作品を取り上げ、その作品の魅力や長所短所などを語ったり、作品を掘り下げ分析していく「BS/マンガ夜話」に、「ドラえもん」が登場! 番組リンク:
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NHK-BSマンガ夜話で 「BSマンガ夜話」という番組は、1つのマンガ作品を選び、1時間かけてみんなで話し合うという番組なんですが、個人的には、いつも出演陣がちょっと変わった切り口でそれぞれの作品を分析し、新しい見方を提示してくれたりする点が面白く、好きな番組だったのです。その番組に、ついに「ドラえもん」登場!だった訳ですから、期待に胸膨らませて見た訳だったのです。 そして番組は終わりました…。 番組の頭で、「今日は短編コミックス45冊を中心に語って行きたいと思います。」というナレーション。やっぱり大長編ドラをレギュラー陣のみなさんが数冊しか読んでいない!?夏目さんは結局短編コミックス19巻までしか読んでないし…。 ただ、夏目 房之介さんが語っていた、作品ドラえもんの持っている児童向け漫画としての構造として「快・不快原則」(子供がおもしろさの基準とする-気持良さ-空を飛ぶ・思い通りになる、など)や「幼児退行願望」(デンデンハウスは気楽だな-てんコミ9巻を例に)を説明する部分など、ハッとさせられる部分もあり、客観的な見方が聞けてなかなか面白かったです。 しかし、さすが19巻までしか読んでなかった夏目さん。解説の中に大きな問題点がありました。てんコミ6巻の「さようならドラえもん」で、シリーズが一旦終わったのはおっしゃる通りなんですが、「大長編では、のび太はちゃんと成長しているんですよ。だからストレスが無い。短編も6巻まではすごくいいんですよ。でもここで一旦シリーズが終わり、またドラえもんが帰ってきて続いちゃう。それからだんだん(のび太が成長しないのが)イライラしちゃって、今回(19巻以降)読めなかったんですが…」ってお話。 そう、夏目さんは、ドラえもんのその後の大長編シリーズと短編の関係を把握していないのです。だからのび太が短編で成長していないなどと…。 ドラえもんという作品は、児童向けギャグマンガとしてスタートしましたが、大長編ドラえもん(劇場映画用原作)がスタートした1979年あたりから、大きく内容が変わっていったのです。以後毎年続く大長編ドラでは、スケールの大きな冒険活劇の舞台を用意し、それまでの短編では描きにくかった、キャラ達の内面や、友情・恋愛など、主要キャラ達の関係を掘り下げています。そして、その掘り下げた関係を短編の連載に反映させ、よりキャラクターに親しみを持たせる事に成功していると思うのです。それは成長したのび太の勇気や情熱であり、ジャイアンの優しさと思いやり、しずかののび太への信頼と愛情という、短編だけでは表現出来なかった、キャラクターへの説得力となっているのです。長編以降のドラ短編では、道具の面白さよりも人間関係の物語を描こうとする話が多くなり、それがまた、この作品世界に深みを持たせる大きな要素になっています。1979年からの大長編と短編は、互いに影響しあい、ドラえもんという作品を大きく成長させていったのです。 やっぱり出演者の世代に偏りがあるので、リアルタイムに読んでいた漫画とそうでない漫画とでは、力の入れように差が出てしまうのでしょうね。 しかし残念でした。 |