イベント・リポート●●
vol.3
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1999.7.19掲載●●

text by Toshio Mizuno●●
Illustration by Harumi Mizuno●●

●データ●
横浜ランドマークホール
ドラえもん誕生30年-夢は無限-
 藤子・F・不二雄の世界展

藤子・F・不二雄先生の原画や著作本、映像、写真、先生の趣味のコレクションや、身の回りの愛用品の品々、作品の資料など、藤子・F・不二雄先生の歩みを感じられる貴重な展覧会です。限定グッズ販売もあります。
お問い合わせ●
ランドマークホール
●●●●●●●(横浜ランドマークプラザ5階)
●●●●●●●(神奈川県横浜市西区
●●●●●●●●みなとみらい2-2-1
●●●●●●●●TEL:045-222-5050)
期間開催●
1999年7月9日〜8月1日
会館時間●午前11時〜午後8時
●●●●●(入場は終了30分前まで)
●●●●●(最終日は5時閉場)
入場料●前売/大人800円、
●●●●●●●●小・中学生400円
●●●●●当日/大人1,000円、
●●●●●●●●小・中学生500円

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先生の絶筆原稿を前に
立ちつくし沈黙するふたりであった。

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「きこりの泉」のカラー原稿!観ている方々、
「きれいなジャイアン」は大受けでした。

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藤本先生の奥様へのラブレターに
うちの妻がとても感動しまして……。
帰りの桜木町駅までの道のり、
ラブレターなんてロマンチックなもの
書いたこともない僕を
チクチクと責めるのでした。

'99横浜・
藤子・F・不二雄の世界展

7月9日から8月1日まで、横浜ランドマークホールで開催されている、ドラえもん誕生30年・夢は無限大「藤子・F・不二雄の世界」展を観て来ました。この展覧会は98年8月に先生の生まれ故郷、富山県の高岡市美術館で開かれた展覧会の巡業開催で、今回で富山、香川県高松市美術館に続き3回目になります。

横浜での今回は、みなとみらいに建つランドマークタワーに隣接しているショッピングセンター「ランドマークプラザ」の5階、展示会ホール「ランドマークホール」で開催されました。
入り口の入場券売場の前に、早速4枚の原画が展示。「
ゴロアワセトウ」のカラー扉絵や「ドラえもんのメカ解説図」などもありました。

入場してすぐの展示スペースには、1933年(昭和8年)藤本弘(藤子・F・不二雄)誕生からの少年時代のゆかりの品々の展示。学生時代の通信簿(成績は優秀)や、安孫子氏と一緒に16才の時制作した肉筆の回覧雑誌「少太陽」。19才の時のコンビ名「足塚不二雄」で初の単行本デビューとなった「UTOPIA最後の世界大戦」、手塚治虫から送られた藤子コンビからのファンレターの返事のハガキなどの展示がありました。

次に1954年(昭和29年)からのトキワ荘時代の展示物。
先ずは富山から上京した際に持ってきた皮の
トランクカバン(まんが道の中で、上野公園の西郷像の前で盗まれていたカバン)。新人としては多くの連載を抱えるが、1955年の21才の正月に高岡に帰省した際、無気力感に襲われ、多くの連載の締め切りが間に合わなくなり、出版社を怒らしてしまいます
その時に、原稿の埋め合わせをしてくれた
寺田ヒロオ氏からの励ましの手紙や、藤本氏本人直筆の、今回の事件に対する反省文の下書きとされる文書の展示。その頃描かれた「バラとゆびわ」などの展示。

次に1959年(昭和34年)からの週刊誌時代の展示物。
「週刊少年サンデー」に連載した「
海の王子」の原稿展示。小学館学年学習誌の「ロケットけんちゃん」や「てぶくろてっちゃん」の原稿や設定資料など。

1963年(昭和38年)からのスタジオ・ゼロ時代
トキワ荘仲間と作った
有限会社スタジオ・ゼロは、アニメ制作会社。この会社のアニメ企画として「オバケのQ太郎」が生まれました。初めは共同で描かれていた漫画も、後に藤本氏が個人で受け持ち、藤本氏の作品になります。当時の写真等展示。

次にいよいよ1970年(昭和45年)からのドラえもん誕生時代の展示物。
当時の写真や
ドラえもんの初の立体模型(美大生に頼んで作ってもらった物)。第1話のパネル展示など。

1975年(昭和50年)からの青年向けSF漫画誕生時代の展示では、
ドラえもん総集編本として発行された「
コロコロコミック創刊号」や、SF短編の紹介パネル。77年に開かれた「藤子不二雄の25才を励ます会」で手塚治虫から贈られた「ドラえもん」の色紙などを展示。

1980年(昭和55年)からの大長編ドラえもん誕生時代の展示では、
大長編の紹介パネルや原画。

そして1988年(昭和63年)からの藤子・F・不二雄時代の展示。
藤子不二雄
コンビ解消以降からお亡くなりになるまでの時代。大長編ドラの設定画やストーリー・台割りノート
藤本氏が藤子プロスタッフに向けた直筆のメッセージには、漫画家としての心得と共に、『
「藤子プロ作品は、藤子本人が書かなくなってからグッと質が上がった」と言われたら嬉しいのですが』と記されていました。

絶筆原稿である「のび太のねじ巻き都市冒険記」の原稿のまわりに、ドラえもんのメインキャラクター達の人形が飾られていました。これが最後の先生の原稿だったわけですね。

年代別展示の後は、単行本の展示や(幻のオバQもある!)、キャラグッズ・ビデオ・ゲームなどの関連商品の展示があり、いよいよメインホールへ。

メインホールでは、大量の藤子・F・不二雄先生の原稿を展示していました!
初期の「
ある日本人留学生からのローマ便り」の原画から、晩年のSF短編の原画まで。

改めて感動したのが、原稿の細かさと美しさです!
背景の描き込みやトーンの微妙な濃淡は、単行本のサイズでは潰れてしまっているのです。
原寸大の原稿を見ると、それがしっかり確認できます。
後期の
SF短編や、大長編ドラえもんTPぼんの遺跡などの描き込みは思わず息を飲む美しさです。

また、カラー原稿が、とてもポップな色彩で塗られているのも印象的でした。
オバQドラえもん(きこりの泉など)を観ると、白黒単行本とは全然違った印象で、彩度の高い、鮮やかな画面が展開されているのです。
これらは、連載当時のプロセス4C印刷(C.M.Y.K)でも、生原稿の鮮やかさは再現されていなかったと思われます。(蛍光的な色は、4C印刷では出ないため。)

多くの原画の美しさに感動した後は、藤子・F・不二雄先生の身の回りの品々や、趣味のコレクションの数々の展示。
先生が愛用していた
ベレー帽たばこの木製パイプ。世界中を旅して回った写真機8ミリカメラ
恐竜の人形自動車の模型ミニカー鉄道模型のディオラマまで!
先生がよく仕事中聞いていたという
落語のテープクラシックのCD映画のLDコレクションアコーディオン?(初耳でした)などなど。

ご自宅での先生のお顔も見る事ができました。
先生のご家族との写真や、娘さん達とのやりとりに描かれた
サンタクロースの絵
(クリスマスプレゼントの希望を聞く為の絵手紙。)
先生が娘さんからプレゼントされた、
馬の人形ピラミッドの模型などなど。お家ではよくお子さんと遊んでらっしゃったようです。
注目すべきは、結婚前の若き先生が、仕事に追われている東京から、後に奥様となる富山県高岡(故郷)の正子夫人に向けて書かれた
お手紙(ラブレター!?)です。
日常の出来事を絡めながら、さりげなく高岡での夫人を励ます言葉や、「
ネクタイの結び方を知っていますか。知らなかったら覚えておいてください」という大胆でかっちょいいプロポーズのセリフまで。
先生のユーモア感や、やさしさ。ロマンチックな性格が見えてくる貴重なお手紙です。
このお手紙の直筆が見れるだけでも、この展覧会、大きな価値がありますね〜!

その他、アニメ作品や先生を紹介したビデオ上映、今回の展覧会オリジナルのキャラクターグッズ販売などがありました。

全体的に見て、良く構成された展覧会だったと思いました。
藤子・F・不二雄先生の生原画やゆかりの品々の現物は、滅多に見られない貴重な物です。
現在絶版になっている「
オバQ」の原画や、カラーの「きれいなジャイアン!」が見られるのですから、藤子ファン、ドラえもんファンは必見でしょう。会場スペースも結構ゆったりと広いので、じっくり原画を見たい方も満足できると思います。
次回は奈良での開催。今後も日本のあちらこちらで開催の予定だそうです。



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