原作漫画 & アニメーション●●
vol.4
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1999.6.28掲載●●

text by Toshio Mizuno●●
Illustration by Harumi Mizuno●●

ドラえもんの中の
スターウォーズ
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パロディーって著作権侵害?==

スターウォーズの第1作目(エピソード4)が公開されたのが1977年。当時、まだ特撮主体の映画は珍しく、技術的にも難しい時代でした。
日本では前年に「
劇場版・宇宙戦艦ヤマト」が大ヒット。アニメでは宇宙戦争を見ていた日本の観客も、やはり実写でのスペースオペラには驚愕したのでした。当時としては最新の技術を駆使した特撮と、勧善懲悪・しかも宇宙へのロマン溢れるストーリーは多くの人々を釘付けにし、映画は大ヒット。その後の多くの映画・小説・漫画に影響を与えたSF映画の金字塔となったのです。

宇宙への冒険!もちろん我らが藤子・F・不二雄先生も大好きな題材。藤子先生が映画スターウォーズを好きだったかどうかは解りませんが、先生のレーザーディスクコレクションには、しっかりスターウォーズ3部作が入ってました。少なくとも資料としては活用されていたようです。

そしてついにドラえもんの中にもスターウォーズが登場します。
てんとう虫コミックス第19巻収録の「
天井うらの宇宙戦争」は、まさにスターウォーズのパロディーでした。ドラえもんに出してもらった未来のゲーム機「スペースウォーズ・ゲームセット」で宇宙戦闘を楽しむのび太でしたが、その中に本物の小さな宇宙船が紛れ込んでいた!という始まり。中から出て来たのはR3-D3というミニロボット。本家さながらに、主人のアーレ・オッカナ王女が助けを求めるホログラフ映像をのび太達に見せるのです。しずかちゃん似の王女を救い出そうと、悪者アカンベーダーの秘密基地に向かうのび太達ですが、なんと秘密基地はジャイアンの家の屋根裏に!というストーリー展開。
アーレ姫やアカンベーダーも本家そっくりだし、やたら勲章をあげたがる王女っていう設定も、
スターウォーズを観てる人にしか解らないギャグ。とても藤子先生らしいふざけ方で爆笑物なのです。

しかし、ここでちょっと気になるのが、「これってパロディーでしょ。商業誌でやっていいの?」という小さな疑問です。

ドラえもん同好会を見ていただいてる方ならご存知だと思いますが、当ページでは以前、ドラえもんのパロディー漫画を連載していました。しかし小学館より著作権侵害との指導を受け、全て削除したのです。藤子プロの公式ページにも注意として、パロディー作品などのHPでの公開(放送)を禁止すると明記されており、2次的著作物(ある著作物を原作として、そこに新たな創作性を加えた著作物)はいっさい許さない(許可を出さない)方針を説明しています。

果たして、パロディーとは元ネタの著作権を侵害するものなんでしょうか?確かに現行の著作権法では、2次的著作物を公開するには、元の著作者の許可が必要とあります。しかしその基準は曖昧で、どの程度似ていたら2次的著作物なのか?それを誰が判断するのか?についてがはっきりしていません。そもそもパロディーとは、昔から文学や映画、漫画の世界で多用されてきた1つの技法であり、漫画で限って言えば、「アルセーヌ・ルパン」の孫が活躍する「ルパン三世」、「銀河鉄道の夜」を下敷きにした「銀河鉄道999」(これは後に藤子先生がドラ長編・のび太の銀河超特急としてパロってますね)。我らが藤子先生も「スーパーマン」をパロって「パーマン」を作っています。

藤子プロや小学館が、パロディー作品を2次的著作物としてひと括りにするのなら、「パーマン」はもう出版出来ないでしょうし、いろいろなパロディーが満載の長編ドラえもんにも問題が出てくるでしょう。昨年の「のび太の宇宙漂流記」のストーリーだって、悪の道に引き込まれる父親を救おうとする主人公の少年、まさしくスターウォーズの主人公ルークとダースベーダー(アナキン)の関係ソックリだったし…。

ドラの「天井うらの宇宙戦争」。この作品は誰が見ても、スターウォーズのパロディーと解るでしょう。しかしパロディーというのは、決して元ネタの作品を汚したり、馬鹿にしたりするためのものではないのです。元ネタに対する愛着や理解など、ある意味、元ネタに対するオマージュであるのがパロディーなのです。

一部の人にパロディーに対して偏見を持っている方々がいらしゃいますが、世の中の著作物の多くは、過去に作者が経験し、見てきた物がベースになっています。それは子供の頃見た漫画や映画かもしれないし、多感な時期に影響を受けた小説や絵画かもしれません。全てがゼロから作られた著作物なんてほとんど存在しないのです。
過去の作品を再構築した物だって、りっぱな著作物なんです。ただ受け手が元ネタに気付くか気付かないかの違い。こんな曖昧な基準を誰が差別できるでしょう。

以前、小学館にパロディーと2次著作物の定義についての質問をしましたが、明確なご返答はいただけませんでした。これについては現在も法律の専門家が論議している段階なので、即答出来ないのは当然なのです。
ドラえもんの著作者、藤子・F・不二雄先生がお亡くなりになった今、なぜか
ドラえもんの著作権の実質的な管理小学館が行っています。
原作者亡き後に、なぜ第三者が
ドラえもんの続編(近年の長編やドラえもんズ)を描けるのかも疑問ですし、それについての説明もありません。
多くの純粋なファンのサイトに警告を出すよりも、
法律の具体的解釈や理解、ファンサイトへの納得できる説明をするのが先だと思うのですがいかがでしょう?



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