鎌倉彫と版画

山本先生インタビュー 99年11月6日 山本先生ご自宅にて

山本先生

[恩師を訪ねて]コーナーの第4回は山本先生です。
3年E組の担任で、数学を教えてくださいました。
今日は、東京郊外の武蔵小金井にあるご自宅にてインタビューを行いました。中央線・武蔵小金井駅から車で5分ほどの閑静な住宅街です。

今回の出席者は、山口明子、芹沢啓子、梶、広瀬、栗山です。

48net:先生のお元気なお姿を拝見できて安心しました。お幾つになられたのでしょうか。

山本先生::今年でちょうど70歳だよ。学校を退職してちょうど10年。

そこで煙草に火をつける山本先生。
山本先生:煙草を吸って53年だ。ショートピースからセブンスターには変えたけど、これはもうやめられないね。
おもわず暗算をしてしまう出席者。

48net:先生は目黒11中の後はどこへ異動されたのでしょうか。
山本先生:昭和48年3月まで目黒11中にいて、その後は港区の港中学に6年いた。田町から歩いて通ったね。魚籃坂の近くだった。

48net:その後はどちらへ。
山本先生:目黒6中だね。ここで定年退職になり、同時に不動前から武蔵小金井に引っ越した。

48net:定年退職後は嘱託として仕事を続けたと、他の先生もおっしゃっていましたが。
山本先生:そうそう、嘱託時代は目黒9中に1年、目黒4中に2年いたんだけど、武蔵小金井からは遠くて通勤が大変なので、こちらの国分寺4中に2年勤務したんだ。通勤は自転車で30分と大分楽になった。ここで本当のリタイヤ。

48net:目黒11中時代の思い出をお聞かせください。
山本先生:僕は水泳部の顧問をしていたので・・
そこであせる水泳部出身の梶。
48net:先ほど電車の中で、梶は「山本先生は授業だけお世話になった」と言っていたのでは。
:そう言われてみれば、水泳部の顧問は山本先生だったような・・

48net:夏休みになると水泳部の練習に娘を連れて、梶によく遊んでもらったよ。娘はソフトウェア会社から転職して、今は高校で英語の先生をしているよ。
:夏休みにそんなことが・・・・(記憶の糸をたどる)

梶・栗山・山口・芹沢 48net:私たちが11中を卒業してから誰か生徒とお会いしたことがありますか。
山本先生:山口(充宏)と中井(新太郎)はときどき家にお酒を飲みに来ていたね。そうそう竹内(克太)の仲人もしたよ。

48net:それは知りませんでした。ほかに印象に残った生徒はいますでしょうか。
山本先生:皆よく覚えているけれど、例えば塩崎が鞄を呑川に流したとか、伊藤(幸夫)はのんびりしていたとか。

48net:伊藤(幸夫)君は医者になって、緑が丘にある実家の「伊藤医院」でお父さんの手伝いをしているようです。それにしても先生はよく覚えていらっしゃいますね。
山本先生:目黒11中と港中学までは、生徒の顔と名前を覚えているよ。40代は記憶力がよいのかな。

48net:先生の出身地はどちらでしょうか。
山本先生:僕は岡山出身で、岡山で6年教職について、その後上京したんだ。岡山時代の友達とは時々集まって話をするね。40〜50歳ぐらいは商売の話をしていたけど、55歳ごろから商売の話はなくなって、ゴルフや釣りの話になったね。そして60歳を過ぎてからはもっぱら健康と薬の話が中心になった。

48net:健康と言えば、お体の調子はいかがでしょうか。
山本先生:この歳だから体力は落ちているが、特に病気はないね。先日人間ドックで調べてもらっても何もなかった。
48net:それは何よりです。

48net:林間学園の時に先生からとてもこわい怖い話を聞いた記憶があります。
48net:それは聞いたことがない。先生、教えてください。
山本先生:そういうことがあったね・・・それは僕の若いときで学校で宿直をしていたときの話だね。夜中に白髪のお婆さんが訪ねてきて、今晩泊めてください、と言うんだ。当時はまだこうした家のない人が大勢いたね。僕も若かったので、頼みを断ってしまった。そうしたら、翌日、そのお婆さんが近くの川に浮かんでいたんだ。
48net:(思わずぞっとして)きゃー、怖い話ですね。

48net:あと、仲の良い先生同士で毎年旅行に行かれるとの話を聞きました。
山本先生:そうだね。目黒11中では大津先生、岡本先生、山口先生、他に6中と8中の先生とよく旅行に行っているよ。
48net:今年は残念なことに、大津先生が亡くなられました。
山本先生:大津さんは旅行の企画をするのが好きで、今年の8月の旅行は大津さんが企画して予約したんだけど、結局行けなかった。去年、ご夫婦で若狭まで皆で旅行したのが最後だった。

48net:大津先生は自分で車を運転してよく旅行されたと聞きました。山本先生はいかがですか。
山本先生:ペーパードライバだったが、武蔵小金井に来て車を運転するようになったね。買い物の時に便利だし・・そうそう車は、山口(充宏)が三菱自動車の阿佐ヶ谷支店に研修で配属されていて、そこから買ったよ。

話は先生の趣味へ移ります。
山口明子と鎌倉彫のお盆 48net:先生のご趣味は、鎌倉彫とそれに版画でしょうか。
山本先生:鎌倉彫と版画は昔からずっと続けているね。最近は油絵を始めたよ。

48net:鎌倉彫はその名前のとおり、鎌倉から始まったのでしょうか。
山本先生:そうだね、鎌倉時代の仏師運慶の孫康円が、帰化人陳和縁と共に法華堂の仏具を彫ったことに始まると伝えられているね。名前から鎌倉のみと考えがちだけど、実際には京都やその他の地方でも作られていたらしい。鎌倉では江戸時代は仏師の副業だったが、明治以降に広まったね。

48net:鎌倉彫りは、どのような手順で作るのですか。
山本先生:木地に模様を彫りその上に漆を塗る、といたってシンプルだね。けれども、彫り方は薬研堀(やげんぼり)・キメ彫り・桃山彫りと何種類かあるね。それに、木地は丁寧に磨かなければならないし、漆は何回も塗っては研ぐことを繰り返さなければならない。非常に手間がかかるね。

48net:それほど手間がかかるとは思いませんでした。どの位の期間がかかるのですか。
山本先生:このくらいの大きさのお盆(右写真)で、3ヶ月ぐらいかかるね。

48net:先生の他の作品も見せていただけますか。
山本先生:仕事場を皆に見せたいけど、漆でかぶれるといけないから、やめておこう。作品を持ってくるよ。

と立ち上がって、鎌倉彫の作品を持ってきていただく。大小のお盆、文庫など幾つもあって、どれも素晴らしい作品。
48net:赤と黒のコントラストがきれいですね。色はどのように付けるのですか。
山本先生:漆は元々は飴色で、朱を混ぜて赤色、鉄分を混ぜて黒色にするんだ。僕も最初は漆でかぶれたけれど、今はもう大丈夫だね。

芹沢啓子と鎌倉彫のお盆 48net:鎌倉彫を作るとき、気をつけていることを教えてください。
山本先生:模様を彫るときは、表面を平らにすることだね。模様の山の高さを合わせないと載せたお茶碗などが傾いてしまうよ。
それから、漆を乾燥させるときは、湿気がないと乾かないんだ。最初は知らなかったが、だんだん分かってきた。
あと、張り合わせるときは天然の膠(にかわ)を使うこと。人工のものでは何年かたつとはがれてしまうね。

48net:湿気があると乾燥しにくいような気がしますが、逆なのですね。それから、鎌倉彫というと花や風景を思い浮かべますが、作品には幾何学模様がありますね。
山本先生:そうそう、数学的発想なんだ。鎌倉彫をする人は文系の人が多いが、僕みたいに理系の人は珍しい。僕の作品の特徴だね。
48net:そう言われてみると、サインカーブですね。

以前の作品の写真を見せていただいたところ、展覧会の写真があり、受賞もされている様子。
48net:先生の作品はどのような賞を受賞されたのでしょうか。
山本先生:幾つか受賞できたね。飾皿「山なみ」(山口さんの写真)は第22回鎌倉彫創作展奨励賞受賞、 飾皿「渓流」(芹沢さんの写真)は第15回鎌倉彫創作展奨励賞受賞だね、それに文庫(最後の写真で梶君がかかえている)は大賞を受賞したよ。
48net:確かにこの文庫は素晴らしいですね。立体的で難しそう。

油絵と梶 次の話題は版画へ。
48net:先生の版画は、いつも年賀状で拝見しています。来年の年賀状の分も作られたのでしょうか。
山本先生:龍の版画はもう作ったよ。
と作品をみせていただく。
(これは48netの2000年年賀状でごらんください)
 山本先生の版画(その1)
 山本先生の版画(その2)

先生に油絵を持ってきていただく。
山本先生:これは最初に描いた絵だね。課題が「三原色と白と黒で描くこと」ということで苦労したね。
48net:とても最初に描いた絵に見えませんね。落ち着いています。
山本先生:油絵は版画とだいぶ勝手が違って、これからまだまだだね。

48net:山本先生、最後に私たち同窓生にメッセージをお願いします。
山本先生:君たちの年代では子育てが大きな問題だと思う。どうも最近は、親が子供の面倒を見すぎる気がするね。子供であっても自分のことは自分で考えさせることが肝心だね。

48net:山本先生、今日はたくさん作品を見せていただき、さらに楽しいお話をありがとうございました。どうぞこれからもお元気でご活躍ください。

山本先生と出席者一同

山本先生と先生の作品を手にした出席者(前列:芹沢・山本先生・広瀬、後列:山口、梶、栗山)

(おまけ)インタビュー中の梶と栗山


さて、お待ちかね、山本先生から読者の皆さんにプレゼントです。
山本先生から鎌倉彫の作品を無理を言っていただいてまいりました。

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