MONKIの広告外論(第12講)

「試験答案の実態」

猿山義広(元2年D組らしい、3年生のときに転校、現駒沢大学助教授)

 試験の採点をしていると、「こいつ何考えているんだ」と思わざるをえないような答案がある。正確にいうと、答案の最後に書かれた教員(つまり私)へ向けてのメッセージなのだが、今回は無断でその一部を公開する。

 その1:「体育会空手道部です、押忍ッ。よろしくお願いします」(3年男子)
 よくあるパターンだが、空手道部というところで脅しをきかせている。彼の答案はどう好意的に評価しても0点であり、こいつが合格なら不合格者はこの世に存在しない。ちょっとおっかないけど「不可」。

 その2:「問題を間違って暗記してしまいました。45単位も残っているので、単位は落とせません。すいません、すいません、すいません・・・。」(4年男子)
 典型的な泣き落し。答を間違ったのではなく、問題を間違ったと自己正当化を図っているところがポイント。評価は30点。お情けで30点ゲタを履かせて「可」。

 その3:「こんなことを書くと言い訳になるかもしれませんが、前期のテストは就職活動があり全然出来ませんでした。卒業単位のことが気になっているので、何とかしてもらえないでしょうか」(4年女子)
 「言い訳になるかもしれない」ではなくて、完全な「言い訳」。ところが採点してみると80点取れている。前期試験は0点だが「可」。

 その4:「私なりにがんばったつもりです。どうもすみません」(4年男子)
 「私なりに」がんばるのではなく、教えたことを覚えるようにがんばって欲しかった。まあ50点はいっているので、「可」ということに。

 その5:「自分は5年生なので、もう卒業したいです」(5年男子)
 先生(つまり私)は6年生まで頑張ったのだから(自慢にはならないが)、教え子にも同じように頑張ってほしい。でも、70点だから「良」。

 その6:「1年間お疲れさまでした」(3年女子)
 君の答案を見ていると、その疲れがいかにムダなものであったかよくわかった。40点ぐらいだろうが、再履修されると疲れが倍になりそうなので「可」。

 その7:「正月の箱根駅伝で第◯区を走った××です」(3年男子)
 だから何なんだよ、といいたいところだが、私も藤沢まで応援にいき、家族と一緒に懸命に励ましたランナーであり、しかも信じられないことに出来がいい。「優」。

 その8:「ゼミ生の××です」(3年男子)
 試験ともなれば多少は緊張するものだが、ゼミ生の場合、ゼミの先生の試験だから楽勝と考えているらしく、試験が始まってもボヤーっとしている奴が多い。今年はその態度があまりにもダレていたので、「お前ら、何余裕かましてるんだ!」と試験中であるにもかかわらず説教した。周囲の学生はさぞ迷惑だったと思う。でも「良」。

 その9:「この不況期に何とか就職できました。あとは卒業だけです。先生の仏心におすがりします」(4年男子)
 1番困るパターン。公平に評価すれば「不可」以外にありえないが、そうすることで彼の一生を滅茶苦茶にする権利は自分にはない。彼を雇うことになる会社の社長には申し訳ないが、あとは会社のほうで教育してもらうことにする(つまり「可」)。彼の採用を決めた人事担当者は異動させたほうがいい。

 その10:「先生の授業、とっても面白かったです」(3年女子)
 ウソつけ!

 何だか書いているうちに空しくなってきたが、まあ大学の定期試験というのはこんなもんである。昨今、文部省が大学改革を唱えているようだが、文系ではほとんどムダな努力だろう。大教室で300人以上の学生を前に、1回90分程度、学生の私語を抑えつつ、しかも内容がある専門的な講義を年間30回近くできるような人間などいるわけがない(←完全な開き直り)。成人式の講演をやりたがらない文化人・著名人は多いが、その気持もわかる。

 1つの解決策としては、年間授業料制をやめて、1講義いくらという具合に授業ごとに販売したらいいのではないか。そうすれば学生もコスト意識を抱くだろうし、ついでに教員に支払う報酬も受講人数に応じた歩合制にすれば、ダメな教員の給料を大幅にカットできるようになる。いいアイデアだと思っているが、学内では絶対にいうつもりはない。なぜなら、自分の給料が間違いなく下がるからである。

13回目へ続く・・


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