メーカー:ISOPHON 名称: P2132
形式:フルレンジ 同軸2ウェイ サイズ(口径):30cm X 20cm 楕円
周波数特性:不明
その他:アルニコマグネット

直径10センチのツイーターが4本のアームで中空に浮いた状態で保持されている。ボルトは真鍮製でかなりしっかりと止めてある。
鉄板プレスとはいえ厚みがあり、全体の重量は見た目から想像するよりもかなり重い。四隅に開いたマウント用のネジ穴の径がそのあたりを物語っており、その堅牢さは象が踏んでも壊れないとでも言おうか、実にしっかりした作りだ。磁気回路も必要十分なサイズを得ており、実際に力強い音を奏でる。

イソフォンと言えばドイツの老舗であり、ことスピーカーに関しては最古参でもあり、テレフンケンやジーメンスにも供給をするほどの技術力を持つメーカーだ。同社往年のフラッグシップユニットに有名な“オーケストラ”という30cm同軸型ユニットがあるが、ここに紹介する2132に採用のツイーターは全く同じものを使用しているそうだ。そのオーケストラは昔聞いたときにはあまり良い印象は持っていなかった。だが、最近になりイソフォンの12cmフルレンジを聞いて凄く気に入り、他のユニットにも興味が湧いてきた。それと楕円形スピーカーを持っていないので一度試してみたいという理由が重なり入手してした。実は、オーケストラと同じツイーターを装備していることを知ったのは購入してからのことだ。
フレームは鉄板プレスなのだが肉厚があり実にしっかりしている。そのうえ淡いクリーム色の塗装が施してあり高級な印象がある。楕円というとテレビやラジオに内蔵されたスピーカーのイメージがあり安っぽさがつきまとうのだが、このユニットは20cm×30cmとかなりの大きさで風格があり安っぽさは微塵たりとも感じない。コーン紙の剛性は高く質量は大きい方だと思う。だが、ウーファーとして駆動しているかと言えばさにあらず、ツイーターに5マイクロほどのキャパシタを介しているだけでフルレンジ+ツイーターの構成になっている。なおエッジはフィックスドタイプで何も塗布されていない。一方のツイーターは薄く張りの強いコーン紙がピーンと張りつめている感じだ。同じドイツはサバ社のツイーターにもどことなく似ている作りだ。ガスケットは少し厚めのフエルトなのだが、ツイーターを保持しているアームの付け根には貼られていないので、はて密閉製は保たれなくていいのかしらと心配してしまう。ツイーターのフレームにもフエルトのガスケットが貼ってあるところをみると単品でも使用されていたユニットなのかもしれぬ。
さて、このユニットを収めるエンクロージャーだが、資料が無く当時の同社製スピーカーシステムを参考に見てみると、いずれも密閉型の箱に収められているものが多いので、試しに密閉箱に入れてみた。結果は正解?十分な低音を響かせ朗々と鳴ってくれた。高域も艶やかで伸びのある音を奏でる。測ってみると100ヘルツを中心とした山があり、これが低域の量感として現れていることを示している。まるでバスレフ箱の低域のようだが、バスレフにありがちなディップが無いので違和感がないのかもしれぬ。軽めの低域を望むので有れば後面開放型か平面バッフルにマウントすればフラットな特性が得られるかもしれない。
さて、いろいろ再生してみての印象だが、クラシックとの相性が良いように思う。特に弦の響きは美しくエネルギッシュだ。最も良いと感じたのはバッハの無伴奏チェロを聞いたときで、今までで聴いた中で最高のマッチングだと感じた。またオーケストラもスケール感に溢れ、楽器の定位が良く気持ちよい。そして、何よりもこのユニットの良さは奥行き感の再現だ。前後の厚みがうまく表現されることで音にスケール感が一層加わる。こう書くと良いことずくめのようだが、ロック、ポップス、ジャズだと多少違和感を覚える。うまく表現できないが私は、このユニットをクラシック専用として聞くことにした。

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