メーカー:JBL 名称: D123 (16Ω)
形式: エクステンデッドレンジ サイズ(口径):30cm
周波数特性: 30-15000hlz その他: アルニコVマグネット
このD123は、JBLを代表するユニットのひとつといっても過言ではなかろう。JBL初期のシグナチュアー・シリーズのひとつでランシング氏の携わった製品のひとつだ。また、このユニットは幾度かの設計変更を経て現在でも同社のウーファーユニットして生き残っていることからも当時の基本設計の素晴らしさがうかがい知れる。
ただ、フルレンジとして紹介するのには少々無理があるかも知れぬ。JBLでもエクステンデッドレンジと呼んでいるようにウーファーの再生帯域を広げたものと位置づけたほうが受け入れやすいだろう。公称では15000ヘルツまで高域再生が可能となっているが、実際に測ってみると10000あたりから下がり始め13000から上は殆ど出ていないことがわかる。
このユニットの特徴はなんといっても奥行きの狭さである。これは壁に埋め込んで使用することを主目的としたための設計で当時のカタログを見ると次のように記してある。

The Jim Lansing Signature Model D123 in a 12" Extended Range Speaker of radical new design. It is extremely shallow and very compact so that it may be mounted in enclosures and places which heretofore required a unit of small diameter. With a deoth of just 35/8", the D123 is the first and only 12" speaker that can be mounted, between studding, flush with with the surface of any standard wall or partition. Of course, the D123 is not limited to wall mounting; its performance is improved when enclosed in a reflex cabinet or loaded horn.
要するに画期的に新しい設計により、どんな壁の隙間にでもマウントが可能だということだ。だが、勿論のことだがバスレフエンクロージャーやホーンロードエンクロージャーに収めれば、その性能をフルに発揮するとある。
事実、このユニットは実に贅沢な作りになっており、ご覧のフレームは肉厚のダイキャストで重量級だ。そして、ボイスコイルは直径3インチのアルミエッジワイズ巻きで強力な駆動力を持つ。
コーンにはコルゲーションが入り軽いが剛性は高い。そして、高域を稼ぐのに貢献しているのがアルミのセンターキャップである。ちょうどこのセンターキャップの径とボイスコイルの径が重なっている。左の写真は巨大なセンターキャップとボイスコイルが発生する背圧を逃がすための穴だ。
横から見ると奥行き僅か92mmというのがいかに薄いかがわかる。だが、ここまで頑丈に作る必要があるのだろうかと思うほどフレームは堅牢に作られている。こんなものを支えられるのだからアメリカの住宅はさぞかし頑丈にできているのだろう。
それにひきかえターミナルはなんとも寂しく細い線でないと繋げない。
このユニットを入手した経緯だが、D130が欲しかったのだが部屋のサイズには不相応なので似た感じのD123にしたというのが本音だ。というのは、高校生の頃に近所のジャズ喫茶の壁にD130と075を埋め込み鳴らしているところがあり、ずっと憧れていたのだ。その音をはじめて聴いたときは実に新鮮でこれほど躍動感に溢れる音を出すスピーカーがあったんだと感激したものだ。ちなみに、その店にはよくレコード会社の人がサンプルを持参しマスターに感想を聞いていた。まあ、そんなこともあり、ジャズを聴くならこの組み合わせしかないと思っていた。だが、学生の身分ではまだまだ手が届かず、大学の頃に山水製の格子状グリルのついた箱に20cmフルレンジLE-8Tを入れたもの入手し、長いことメインとして使用した(現在も手元にある)。その後、いろんなスピーカーを使っていたのだが、ひょんなことから先にツイーターの075を手に入れて昔を思い出して組んでみようという気になったわけである。
さて、ここはフルレンジを紹介する場なので、まずはD123のみでの音の印象を書く。音を出した瞬間は高域が実に寂しく聞こえるのだが、それにも増して実に元気の良い弾むような中低域に感動し、高域のことなどどうでも良いとさえ思えてくる。もし、古いモノラル盤が主体であったり、ラジオが主体で聴くのであればD123だけでフルレンジとして使用するのも悪くは無い。最初に書いたように上は13000くらいまでしか出ないが逆に聞き易いとも言える。リズム楽器が明瞭に聞こえるのせいか十分に音楽も楽しめる。これは低域の量感がたっぷりとしているのに、けしてぼたつくことがなくヌケがよいからだと思う。要するに音の粒立ちが良くスピード感があり、個々の楽器やボーカルが実にはっきりと聞き取れて気持ちが良い。なお、自分はJBLが推奨する下表(1977年の資料、表の見方は60から85リットルであれば開口83.9平方センチ長さ5.1センチのポートでFbが60リットルのときに58hz、中間サイズだと53という意味)の最小エンクロージャーである60リットルで鳴らしている。
せっかくなので、075と組み合わせた時の印象も付け加えることにする。自分はD123の高域はカットせずにそのまま出して075(8Ω版)の3000hz以下をキャパシタ1個で落としアッテネータで繋いでいる。これでほぼ20000hzまでフラットに伸びた再生が可能となる。ちなみに、手持ちのLE-8Tに075を繋ぐとアッテネーターで絞っても075が勝ってしまいバランスが悪くなってしまった。やはり推奨の組み合わせどおりにして正解である。お互いのユニットの良さが相乗効果を生み生き生きとした音を奏でる。075が加わることでピアノが活き活きとしてシンバルの切れもよくなる。全体として躍動感が漲り演奏が生々しくなる。だが、けしてうるさくはなくバランスが整っている。075もツイーターとしては下の方まで出るタイプなのでスコーカーとツイーターが加わったような雰囲気である。
容積リットル 60 - 85 86 - 114 115 - 140
開口面積平方センチ 83.9 116.1 167.7 167.7 193.5
lポート長センチ 5.1 1.9 6.4 1.9 1.9
Fb(hz) 58 53 62 58 55 51 59 56 55
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