それまで頭の中で煮詰まっていたアイデアがある日突然、振って湧いたように
手が動いて形になってしまうことがある。しかも、その突然のインスピレーショ
ンが非のうちどころが無いくらいに素晴らしく神がかっている時がある。自分の
意志ではなく何かもっと大きな意志により作らされたのではないかと思ってしま
うほどのリアリティ。そんな神の手で作られたであろう至宝のシーユーレーター。
いやホントにそこまで思えてしまう程の作品である。このシューズの至る所にデ
ザインの神は宿っているのだ。ああ。
 
 誰がなんと言おうが20世紀No1のスニーカーはハイレス的にはシーユーしか
ない。理由は言わずもがな見てもらえばお分かりのハズだ。こんなに存在感があ
ってスタイリッシュなスニーカーは他にはない。しかもアディダスアドベンチャ
ー。偶然の産物としか思えないのである。
 なぜか国内正規発売されなかったこのスニーカーは、出自とともに多くの謎に
包まれている。NIKEにてリバデルチをデザインしたデザイナーがアドベに移って
デザインを行ったとか、シーヤ2ではなくシーユーレーターがシ−ヤ直系の後継
機種になるハズだったとか、噂は色々聞こえてくるがホントのところは未だ明ら
かにされていない。いずれはホントのところを究明していくつもりではあるが。
 そんなミステリアスな部分も魅力であるが、やはりデザインが秀逸なんである。
それまでのアウトドア系の機能的すぎるデザインは微塵もなく、上品ですらある。
ありていに言ってしまえば”お洒落”というところか。
 
 黒いアウトソールに青メタリックのアッパーをタンのレザーで包んであり、な
おかつシューレースホール替わりの赤いループが見事なポイントになっているで
はないか。思わず純正の深緑シューレース(多分、レスポンスTRと同一)は赤に
変えたくなってしまうのも自然な行為となってしまうだろう。また、タンのレザ
ーはスエードでも表皮でもなくヤスリがかったマットなところが絶妙なバランス
である。これがツルツルしていたらこんな上品さは醸し出せなかっただろう。し
かもアディダスマークの刺繍もまた素晴らしい。ただし、汚したら絶対におちな
いことは間違い無い。
 履き口はゴムの入った緑の蛇腹。ただし、NIKEのハラチやダイナミックフィッ
トのような締め付け感は全く無い。とってつけたような履き口もカラーバランス
には大いに一役買っている。
 
 シーヤ譲りのカンチレバーソールだが、ハッキリ言って路面への食い付き、い
わゆるトラクション以外には何ひとつ仕事をしていない。そう、一番役目を果 た
さなくてはイケナイはずのクッションは殆ど期待できない。だからと言ってイン
ソールがブルックスのようなクッションを有してもいない。率直に言えば履き心
地は良くは無いのだ。初期ACGになんて太刀打ち出来たものではない。いくらデ
ザインが優れててもハイテク戦争まっただ中の時代では機能的には分が悪すぎた
のだろう。多分にそれが広範囲に展開されなかった理由であると思うが。
 
 だからと言って履いていないか、というとそんな事は全くなくてワリとローテ
ーションは短いサイクルになっている。多少の履き心地の差を払拭するほどの気
分の良さに納得できるからである。足が気持ちイイ、だけよりも、履いてる自分
の胸中がキモチイイ方が勝っているのだ。他に代えられないくらいに。

 過去からこの先未来まで、このシーユーレーターを超える存在となるスニーカ
ーが出てくるかどうかも想像がつかない。少なくとも今現在では”無い”のだ。
願わくばいつかさらにワクワク出来るデザインが生まれて次のベスト10では1位
に成り変わるモデルが出ることを祈りつつ、シーユーレーター。