ピッカーへの道 −番外編−	Battle in the ROSEBOWL
												- by Hiro -
アメリカ西部時間 6月14日 午前5時15分


目覚しとともに目覚める。今日は6月第二日曜日。西海岸最大のフリーマーケットが
毎月第二日曜日にロス郊外パサディナのローズボールで開かれる。
ローズボールは毎年1月1日に、全米カレッジフットボールのNo.1を決めるゲー
ムが開かれるスタジアムとして有名なのだが、私にとっては興奮と悦楽を誘う魔性
の土地。
USEDスニーカーショップというものが存在しないアメリカではフリマが唯一の
「目の保養」になる場所なのである。気合は十分。
なんたって、そのために飛行機で飛んできたのだ。
ところで日本とロスでは16時間の時差がある。私が目覚めたその時間、日本では
14日夜9時15分となる。その時あなたはどこにいただろう?あててあげよう。
テレビの前である。
ワールドカップ、対アルゼンチン戦キックオフを15分後に控え、興奮している時
ではなかっただろうか。私も起きたとたんテレビをつけた。
アメリカでの盛り上がりはイマイチである。いや、正確には、アメリカ人以外の
人種はめっちゃ盛り上がっているのだが、正しいアメリカ人はほとんど興味を
示していない。アメリカが弱いスポーツには興味が無いのね。弱いから興味が無い
のか、興味が無いから弱いのか? 
ともかく、対アルゼンチン戦もスペイン語チャンネルでやっていた。
出かける準備をしながらも、思わずテレビに引き込まれる。
何言ってるのかぜんぜんわからんが、時折、ジョー、とかナカッダなどという言葉
が聞き取れる。あー、しかし、テレビなんか見ている場合では無いのだ!
これからバイヤーとの戦いが待っている。行かねばならん! 
後ろ髪ひかれながらも、ちょうど午前6時、出かけようとした瞬間、
「ゴォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーールゥゥゥゥーーーーー!!!!」
というアナウンサーの声!あぁ、やられた。
この時、私の頭の中になにか嫌なものがよぎっていたのだった…。
	
01 来たぞローズボール!

 

02 ここでチケットを買いましょう
03 サーチの練習しとけっ!
04 $10均一ですと
05 この穴にワイオミンが…
06 スタンスミスを手にするバイヤー。この後、トレーナーHIとともに
アメリカ西部時間 午前7時10分


 ローズボール到着。ダウンタウンからなら30分もかからないが、私は友人の所に
滞在していたので、車で1時間かかった。フリマは6時から始まっている。
しかし、まだ早いので車は入り口に近くに駐車できた。これはラッキー。
まずは入場券を購入する。値段は3段逆スライド方式となっており、
6時―7時半	$15
7時半―9時	$10
9時以降	$5
と、遅くなるほど安くなる。あと20分程待てば$5安くなるのだが、$5を惜しんで
泣きを見たくはない。
$15払って入場。
会場は2つのエリアに分かれており、スニーカー、ジーンズの店が集まっているのは
、奥にある、用水路の橋を渡った先のホワイトエリアなので、初めて行く人は入り口
付近でうろうろせず、奥までぐいぐいと突き進んで行って欲しい。

バトルスターァァトッ!!!

相変わらず、日本人ばっかりやないけー!カートを引っ張っているのはバイヤーだ。
奴等は敵だ!悪そうな奴ばかりに見える。でも結構かっこいいジーンズを履いてる
なあ。
まずは去年アゾーナを買ったゲンのいい店から攻めてみる。
去年の夏、ほとんどACGの出物が無い中、唯一何足か持っていた店だからな。
しかし、めぼしいものはなく、ぼろぼろのモワブのみ。
うーむ、いかんな。それではとにかく1列ごとにチェキすることとするか。
と歩きだす。でも、なんか変だ。なんだなんだ?しばらく歩いてやっと気付く。
店の数が減っているのだ。

 今回、ローズボールに来る前に想像していたことがある。日本の事情がすぐに
こっちに影響されるから、去年に比べ、
1) ACGは出物が増えているだろう。
2) adidasも増えているが、値段も上がっているのでは?
3) スニーカーが売れてないらしいから、バイヤーも減っている。
と予想していたのだが、実は
4) 店の数が減る
が正解だったのだ。
うーむ、私の予想が甘かったか。ちょっと歩いて2軒目へ。
ここは結構な数のスニーカーと、レッドウイング系ワークブーツをたくさん並べて
いる。去年はブーツはあまり見なかったからここでも日本の流行が反映されている。
その時
「このお客さん、これだけ買うから清算してー」
という店員同士の声が聞こえる。あらま、ここ日本人の店じゃん。
去年もいくつか日本人が出している店もあったが、これほど沢山並べている店は
無かった。日本人も本格的にローズボールで売る方に参入してきているのか?
で、そのお客さん、つまり日本人バイヤーが何を買ったのかな?とカートの中身を
見たとたん、一番上に置いてあったのは、、、、、、、、、、、、、
ワイオミン!!!!!!!!
しかも、普通は値札なんてついてないのに、ご丁寧にも、そのワイオミンは値札を
私の方に見せていた。
$35!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ぐぉぉぉおおおおおーーーーああああぁぁぁあああだだぁぁぁあああーーーー!!!!!
出発直前に聞いたゴォーーールゥーーー!の声が頭の中でこだまする。
血がのぼり、アドレナリンの分泌が試合開始5分でいきなり最高潮に達する。
非国民と罵られるのを覚悟で俺は言う。
“サッカーなんか見てる場合じゃなかった”
歩く速度がいきなり20マイルアップ! 
次の店へ飛んでいき、片っ端からチェキチェキ。
いや、もうチェキなどとのんきな事を言っている場合では無い。
人間サーチマシンと化し、並んでいる靴を、アッパーレフトコーナーからサーチ、
サーチ、サーチ!一番効率のいいアルゴリズムをだれか俺に教えてくれぇぇっっっ!

自分でもあせっているのがわかる。一軒にかける時間は約30秒。次へ。サーチ。
次へ。サーチ、、、、、、、。
恐怖の言葉を悪魔が私にささやきかける。「もう勝負は終わっているんだよ。」
次へ。サーチ。次へ。サーチ。次へ。サーチ。次へ。サーチ、、、、、、、。

 

アメリカ西部時間 午前8時15分


「このハラチLEいくらですか?」
 「$80。日本では1万5千円くらいで売れるでしょ。」
なんで俺はここで日本語で会話しているんだろう。その日本人のおじさんはハラチLE、
エスケープの箱付きデッドを沢山持っていた。
「他にaCGは無いんですか?」
「あー、人気あるからねえ。でも、なかなか無いよ。あれは。あってもぼろいし。
やっぱり新品のほうがいいでしょ。」
それは一理ある。アメリカのぼろいはハンパじゃなくぼろいから。
「僕は個人なんですよ。バイヤーじゃなくって。
だからちょっとまけてもらえません?」
「なーんだ、業者かと思った。じゃあ安くしてあげるよ。」
なんという会話であろう。俺ってバイヤー顔なのか?いや、とにかくいるのは
バイヤーばかりなのだ。それに、こんな必死の形相の素人も他におるまいまい。
でも、このおじさんはいい人だ、きっと。うんうん。
07 テラACG程度抜群だったけれど、小さかった…
08 AJAJAJAJAJAJAJAJAJAJ
09 ショックで呆然とするHiro
アメリカ西部時間 午前8時50分


休憩タイム。それはすなわち、

試合終了ぉぉぉぉーーーーー!!

すでに勝負はついた。負け犬である。あー、ワイオミンショック!
結局狙っていた初期ACGはそれ以降1足も見ることなく終わった。
最初から無かったのか、バイヤーに買われたのかは知る由も無い。どうせなら、
ワイオミン見なければ、それはそれで知らないですんだのに、、、、、、、。
「一時はどうなることかと思いましたよ。今日1日このペースで店を回るのかと
思って。」
初めてローズボールに来た友人が私にそう言った。
友よ、すまぬ。でも昨日言ったでしょ?
明日俺はきっと狂ったようにがんがん行くからねと。
それにしても、ここで売っているフローズンレモネードはおいしい。
$3とちぃーと高いが、思わず毎回買ってしまう。夏のアメリカの観光地では
良く売っているので食べてみてね。
アメリカ西部時間 午前9時15分


勝負は終わってしまったので、そろそろ極楽フリマモードに入ることとする。が、
その前に腹ごしらえでもするか。ローズボール内には食べ物屋は少ない。
ホットドッグと焼きもろこし程度であり、ちょっと高めなので外からもちこんだ
方が経済的ではあるが、こういうとこのホットドッグは妙に
おいしく感じるんだよね。とうもろこしは皮をむかずにそのまま焼いてるじゃん。
これがアメリカンスタイル?
日がのぼってきて、気温はぐんぐん上昇する。
日差しが日本のそれとあきらかに違う。紫外線がチョクって感じぃー。
帽子、グラサン、ミネラルウォーターは必需品です。
今回はスニーカーだけでなく、まじめにジーンズも見てみることとする。
501赤耳を$100以下で、というのが目標だ。しっかし、スニーカーは目でサーチ
するだけでいいのだが、ジーンズは大変です。1本ずつサイズをチェックして、
しかも実寸はどんなもんなのか見当をつけなければならない。
うっひゃー、大変だこりゃ。

9時をすぎるとあれだけ沢山いたバイヤーがぐっと減り、
アメリカ人が増えてきた。
家族づれでピクニック気分で、なんかいいもんないかな?といった風情である。
これだよね、本当のフリマっつーのは。朝の2時間は狂ってるよ。楽しまにゃー。
ちんたら歩きながら店をひやかしていく。
ついでにバイヤーが買わなかった靴もチェックしてみる。
これで大体の日本での人気が分かるものだ。
でも、一巡目で、これいいじゃんと思って手にとってみたものは
大体無くなっていた。
バイヤーが靴を買うとこって見たことあります?あるわけないか。
靴を手にとって、アッパー、ソールをちょろっと見て、買うとなると、
自分の買物の山に投げるんだよ。
あー、むかつく。靴を投げるなっ!おまえらは敵だぁぁぁ!

それにしても随分と日本人の店が増えたものだ。
日本人の、日本人による、日本人のためのフリマ。
ローズボールも個人にとってはうまみが減ってきたと言っていいだろう。
すなわち、日本で人気があるがアメリカ人はまだ知らないというモデルを
けちょんけちょんな値段で買う、という事が不可能になってきたのだ。
あっても高い値段をつけているか、朝の15分でバイヤーに買われてしまうか。
ブームが去って、マニアとしては楽になったかと思ったら、
実はもっと厳しくなっていたのです。全体数としての出物は減っており、
スニーカーから手を引こうとしているかのような安売りの店も出てきている。
こうなってくると、もう時代はスリフトでのピッキングですね。
(ピッカーへの道<第3章 スリフトショップ編>参照のこと)
日本人の店の中にはクレジットカードが使える店もありました。
それじゃもうフリマじゃないだろ。
10 買って帰ってどうすんでしょう?
11 看板も売り物です
12 高いものしか売らないお店。去年はこの10倍くらいあったのに。
13 1束買って帰るか、って買ってどうする
アメリカ西部時間 午前11時00分


 そろそろ疲れが出てくる頃である。6月だというのに真夏の日差しだ。
でも、ロスの本当の真夏はこんなもんじゃない。一旦、車に戻り、戦利品を
トランクに入れ、身軽になることとする。
結局買ったのはハラチLEと、ワイオミンショックの副作用で発作的に買って
しまったバルトロであった。手にスタンプを押してもらうと何度でも会場に
出入りできるので、クーラーボックスでも持っていって、外でランチなんて
アメリカっぽくて素敵!
しかし、私はさらに再突入を試みる。
まだジーンズが見つからない!いや、赤耳なんてごろごろしてるのです。
ただサイズが難しい。
その場で試着ができないので、見た目とカンに頼るしかない。
本気の人はメジャーを持っていくといいでしょう。
アメリカ西部時間 午後12時30分


 "How much is this?"
 "Wait a second......."
いい感じに色あせた赤耳。まだ色は濃い。
スパニッシュの女の子に値段を聞くと、単なる店番で値段がわからないのか、
父親のような人の所に値段を聞きに行った。
が彼も素人なのか、二人でうーんと唸っている。
しばらくしてから彼女が戻って来る。さー、いったいいくらと言うのか?
"$30"
うおー!これは安い!絶対値段を間違えてるっ!チャンス!
しかし、値切るのが普通のローズボール。もう一声いったれ!おせおせ!
"Make it $25? Please."
"Umm... Wait........"
迷う彼女。ちょっと押しすぎたか?
するとなんとその時、店のおやじが帰ってきてしまった。やばい!値段を
間違えてるのがばれる!絶対絶命ピーンチ!
彼女がそのおやじにジーンズを見せる。
するどい目つきでパッチを眺め、全体の色落ちを見た後、私に向かって
こう言った。
"This is $50."
がびょーん!オゥマイガッ!やぶへびとはこういう事を言う。
しかし、負けるわけにはいかない。
"No! No! She said $30"
"She said $30?!!!! Dham!" 
おやじ、再び鋭い目つきでジーンズを眺める。
そして、しょうがないという顔つきで、あんがいあっさりとこう言った。
"OK. $30."
おほほほほ!やったやった。
おやじの気が変わらないうちに、とっとと$30払って退散する。
でも、彼女、あとでおやじに怒られてないかな…。
14 こんなのもある。$10均一
15 この黄色の美色スニーカーは何?

アメリカ西部時間 午後1時30分


 もうだめれす。朝7時から約6時間半。歩きに歩いて疲れ果てまひた。
会場を何周したことでしょう。掘り出し物がないかしつこく探したけれど、
どれも帯に短したすきに長し。マイサイズにはお目にかかれない。
いいもんあるんだけどねえ。実に惜しい。相変わらずお日様はギンギラギン
で、日焼けで顔が火照ってましゅ。そろそろ退散いたしましょう。
出口に向かいながらも、サーチぐせは消えない。
なんか見落としは無かったかな?あきらめの悪い私であった。
駐車場への帰り道、後ろを歩く老夫婦の会話が聞こえた。
"This was really fun! But, next time we should come earlier."
イエース、イエース、アイ ディフィニトリー アグリー、と心の中でつぶやく
Hiroなのであった…。

というわけで惨敗ではありましたが、やっぱり凄いローズボールです。
出物は減ったと書きましたが、それでもこれだけ膨大な数のUSEDスニーカーが
1個所に集まるのは、世界でもここ位なものでしょう。
探している靴によっては、まだまだけちょんけちょんも可能ですし。
これから行こうと計画している人は、6時前に会場に到着することを強く
お勧めします。ちょっと道が難しいのでホテル出発はお早めに。
そうすっと4時起きとかになるかもね。でも、寝ないで行くと死ぬよ。
ゆっくりと9時頃から入ってアメリカのフリーマーケットを楽しむというのも
いいかと思いますが、これを読んでしまったあなたはもう無理でしょう。
それと、フリマの鉄則「即買」はここでも生きています。
他の店を見てから、、、などと思っていると、我々が狙っているような靴は、
戻った時は確実にバイヤーの山の中に投げ込まれているでしょう。
あと、水は持っていったほうがいいです。ほんとに。
それでは、みなさんの健闘を祈ります。
俺もまた行くぞ!かたきをとりに!(笑)。

See Ya!
 
P.S.
この前日にデザートヒルズのナイキアウトレットにも行ってきました。
改装工事が終わり、ナイキアウトレットの中でも最大規模のサイズになっていましたが、
逆に掘り出し物はまったく無くなってしまいました。赤箱をたった2つしか見なかったといえば、
大体お分かりになるでしょう。
そのかわりGUCCIとベルサーチのアウトレットが開店していましたが、ってわしらには関係無いか。