Hidemaru Q and A

第III部〜秀丸マクロのいろはにほへと
 秀丸ウィンドウの管理


●秀丸ウィンドウの管理

秀丸マクロは現在編集中の文書に対する処理の他に、 別のファイルやウィンドウを開いてそのファイルを処理したり、 さらに変更内容を保存してファイルを閉じる、 といったことができるようになっています。 このような複数の秀丸ウィンドウにまたがった処理を行うために、 秀丸マクロには専用のコマンド群が用意されていますが、 ここでは、それらのコマンドの基本的な解説と、 実際にコマンドを使う上でいくつか注意すべき点をまとめました。

【1】マクロから別の秀丸ウィンドウを開く
【2】複数の秀丸ウィンドウの間を移動する
【3】(補足) 色々な方法でウィンドウを開く


【1】マクロから別の秀丸ウィンドウを開く

マクロの編集系や検索系の各種コマンドや関数は、 全て現在マクロを実行しているウィンドウに対して働くわけですが、 まだ秀丸で開いていないファイルに対してこれらのコマンドを使うには どうしたらよいでのしょうか?

ここでは、あるファイル(例えば備忘録や雑記メモ)を開いて、 そのファイルの一番後ろにカーソルを移動するマクロを作りながら、 その方法について解説していくことにしましょう。

[1-1] ファイルを開く

まず、マクロからファイルを開くには openfile コマンドを使用します。 ここで、コマンドの引数には開きたいファイルのファイル名を指定します。 例えば、開きたいファイルの名前が C:\foodir\memo.txt だとすると、 このファイルを開くには以下のように指定します。

// メモファイルを開く
openfile "C:\\foodir\\memo.txt";

ファイル名のパスの区切りの円記号を2つ重ねていますが、 何故そうするかについてはこちらの解説を 参照してください。 また、パス名に空白を含むファイル名の場合は 以下のようにファイル名を(円記号+)2重引用符で括ってください。

// メモファイルを開く(パス名に空白を含む)
openfile "\"C:\\My Documents\\memo.txt\"";

このマクロを実行した結果、 どのようにファイルが開かれるかは マクロを実行するウィンドウやその他の状態によって異なりますが、 その結果自体は秀丸の「ファイルを開く」でファイルを開いたのと同じです。 すなわち、このファイルを開いている他の秀丸ウィンドウがなければ、 新規ウィンドウで実行した場合はそのウィンドウに、 別のファイルを開いているウィンドウで実行した場合は、 新しくウィンドウが開いてそのファイルが読み込まれた状態になります。 一方、このファイルを開いている他のウィンドウがある場合、 その結果は秀丸の「排他制御」の設定によって異なります。

いずれにしても、このコマンドが成功した時点で 指定したファイルが開かれたウィンドウが画面上の一番手前にあり、 かつ以降のマクロコマンドはこのウィンドウが操作対象になります。 したがって、例のことを実行するマクロは以下のように書けばよいことになります。

// メモファイルを開く
openfile "C:\\foodir\\memo.txt";
if (result == false) {
    // ファイルが開けなかった場合
    message "メモファイルが開けません";
    endmacro;
}
// ここに来た時点でマクロの実行は "memo.txt" に移っている
// "memo.txt" の終わりに移動
gofileend;

ファイルがなかったり名前が間違っていたり その他の理由でファイルが開けなかった場合、 openfile コマンドのあとの result キーワードは false (== 0) になっている (成功した場合は true (== 1) になる)ので、 それを利用してここで示したようにきちんとエラー処理を行いましょう。

[1-2] 「ファイルを開く」ダイアログを表示してファイルを開く

openfile コマンドに完全なファイル名を指定する代わりに ワイルドカード文字("*" や "?")を含んだファイル名を指定すると、 それにマッチするファイルのみを表示した「ファイルを開く」ダイアログを出して、 ユーザーが開くファイルを選択できるようになります。 例えば、C:\foodir 中のテキストファイルのどれかを開くための ダイアログを出すには以下のように openfile コマンドを使います。

// 「ファイルを開く」ダイアログを出してファイルを開く
openfile "C:\\foodir\\*.txt";

[1-3] オプション付きでファイルを開く

openfile コマンドの引数には、 以下のようにファイル名の他に 秀丸の起動オプションも指定することができます。

openfile "C:\\foodir\\memo.txt"; // 普通に開く
openfile "/r C:\\bardir\\file.txt"; // 書き込み禁止で開く
openfile "/h C:\\bazdir\\work.txt"; // ステルスモードで開く(後述)
openfile "/je \"C:\\My Documents\\memo.txt\""; // 開いた後にカーソルをファイルの最後に移動

ここで、 最後は空白を含んだパス名を持つファイルをオプション付きで開く時の 2重引用符での括り方の例になっています。

ちなみに、秀丸 Ver.3.06 以降であれば、 以下のように openfile の第2引数に ファイルを開く時の(デフォルトの)文字コードを指定できます。

// 文字コードを指定してファイルを開く
openfile "C:\\foodir\\memo.txt", sjis;
// 「ファイルを開く」ダイアログを出してファイルを開く(デフォルトの文字コードを指定)
openfile "C:\\foodir\\*.txt", jis;

[1-4] 新規ウィンドウを開く

最後に、既にあるファイルでなくまっさらな状態の 新しい秀丸ウィンドウを開く方法についてですが、 これには先に説明した openfile コマンドの引数で ファイル名を指定しない(起動オプションはあってもよい)か、 または別コマンドの newfile コマンドを使えばできます。 但し、openfile を使った場合は、 そのコマンドを実行する秀丸ウィンドウが 同じくまっさらなウィンドウだった時は新しいウィンドウは開かれないので 注意が必要です。 というわけで、確実に新しいウィンドウを開きたい時は newfile コマンドの方を使ってください。 また、openfile コマンドでファイルを指定する場合も、 コマンドを実行したウィンドウが新規ウィンドウだった時は、 新しいウィンドウは開かれずにマクロを実行したウィンドウに読み込まれます。 よって、確実に新しいウィンドウでファイルを開きたい場合は、 以下のように newfileopenfile を組み合わせて 実行してください。

// 確実に新しいウィンドウでファイルを開く
newfile; // 確実に新規ウィンドウを開く
openfile "C:\\MyDocuments\\memo.txt"; // 今開いたウィンドウにファイルが読み込まれる

但し、このように開く場合は起動オプションを指定できないので、 起動オプションを指定したい場合はこの方法は使えません。 以下のようにすれば起動オプションを指定しつつ 確実に別のウィンドウでファイルを開くことができますが、 元のまっさらなウィンドウをいじることになりますので、 その旨を理解した上で行ってください。

// 起動オプションを指定しつつ確実に新しいウィンドウでファイルを開く
// まっさらなウィンドウだった場合は改行を挿入してまっさらでなくする
if (filename == "" && updated == false) insert "\n";
openfile "/r C:\\foodir\\memo.txt"; // 読込み専用で別ウィンドウを開く

ここではまっさらなウィンドウをまっさらでなくするために改行を挿入していますが、 他にも changename コマンドで 適当なファイル名をつける方法もあります。

[1-5] ウィンドウを閉じる

今度は逆にウィンドウを閉じる方法ですが、 現在マクロを実行しているウィンドウを閉じるには exit、または quit コマンドを使用します。 また、ウィンドウを閉じる前に編集内容を保存したい時は saveexit コマンド、 もしくはただの save コマンドと exit コマンドを組み合わせて使います。

但し、これらの終了コマンドを使うと マクロの実行自身も終わってしまうので注意が必要です。 これは openfile を使って開いたウィンドウでも同様で、 自動的にマクロの実行が元のウィンドウに戻ることはありません。 例えば、マクロ中で作業用ウィンドウを開いてその上で作業をした後に、 元のウィンドウに戻って作業を続けようとして 以下のようなマクロを作っても、 意図した動作をしないわけです。

// 作業ウィンドウを開いてその後元のウィンドウに戻る…??

// 文字列変数に格納した文字を小文字に変換
$s = "ABCDEF"; // これを "abcdef" に変換する
newfile; // 作業ウィンドウを開く
insert $s; // 文字列を挿入
selectall; // 全て選択
tolower; // 小文字に変換
selectall; // 全て選択
$s = gettext(seltopx,seltopy,selendx,selendy); // 選択範囲の文字列を取得
quit; // このウィンドウを閉じる
insert $s; // 元のファイルに挿入…あれ?

この例では、 最後の insert コマンドが 元のウィンドウで実行されることを期待しているわけですが、 実際にやってみると、 その前の quit コマンドが実行されて 作業ウィンドウが閉じた時点でマクロが終了してしまい、 元のウィンドウに文字は挿入されません。

今の例のように、 マクロ中で開いたウィンドウを閉じた後も 元のウィンドウでマクロの実行を続けたい場合や、 いくつかのウィンドウを開いた状態で それらのウィンドウを行ったり来たりしながらマクロを実行するには、 以下の章で説明するウィンドウ管理系のコマンドを使う必要があります。


【2】複数の秀丸ウィンドウの間を移動する

 前章の最後の例を正しい形で実現するには、 以下の2点を解決する必要があります。

これらの内、前者はもっと一般的に

と言い換えてもいいわけですが、 これはさらに細かく

という問題に分けることができます。 以下ではまずこの最初の問題、 すなわち「他のウィンドウをどうやって指定するか?」について解説します。

[2-1] 他のウィンドウを指定する

現在開かれているウィンドウをマクロ中で指定するのに、 以下のような2通りの方法が用意されています。

  • ウィンドウ番号(ウィンドウの並び順)による指定

    ウィンドウ番号とは 秀丸ウィンドウを画面手前から順番に0から数えたもので、 同じウィンドウでも、画面上の位置関係が変わると それに従ってウィンドウ番号も変化します。

    例えば以下の左図のような配置では、 A、B、Cの3つのウィンドウには それぞれ0、1、2のウィンドウ番号が割り振られます。 ここで、右図のようにウィンドウCを一番手前に持ってくると、 ウィンドウ番号の割り振りが それぞれAのウィンドウ番号=1、B=2、C=0 に変化します。

    ウィンドウCを

    一番手前にする

    また、前章の例のようにマクロ中で他のウィンドウを開いた場合を考えると、 ウィンドウを開く前はマクロを実行しているウィンドウが 一番手前にあるはずなので、そのウィンドウのウィンドウ番号は0です。 次に、openfilenewfile で 新しいウィンドウを開くと、 そのウィンドウが一番手前に来ますからウィンドウ番号は0、 また元のウィンドウはその後に回るのでウィンドウ番号は1に変わります。 ちなみに、マクロの実行は新しく開いたウィンドウに 自動的に変わっていたので、 マクロを実行しているウィンドウのウィンドウ番号は常に0になっています。 なお、この性質は後から解説するウィンドウ間を移動するコマンドで ウィンドウを移動した場合も成り立ちます

    さて、あるファイルが開かれているかどうか、 また開かれていた時に そのウィンドウ番号を取得するには以下の関数を使います。

    findhidemaru(filename)

    findhidemaru 関数は、 指定された名前(filename)を持つファイルが (秀丸で)開かれている場合はそのウィンドウのウィンドウ番号を返します。 また、そのファイルを開いているウィンドウが存在しない時、 もしくは指定したファイルを開いているウィンドウが 現在マクロを実行しているウィンドウだった場合は (ウィンドウ番号0を返す様に思えますが何故か(^^;) -1 を返します。

    以下のサンプルマクロは、 指定したファイルが開かれていればそのウィンドウ番号を、 開かれていないかまたは開いているがそのウィンドウでマクロを実行した場合は -1 をメッセージボックスで表示します。

    // ウィンドウ番号を表示するサンプルマクロ
    #H_ORDER = findhidemaru("c:\\hidemaru\\install.txt");
    message "ウィンドウ番号 = " + str(#H_ORDER);

  • ウィンドウハンドル(各ウィンドウに固有の数値)による指定


  • ウィンドウハンドルとは、 OSが個々のウィンドウを識別するためにウィンドウに付与する整数値です。 これは秀丸ウィンドウだけでなく全てのウィンドウに割り振られていますが、 この値はウィンドウが開かれた時から閉じられるまで同じ値を取ります
    同じファイルでも、ウィンドウを一度閉じてからまた開いた場合は ウィンドウハンドルは一般に異なる値になります。

    前述したウィンドウ番号はウィンドウの配置を変えると それにしたがって同じウィンドウでも番号が変化していたので、 ウィンドウを指定する時には現在のウィンドウの配置がどうなっているかを 常に意識する必要があります。 一方、ウィンドウハンドルを使えば、 ウィンドウの位置関係によらずに 常に同じ値でウィンドウを指定することができます

    さて、ウィンドウハンドルを取得するには以下の関数を使います。

    hidemaruhandle(windoworder)

    この関数は、指定されたウィンドウ番号 (windoworder)を持つウィンドウの ウィンドウハンドルを返します。 また、無効なウィンドウ番号を指定した場合は -1 を返します。 以下は指定したファイルを開いているウィンドウのウィンドウハンドルを表示する サンプルマクロです。

    // ウィンドウハンドルを表示するサンプルマクロ
    // まずウィンドウ番号を取得
    #H_ORDER = findhidemaru("c:\\hidemaru\\install.txt");
    if (#H_ORDER != -1) {
        // 有効なウィンドウ番号だった
        #H_HANDLE = hidemaruhandle(#H_ORDER);
    } else {
        // 無効なウィンドウ番号だった
        if (filename == "c:\\hidemaru\\install.txt") {
            // 現在マクロを実行中のウィンドウで開いていた場合
            #H_HANDLE = hidemaruhandle(0); // マクロを実行中のウィンドウのウィンドウ番号は必ず0
        }
    }
    message "ウィンドウハンドル = " + str(#H_HANDLE);

    なお、このサンプルの無効なウィンドウ番号だった場合の処理で、 現在のウィンドウが指定されたファイルを開いている場合を わざわざ確認していますが、 これは前節で説明した findhidemaru 関数の仕様 (現在のウィンドウで開いているファイル名を渡された場合も -1 を返す) のためです。 また、その中の処理で現在のウィンドウのウィンドウハンドルを取得するために hidemaruhandle(0) という書き方をしていますが、 先程のウィンドウ番号の説明で述べたウィンドウ番号の性質を考えると、 これが現在マクロを実行中のウィンドウのウィンドウハンドルを取得する 最も確実な方法です。

[2-2] マクロの実行対象を他のウィンドウに移動する

前節で解説した2通りのウィンドウの指定方法を使って、 実際にマクロの実行対象を他のウィンドウに移すには setactivehidemaru コマンドを用います。 setactivehidemaru コマンドの引数に 移動先のウィンドウのウィンドウ番号、 またはウィンドウハンドルを指定すれば、 そのウィンドウが画面の一番手前に移動し(つまりウィンドウ番号が0になる)、 そのコマンド以降のマクロ文の実行は全てこのウィンドウが対象になります。

以下のサンプルマクロは、 元のウィンドウの内容を新しく開いたウィンドウに一行ずつコピーするマクロです。

// 現在のウィンドウの内容を新規ウィンドウに1行ずつコピー
#HWND = hidemaruhandle(0); // 現在のウィンドウのウィンドウハンドルを取得
newfile; // 新規ウィンドウを開く

// 以下の文は新規ウィンドウで実行される
#HWND_NEW = hidemaruhandle(0); // 今開いたウィンドウのウィンドウハンドルを取得
setactivehidemaru #HWND; // 元のウィンドウに戻る

// 以下の文は元のウィンドウで実行される
gofiletop; // ファイルの先頭にカーソルを移動
while (code != eof) { // ファイルの終わりまでループ
    copyline; // 行のコピー
    setactivehidemaru #HWND_NEW; // コピー先ウィンドウに移動

    // 以下新規ウィンドウで実行
    paste; // コピーした行を貼り付ける
    gofileend; // ウィンドウの終わりにカーソルを移動
    setactivehidemaru #HWND; // コピー元ウィンドウに移動

    // 以下元のウィンドウで実行
    movetolineno 1, lineno + 1; // 1行下がる
    if (result == false) break; // 最後の行が改行で終わっていない場合への対処
}
setactivehidemaru #HWND_NEW; // コピー先ウィンドウを手前にして終了

このサンプルマクロを実際に実行すると、 元のウィンドウとマクロ中で新しく開いたウィンドウが 目まぐるしく(^^;入れ替わりながら、 行のコピー&ペーストが行われている様子が見て取れると思います。

なお、この例では全ての setactivehidemaru コマンドに ウィンドウハンドルを渡していましたが、 先に説明したようにウィンドウ番号を渡してもOKなので 以下のようにも書けます。

// 現在のウィンドウの内容を新規ウィンドウに1行ずつコピー
// setactivehidemaru にウィンドウ番号を渡すバージョン
newfile; // 新規ウィンドウを開く

// 以下の文は新規ウィンドウで実行される
setactivehidemaru 1; // 元のウィンドウに戻る

// 以下の文は元のウィンドウで実行される
gofiletop;
while (code != eof) {
    copyline;
    setactivehidemaru 1; // コピー先ウィンドウに移動

    // 以下新規ウィンドウで実行
    paste;
    gofileend;
    setactivehidemaru 1; // コピー元ウィンドウに移動

    // 以下元のウィンドウで実行
    movetolineno 1, lineno + 1;
    if (result == false) break;
}
setactivehidemaru 1; // コピー先ウィンドウを手前にして終了

ここで、全ての setactivehidemaru コマンドに (ウィンドウ番号) 1 を渡していますが、 これはコピー元ウィンドウとコピー先ウィンドウが 必ず画面の一番手前(=ウィンドウ番号0…マクロの実行対象)と そのすぐ後ろ(=ウィンドウ番号1)に配置されているはずだからです。

ちなみに、他のウィンドウにマクロの実行を移すコマンドは、 setactivehidemaru コマンドの他にも nexthidemaru (一番後ろのウィンドウが手前に来る) や prevhidemaru (一番手前のウィンドウが一番後ろに回る) コマンドがあります。 これらを使うと上のサンプルマクロを以下のように書き換えることもできます。

// 現在のウィンドウの内容を新規ウィンドウに1行ずつコピー
// nexthidemaru/prevhidemaru を使うバージョン
newfile; // 新規ウィンドウを開く

// 以下の文は新規ウィンドウで実行される
prevhidemaru; // 新規ウィンドウを一番後ろに回す

// 以下の文は元のウィンドウで実行される
gofiletop;
while (code != eof) {
    copyline;
    nexthidemaru; // 新規ウィンドウを一番手前に戻す

    // 以下新規ウィンドウで実行
    paste;
    gofileend;
    prevhidemaru; // 新規ウィンドウを一番後ろに回す

    // 以下元のウィンドウで実行
    movetolineno 1, lineno + 1;
    if (result == false) break;
}
nexthidemaru; // 新規ウィンドウを一番手前に戻して終了

setactivehidemaru を使った場合は 一番手前とそのすぐ後ろのウィンドウを入れ替えていましたが、 この例では一番手前と一番後ろのウィンドウを入れ替えています。 これはマクロを実行したウィンドウの他に秀丸ウィンドウを開いていた場合でも ちゃんと動作するようにするためです。

[2-3] マクロの実行を終了することなくウィンドウを閉じる

最後に、この章の最初に示した問題の残り、 「マクロの実行を終了することなく作業ウィンドウを閉じること」についてですが、 これは前節で説明した setactivehidemaru その他の ウィンドウを移動するコマンドと、 closehidemaru または closehidemaruforced コマンドを組み合わせることで 実行できます。 closehidemaru(forced) は両者とも 引数で渡されたウィンドウ番号またはウィンドウハンドルを持つ ウィンドウを閉じるコマンドですが、 閉じようとしているウィンドウが編集されていた場合、 コマンドが失敗する(closehidemaru)か、 編集内容を強制的に破棄して終了する(closehidemaruforced)か、 という点が異なります。

コマンドが出揃った所で、 前章の最後のサンプルマクロを完成させましょう。

// 作業ウィンドウを開いてその後元のウィンドウに戻る(完成版)

// 文字列変数に格納した文字を小文字に変換
$s = "ABCDEF"; // これを "abcdef" に変換する
#HWND = hidemaruhandle(0); // 元ウィンドウのウィンドウハンドルを取得
newfile; // 作業ウィンドウを開く

// 以下は作業ウィンドウでの処理
#HWND_WORK = hidemaruhandle(0); // 作業ウィンドウのウィンドウハンドルを取得
insert $s; // 文字列を挿入
selectall; // 全て選択
tolower; // 小文字に変換
selectall; // 全て選択
$s = gettext(seltopx,seltopy,selendx,selendy); // 選択範囲の文字列を取得
setactivehidemaru #HWND; // 元のウィンドウに戻る

// 元のウィンドウでの処理
closehidemaruforced #HWND_WORK; // 作業ウィンドウを(強制的に)閉じる
insert $s; // 元のファイルに挿入

ちなみに、closehidemarusaved といった 「保存して終了する」ようなコマンドは用意されていないので、 もし終了する前に保存する必要がある場合は、 閉じる前にそのウィンドウに移動して save 等の コマンドを使って明示的に保存しましょう。


【3】(補足) 色々な方法でウィンドウを開く

マクロから他のウィンドウを開くための解説は一通りしたわけですが、 この章ではもう少し実際に近いサンプルをいくつか紹介したいと思います。

[3-1] 既にファイルが開かれているかどうかを確認する

第1章で解説したように、 openfile コマンドで指定したファイルが 既に開かれていた場合、 その後の動作は秀丸の「排他制御」の設定によって変わります。 結果的にコマンドが成功したらそのファイルを開いたウィンドウが 一番手前に来ているので、 その後のマクロの動作に影響はないといえます。 ですが、できればそのような設定によらずに 同じ動作をするようなマクロを作れれば、 それはそれでスマートなことではあります。

というわけで、以下は排他制御の設定によらずに 既に指定したファイルが開いていたらそのウィンドウを 一番手前に持ってくる(開いていなければ新しく開く)、 という処理を行うサンプルマクロです。

// ファイルを開く・またはウィンドウを一番手前に持ってくる
$file = "C:\\foodir\\memo.txt"; // ファイル名
#H_ORDER = findhidemaru($file); // まずウィンドウ番号を取得
if (#H_ORDER != -1) { // ウィンドウが見つかった
    #HWND = hidemaruhandle(#H_ORDER); // ウィンドウハンドルを取得
    setactivehidemaru #HWND; // そのウィンドウを手前にする
} else { // まだ開かれていないか、自分で開いているか
    if ($file != filename) { // まだ開かれていなかった
        openfile $file; // 新しく開く
        if (result == false) {
            message $file + " が開けません";
            endmacro;
        }
    }
    // ここに来るのはファイルを開いているのが自分自身か、
    // もしくは新しく開いて成功したかどちらか
    #HWND = hidemaruhandle(0); // いずれにしてもそのウィンドウは一番手前に来ているはず
}
// この時点で #HWND に $file のウィンドウハンドルが入っていて
// なおかつそのウィンドウが一番手前に来ているはず

[3-2] 作業ウィンドウを見えない状態で開く

さて次のサンプルは、第1章の最後の例でもありましたが、 マクロ中で一時的に使うための作業ウィンドウを開く処理です。 ところで、作業ウィンドウはマクロの実行中にだけ必要なもので、 なおかつ作業の様子はなるべく見られたくないですから、 できればウィンドウが見えない状態で開ければ一番いいわけです。 で、まさにそういう(いわゆる「ステルス状態」の)ウィンドウを開くための 起動オプション("/h") が用意されているので、 ここでもそれを使うことにしましょう。

// ウィンドウを見えない状態で開くサンプルマクロ

// 以下の処理が必要な理由は第1章を参照
#modify_org = false; // 元のウィンドウをいじったかどうかのフラグ
if (filename == "" && modified == false) { // 元のウィンドウが新規ウィンドウの場合
    insert "\n"; // 下の openfile が失敗しない様に一時的に更新しておく
    #modify_org = true; // あとで元に戻す
}

#hwnd_org = hidemaruhandle(0); // 元のウィンドウのウィンドウハンドルを取得しておく
openfile "/h"; // ステルス状態で新規ウィンドウを開く
#hwnd_work = hidemaruhandle(0); // ステルスウィンドウのウィンドウハンドルを取得

... // 作業ウィンドウで何かの仕事をする

setactivehidemaru #hwnd_org; // 最後に元のウィンドウに戻る
closehidemaruforced #hwnd_work; // ステルスウィンドウを閉じる
if (#modify_org) undo; // 元のウィンドウをいじっていたら元に戻す

ここで使ったステルスウィンドウですが、 必ずマクロ内で責任を持って閉じるようにしましょう。 最近のバージョンの秀丸ではステルスウィンドウを閉じ忘れても、 マクロが終了したら自動的に可視状態に変わるので それほど神経質になる必要はないのですが、 いずれにしても身に覚えのないウィンドウが突如(^^;出現するわけですから、 気持ちの悪いことこのうえないです。 というわけで、上のサンプルのように作業ウィンドウを開いたら、 ちゃんと後始末をするようにしましょう。


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