「異議あり!」宇陀羅丸は畳をばんと叩いた。
「慥かに前回のRP2はまったりとしていたけど、それなりの萌えはね、追求できたと思うんですけど」
樹之夢真希は困った用に応えた。
「ちちち、それがいけないんですよ。現状に満足していればいい結果は出せない。何事も挑戦しないと」
「しかし・・・マブラヴも延期状態、何か今ひとつ気持ちが湧かないんですよ」
「じゃ、茜ちゃんへの愛も消えたと・・・。もちろん中学生・・・あ、ちがった・・。
兎に角、真希さんはコーディネータなんだし。沙門さんがいなくても」
「・・・別に茜ちゃんじゃ、というかコーディネーターでもニュータイプでもないよ。
そういう宇陀羅丸さんも、冬は出店するのでしょう。いったい、どうするんですか?毎週、飛行機乗って秋葉のとらに行ってばかりでどうするのですか?」
「何もかもが懐かしい。ああ、東方は真っ赤に萌えている」
宇陀羅丸は遠い目をして、買い付けてきた同人誌を見つめた。
「今回は最近光を導入し、ウハウハ状態の夢月妃姫さんも出店するそうですよ」
「光!光たんハァハァ」全く、聴いちゃいない。その時だけ同人誌から目を離し反応した。
「・・・まぁ、それは置いといて」樹之夢真希は馴れた様子で、立ち上がった。
「夢月さんと宇陀羅丸さんといい、今回は怪獣大進撃、いや、幼女大進撃かな?」
「ナイチチマンセー」またまた反応する。
樹之夢真希はやれやれとMP3を再生した。
「むかえに行く〜君の元へ〜夢の時間〜過ごしましょう」とスピーカから流れてくる。思わず踊りだしたくなる。
「いいねぇ、マヨちゃん」
「マヨちゃんですか・・・」
「で、今回、沙門さんはどうしてるの?」
「最近ますますヒッキー状態だからね。ネットゲーム三昧じゃないの?」
「う〜ん、状況は極めて悪いと云う事かな」
「まぁ、苦労するのは私ですけどね」
「EDENの方ですか?例の・・・まともな本になってないでしょう」
「うう、痛いところを。ま、次はあゆ編という話だけどね・・」
「あゆですか、あゆも好きです。大好きです。チチはあるけどね・・」何故か畳をばんばん叩く。
「・・・私はうぐぅのあゆがいいけど」
「そちらは知らないんですよ。あゆとまゆって楽しいじゃないですか。
2部の殺伐としたストーリーもあの二人がいるから引き立つじゃないですか」
「まぁ、そうだけど」何か真希は認めたくない物があるようだ。その後、宇陀裸丸の熱弁は約1時間続いた。
●2002年 師走 都内某茶店
「で、誰がいいんですか?」華瑞姫慧子は小柄な身体をしていて、まるで小学生の様でもある。
切り立った目で語られると有無を云わさぬ感じがする。
「何だい、急だな。呼び出しておいて、いきなり何を云うんだ」沙門はカップを置き、彼女を見た。
「君のぞキャラでは誰が好きかと云う事です」
「面と向かって云わなくたって、わかるじゃないか? こっちは現在釣りスキルを上げている所なんだから」
「・・・。遙なんですか?」沙門の発言を無視して慧子は先を進めた。
「はっきりというねぇ。そもそもヒロイン属性と、ショートカット属性という二枚看板があるんだよ。私には」
「ヒロインは水月もそうです。あ、茜もですか」
「そういう君はどういう意見があるのかい?」逆に沙門が訊き返す。
「私は何も、実際、あんな風にドロ沼になるのはねぇ・・・。慥か、逆ドリカム関係とか云ってましたよね」
「ううむ、死語だね。今は、ドリカム追っかけてないからわからんけど、N君どうなったかなぁ。そういう状態は現実的にもそう長くは続かんということなのかな?」妙に納得してしまう沙門だった。
「一章のまま続けはいいですけど・・あ、それだとゲームにならない」
「結婚という最終目的があるし、なかなかって、何、真剣に語らせようとするんだ、君は」
「ふふふ。赤くなってますよ」
「君、新潟帰った方がいいよ。仕事なんか辞めて」
「また、辞めろと云うんですか?まぁ、私の仕事の事は置いといて、遙と云う事でいいんですね」
「そういう事に・・・そっか、わかったよ」沙門は突然に悟りきった顔をした。
「へ、何がですか?」きょとんとして慧子は訊き返す。沙門は立ち上がった。
「冬の宴だよ。華瑞姫君、有り難う。決心が付いたよ。しかし、時間がないなぁ。桂氏君を呼ぶか?いや、彼は絆で忙しいし。ま、売り子で頑張ってもらうとして。火炉那氏か?あ、でも彼も本を創るのか?困ったぞ」
「・・・どうしたんですか?まさか、冬の宴の準備してなかったんですか?」慧子も立ち上がった。
「・・・ああ、ヴァナ・ディール生活が忙しくね。でも、君のおかげで決心が付いたよ」
「これからですか?あゆ本でしたっけ?」
「・・・いや、ちがうよ。遙編だよ・印刷所と真希さんに連絡入れないと。ま、そういう事だから。締め切りは他しか明日だから。急ぐね」
「あ、明日?本当ですか?」一人、華瑞姫慧子は喫茶店に取り残された。というか、途方に暮れていた。
かくして、短期決戦が始まった。