君が望む?同人誌制作奮闘記R

人生ってはかないのさ・・悪のりしてるね


 ☆注意☆
 作中に出てくる人名、団体名は実在の人物、団体、名称もありますが、架空のものでありほとんど脚色してあります。


☆登場人物☆
沙門祐希・・・「君のぞ」馬鹿。K田M子嬢馬鹿でもある。現在オンライン世界で奮戦中。
樹之夢真希・・・「君のぞ」馬鹿2号。最近絵デジタル処理に目覚めるが、ついでに美少女ゲーにも目覚めてしまう。
上野ふれき・・・「君のぞ」馬鹿。小動物をこよなく愛す。茜馬鹿筆頭生。
ピートル聡史
・・・「格ゲー」馬鹿。交換パワー炸裂。
火炉那
・・・「君のぞ」馬鹿。通常の3倍のパワーを出すため、補給もかかせない。
ヤナヤナ・・・「大正メイド」馬鹿。七色虹色ボイス、もとい、周囲をも引き込む、ンチャボイスを持つ。
宇陀羅丸まぁく・・・「妹」馬鹿。最近、妹だけでは満足できない模様。
宇陀羅光・・・宇陀羅丸まぁくの妹。一応、彼の願望が奇蹟を呼んだのだ.

新たなる使命

●2002年寒くなりし頃 都内某所 樹之夢宅

 真夏の『骨々笑う団』との闘いが終り、2ヶ月経ったが樹之夢真希はまだ疲れ果てていた。次のネタも浮かばない。沙門からの連絡もなくただただ惰眠を貪る毎日だった。
 無気力。鬱病に入ったのか、某池袋の連戦でも燦々たる結果。何も出来ず仕舞。まるで『君が望む永遠』を初めてクリアした時の様に・・。鬱状態に陥っていた。
 机にはポツンとDC。でも電源を入れる気力もない。時間は刻一刻と過ぎゆく。気力を溜めよう・・・冬の宴までには。
と、その時、けたたましく電話が鳴った。出るのも億劫なのだが、何とか身体を起こし、受話器を取った。
「あ、真希さん。よかった、ねぇ、最近の妹ブームってどない?」脳天気な宇陀羅丸の声に思わず真希はガチャンと電話を切ってしまった。
 再び鳴り響く電話。
「もしもし」
「ひどいなぁ、真希さん。突然切るなんて。ま、いいけど、いいよね。やっぱ」
「話が見えないんだけど・・・」
「いやぁ、小麦ちゃんだよ。妹だよ。ぼよよんろっくだよ」宇陀羅丸は受話器の向こうで踊るように云った。いや、実際踊っているかもしれない。真夏の闘いで無事妹?が帰ってきたからだ。
「・・・ひょっとして秋葉原にいるのですか?」
「そう、今晩泊めて下さい。久しぶりに来たから爆発してしまって」
「・・・」
 受話器を置いた後、ま、気分転換にはなるか、真希は座椅子に凭れながら考えた。そういえば、沙門さんからはここ最近何にも連絡ないし、ふれき氏は会社から帰ってきていないし・・・。俗世間とかけ離れてるなぁ・・。
 そういえば、次のイベントが近づいてたんだけど・・・。
と、再び電話が鳴る・・・。また、宇陀羅丸君か?と思いながら電話に出ると、凄い大きな声が響いてきた。
「波打つ維新の風と散る〜防人となれ〜」
「?」何が何だか分からない・・。
「あ、わかりません?火炉那氏と一緒にいたヤナヤナと¥申します。お元気でしょうか?」
「ああ、思い出したです。その節はどうもありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ。と、修辞的な挨拶は抜きにして、いや、今度のランペー2。楽しみにしてますよ。私も売り子として精一杯がんばらさせてもらいますから」
「? ひょっとして・・」
「あれ?沙門さんから訊いてない?あ、最近、ラグナロク漬かってるからなぁ。連絡あると思いますよ」
「そうですか・・。ラグナロク・・・!!」オンラインゲーム、またですか?沙門さん、またそんな時間かかるゲームを。
「ま、本楽しみにしてますよ、じゃ」
 あっさり、切られた後、真希は呆然と受話器を握っていた。あと、2週間もないし、ネタもないのに・・
 沙門さんはラグナロク・・・。あかん、絶体絶命とはこの事か。どうする、どうする。EDENの続き・・って。子の分だとプロットもないなぁ・・
 と、沙門から電話があったのはその二日後だった。
「真希さん、初心に戻らないと・・・本を創る楽しみを思いだそうよ・・どきどきした頃をさ。ね、ネタ思いついたでしょ」
「沙門さん・・・ラグナロク。今、休止中何だってね」
 かくして、というか、果たして、本はできるのだろうか?


●2002年 寒いころ 都内某所 樹之夢宅

「異議あり!」宇陀羅丸は畳をばんと叩いた。
「慥かに前回のRP2はまったりとしていたけど、それなりの萌えはね、追求できたと思うんですけど」
樹之夢真希は困った用に応えた。
「ちちち、それがいけないんですよ。現状に満足していればいい結果は出せない。何事も挑戦しないと」
「しかし・・・マブラヴも延期状態、何か今ひとつ気持ちが湧かないんですよ」
「じゃ、茜ちゃんへの愛も消えたと・・・。もちろん中学生・・・あ、ちがった・・。
  兎に角、真希さんはコーディネータなんだし。沙門さんがいなくても」
「・・・別に茜ちゃんじゃ、というかコーディネーターでもニュータイプでもないよ。
  そういう宇陀羅丸さんも、冬は出店するのでしょう。いったい、どうするんですか?毎週、飛行機乗って秋葉のとらに行ってばかりでどうするのですか?」
「何もかもが懐かしい。ああ、東方は真っ赤に萌えている」
宇陀羅丸は遠い目をして、買い付けてきた同人誌を見つめた。
「今回は最近光を導入し、ウハウハ状態の夢月妃姫さんも出店するそうですよ」
「光!光たんハァハァ」全く、聴いちゃいない。その時だけ同人誌から目を離し反応した。
「・・・まぁ、それは置いといて」樹之夢真希は馴れた様子で、立ち上がった。
「夢月さんと宇陀羅丸さんといい、今回は怪獣大進撃、いや、幼女大進撃かな?」
「ナイチチマンセー」またまた反応する。
樹之夢真希はやれやれとMP3を再生した。
「むかえに行く〜君の元へ〜夢の時間〜過ごしましょう」とスピーカから流れてくる。思わず踊りだしたくなる。
「いいねぇ、マヨちゃん」
「マヨちゃんですか・・・」
「で、今回、沙門さんはどうしてるの?」
「最近ますますヒッキー状態だからね。ネットゲーム三昧じゃないの?」
「う〜ん、状況は極めて悪いと云う事かな」
「まぁ、苦労するのは私ですけどね」
「EDENの方ですか?例の・・・まともな本になってないでしょう」
「うう、痛いところを。ま、次はあゆ編という話だけどね・・」
「あゆですか、あゆも好きです。大好きです。チチはあるけどね・・」何故か畳をばんばん叩く。
「・・・私はうぐぅのあゆがいいけど」
「そちらは知らないんですよ。あゆとまゆって楽しいじゃないですか。
  2部の殺伐としたストーリーもあの二人がいるから引き立つじゃないですか」
「まぁ、そうだけど」何か真希は認めたくない物があるようだ。その後、宇陀裸丸の熱弁は約1時間続いた。
      
                ●2002年 師走 都内某茶店

「で、誰がいいんですか?」華瑞姫慧子は小柄な身体をしていて、まるで小学生の様でもある。
切り立った目で語られると有無を云わさぬ感じがする。
「何だい、急だな。呼び出しておいて、いきなり何を云うんだ」沙門はカップを置き、彼女を見た。
「君のぞキャラでは誰が好きかと云う事です」
「面と向かって云わなくたって、わかるじゃないか? こっちは現在釣りスキルを上げている所なんだから」
「・・・。遙なんですか?」沙門の発言を無視して慧子は先を進めた。
「はっきりというねぇ。そもそもヒロイン属性と、ショートカット属性という二枚看板があるんだよ。私には」
「ヒロインは水月もそうです。あ、茜もですか」
「そういう君はどういう意見があるのかい?」逆に沙門が訊き返す。
「私は何も、実際、あんな風にドロ沼になるのはねぇ・・・。慥か、逆ドリカム関係とか云ってましたよね」
「ううむ、死語だね。今は、ドリカム追っかけてないからわからんけど、N君どうなったかなぁ。そういう状態は現実的にもそう長くは続かんということなのかな?」妙に納得してしまう沙門だった。
「一章のまま続けはいいですけど・・あ、それだとゲームにならない」
「結婚という最終目的があるし、なかなかって、何、真剣に語らせようとするんだ、君は」
「ふふふ。赤くなってますよ」
「君、新潟帰った方がいいよ。仕事なんか辞めて」
「また、辞めろと云うんですか?まぁ、私の仕事の事は置いといて、遙と云う事でいいんですね」
「そういう事に・・・そっか、わかったよ」沙門は突然に悟りきった顔をした。
「へ、何がですか?」きょとんとして慧子は訊き返す。沙門は立ち上がった。
「冬の宴だよ。華瑞姫君、有り難う。決心が付いたよ。しかし、時間がないなぁ。桂氏君を呼ぶか?いや、彼は絆で忙しいし。ま、売り子で頑張ってもらうとして。火炉那氏か?あ、でも彼も本を創るのか?困ったぞ」
「・・・どうしたんですか?まさか、冬の宴の準備してなかったんですか?」慧子も立ち上がった。
「・・・ああ、ヴァナ・ディール生活が忙しくね。でも、君のおかげで決心が付いたよ」
「これからですか?あゆ本でしたっけ?」
「・・・いや、ちがうよ。遙編だよ・印刷所と真希さんに連絡入れないと。ま、そういう事だから。締め切りは他しか明日だから。急ぐね」
「あ、明日?本当ですか?」一人、華瑞姫慧子は喫茶店に取り残された。というか、途方に暮れていた。
かくして、短期決戦が始まった。



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