山行報告(1999年 5月初旬 北アルプス・穂高連峰)
前穂高岳・北尾根、僕たち岳人のあこがれの雪稜だ。



 つい先日、穂高に行って来た。
 小梨平にベースキャンプを設営。
 小屋泊まりの軽装。
 涸沢〜奥穂高岳〜前穂高岳〜岳沢のルートを1泊2日の行程。
 実は、その前の週末にバイクで事故ってしまって、膝をひどく傷めていた。
 それで、いつもは幕営だけれど、今回ばかりは小屋泊まりにしようか、と。

 いや、きつかった。
 初日は標高1400mの上高地から、穂高岳山荘のある標高3000m弱の白出乗越まで、
 標高差1600mを一気に登ってしまうわけだ。
 膝が泣きたいほどに痛み、テーピングして、鎮痛剤をのんで登った(笑)
 でも、無理をしてでもここまで登っておかないと、翌日、難所の吊尾根を早朝に通過できない。
 陽が昇ると、この季節は急に気温が上がって、積雪が腐ってしまう。
 そうなると、雪稜では危険度が増す。これを避けたかった。
 翌日は予定通り、夜明け前に出発。奥穂高岳頂上付近で、御来光を見る。
 単独行での吊尾根縦走はいやな気持ちだった。
 何かがあっても、誰も見届けてはくれないわけだから。
 おまけに、私みたいに夜明け前に出発した人がだれもいない。
 まったくのひとりで行動し、トレースもあまりなかった。
 だから「平気だった」と言えば大嘘にる。
 実際、かなり心細かった。

 途中、最低鞍部から前穂高岳への取り付きが急傾斜の雪壁となっていた。
 おそらく北尾根を登ったパーティだろう、ザイルで懸垂下降をしているのが見えた。
 単独行でザイルを持たない私にあの雪壁が登れるわけがない。
 「主稜線を前穂高岳までたどる」といとも簡単に書いてあった過去の記録を読んでいたので、
 そのとき私は、その記録者の首を絞め殺してやりたいとさえ、思った(笑)

 で、しかたがないので、そこからは夏道通り、前穂高岳斜面をトラバースして回り込む。
 岳沢まですとんと切れ落ちた雪壁を延々とトラバース。
 正直なところ、いい加減泣きたくなる。
 それでも何とか、重太郎新道下降点までたどりつき、そこから前穂高岳頂上を往復。
 ああ、これであとは下るだけだ、と喜んだのが、甘かった(笑)
 過去の記録では、下降路を重太郎新道に取っていた。
 しかし、これがまた積雪でほとんど覆い隠されている。
 雪壁が連続するわ、ルートがわからず迷いまくるわ、もう散々。
 あとで考えれば、下降路は奥明神沢に取るべきだったのかな、と反省したものの後の祭り。
 尾根をまちがえてはハイマツを漕ぎ、雪壁をトラバースして、尾根から尾根へとルート探し。
 眼下に岳沢ヒュッテが見えているだけにもどかしい思いだった。

 最後はようやく奥明神沢に逃げて、あっというまに岳沢到着。
 どっと疲れが出ながらも、安堵感に包まれた。