山行報告(2000年 5月下旬、比良山系・白滝谷)
「今年最初の沢登り、嬉しいねぇ…」と水に戯れる
(白滝谷、「スベリ石」付近の滑滝で)



 いよいよ、沢登りの季節到来!
 僕とKYOは、もう春先から今年の沢登りの話をはじめていた。
 やはり、今年の大目標は台高大峰の沢に行くこと。沢中1〜2泊で3級クラスの沢、できれば4級の沢に行きたいな。そのためには、夏が来るまでに比良山系では最悪の谷、事故続発のため入谷禁止ともなった貫井谷は是非落としておきたい。ついでに悪さでは貫井谷と一、二を争う猪谷も片づけておきたい。
 そんなこんなで、連休明けには沢登りのトレーニングを開始するつもりだったのだが、ついつい遅くなってしまった。
 五月下旬の週末に、山歩会比良大集合の企画があったので、ただ大集合するだけじゃおもしろくない、ついでに沢登りトレーニングも兼ねてしまおう、ということで、僕はKYOとふたり、口ノ深谷遡行を計画した。けれども、その週末には低気圧が接近、大集合の企画そのものが流れてしまった。そうは言ってもテンションがアップしたままのふたりは「はい、雨ですか、それじゃまた今度…」などとおとなしく引き下がれるはずもない。

 前夜、僕はKYOに電話をかけ、おたがいの意志を確認。企画が流れても沢登りやる気満々のふたり。但し、目的地を変更して、どうせなら初めての沢、三舞谷を狙うことにした。2級ながら、標高差850m、核心部は2段35mの大滝。ん〜、胸が高鳴る。雨が降る前、午前中にやっつけてしまおう、と話し合ったのだが。
 朝起きると、早くも雨が降り出していた。降ったり止んだりではあったが、けっこう真剣に降っている。
 KYOに電話をかけようかとも思ったが、電話をかけて「どうしよう?」と問いかけることはすなわち「やめようか?」との問いかけに等しいと気づき、電話もせずに約束時間の少し前、KYO宅に車で迎えに行く。KYOの朝飯につきあい、コーヒーのお裾分けをもらいつつ、ふたりで協議。この激しい雨のなか、初見の三舞谷はヤバそうだと一致。しかし、どこかトレーニングには行きたい。口ノ深谷のようにゴルジュの発達した谷は集中豪雨の鉄砲水を食らうと逃げ場所がないので、結局、比良山系ではごく易しい部類の白滝谷に行くことに決定。
「ふん、どうせ1級の沢さ、ま、トレーニング、トレーニング、僕らにとっちゃ楽勝だね〜」と、内心ではなめてかかったのが、間違いの元だった(笑)

 いつものように坊村で林道に乗り入れると、いきなり「通行止め」の看板。ゲートまで設けてあって、チェーンがかけてあるぞ?
 ふたりで顔を見合わせる。おいおい、何回もきてるけど、こんなことは初めてだよな。
 車から降りると、なんとチェーンは引っかけてあるだけ、南京錠も何もない。小心者のふたり、顔を見合わせてこそこそと相談。
 うんうん、行っちまおうぜ、な?
 チェーンを外して乗り入れに決定。
 けど、帰るときに南京錠かけられて、いけずされたらどないしよ?
 小心者はあれこれと考えるのに忙しい(笑)
 そんなこんなで、動揺しつつ進むと林道脇に「白滝×」の道標が。おお、ここが白滝谷の入り口やね。なんかちょっとおかしいけど、こんなとこやったかなあ。沢も小さいなあ。ゲートを突破した罪悪感でちくちく痛むふたりの小心者は、上の空状態で地図も確認せず、装備をととのえて入渓したのだった…。

 あまりに小さな沢、あまりに単調な地形。
 なんだよ、ほんと1級だよな、おもしろくもなんともありゃしない。もっとマシな沢にすりゃよかったよなあ。
 完全に気が抜けてしまった。抜けたついでに落石事故があって、僕が軽傷を負うハプニングも(苦笑)
 最後に水量がなくなり、いよいよおかしいぞと、よくよく地図を眺めると…。
 あ、間違えた。全然見当違いの沢に入ってしまった。
 ワサビ沢。
 そうか、あそこの道標は「白滝沢」じゃなくて「白滝山」と書いてあったわけやね?
 そうだよな、こんなカスみたいな沢、誰も登るわけがないよな。
 かくして、僕たちは「ワサビ沢(おそらく)初遡行」という記録を樹立して、撤退開始(苦笑)
 ロス・タイムは約1時間半。
 しかし、それでも執念ですな。僕たちの執念だけはほめてやりたい。
 林道まで戻った僕たちは、もう一度、白滝沢をめざしたのだった。

 白滝沢は立派な沢だった。ワサビ沢なんぞとは大違い(笑)
 雨のせいか、増水が激しく、どうどうと流れている。
 よしよし、1級でもこのくらい増水したらおもしろいやろ、と不埒なことを僕たちは考えたかどうだか(考えた)。
 それでも小さいながらゴルジュ帯もあり、連瀑帯もあった。美しい滑滝(なめたき)もあったし、10m近い美瀑もあった。
 どの滝も直登すれば、結構楽しめた。ある滝ではスラブが雨に濡れてドロドロヌルヌル状態で、ちょっと緊張しつつ、微妙なバランスで登ったところもあった。正直言って、これが1級? という感じもした。あそこで落ちたら痛いだけではすまなかっただろうな。もちろん落ちるようなへまはしないけど。
 まあ、どれもこれも、増水したおかげ(?)で楽しめたのかな、とは思う。
 それにやはりシーズン最初の沢は、こけまくる、滑りまくる。
 そりゃそうですな、わずか何日前かまではアイゼンをつけて雪の上を歩いていたんだから。それが今度は地下足袋に草鞋をはいて水苔のついた岩の上を歩くんだもの、全然感覚がちがって当然だよな。けど、ほんま、ようこけた(笑) そういう意味でも、最初の沢は三舞谷じゃなくてよかったかも?
 結局、約2時間ほどのクライミングで、終了点の夫婦滝に到着。
 一般登山道を駆け下りて、雨の降りしきる白滝谷をあとにした。
 余談ながら、ゲートのチェーンは南京錠をかけられるようないけずもされず(当たり前か)、無事通過しました。


 はっきり言って、記録に残すような沢でもなかったけれど、ま、行ったのは行ったんだから、記録しておくか、と。
 次回は、6月上旬に口ノ深谷、そして、6月下旬には三舞谷を計画中。
 貫井谷と台高大峰は8月に予定、かな…。