南ア・甲斐駒ヶ岳黄蓮谷右俣 速報

1.日  時:2001年12月6日〜9日(山中3泊)
2.メンバー:澤村光弘、野口公生(山岳同人「黒部童子」)
3.記録速報:以下参照

<注意>
●11/28〜29、12/4、12/5〜6の三度にわたって通過した南岸低気圧に伴う降雪のため、今年の甲斐駒は例年になく積雪が多い(「例年より1ヶ月は早い」…七丈小屋管理人)
●黄蓮谷では標高2100mを越えると急に積雪量が増え、膝から股下までのラッセルを強いられる。場所によっては腰から胸までの登りラッセルあり。また、黒戸尾根からの甲斐駒一般ルートでも私たちが登頂したときには全くトレースがなく、山頂からの下りでは股下までのラッセルがあった。
●雪質は乾燥粉雪であるため、トレースは一晩の強風で跡形もなく消える。
●この週末に黒戸尾根から甲斐駒への入山者は2パーティ、数人程度(七丈小屋での幕営者、宿泊者)、この人数でのラッセルで登頂は難しい?
●「黄蓮谷右俣の氷瀑は11月の低温で発達しかけていたものの、この降雪で快適なアイスクライミングのシーズンは終わった」(七丈小屋管理人)

<記録>
第1日 雨から、曇りのち時々晴れ
竹宇駒ヶ岳神社駐車場(11:30)〜五合目小屋(16:30)

 前夜、南岸低気圧が通過。夜半過ぎに京都から車で到着。車の中で居眠りしながら雨が上がるのを待つ。ようやく昼前になって雨が上がったため、出発。静岡県の二人パーティと相前後して出発する。彼らも黄蓮谷右俣らしい。
 標高1600m付近から積雪が現れ、五合目小屋では50cm前後。

第2日 晴れ 夜には季節風が強まる
五合目小屋(06:00)〜黄蓮谷千丈ノ滝下(1650m、07:30)〜坊主ノ滝下(1750m、08;50)〜奥千丈ノ滝下(2000m、11:20)〜インゼル(2400m、15:10)

 五合目小屋から黄蓮谷への下降では途中で赤布を見失い、右寄りに下りすぎてしまった。おかげで千丈ノ滝の雄姿を眺めることができた(負け惜しみ) ほとんど凍っておらず、右岸を簡単に巻き上がる。
 坊主ノ滝は半分ほど凍った状態。難なく直登。私自身はアイスは初めてだが特に難しいとも感じなかった。続く15m滝も簡単に越え、左手に黄蓮谷左俣を見送る。ゴルジュを抜けると奥千丈ノ滝。ここは完全氷結。予想したほど傾斜は強くなく、私でもザイルなしで簡単に登れてしまった。最下部の滝しか見当たらず、ほかの滝はすべて積雪に埋没した模様。ここを過ぎると一気に積雪が深まり、ラッセルが苦しい。
 やがて谷が開けてくる。見覚えのある(写真で)氷結した滑滝が現れ、インゼル付近とわかる。時間的にも行動をうち切り、岩小屋ふうの巨岩下でビバークを決定しツエルトを張る。
 夜になると強風となり、巨岩上の斜面からのすさまじいスノーシャワーに襲われ、身体が埋没。一睡もできない。

第3日 晴れときどき曇り
インゼル(06:00)〜10m滝上(2450m、08:00)〜奥ノ滝最上部(2600m、11:00)〜甲斐駒ヶ岳山頂(2967m、13:30)〜七丈小屋(2360m、17:00)

 たまらずに3時起床。身体もツエルトもほとんど埋没。除雪に1時間かける。強風はおさまり、おかげでスノーシャワーもおさまった。
 インゼルの滑滝を越え、その上の10m滝で今回2度めとなるザイルを出す。ダブルアックスが小気味よく決まる。苦しいラッセルを続けると奥ノ滝。最下段の滝はほとんど垂直。ここはあっさりとあきらめて、左岸の積雪深い急斜面を登る。二段めの滝は近づいて観察、登れそうではあったが、今後のラッセルの深さと時間とのかねあいから見送る。後続の静岡県パーティは直登に決めたようだ。最上部の滝は両岸に岩壁が屹立し高巻くことができず、直登することにする。最下部は垂直。澤村が空荷でリード、荷揚げの後、私が登る。いちばん面白い登りとなった。
 そのあとは再びひたすら苦しいラッセル。最上部で左手の尾根に上がり、頂上直下のコルに飛び出す。頂上付近はトレースがなく、13:30登頂。
 これで一気に駆け下りるぞ、と思ったら甘かった。下りでも股下前後の苦しいラッセルが続く。いいかげん悲しくなった頃、七丈小屋にたどりつく。もうラッセルはいらん、勘弁してくれ、という感じ。

第4日 晴れ
七丈小屋(07:00)〜駐車場(11:00)

 七丈小屋から下では積雪がぐんと少なくなる。ひたすらひたすら下り続けるのみ。


 詳細記録は、近々、写真付きでHPに掲載します。

以上、文責:野口