以下、西やんから寄せられた「八ヶ岳連峰赤岳東稜山行報告」です。
原文のまま引用します。僕も行きたかったよ〜(泣)

                    by 管理者NG(noguring)


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`01.02 八ヶ岳/赤岳東稜〜阿弥陀南稜下降 単独行


1)期日:`01年2月10日(土)〜11日(日)

2)メンバー:西田重人(単独) 山岳同人「黒部童子」

3)行程:

[第1日] 清里=キッツメドウズ・スキー場=真教寺尾根1900m(09:00)
      〜牛首山(11:00)〜大門沢二股(14:00)
      〜赤岳東稜2500m(16:00)
     
[第2日] 赤岳東稜2500m(07:00)〜赤岳竜頭峰(11:00)
      〜阿弥陀岳(12:30)〜青ナギ(14:00)
      〜舟山十字路(17:00)〜原村ペンション上バス停(18:00)

4)行動概要:

[第1日]
 
 「アルプス」が三鷹駅での人身事故(また!)のため、1時間遅れ。小淵沢駅ホーム待合い小舎で3時間仮眠、小海線始発で清里へ。清里駅からは旭東稜へ入る3人Pとタクシー相乗り。(彼らは赤岳東稜を知らなかった。)美しの森駐車場で彼らは降り、自分はそのままスキー場まで。清里〜スキー場間、タクシー代は1700円ほど。美しの森には車が10台ほど、出発準備をする人たちが多数見られた。

 スキー場施設には7時半(平日だと8時)にならないと入れない。リフト券売り場で登山者も乗せるかと問うと、板を履いてなければダメと言う。そんなはずは、と思いながらも諦めて歩いて上がる覚悟をするが、登りだす前にダメモトでリフト係員に聞いてみると、原則ダメだが特別に乗せると言う。発券所に取って返し、800円のリフト券を購入し無事8時運行開始のリフトに乗る。過去2回大門沢を忠実に詰めているが、平地のラッセルとそれをより鬱陶しいものにする無数の堰堤とに閉口したので、今回はリフト利用とした次第。

 リフト終点が真教寺尾根1900m。ここで朝食を摂り、スノーシューを付けて登りだす。ところどころ膝あたりまで潜るが、結構雪は締まっており概ね向こう脛あたりのラッセルでの登高。胸あたりまでのラッセルも覚悟していたので、これは楽チン。しかし、ちょっと傾斜が急になると、軽い雪質にスノーシューのクランポンが効かず、しばしば後ろに滑る。早くもこのあたりで今回スノーシューを選択したことを後悔し始める。
 
 牛首山を越えたコルあたりから水平トラバース気味に行けば、丁度東稜取付あたりと踏んでいた。しかし、大門沢側の疎林の斜面では頻繁に首まではまる。一旦はまるとスノーシューの尖ったテールが引っ掛かり、脱出するのに悶絶する。消耗が甚だしい。あるいはもっと真教寺尾根を登ってから下降したほうが良かったのかもしれないが、それではあまりにチョンボくさい。水平トラバースは諦め、大門沢目ざし下りやすいところを選んでどんどん下る。高度差150mほど下り大門沢本流に入る。と、そこには何とトレースがあった。しかもくるぶし程度までしか潜っていないツボ足である。数人で入ったのか、トレースは踏み固められている。癪なので、トレースを外してスノーシューで進む。
 
 右手の台地に上がって行くトレースを見送り、沢の中を忠実に辿るとやがて二股。人の気配に振り向くと、ワカンを履いた2人Pが速いペースで迫っていた。トレースを辿って、大門沢を順調に進めたと言う。とすると、もう1P先行しているのか?若い2人はいいペースで先行して行った。大学山学部だろうか。大門沢3度めにして初めて人に会う。
 
 二股は右に入り、すぐに左手の尾根に這い上がる。トレーニングとスノーシューテストのつもりで、2人のトレースは追わず急な樹林帯のラッセルを続ける。2時間ほどで一旦傾斜が落ち、ビバーク適地が出てきた。地形図から2480m付近と読む。時刻も16:00を回ったので、ここでビバークとする。風も当たらず、静かなテン場だ。(しかし寝具選択が悪く、不快でほとんど眠れず;後述)

[第2日]

 4時には起き出して、コーヒーを飲みマルタイを食らう。が、寒さと睡眠不足で動く気になかなかなれない。出発する頃には、早くも朝日が顔を出しつつあった。小1時間ほどツボ足アイゼンでラッセルすると、第一岩峰が間近に見えてきた。その上では先行Pのセカンドがブッシュと格闘している。彼らのビバーク跡は第一岩峰の50mほど下に残っていた。

 ここからは仕方ないが先行のトレースを追う。登攀具を付けザイルを引きずり、ブッシュを掴んで第一岩峰上に這い上がる。そして、きれいなナイフリッジを進む。前回はここにはキノコが乗り、そこに自分が付けたトレースを終了点から見下ろして感動したのだが、今回は何故かキノコもない。やがて、ビレイする先行Pのセカンドに追い付いた。少し言葉を交わす。彼らはやはり大学山岳部OBで、慶應上智の混成Pとのこと。元JAC学生部だろう、無駄のない動きは見ていて心地よい。よく見かけるトロトロしたPとは大違い。先行Pにイラつく心配も無さそうなので、後続に甘んずることにする。

 第二岩峰左側壁では先行とは一部ラインを変えて登ったりして、前回は締まった雪壁をダブルアックスで快適に登った部分も今回は雪落としし、先行Pと同時に終了点に到達した。稜線から頭を出した途端、強烈な西風にアゴひもを留めていなかった高所帽を飛ばされてしまった。それを理由に行者へ下ろうか、と一瞬考える。目と鼻の先の赤岳頂上には、大勢の登山者。下からはさらに続々登ってくる。行者に下りてしまうと早々に下界の喧噪に巻き込まれると想像すると、頑張って南稜を下降し計画貫徹しようと思う。暗くなる前には下山できるだろう。西風がバビューンと吹いている。行者小屋前にはテントがざっと50張。

 阿弥陀に向かう途中で、いくつものガイド登山団体とすれ違った。顔を被っていてお互い分からないが、ガイドのなかにはウルタルII峰の堤さんや、年末年始のキリマンジャロ案内を依頼してきた早川さんらしき人たちもいた。コルから阿弥陀へは10人ほどの団体にくっついて登る。う〜ん、シャリバテしてきてる。夜明け前のマルタイと、キットカット3切れだけやもんな。水筒の口が凍ってて、水も飲めん。阿弥陀の山頂では誰か絶叫しとるぞ。南稜を登って大喜びのPのようだ。山頂には20人以上もの人。はよ静かなところへ行こうと、写真撮りながらなおもわめき散らしているオッサン達にガンを飛ばし、彼らの横をスタコラ下り始める。

 南稜は全くの一般道と化していた。文三郎の赤岳直下の方がヤバいで。青ナギまではドンドン下る。途中、3Pくらいが登ってきた。この頃からヒザにきた。特に弱点の左ヒザがブレて踏んばりがきかず、トレースを外してズボっと潜るとそのまま仰向けに倒れこんでしばし休憩、この繰り返し。このペースでは、茅野に出る終バスに間に合うかどうか。旭小屋から舟山十字路へは途中登りがあるので、それを嫌って広河原側の林道まで下るが、トレースがないのでスノーシューを付けヨロヨロ行く。舟山十字路でトレース出現。しかし、ここから原村ペンションまでの林道歩きがさらに地獄であった。日も落ちて真っ暗な林道をやっとこさ下り、きらびやかな別荘、ペンション村の明かりが見えた頃には既に18時を回っていた。終バスは18:35発だった。

 バスは茅野まで貸し切り状態。茅野では「養老の滝」へ直行。ビール3本がまずは瞬時に空になった。で、ひとり飲んだくれて山行終了。夜は茅野泊り。やはり八ツは小屋、ベースを使わず継続や縦走してこそ登山になる。次回八ツに来るなら、降雪直後の旭岳東稜〜赤岳へ縦走〜西壁左ルンゼ〜大同心稜下降、または阿弥陀北西稜〜赤岳西壁左ルンゼ〜天狗尾根下降はどうだ? ドカ雪がこのまま無ければ、左ルンゼは良い状態になりそう。

5)装備関係コメント:

^まず、スノーシュー。効果はそこそこだが;
 @フカフカ雪には強くない
 A急傾斜には強くない(浮力が災いし、キックステップ式に使えない)
 Bかさばる、重い(ザックに付ける時)
まあ、場所にもよるが、少なくとも今回はワカンに軍配か?

_シュラフカバー
一応防水透湿素材だという軽くコンパクトな安物を使ってきたが、今回内側が全面的に結露し全く透湿性が損なわれたようで、シュラフはもとより着衣まで蒸れてビショビショ。シュラフ内はジトジトしてかつ冷たい。毛の下着パンツとジャケットの湿った裏地が不快だったこと! 思い切ってカバーを外して、やっとウトウトした。低温下ではやっぱりゴアにしよう。(で、ジャケットも裏地なしがやっぱりいい。)

`オーバーゲイター
今回の新兵器は、テレブーツ用ゴアオーバーゲイター。ラッセルに終始するのを考え、革靴の保温性・防水性をアップさせる目的で試してみたが、予想以上の効果。念のため薄手のゴアスパッツと併用したが、それもいらないだろう。ソール前部がカバーされてしまうので、常にアイゼンなりワカンが靴に付いている状況でないと使いづらいものがあるが、きれいな雪道ならこれだけで歩いても問題ない。これは今風の革靴に使える!