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『かつて神だった獣たちへ』(かつてかみだったけものたちへ)は、めいびいによる日本の漫画。『別冊少年マガジン』(講談社)にて、2014年7月号から連載中。おもな略称は『かつ神』。
== あらすじ ==
■第1話 - 第11話
●パトリア大陸で勃発した北部パトリアユニオンと南部パトリア連合の10年にわたる内戦が、パトリアユニオンの異形の兵士擬神兵の活躍で和平に至ってから5年後の世界。神として凱旋した擬神兵たちは圧倒的すぎる力ゆえに次第に「獣」と蔑まれるようになり、それに違わぬ事件を各地で起こすようになる。
●かつて擬神兵ウェアウルフとして擬神兵部隊を指揮したハンク・ヘンリエットは、「人の心を無くした者は仲間の手で葬る」とする部隊内の取り決めに従い、暴走する戦友たちを抹殺する「獣狩り」として旅を続けていた。擬神兵だった父をハンクに殺された少女ナンシー・シャール・バンクロフトは、父の死の意味を知るために仇であるハンクの旅に同行することとなり、擬神兵の生みの親であるエレイン・ブルーレークによって擬神兵が戦時中に殺される運命であったことや、それを妨害し戦後の世界に擬神兵を解き放ったケイン・マッドハウスの存在を知る。ハンクは、サポート役のライザ・ルネキャッスルが入手した情報を頼って遂にケインと邂逅するが、ケインは擬神兵たちが自由に生きる世界を作ることを宣言。彼の策略に嵌められ擬神兵としての本能を解放されたハンクは、町を破壊してしまう。
■第12話 - 第21話
●「ホワイトチャーチの惨劇」と名付けられたハンクの暴走から1年後。ケインは擬神兵や戦後の情勢に不満を抱く人々を扇動し、大陸西部に自由国家新パトリアを建国。束の間の平和は破られ、大陸には戦争の機運が再び高まる。シャールはライザとともに、クロード・ウィザースが指揮する擬神兵討伐部隊クーデグラースに身を寄せ、孤独に擬神兵を狩り続けるハンクの行方を追うこととなる。雪山でシャールと再会したハンクは、度重なる戦いで命を投げ捨てる状態まで疲弊していたが、シャールの必死の説得によってケインを仕留める覚悟を新たにし、一時的にクーデグラースと行動をともにすることとなる。
■第22話 - 第30話
●勢力を拡大する新パトリアの国土侵攻に備え、パトリアユニオンは西部開拓の拠点であるボルドクリーク要塞を攻め落とすことを決定する。要塞で確認された擬神兵討伐の任を帯びたクーデグラースも現地に派遣されるが、やがて前線部隊とともに戦闘に参加することとなる。戦いは、ハンクたちの奮闘と新兵器の力によってパトリアユニオン側の勝利となるが、擬神兵に操られた町人全員を射殺せざるを得ない状況に追い込まれる後味の苦い結果に終わる。その間に新パトリアは中立だったパトリア連合の首都の攻略に成功。ケインは劣勢に立たされたユニオンに脅迫まがいの和平を迫り、動きの制限されていた擬神兵たちが自由に行動できる状況を生み出す。
■第31話 - 第47話
●パトリアユニオン軍を退いたハンクは、ボルドクリークの人々を操っていた子供の擬神兵の正体やケインの狙いを知るために擬神兵が生み出された地エコールを訪れる。そこでハンクは、エレインしか知らない擬神兵の製造技術をケインが求めていること、子供の擬神兵ミリエリアがエレインの子であることを知る。かつてエレインが擬神兵技術を確立するきっかけとなった「神の声」を聞いたシャールが不調を訴えたことでひとまず撤退したハンクは、エレインとの関係、エレインと助け合いながら生きた少年時代、教会に引き取られケインと邂逅した青年期、不条理な内戦で負傷して偶然にも擬神兵となった経緯をシャールに打ち明ける。
== 登場人物 ==
声の項はテレビアニメ版の声優。
=== 主要人物 ===
●声 - 小西克幸、金香里(少年)
●本作の主人公。元擬神兵部隊の隊長で、内戦後は特技曹長として暴走する擬神兵を狩る「獣狩り」として旅をしながらケインの行方を追っている。擬神兵部隊用の白いコートとフード姿が特徴で、日中は黒髪の男性の姿をしており疑神兵の力を使えないが、夜間になると髪が白く変わり、膂力と敏捷性に優れた人狼の姿に変身できるようになる。戦闘時には捕鯨銛に似た槍先と折り畳み式のロッド、穂先の爆薬で構成される対擬神兵用の特注武器「ボンブランス」や、神殺しの弾丸を込めた拳銃を使う。
●北南の中継地点に存在したブルーレークタウンの出身。内戦で町が戦火に焼かれた際に両親を失い、自分の名前を含むそれ以前の記憶を一切喪失する。瓦礫に埋もれていたところをエレインに助けられ、孤児として彼女や同じ境遇の子供たちと生活していたが、エレインが牧師に引き取られると彼女の才能を開花させる目的で教会に入学。そこで出会ったケインと友情を結び、卒業後は彼の根回しで首都の軍学校に入校。数年後、前線で致命傷を負ったのちにエコールに送られ、エレインの手によって初の擬神兵成功体となる。
●ホワイトチャーチでシャールがケインに撃たれる姿を見て「ホワイトチャーチの悲劇」を引き起こした後は、単独で擬神兵たちを狩り続ける。隠遁生活のなかで、本能のまま暴れる獣と化すのを恐れるようになるが、再会したシャールに生き続けるように諭されたことで、ケインたちを止める決意を新たにし、一時的にクーデグラースに所属する。ボルドクリーク要塞攻略後は軍属でいることが行動の妨げになると感じて軍を退役し、シャールとともに擬神兵にまつわる謎とケインの行方を探る。
●声 - 加隈亜衣
●本作のヒロイン。擬神兵であった父の仇をとるためにハンクを追っていた少女。清楚な洋装と腰まで届く三つ編みが特徴。普段は穏やかで年相応の立ち振る舞いを見せることが多いが、戦闘の際は父の形見の「象撃ち銃」を躊躇なく撃つ強気な一面を見せる。リヴレットウッド村の出身で、村では父とともに孤児院を切り盛りしていたが、父がニーズヘッグとして帰還後は経営が苦しくなり、村人からも差別的な扱いを受けた過去をもつ。とある町でハンクを見つけて本懐を遂げようとするが、ハンクが獣狩りをする姿を見たことで敵討ちを一旦保留し、父の死の真相やハンクたち擬神兵が断罪される存在か見極めるべく旅に付き従うこととなる。ホワイトチャーチでのケインたち擬神兵の決起の際にケインに撃たれるが、アラクネの糸による服を着用していたため生還。甦った父との交戦やこれまで出会った擬神兵たちの姿から考えを改め、再会したハンクに対して生き続けるよう諭し、獣に成り下がったら自分の手で殺すことを約束する。
●声 - 能登麻美子
●擬神兵の技術を作り出した本作のキーパーソンで、ハンクと深い仲にあった女性。ブルーレークタウンを開拓した家の令嬢であり、町が戦火で焼失後、助け出した少年にハンクと名前を付け、共同生活を営むうちに彼を愛するようになる。やがて、ほかの孤児たちをまとめ上げる才能に目を付けた牧師によってハンクごと教会に引き取られ、周囲を圧倒する閃きと才能を開花させる。教会を首席で卒業後は牧師の一存でソムニウムの研究に従事させられ、苦心の末に神の化石に触れたことでソムニウムの本質を理解し、強化兵士計画を立案。人体実験の末にハンクを擬神兵に改造することに成功し、さらに彼の適性を解明することで擬神兵部隊を誕生させた。一方で擬神兵が禁忌の存在であることも理解しており、製造技術を秘匿し続け、終戦後には擬神兵と関連技術を自らの命とともに葬ろうとする。しかしケインの銃撃を受けて倒れ、新パトリアにてカプセルの中で昏睡状態となったまま拘束され続けている。
●声 - 日笠陽子
●パトリアユニオン軍情報局戦後処理部所属の少尉。本編開始の2年前からハンクをサポートする任を与えられ、単独行動の多いハンクを何かと気にかける姉御肌な性格。シャールやクロードと面識をもってからは、無茶をしがちな彼らの面倒も見るようになる。ハンクの退役後は危険を承知の上で、情報局にも残されていない擬神兵の秘密に迫る。
●声 - 石川界人
●パトリアユニオン軍の若き少佐で、クーデグラースの隊長。レイチャードと開拓時代から続く名門ローズ家出身の後妻の間に産まれた子で、ケインの異母弟にあたる。その生い立ちから、人々を脅かす獣と化した擬神兵の討伐に人一倍の使命感をもち、特に国を捨てた兄に対しては並々ならぬ感情を抱いている。しかし新パトリアとの戦いを経験するうちに綺麗事だけでは済まない戦争の現実に直面し、ケインの後手に回り続ける現状に苦悩する。
●声 - 土師孝也
●クーデグラースの副長を務める軍曹。実戦経験豊富な老兵で、若いクロードを陰ひなたに補佐する。ガルムの戦いでは風邪で動けないクロードに代わってクーデグラースを指揮し、自らを囮にする捨て身の戦術でガルムを追い詰める。
●声 - 中博史
●北部最前線で、ボルドクリーク要塞攻略を担当する大佐。内戦時に武勲を立てた英雄だが、決して善人とは言えない強かな人物。ハンクの正体に気づくなど感も鋭い。アルファルドを使用し、味方諸共ケンタウロスの無力化に成功するが、直後に乗り込んできたケインによってアルファルドを奪われた上で殺害される。
●声 - 沢木郁也
●パトリアユニオンの大統領。現在の地位に上り詰めるため、ケインの母である前妻を南部からの攻撃が予測されていた地域へと慰問に向かわせ謀殺し、クロードの母と政略結婚した。後にその事実を知ったケインがウィザース家から離反、さらに新パトリアを建国する一因となる。大統領就任後も国家戦略と自らの政治利益を第一義とし、国民や国土を犠牲にすることを厭わないことからクロードにも反感を抱かれる。
●誠教会ヴェリテ派の牧師。教会出身者からは先生と呼ばれ、一介の聖職者ながら将軍やレイチャードとつながりをもつ。ヴェリテ派の教義を証明し、真理へ到達することを至上命題としており、エレインに神の化石から聞こえる「神の声」を解明させ、擬神兵を誕生させる形で一つの成果を得る。
=== 擬神兵 ===
●声 - 中村悠一
●元擬神兵部隊の副隊長。内戦終結間近、擬神兵の抹殺を決めたエレインに与するように見せかけて彼女を銃撃し、擬神兵たちが獣と呼ばれる状況を作ったことから、ハンクの捜索対象となっている。人と変わらぬ姿をしているが、幾多の致命傷を負っても瞬く間に回復する驚異的な再生力や死体を操る能力、影に溶け込み瞬間移動する能力をもつ。
●本名はケイン・ウィザース。レイチャードの子息であり、クロードの異母兄。幼少期に教会で出会ったハンクと交友を結び、エレインに対して淡い恋心を抱く。教会卒業後は父の駒として動くことを強いられ、次第に自由を渇望するようになり、エレインが擬神兵製造に携わっていることを知ると自ら志願して擬神兵となった。
●擬神兵たちが獣と化す理由が心の喪失ではなく、人間たちの欲望によって歪められるからと考え、新パトリアを組織し、擬神兵たちが自由に生きられる世界の創造を目指す。同時にエレインしか知り得ない擬神兵の製造技術を再現しようとしている。
●声 - 坂本真綾
●下半身が巨大な蜘蛛と化した女の擬神兵。非常に頑健な糸を生み出すことができ、暗闇からの奇襲を得意とする。ケインと行動を共にしており、彼のためならどんな行動も厭わない覚悟をしている。
●アニメ版では、手から複数の糸を生み出し、敵兵を捕縛していた。
●声 - 市ノ瀬加那
●ケインとともに行動する少女。ケインやエリザベスに懐いている。その正体はエレインが身籠っていた子供であり、ケインによってエコールにて誕生した擬神兵核をもたない擬神兵。ケイン同様死者を操る能力をもつ。
●声 - 鈴木達央
●新パトリア組織後、内戦時代の栄光を求め、ケインの側についた擬神兵。通称ロイ。ウェアウルフに酷似した漆黒の犬人の姿をしており、人の姿に戻れなくなることと引き換えに身体能力をより強化している。内戦時は最前線で戦う戦列歩兵であり、銃弾の嵐から奇跡的に生還後、擬神兵となる。ハンクやケインに憧れており、疑神兵として誇りを持っていた。故に疑神兵の存在意義を否定し敵対するようになったハンクには強い憎悪を抱いている。ホワイトチャーチでの一件後、孤独に戦い続けていたハンクのもとに姿を現し、ケインの側につくよう諭すが、拒否されたことでハンクの抹殺を敢行。数日にわたる死闘の末、とどめをさすところまでハンクを追い詰めるが、そこに現れたジェラルドたちに妨害され、クーデグラースの捨て身の戦術によって重傷を負う。撤退後、ハンクとシャールの連携によって致命傷を負い、最期はハンクへの憧憬を語りながら死亡する。
●アニメ版において本名が明かされている。戦闘中に致命傷を負い、疑神兵になる手術を激痛に苛まれながらも耐え抜いた。戦争時は部隊のムードメーカー的存在となった。
●声 - 杉田智和
●ケイン側についた半人半馬の擬神兵。飄飄とした性格の持ち主。巨体ながら俊足かつ狙撃の名手で、弓矢や馬上槍を使用して拠点防衛や敵陣撹乱を担う。また、戦前以上に回復能力が以上に発達しており、致命傷だとしても再生が可能。戦前は名の知れた医者であり、擬神兵と化した後も往年の技量をもって傷ついた新パトリアの兵士に応急処置を施している。かつては感謝されることに生きがいを感じていたが、軍医として従軍し、治してもすぐ死んでいく兵士たちを見るうちに自分の医療行為に意味があるのかと思い悩むようになり、ケンタウロスの力を得たのを機に敵味方問わず悲鳴を聞くのを好むように精神が歪む。
●ボルドクリーク要塞での攻防では自身の能力を存分に発揮し、塹壕に手榴弾を落として回るといった奇策まで用いて北軍に大打撃を与えるが、ハンクの機転でぬかるんだ塹壕に落とされ機動力を喪失。そこをめがけて撃ち込まれた砲弾にアルファルドが混じっていたことから肉体の壊死と回復を繰り返す苦痛の無限連鎖に陥る。最後は、ハンクに罵詈雑言をぶつけながらも終わらせてくれることに感謝し、ハンクの銃弾により介錯される。
●アニメ版において、医者としての責務の意味に悩み、ケンタウロスの力で味方を救った際、彼らに感謝されることで自らの存在意義を良しとしてしまい、心が歪む要因が深く掘り下げられた。
●ケイン側についた擬神兵。頑丈な体と短時間なら滑空できる機動力を持つ。通称フラン。擬神兵としては珍しく、明確に意識を保っていた個体として軍部や他の部隊から特に信頼されていた。戦争の際、北部政府に鉱山の明け渡しを拒む条件として擬神兵となった経緯をもつ。戦争後は自分の土地であり新パトリアの領土となった鉱山に居座り、炭鉱夫たちを強制労働させ、使えなくなると食い殺しては他の炭鉱夫への見せしめにした。非常に頑固な性格で自らの勘だけで鉱山を発掘するなど優れた人物だったが、鉱山を大切に思うあまり炭鉱夫やその家族、家族には非常に厳しく、結果的に妻には逃げられ、娘に恨まれていた。その一方で、家族や部下たちのことを誰よりも思っていた。また、誕生日プレゼントのネックレスを娘のファーンに渡してほしいとハンクに頼んでおり、渡されたファーンもまた、グリフォンが変わり果てた父であることを理解されていた。駐在する新パトリアの部隊を撃退するため、作戦決行の夜、山賊として反抗するファーン一味によって市街地に誘い込まれ、狭い路地で本領を発揮出来ないまま、閃光弾等の妨害を受け続け、最終的にファーンによって鉱山に誘い込まれる。そして、他の兵士を倒したハンクと入れ替わるように交戦。羽を地面に叩きつけて砂埃でハンクの視界を遮り攻撃するが咄嗟に貯蓄されていた炭塵をばら蒔かれ、ハンクの手榴弾によって生きたまま焼かれ致命傷を負う。最後は、怪物となってしまった父を終わらせてほしいというファーンの意思の元、ハンクによって射殺された。
==== その他の擬神兵 ====
●声 - 立花慎之介
●ハンクとシャールが初めて出会った町に暮らす擬神兵。通称ダニー。身体を自由に巨大化させる性質をもち、消耗の少ない人型と突破力に優れる肥大型を使い分ける。新街道によってさびれる町や家族のために擬神兵となり、内戦後は居場所を失いたくない一心で、商人の馬車などから強奪した物を出稼ぎの報酬と称して町にもたらしていた。しかし噂を聞きつけたハンクによって致命傷を負い、最期までどう生きるのが正解だったのかを問いながら射殺される。
●アニメ版では、強奪した金品に血糊がついており、彼の母や町の住民からは既に事情を理解されていたが、正気を失っては暴れるダニーに対し何もすることが出来なかった。
●声 - 内山昂輝
●ローグヒルという町で「ミノタウロスの要塞」と呼ばれる砦を作り続ける牛頭の擬神兵。通称セオ。戦時中は器用な手先と怪力を誇る築城のプロフェッショナルとして活躍した。元来は何事にも恐れを抱く臆病な性格で、戦後も戦いと死への恐怖を払拭するために、「備えれば落ち着ける」というハンクの言葉に従って砦を建設した。しかし実際は戦後になっても死の恐怖に苛まれており、事実ローグヒルに砦を築きあげた切っ掛けも、幼い子供にオモチャの銃を突き付けられたからであった。
●ローグヒルを訪れたハンクを敵とみなして交戦、ウェアウルフとなった彼に敗北。今際の間、死の恐怖から解放されることに安堵し、射殺される。
●声 - 津田健次郎
●全長50メートルを誇る巨体と負傷箇所が硬く再生する性質をもった擬神兵。通称アーティ。その巨体と並みの砲弾ですらものともせず戦場を突き進む姿は敵兵たちに多大な恐怖を与え、佇むだけでも敵の指揮が下がったという。寡黙で命令に忠実な人物で、個人的なことをあまり語らない人物だったとハンクは述懐している。
●終戦後、構わず東に向かって進行を続け、鉄道橋を破壊するルートに入ったことからハンクのターゲットとなる。ユニオン軍や鉄道主の度重なる攻撃に進行を妨害され、最終的にハンクの苦渋の攻撃で擱座するが、鉄道橋の先にある海を見て戦時中から抱いていた海を見たいという願望を叶えたことに満足しながら死亡した。
●声 - 福山潤
●蒸気の街ホワイトチャーチの教会を根城とする擬神兵。通称トーファー。人型ながら素早い飛行能力を有し、敵軍の指揮官だけを狙い指揮能力を下げる、石のような姿からの市街地における迷彩からの撹乱などに長ける。戦時中は正義を信奉し、南軍殲滅に躊躇しない性格から、ハンクや部隊の仲間たちに一目置かれていた。南北の和解に最も激昂し反対していた。
●ストリートチルドレン時代に巡礼聖職者との関わりを経て正義の意義を知るが、貧富の差が激しい街で正しい行いをなすことが難しい現実に直面し、犯罪を犯さなければ生きていけず絶望した過去をもつ。戦争の序盤、兵士になることで今の状況を打開するため町を出て従軍し擬神兵となるが、内戦後は他に行く所がなく、渋々故郷に帰還し、歪んだ正義感をもって正義にそぐわない行動をする者を殺す日々を送る。
●ケインを追ってホワイトチャーチを訪れたシャールやハンクに遭遇すると、盗みを働いた孤児をかばった彼らを罪人と断じて敵対。ケインから与えられた神殺しの弾丸によってハンクを追い詰めるが、シャールの射撃によって頭部を吹き飛ばされる。最期は自分の正道を疑わずにハンクに射殺される。
●アニメ版では、戦時中に飛行しながら敵の砦に接近し、砲台へ手投げ弾を放り投げるなどのヒットアンドアウェイな攻撃を行っていた。
●声 - 平川大輔
●シャールの父で、強靭な肉体と生命力を秘めた巨大なドラゴンの擬神兵。飛行能力と巨体を生かした肉弾戦、さらには火炎を放つ。通称ウィル。戦時中、経営が苦しくなった孤児院を守るために擬神兵となった。帰還後は無尽蔵の食欲が災いして村の家畜を食い荒らすようになり、噂を聞きつけたハンクによって本編以前に射殺される。その後は村の山奥に埋葬されたが、シャールがクーデグラスと村に帰還するのと同時期に復活。本能のみで動く獣と化し、村への被害を食い止めるために出撃したクーテグラスと戦闘になる。ガトリング砲や焼き討ちでも死なない生命力を見せるが、シャールの銃撃を受けて活動を停止。娘の姿を確認するようにして事切れる。
●声 - 早見沙織
●鳥の翼と魚類の下半身をもった擬神兵。通称トリス。翼の振動で発生させる歌によって相手を気絶に似た状態にさせることができる。その反面、普通の人間と変わらない耐久力しかもたないため、戦場では体躯に優れたダニーと組むことが多かった。かつてはストリートチルドレンであったが、彼女に目をつけた神父によって酒場の店主に紹介され、斜陽の港町ポートガルフの酒場で人気を博した歌手であった。しかし、内戦により商売が成り立たなくなり、途方に暮れていたところを擬神兵の素質有りとしてスカウトされた。内戦後は町に帰還し隠遁生活を送っていた。しかし新パトリアとの交戦の機運を知ると、自身の力で町の人々を眠らせて戦いから遠ざけようとする。しかし噂を聞きつけたクーテグラスによって重傷を負い、最後はシャールに諭され歌手時代の歌を歌いあげ、死亡した。
●アニメ版では、戦時中は部隊の仲間に歌を聞かせて皆の評価も高かった。その後はポートガルフに帰ってきたが自らの姿を人前に出せず路地にいた所をかつての酒場の店主、チャールズに見つけられ、町外れの洞窟に匿われる。しばらくしてトリスの歌声に惹かれたシャールと出会い交流を深めた。そして町を出てやり直そうと決心した矢先、トリスを匿っていることを突き止められ致命傷を負わされたチャールズの死と、不慮の事故から起きた火事で燃えていく酒場を見てしまい完全に発狂、住民たちを永遠の眠りに誘おうとするも、シャールにそんな歌は聞きたくないと否定され我に返るが、自ら自傷することで能力から逃れたクロードに撃たれ逃亡。最後は燃え尽きた酒場後でシャールと語り合うものの、クーデグラスの銃撃を立て続けに喰らってしまい、最後の思いを込めてかつて酒場で歌った曲を歌い上げ、力尽きてシャールに見守られながら死亡した。
●声 - 藤井隼
●厚い脂肪と抜きん出た体力を生かした索敵や隠密行動、ゲリラ戦に富んだ雪男の擬神兵。戦後は雪山に潜み、空腹から人を襲撃していたためハンクに誅戮される。仕方がなかったという言葉から、罪悪感は抱いていた模様。
●アニメ版では、クーデグラスの部隊と思われる者たちを殺害・補食している所をハンクに誅戮された。
●膨大な養分を糧に腹部の培養胎から自分の分身を生み出す能力をもった擬神兵。通称ロビン。本来は失敗作として処理されるはずだったが、優れた兵力を生み出す力を見込まれて部隊員となった経緯をもつ。分身は複数同時に作成が可能だが、養分を多量に必要とするため、コストの維持が厳しいといった欠点を持つ。故郷が南北の境目に存在し、家族や故郷を守るため擬神兵となった経緯を持つ。内戦後、記憶を失くした状態でケインに保護され、新パトリアに併合された故郷ダブルウォーカータウンに帰還したところでハンクたちと再会する。しかしそれは町人を喰らって生み出された分身であり、オリジナルのロビンは町の地下で訪問者を捕食して人の姿を成さない怪人じみた分身を生み出し続ける存在となり果てていた。オリジナルはせめて何も知らない分身に人として生きてもらいたいとハンクに語ったが、真相を知った分身のロビンは発狂し自殺する。オリジナルもこれに絶望し、ハンクにエコールへ向かうよう助言し、ケインを止めてほしいと懇願した後、射殺を受け入れた。
●廃墟となったエコールでハンクたちが見つけた死体のような擬神兵。発光器官と発音器官を備えた大量の羽虫を操る能力によって、見聞きした内容を再現劇として見せることができる。戦時中に昏睡状態となり失敗作として処理されたが、実際は意志を伝える手段がなかっただけであり、施設が放棄された後も擬神兵用調製槽と擬神兵の生命力によって生き続けていた。ハンクたちに当時の情景やケインの目的を伝えた後、自らの死を望み、ハンクに射殺された。
●単行本の巻末紹介からも説明されているが、正式には擬神兵としてカウントされていない。
●ベヒモス、ニーズヘッグに次ぐ巨体を誇り、戦時中は優れた機動力と攻撃力で敵兵を蹂躙したとされる巨鳥の擬神兵。小型の擬神兵の運搬にも用いられた。徴兵される前は北部の大農場マダー農園の使用人であり、農園の令嬢ルビアと親密な間柄だったが、身分の差を疎み、従軍し功績を挙げれば一緒になれると信じ軍に入隊。しかし戦争の中で正気を失ってしまい、流れるように擬神兵計画に参加、早期に理性を失くしたとされる。戦争後は、理性が無い状態でルビアの下に戻り、農園が荒廃する原因となる。噂をききつけたハンクと戦闘になり、羽を撃たれ墜落しさらに致命傷を負うが、最後の悪あがきのように屋敷に突撃し、異形の姿を受け入れたルビアと共に敷地の外に逃亡し、行方不明となった。戦時中は、ジョンと相性が悪かった。これは、性格や敵の処遇についての倫理観などのズレもあったが、擬神兵としての互いの相性によるものが大きいと推測されている。
●声 - 井上剛
●本編では劇中外でハンクにより殺害されたとされる擬神兵。遺体はパトリア軍によって鹵獲され、抽出された毒からアルファルドが製造される。
●アニメ版では茶髪をハーフモヒカンにしたお調子者の青年兵の姿で登場。擬神兵時は3つの蛇の首を生やし、両腕にも口が出現した姿となる。毒牙で噛みついて人間の体をドロドロに溶かす他、毒を霧状に吐くこともできる。
●擬神兵としての理性に次第に心を犯されていき、局地戦の戦後処理中にとうとう能力を制御できなくなり、周囲の兵士を敵味方問わず殺害したことで友軍から一斉砲撃を喰らう。瀕死の状態で人の姿を取り戻すも、自らが化け物に変わっていくことに耐えられなくなり、ハンクの眼前で、彼の静止を無視して腕を口に突っ込みヒドラの頭部を発生させ、自らの頭部が破裂させる形で自害してしまった。死後は肉体を解析され、アルファルドが製造されてしまった。
●彼の死によって部隊に多大な不安が生まれ、エレインは擬神兵が誤った存在であったと確信してしまい、ハンクには獣に堕ちた擬神兵は仲間の手で葬るということを決意させた。
●声 - 安元洋貴
●アニメオリジナルの擬神兵。擬神兵時は巨大なトカゲの姿となる。体表を迷彩のように周囲に溶け込ませながら高速で移動し、長大な舌を振り回して攻撃する。
●周囲から慕われる好人物だったが、終戦後、擬神兵は神であるとの考えから徐々に歪んでいき、いずこかの街で強盗殺人を行っていたところをハンクにより誅戮される。
== 用語 ==
=== 技術 ===
●内戦時代、エレインが提唱した「強化兵士計画」に則って造り出された改造兵士たち。胸部に埋め込まれたソムニウム製の擬神兵核の力で、人の姿と引き換えに伝説上の生き物に例えられる姿と力を引き出せるようになる。ただし力を得るには強靭な肉体や精神力に加えて血液のとある特徴が示す適性が重要視され、いずれかが欠けた場合変化に耐えられず自壊するデメリットをもつ。
●パトリアユニオンの劣勢を覆して内戦を和平にまで導いたことから、終戦後は市民から英雄と称される。しかし時間の経過とともに異形の姿や力を恐れられ、単に「獣」と蔑まれるようになる。それに並行して力に溺れ、本能のまま市民の生活に害をおよぼす存在になり果てる者が増加する。
●パトリアで発見された未知の鉱物。特定の熱と圧力を加えると、作中世界の主燃料である石炭の何百倍もの熱エネルギーを生み出すため、新エネルギー源として注目を集めた。しかし条件が揃わないと逆に大爆発する危険性が浮き彫りになったことで実用化には至らず、悪魔の鉱石と呼ばれるようになる。内戦時はエレインが研究を行い、燃料ではなく擬神兵の力の源となる擬神兵核としての利用法を編み出す。
●エコールの奥深くに存在する巨大なソムニウムの塊。近づくと特定の者には「神の声」という幻聴のような声が聞こえるとされ、劇中ではエレインやシャールが耳にしている。
●エレインが開発した特殊な銃弾。希少な素材と複雑な工程を経て造られており、擬神兵の肉体に打ち込まれると変位組織に細胞死を引き起こさせることができる。通常兵器では容易に殺せない擬神兵の対抗手段だが、エレインの失踪と同時に完成済みだった数十発がケインによって紛失。ハンクの体内に残された一発から模造品が作られるが、オリジナルにはおよばない性能のため、瀕死の重傷を与えたうえで決め手として使用される。
●かつてハンクが倒した擬神兵ヒドラの猛毒をもとにパトリアユニオンが製造した毒霧。人間はもちろん、擬神兵に対しても有効な制圧力をもつ。ボルドクリーク要塞での戦いで北軍の前線部隊が試作品を砲弾に込めて使用する。
=== 国家・勢力 ===
●旧大陸との独立戦争に勝利した新大陸パトリアの入植者たちが建国した民主主義国家。独立から1世紀近く平穏を保っていたが、やがて内戦が勃発。本編の時代では北南ごとに統治体制が敷かれ、各地に格差と貧困が蔓延する。
●パトリアを母体とする北部地域。首都はニューフォード。政治経済や工業の中心で、入植を指導し財を成した貴族や資産家たちが多い。国内需要独占のために諸外国との保護貿易を望んだため、南部と対立する。内戦後は経済が停滞し、新パトリアの攻勢に後塵を拝すこととなる。
●ハンクの暴走が招いた「ホワイトチャーチの惨劇」によって市民の間に生じた擬神兵への不信感を払拭し、新パトリアとの戦いに備えるために組織された擬神兵討伐部隊。名称は「慈悲の一撃」または「とどめの一撃」を意味する。クロードが指揮するユニオン軍の精鋭30名が所属する実働部隊と、多数の予備部隊および支援部隊で構成されており、専用の大口径ライフルやガトリング銃等の最新装備と新世代の散兵戦術で擬神兵に対抗する。テレビアニメ版では「ホワイトチャーチの悲劇」以前から活動している。
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●資源と人口が豊富な南部地域の大都市を主体とする連合体。大陸の資源の大部分が集中しており、それらを用いて旧大陸との自由貿易を望んだことで、北部からの独立を宣言した。内戦後は北部との和平内容に不満を抱いた者たちが新パトリアへと流入。これを受けてパトリアユニオンとの協力関係が内々に構築されていたが、ケインらに首都を攻略され、実質的に新パトリアの手中に落ちる。
●ケイン率いる擬神兵部隊残党や和平後の情勢に不満をもつ人々によって組織された反乱勢力。自由国家を謳っているが、パトリアユニオンおよびパトリア連合からは国家と認められてはいない。険しい大山脈に阻まれて未開拓だった大陸西部を拠点とする。悲劇の英雄として扱われる擬神兵や離反した南北軍人で構成された軍隊を有し、数の劣勢を覆す戦力をもってして二国に侵攻。南部首都を攻め落とすと北部と和平を結び、新たに得た町々に擬神兵を領主として送り込み、攻勢を強める。
●旧大陸のなかで最も国土と経済力をもった国家。貴族を上位とする身分制度が根強く残っている。パトリアとの独立戦争後は北部地域と貿易をしており、新パトリアの脅威が増すと、北部に援軍を出すことを決定する。
●本作の世界で広く信仰されている宗教。グレイシアでは政治と深く結びついているが、パトリアではヴェリテ派が幅を利かせているため、直接的な影響化にはない。
●パトリアに移民した誠教会の一部信徒たちの末裔。教義では天に召されたとされる神が実は地の底に去ったと解釈し、その声を聞ける者を通じて神の再臨に必要な行いを実践しようとする考えをもつ。そのためグレイシアの誠教会からは異端認定された経緯をもつ。
=== 施設 ===
●新パトリアが大陸西部の開拓拠点であった田舎町ボルドクリークを占領し、パトリアユニオン侵攻の拠点として整備した要塞。北部前線に派遣されたクーデグラースの活躍で北軍が占領するが、要塞内にいた住民たちはミリエリアに操られ北軍兵士たちを襲撃したためやむなく射殺され、のちに「ボルドクリークの虐殺」として語り継がれることとなる。
●内戦時、神の化石がある石炭坑に建設された研究施設。地上部分は傷痍軍人を治療する「ハーティング軍病院」として偽装され、裏では助かる見込みのない兵士たちを擬神兵に改造する研究が行われた。ハンクの改造が成功してからは、得られたデータを元に擬神兵を本格的に製造する場として機能するが、内戦末期にエレインによって施設が爆破され、擬神兵製造に関する資料もほとんど紛失したため、放棄された。
●ヴェリテ派が運営するニューフォードの英才教育機関。正式名称は「パトリア誠教会学校」。開拓時代に誠教会が学校として機能していた名残で、パトリア建国後も国内の最高学府として各地の才能あふれる子供たちを指導する。その真の目的はヴェリテ派が「神の声」を聞き取れる子供を見出すことにある。