「入院9日目 3日」
なんとか睡眠がとれた、若干だが首を横にできて傷口をずらすことができたからだと思う。
痛みも痛み止めを飲んではいるのだが、激痛から強い痛みにまで落ち着いた。
曜日の感覚と日付の感覚も鈍る。今日も元気にタバコを吸おう。
何気ない入院期間をまた過ごす。
夜1時頃眠れないのでタバコを吸って部屋に戻ろうとすると小さな子供がうろついていた。
うーん、看護婦さんもいないし仕方がないから話しかけてみるか・・・・。
と、話しかけてみた。その男の子は9歳でちょっと前に入院したとこのと。
眠れないって言っていたので、すこし話をすることに。
・・・いまの子供はしっかりしている。でも親の教育のせいかかなり誠実に育っているようで
人の生きる理由や戦争、正義と悪の現実的な話、お金の価値、人の気持ち、
はたまたバイオハザードの話等をした。楽しかった。男の子の退院まで毎日はなしをするようになった。
「入院10日目 4日」
今日もなんにもない。
タバコ仲間の一人のおじいさんは、明日手術を受けるらしいが、隣でタバコを吸っているが大丈夫なのか!?心配だ。
なぜなら、全身麻酔は泥酔より深いレベルの寝度。呼吸も止まる。
喉の付け根のくぼみあたりまで管が通されて人工呼吸される。
喉に異物が長時間はいっているので痰がでる。それが呼吸の妨げになるのだ。
手術後も響く。タバコを吸わない人でも出やすいのだが、タバコを吸うと痰が多く出て
非常に苦しいらしい。これでタバコを辞める人もいるくらいだという。
幸い、痰を出したこともないし短い時間だったが禁煙したので、全く苦労はしなかったが、
もし、私にその痰が出ていたら首を動かす程度で激痛に苦しめられた私は、とんでもないことになっていただろう。
うーん、せめて前日くらい禁煙すればいいのに・・・。
「入院11日目 5日」
あのおじいさん、今日手術と言ってたなあ。同じ頸椎の手術らしいが前から横に切るらしい。
医者が言うには痛みはほとんど無いというから、よかったのだが例のタバコの件で心配だなあ。
なんて言いながら今日もタバコを吸っている・・・。
途中タバコの本数がなくなり前に同じ入院患者と外に脱出してタバコを買う。
パジャマででかけても安心と聞いていたが、たしかに誰にも会わない道を教えて貰った。うーん、脱走兵な気分。
「入院12日目 6日」
痛みも落ち着き、睡眠薬も効いているので快適。首も動けるようになった。上下は向けないけど・・・。
今日は、先生から回復が早いので抜糸は明日だと言われた。
ついでに採血も明日だと・・・。これで痛いのは最後かなあ・・・・。
禁煙失敗のおじいさんは、そろそろICUからでてくるだろうなあ。簡単な手術っていってたし・・・。
つい眠りがちになる毎日、まあ病人だから問題ないか。
「入院13日目 7日」
朝6:30にいつものように起こされる。久しぶりにぐっすり眠れたが、寝起きはよい方ではない。
はにょ〜んと寝ながら腕を出した。いつも検温と血圧測定があるからだ。
だが今日は違った。なんか腕に巻かれた。
まさか!?
そう思い目を開けたら針を刺され採血された。起き抜けの採血・・・もうしたくないものだな。
そうこうしているうちに抜芯と抜糸だ。33本の針と3本の糸。
簡単に抜けると思っていたのだが、ICUにいるときに看護婦さんに
どうやって抜くんですか?って聞いた。そうしたらこう言った。
「ん〜・・・・ぐりっとかな?」
この言葉が頭から離れなかった。後遺症といったら大げさになるが
左の頭の皮膚が麻痺している。だから痛みは50%だろう、でも心配。
なんだか袋を破りペンチの様な物を取り出した。それで抜くのか・・・ぐりっ・・ぶちっ!。
これも痛い。なにが痛いかって感触が痛い。音も痛い。うーん伝わるかなぁ・・・。
回復が早く針が皮膚に強くくっついてしまっているらしくちょっと抜きにくいらしい。
33回それに耐えた。そして抜糸。これも痛かったが音は怖くなかった・・・。
もう・・・これで痛いのは終わり・・・良かった。
おもむろにペンチをゴミ箱に捨てていた。すべて新品を使うとのこと。感染症問題が多いからなあ、今は。
さて、血も針も糸も気力も抜かれたしタバコでも吸いに行くかって思っていたら例のおじいさんがいた。
やっぱり痰で苦しんだらしい。でもタバコ吸ってた。タバコとは麻薬よのう・・・。
「入院14日〜16日目 8〜10日 外泊」
病院的にもやることがないから一時帰宅することになった。
その支度をしていると前にはなした男の子が退院する日だったがちょうどその時に出くわせた。
その子のお母さんが「あれほど毎日退院したいて言っていたのに今日は退院したくないっていってるんですよ。入院生活
が苦痛じゃなくなったみたいです。なんてお礼を言ったら・・・」
なんか嬉しくなった。たったちょっとの時間で不安な気持ちを薄めることができたのなら良かった。
なんて思っていたらその子の友達に私を紹介されてしまい大変なことに・・・・。
なんだかんだで、2泊家に戻った。普通にお風呂に入っていいっていうし頭も自分で洗ってもよいらしい。幸せ。
傷口の消毒のついでにデジカメで傷を撮影したりして、気がつけばあっというまに日曜日。
もう病院に帰らなければ、そして最後の夜で入院生活が終わる。長いようで短かった・・・・。
「入院17日目 退院 3月11日」
いよいよ退院。あまった痛み止めや睡眠薬ももらえた。手続きも簡単であっというまにすべてが終わった。
仲良くなった人たちと挨拶を交わし病院を後にし外を見渡す。もう暖かく桜も咲いていた。
歩くたびに痛みはあるものの、気分はいつもと違うものだった。
たくさんの応援と心配の上に人間は成り立ち、そして生きていく糧になるのだなと、こんなに感じた事はなかった。
この場をかりてみなさまにお礼を言いたいと思います。
そして、これから治療を受ける病院のみなさまも早く元気になってもらいたいと心から祈っています。
長らく読んでいただきありがとうございました。