Q1 FMとAMはどう違う?

 FMやAMというと、通常ラジオ電波の種類と思われるかもしれませんが、実は信号を変調(伝送方式や記録方式を変換すること)する際の方法のことを意味しています。FM(周波数変調)は、波形の幅が一定の搬送波(キャリアという)上にオーディオ信号などを周波数の変化に変えて移す方式です。混信しにくく、周波数特性、ダイナミックレンジが広いなどの特徴があります。一方、AMは振幅変調とも呼ばれ、オーディオ信号の波形をそのまま搬送波の振幅に置き換えてしまう方法です。放送ではシステムの簡便さと遠くに電波が届けられるというメリットがあります。現在ではステレオ放送も実施されています。
 それぞれの方式がラジオとして使われているほか、地上波TVでは映像がAM方式、音声がFM方式、衛星放送では映像にFM方式が使われています。

Q2 「見えるラジオ」ってなに?

 FM放送の帯域の隙間を有効活用してデジタル化した文字情報を送り、FMラジオのディスプレイに表示する新しい文字放送が「見えるラジオ」です。これを家庭やカーオーディオ、携帯ラジオなどで受信して、オンエア中の曲目やクイズ、リクエストのあて先を知ったり、さらに交通情報や天気予報、ニュース、レジャー情報などを居ながらにして手に入れることができるシステムです。必要な情報を必要な時にすぐ取り出せるとなかなか好評を得ているようです。

Q3 FMアンテナの仕組みは?

 FMアンテナの基本は、地上波TV用のアンテナと同じ「八木(やぎ)式アンテナ」と呼ばれる方式です。これは、ある電波の1波長のおよそ半分の長さの導体(FMでは約1.7m)をその電波の中に置くと、導体に誘導電流が生じるという性質を利用したものです。この導体を2本並べて電線をつないだものが、もっともシンプルなダイポールアンテナです。かつてFMチューナーを購入すると必ず入っていた簡易設置用のフィーダーアンテナ(T字型アンテナ)がおなじみでしょう。
 このダイポールアンテナを送信所方向に直角に置き、その前に導波素子を、後ろに反射素子を平行に並べたものが八木式アンテナです。導波素子は電波を強める凸レンズの役目を、反射素子はアンテナ後方からの電波を遮断しながら前方の電波を反射して効率を上げる凹面鏡の役目を果たしています。当然ながら、導波素子の数が多いほどアンテナの感度は高く、指向性は鋭くなっていきます。

Q4 FMアンテナ代わりにTVアンテナは使えるの?

 FMアンテナの仕組みが理解できると、形もよく似た地上波TV(VHF)用のアンテナでFM放送が受信できるのではと思う人もいることでしょう。最近はBSやCSアンテナは見掛けても、アパートやマンションにFMアンテナが建てられているのを見ることは少なくなってきました。TVの1〜3チャンネルの下の帯域がFM放送なので、TVアンテナでFM電波をキャッチすることは不可能ではありません。というよりも、すでにFM電波はキャッチされているのです。ところが、アンテナには指向性があって送信所以外の方向からの電波をなるべく拾わないように作られているですが、TVの帯域とFM帯域とではその指向性が反転してしまうのです。つまり、電波としてのクオリティーがあまり良い状態ではないということになります。さらに、障害がもう1つあります。TV電波を増幅するブースターという機器の中で、FM電波は不要ということでカットされてしまっている場合もあります。ということで、TVアンテナがFM受信に使えるかどうかはケース・バイ・ケースになります。実際に部屋のアンテナ端子にチューナーを接続して確かめてみるしか方法はありません。

Q5 マルチパスってなに?

 FM放送を受信していて曲やアナウンスの間や背景にジュルジュルとしたノイズが聴こえたり、時報のポーンという音が濁った響きになる現象がマルチパスです。これは送信所から届く本来の電波とは別に、周辺の高層ビルや鉄塔などに反射して時間的に遅れた電波が飛び込んでくる時に起こる症状です。TVで映像が2〜3重にズレて映るゴーストも原因は同じなので、TV画面にゴースト障害が出ていたら、FMのマルチパスも疑ったほうがよいでしょう。
 対策は大型のFMアンテナに交換して、前後比(アンテナ方向と反対方向との感度差)を稼ぐか、必要な電波だけを受けて不要な電波を受けにくいポイント(屋根や軒下など)にアンテナを移すことなどが挙げられます。

Q6 受信中にチリチリ、パリパリと入ってくるノイズの原因は?

 放送に突然飛込んでくるパリパリいうノイズは、大切な番組をエアチェックしている時など本当に頭にくるけど、これはバイクや工作機械などのプラグが発する火花放電が主な原因です。自動車はカーラジオを搭載しているのでプラグのノイズ対策は万全ですが、バイクにラジオは積まれていないのでノイズ出し放題が多いのです。対策としては、車道からなるべく遠いところにアンテナを移すこと、バイクの所有者や工場が近所なら、ていねいにお願いして雑音防止器を取り付けてもらうことも有効です。
 このほか、家庭内でも冷蔵庫のサーモスタットや蛍光灯のオン/オフで、パチッというノイズが入ることがあります。こうした電気器具とオーディオ機器の電源コンセントを分けてとることも大切だ。特に大切な録音がある時は、家族に声をかけてオン/オフを控えてもらうのも手です。

Q7 FMラジオのこれからは?

 都市には高層ビルが林立し、道路には車があふれ、家庭内にもパソコンをはじめ多くの電気製品、これらは生活を便利にしてくれると同時に、雑多なノイズも撒き散らしています。そんな中、今のように音楽ソースとして、またオーディオメディアとしてFM放送がどこまで頑張れるかは未知数ながら、決して良い状況に向かっていないことは事実です。これからのFMは移動体向けの各種情報サービス(すでにスタートしているVICS=道路交通情報システムもその1つ)に代表されるようなハイテク放送と、身近な生活情報メディアとして今のAM放送的な存在の2本立てになっていくようです。
 そして音楽放送のほうは、現在のCS−PCMなどのような衛星放送、あるいは地上波によるデジタル放送に移行していくものと思われます。