地震予知と対策
(2009年)

 


(2009/10/27) 長周期地震動 超高層ビル上層階は避難や救助困難

 近い将来に発生が懸念される東海地震や東南海、南海地震では、長周期地震動と呼ばれる大きく長い揺れが超高層ビルなど大都市圏の巨大建造物を襲う。政府の地震調査委員会が9月に公表した「長周期地震動予測地図」(試作版)では、東海地震発生時に首都圏が特に大きな影響を受け、大きな揺れが長く続くことが示された。高層ビルの上層階は避難や救助活動が困難で、深刻な都市型災害となる恐れもある。

ビルを襲う「荒波」
 地上にいる人がガタガタ、グラグラと感じる通常の揺れは、周期(1往復の揺れにかかる時間)が0.5〜2秒程度。これに対し、周期がおおむね3秒以上の揺れが長周期地震動と呼ばれる。荒波にもまれた船内のように大きな揺れが建物によっては数分間以上も続く。

 一戸建てや中低層ビルよりも、超高層ビルや石油タンク、レインボーブリッジなどの長大橋のような大規模建造物への影響が大きいのが、長周期地震動の特性。建造物の規模が大きいほど揺れやすい波長(固有周期)が長いからで、地震の周期と建物の固有周期が一致すると「共振」によって揺れが増幅する。

 長周期地震動はマグニチュード(M)7程度を超える規模の大きな地震で生じる。2003年の十勝沖地震(M8.0)では、震源から約250キロ離れた北海道・苫小牧で石油タンク火災の一因となった。5年前(2004年)の新潟県中越地震(M6.8)では、震源から約200キロ離れた東京都庁(新宿区)などでエレベーターが緊急停止。長周期地震動対策の必要性が浮き彫りになった。

コピー機が「暴走」
 兵庫県と防災科学技術研究所の共同実験で高層ビルの30階の室内の揺れを再現すると、固定されていない家具やロッカーなどが倒れ、キャスターがついたコピー機が室内を暴走し壁に穴を開けるなどした。周期が長いからといって「ゆっくりとした揺れ」などと侮ることはできない。

 纐纈一起(こうけつ かずき) ・東大地震研究所教授(強震動地震学)は「揺れが大きいとビルの中だけ水道や電気、ガス管が破損し、高層の部屋は孤島のようになる。寝る場所にも気をつけるべきだ」と警鐘を鳴らす。

 地震調査委が試作した「長周期地震動予測地図」では東海地震のほか、東南海地震、宮城県沖地震を想定。周期5、7、10秒の3パターンで、揺れの強さや継続時間などの地域分布を明らかにした。

 長周期地震動の特性が顕著な東海地震では、震源付近と同程度の強さで関東平野の広範囲を長周期の揺れが襲い、固有周期が7秒の超高層ビルなどは、2秒弱で約1メートルの速さで揺れると予測された。首都圏ほど広範囲ではないが、大阪平野や濃尾平野も長周期地震動の影響を受ける。

被害は未知数
 東京、名古屋、大阪を中心とする大都市圏の超高層ビルは、かつてM8級の大地震がもたらす長周期地震動の洗礼を受けていない。

 纐纈教授は「長周期地震動は思いがけない遠方から大きな揺れが来る。しかも被害は想像の領域で実際に何が起こるか分からない。予測地図で自分の場所での揺れを確認しておいてほしい」と話す。

 超高層ビルの上層階に住居や職場がある人は、どう対処すればいいのか。通常の地震対策と同様に、家具などの固定は被害軽減に直結する。低層階と違って、エレベーターが止まり避難できない状況を想定し、安全確保策を考えておく必要がある。

 また、東海地震の場合、長周期の地震波は約1分後に首都圏に到達する。震源が遠い大地震のときには、緊急地震速報などを活用して長周期の揺れに備えることは可能だ。

 なお、政府の地震調査委員会が9月に公表した「長周期地震動予測地図2009年試作版」は下記のサイトで見ることが出来る。

 http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_choshuki/index.htm

(pl)


(2009/10/26) 「地震予報」へ検証実験 東大地震研究所

 1年以内に○○県西部で大きな地震が起きる確率は○○パーセントーー。細かい地域ごとに、短期間の地震発生確率を示す検証実験が東京大学地震研究所を中心に11月から始まる。直前予知が難しいなか、将来的には天気予報の降水確率のような「地震予報」の実現をめざしている。

 検証実験では、関東地方を約6キロ四方、他の地域を約11キロ四方の地域に区切り、3年、1年、3ヵ月、1日以内に地震が起きる確率を算出する。期間により、マグニチュード4または5以上の地震を予測対象とする。

 発生確率は、過去の地震の発生パターンから傾向を探る統計学的手法を用いたり、地震観測データなどからリアルタイムで大地震が起きる確率を計算したりする。これまで2008年の茨城県沖や岩手県釜石沖の地震では、防災科学技術研究所や東北大の予測が「的中」した実績がある。

 今回は、防災科研、米南カリフォルニア大など国内外の約10の研究者やチームが開発した58の算出方式を地震研のコンピューターで実行し、算出された確率と、今後3年間で起きた地震を比べ「的中率」を検証する。

 現在、地震の発生確率の予測は、政府の地震調査研究推進本部が公開しているが、主に30年以内の長期的な発生確率で示しており、実感がわきにくい。短期間になれば防災対策にさらに役立つと期待される。保険料率算定などにも影響しそうだが、一般に公開できる時期は未定だ。地震研の平田直教授は「プレート境界型地震の仕組みが過去10年間ではっきりとわかってきた。最新の知見を『予測』に生かす土台を築き、天気予報のような『地震予報』の実現につなげたい」と話している。

(jf)


(2009/09/28) 東海地震危険度増す 防災科学技術研究所発表

 東海地震の想定震源域である静岡県西部で一昨年以降、プレート同士が強く固着している部分(アスペリティー)に、ひずみがたまり、過去30年で最も巨大地震が起こりやすくなっていることが26日、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の松村正三・研究参事の研究で分かった。震源域のプレート境界で前例のない異常が起きていることを示した内容で注目される。研究成果は10月に京都市で開かれる日本地震学会で発表する。

 震源域では、今年8月に駿河湾地震が発生するなど中、小規模な地震が増加。プレート境界がゆっくり動く「ズロースリップ」と呼ばれる現象の活動域も広がるなど地殻活動にも大きな変化がみられるという。松村氏は「海側のプレートがゆっくり沈み込んでいるのに、アスペリティーだけが残っている危険な状態だ。引き続き活動を注意深く見守る必要がある」としている。

 松村氏は震源域を2千平方キロメートルの区画に分割し、それぞれの区画ごとにフィリピン海プレート内部(スラブ内)で発生したマグニチュード1.5以上の地震活動を過去30年分にわたり解析した。その結果、震源域西側で一昨年後半以降、地震の発生数が特に増えていることが分かった。

 また平成12年から続いているスロースリップの中心領域は駿河湾付近だったが、西側の浜名湖付近へ移動。2005年にいったん収まったが、2006年以降は反転して北東に移動していることが判明。一連の動きを解析した結果、震源域のアスペリティー群だけを残し、周辺全体が滑っている可能性が高いことが分かった。

 こうしたことから松村氏は、スロースリップの変動域が震源域内で拡大、アスペリティーへのひずみによる負荷の集中が進んだ結果、地震活動が活発化していると指摘。「この地域でのひずみは相当たまっていると考えられ、アスペリティーがこらえきれなくなって一気に滑るかもしれない」としている。

 一方、今年8月に起きた駿河湾地震は海側プレートの内部で発生。発生メカニズムが東海地震の「プレート境界型」ではなく、その後の観測でも東海地震こつながる急速な地殻変動も確認されなかったが、地震によって、ひずみが一層大きくなることがあるため、東海地震の発生を早めた可能性もあるという。

 松村氏は「駿河湾地震が東海地震の前兆とみるか判断は難しい。しかし震源域のアスペリティーにより大きなストレスがたまったことは確実で、今後十分に注意する必要がある」と話している。

 アスペリティー
 プレート間にある摩擦が大きい固着域のことで、普段は滑り止めの役割をしているが、ひずみが限界を超えると一気にずれて巨大地震を引き起こす。東海地震の震源域には少なくとも3つの推定アスペリティーがあるとされる。

(jf)


(2009/09/19) 東南海地震「長周期」初の予測図 大阪平野 揺れ5分

 大規模地震が発生した際、高層ビルや長大橋などで大きな揺れが長く続く長周期地震動の予測地図を、国の地震調査委員会が17日、公表した。初の試みで、2009年試作版として東海、東南海、宮城県沖地震の三つの海溝型地震について作製。震源地近くと同程度以上の長周期地震動による揺れが、震源地と離れた平野部で起きる可能性を示した。

 東南海、宮城県沖地震は過去に発生した地震、東海地震は地下構造モデルなどを使い、揺れの継続時間や、5秒、7秒、10秒の各周期で揺れた場合の強さなどを予測した。

 東南海地震では、大阪平野と濃尾平野で大きく揺れ、金沢平野や富山平野でも一部で大きな揺れが予測された。大阪平野での継続時間は5分を超え、大阪市の大阪ワールドトレードセンタービルディング(WTC)や、梅田周辺の高層ビルは同程度揺れが続くと考えられる。

 東海地震では周期5秒の場台、震源地の静岡県と同様の強い揺れが関東地方や濃尾平野、大阪平野でも起きると予測された。

 作製にあたった東京大地震研究所の纐纈(こうけつ)一起教授は「高層ビルは強い長周期地震動を受けた経験がなく、何が起きるか分からない部分がある。利用する人は注意してほしい」と話す。

 予測地図は地震調査研究推進本部の次のホームページで公開している。

 http://www.jishin.go.jp/main/chousa/09_choshuki/index.htm

長周期地震動
 地震の波は、小刻みで速い揺れやゆっくりした揺れが交じってできている。揺れが1往復する時間を「周期」と呼び、0.1〜1秒が「短周期」、2秒以上が「長周期」。どの周期の波が強いかは、それぞれの地震によって異なる。周期によって揺れやすい建物の特徴があり、周期2秒では20階建て、3秒では30階建てなど、周期の秒数に10をかけると、周期と被害の出やすい建物の階数の大まかな関係が分かるとされる。

(uh)


(2009/08/23) 震度計、精度に問題 19都県26地点

 気象庁は21日、同庁が設置した震度計537カ所のうち19都県の計26カ所について、設置状況が不適切で観測精度に問題があるとして、震度情報を発表しないことを決めた。移転や改修のほか、臨時観測点を設けるなどして対応するが、5カ所は周辺に別の震度計があるため廃止した。

 26カ所のうち3カ所は観測された震度が過小となり、残り23カ所は過大となる恐れがあるという。過去の震度記録の取り消しや修正はしない。周辺にほかの震度計のない6カ所は、既に臨時観測点を設置した。

 震度情報を発表しているのは、気象庁と防災科学技術研究所(茨城県つくば市)、地方自治体が設置した全国約4200カ所の震度計。気象庁は5月以降、全国の点検を進めており、これまでに防災科研の4地点で精度に問題のあることが判明。今後、自治体分の点検も進め、不適切な震度計は増える可能性がある。

 気象庁によると、震度が過小となる恐れのある「岩手県雫石町千刈田」など3カ所は、設置場所が山あいの硬い岩盤で、周辺に住む住民の揺れの実感より小さくなるという。

 震度が過大になると判断された地点のうち「静岡県熱海市網代」は、場合によって震度4が6弱になる可能性もあるとみられる。

 東京・八丈島の観測点「八丈町三根」は今月13日、同島沖を震源とする地震で震度5弱を観測したが、島内のほかの観測点は震度4だった。同庁の調査で、斜面の途中にあるため震度が周囲より大きくなる傾向のあることが判明した。

 気象庁地震津波監視課の関田康雄課長の話
「震度が周囲こ比べ過大に計測される可能性のある震度計は今回、設置基準をより厳しく見直し点検したことから出てきた。ただ震度計の台が強固でないなど明らかに不適切なものもあり、申し訳なく思っている。震度情報の発表を取りやめた地点も周囲に震度計があり、防災上の支障はない」

(dr)


(2009/08/15) 地震防災マップ59%未整備 兵庫は作成率26%
 
 大地震発生時の揺れやすさなどを想定し地図で住民に示す「地震防災マップ」を今年4月現在で、全国1800市区町村の59%で未作成であることが13日、国土交通省の調べで分かった。財政難などを背景に自治体の取り組みが大幅に遅れているのが要因で、2008年度までに完備する目標は達成できていない。

 静岡県で震度6弱を観測した11日の地震では、東海地震を想定した自治体などの危機管理体制がおおむね機能したとされるが、予想外の地震には全国的な備えが不可欠。国交省は「住民がマップを使いどのような危険が身の回りにあるか認識することが防災の出発点。積極的に取り組んでほしい」と呼び掛けている。

 地震マップは、洪水や土砂崩れなど災害の種類ごとに作られているハザードマップの一つ。想定される最大規模の地震が起きた際の震度を50メートル四方の単位で示す「揺れやすさマップ」と、地盤の液状化や火災被害などを予想する2種類がある。

 調査では、全市区町村のうちどちらか一つか、両方を作成したのは41%の739自治体にとどまり、残りは未整備だ。

 都道府県別で対応が遅れているのは、1自治体だけ作成済みの富山、福井、島根、山口、2自治体の秋田、福島、山梨など。全市町村で作成済みは宮城、栃木、滋賀、90%以上が岐阜、愛知と地域差が目立つ。静岡の作成率は59%だった。

 作成が遅れている理由について島根県は「財政難に加え、大地震に対する危機感が薄い自治体も目立つ」と指摘している。

 兵庫県では神戸、姫路、西宮市など11市町が作成済みで、作成率は26%。県防災計画室は「近く地震被害想定を見直し、コンピューターグラフィックスで県内全体の地震マップを作る予定。市町でこれを活用してもらえれば、作成費用は大幅に抑えられるはずだ」とする。

 地震マップの整備は、新潟県中越(2004年)、福岡県西方沖地震(2005年)などを受け、国交省が住宅の耐震化などを促す目的で基本方針を2006年にまとめ、全市区町村に作成を指示。作成費用は自治体の面積などで異なるが、数百万〜1千万円程度で、国が半額を補助する。

 自治体の財政難で、なかなか作成が進まない地震防災マツブ。地方経済が低迷を続ける中、限られた財源は景気対策などに振り向けられ、「いつ起きるか分からない」災害への備えは、二の次になりがちのようだ。

 新潟県では2004年、2007年と相次いで大規模地震が発生したが、地震マップを作成したのは県内31市町村のうち5自治体にとどまっている。

 県担当者は「市町村にとっては、地元の景気浮揚につながる公共事業が最優先。地元に金が落ちないハザードマップの作成は後回しになっている」と指摘。「大きな地震は当分来ないだろうと思っているのかもしれない」と、県民の防災意識の風化も懸念している。

 地震の揺れやすさをマップで示すためには、地盤のデータがあまりない中山間地では、ボーリング調査などが必要となりコストがかかる。また「マップを作れば『ここの土地が危ない』と指摘することにもなり、不動産価値の低下を心配して二の足を踏む自治体も多い」と西日本のある県の担当者は実情を話した。


ハザードマップ:大規模な自然災害の被害を予測した地図。住民の避難場所・経路なども示す。地震のほか、洪水、津波、高潮、噴火、土砂崩れなどがある。噴火による社会的影響が大きい全国29の火山については、周辺市町村が完備する一方、地震、高潮などの作成率は低調だ。地震に関しては、国土交通省が国民に注意を促し、2003年時点で75%だった住宅の耐震化率を、15年までに90%に引き上げる目標も掲げている。

(kf)


(2009/08/12) 東海地震 初の観測情報 気象庁「関連性の調査継続」

 気象庁は11日、この日の午前5時7分に発生した静岡県中部を中心とした震度6弱の地震に関して、東海地震こ関連する「観測情報」を初めて発表した。東海地震こ関連して気象庁が事前に発表する情報には、観測情報、注意情報、予知情報 の3段階があり、今回の観測情報は第1段階にあたる。東海地震の場合、発生に先立つ前兆すべり(プレスリップ)がとらえられる可能性があり、この状況を踏まえて情報が順次、発表されることになっている。

 第1段階の観測情報が出るのは、東海地震の想定震源域とその近くで比較的大きな地震(最大震度5弱、または連続で震度4)が起きたとき、またはプレスリップを検知するために東海地方の21カ所に設置されている歪(ひずみ)計のうち1カ所で異常なデータが出たときで「東海地震の前兆現象であると直ちに判断できない場合や前兆現象とは関係がないとわかった場合」。今回は想定震源域近くで最大震度6弱の地震が起きたことから、観測情報が発表された。

 気象庁は11日午前、地震防災対策強化地域判定会(会長・阿部勝征東大名誉教授、委員6人)の委員打ち合わせ会を招集。断続的に「東海地震との関連性の調査を継続する」との観測情報を発表、最終的に「東海地震には結びつかない」と発表した。打ち合わせ会の場で東海地震の前兆現象の可能性が高まったと判断されれば、第2段階の注意情報が発表される。

 注意情報が出ると、防災機関などは地震発生に備えた準備を開始。必要に応じ、児童・生徒の帰宅も行われる。この段階では市民も国や関係自治体の出す情報に注意して行動する必要が出てくる。

 プレスリップの発生がほぼ確実となり、東海地震発生のおそれがあると判定会が判断すれば首相が「警戒宣言」を出し、気象庁は第3段階の予知情報を発表。津波やかけ崩れの危険地域からの住民避難が始まり、鉄道の運行や百貨店の営業も制限されることになる。

 現在の観測情報の段階では、防災機関や地方自治体は連絡体制を整えるほかに、特別な対応はしないことになっている。静岡県を含め鉄道なども平常通り運転され、市民生活にはほとんど影響ま出ないはずだ。ただ注意が必要なのは、東海地震は「予知できる可能性がある」だけで、決して「必ず予知できる」わけではない点。今回の観測情報を契機に、飲料水・非常食は確保できているか、各家庭でもう一度、地震に対する備えを見直しておきたい。

(jf)


(2009/07/22) 政府の地震調査委員会が「30年以内に強い揺れ」公表

 政府の地震調査委員会は21日、今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を地域ごとに色で示す「地震動予測地図」の改訂版を公表した。地盤の固さなどが結果に反映されやすいように評価手法を改良したところ、従来の予測地図に比べ、都市の多い平野部や沿岸部で確率が上昇した。データは各自治体の防災計画策定などに活用される。

 調査委によると、地震の揺れには地形による地盤構造の違いが大きく影響する。このため改訂版では、地盤の固い山間部はより揺れにくく、平野部や沿岸部はより揺れやすく評価した。さらに評価の単位面積を従来の1キロメートル四方から250メートル四方に細分化したことで、より地域の実態に近く、精度の高い表示が可能になった。

 都道府県庁所在地の市役所(東京都は都庁)付近で、確率が高いのは静岡市(89.5%)、津市(85.2%)、奈良市(67.1%)、横浜市(66.7%)、千葉市(64.0%)など。旧評価手法の平成20年版との比較では、甲府市が27.0ポイント低下した以外はすべて上昇。最もアップしたのは奈良市(51.1ポイント)、次いで千葉市(36.8ポイント)、大阪市(36.5ポイント)の順だった。

 改訂版では、これまで「震度6強以上」としていた震度区分の中から新たに「震度7」の地域を明示。静岡県の沿岸部や徳島県の河川周辺部などが、30年以内に3%以上の確率で震度7が発生する恐れのある地域となった。

 地図は防災科学技術研究所(茨城県つくば市)がインターネットで公開。知りたい場所の住所で検索できる。アドレスは下記の通り。

 http://www.bosai.go.jp/news/press_release/20090721_01.pdf


(ue)

(2009/07/02) 国土地理院 活断層図をネット公開 全国の都市部周辺

 東京や大阪など全国の都市部周辺の活断層の位置を、2万5000分の1の地形図の上に描いた「都市圏活断層図」を、国土地理院が今月1日からインターネットで公開する。近くにある断層が分かり、防災計画づくりなどに役立つという。

 地理院は1995年から、地形学の専門家らでつくる委員会に依頼して都市周辺の空中写真を判読してもらい、活断層の位置を決めて地形図に描いてきた。北海道から九州まで、計138枚の活断層図が完成した。総面積は約5万5000平方キロで、日本列島の約7分の1をカバーしているという。今後、調査範囲を広げて断層図を増やしていく。

 これまでは、神奈川県や大阪府などの一部を示した8枚だけを試験的にネットで公開。残りは印刷した図を販売してきたが、内容をより広く知ってもらおうと、ネットでの全面公開を決めた。

 公開される図には、活断層が、赤や黒の実線や点線など数種類の記号で描かれている。市街地のどこをどの方向に活断層が走っているかが読み取れ、鉄道の駅や線路、学校などとの位置関係も分かる。ただ、地図上の1センチが250メートルに当たり、個人の住宅の識別は難しいという。

 地理院防災地理課は「活断層は数千年〜数万年の間隔で動く。学校が活断層のそばにあることなどを知り、各地域での防災対策を考えてほしい。ただ、自宅が断層のそばでも、すぐに引っ越す必要はないだろう」としている。インターネットの閲覧は無料。アドレスは次の通り。

 http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/bousaichiri60006.html

(rq)


(2009/06/16) 震度6で校舎倒壊の恐れ 兵庫県内351棟 公立小中学校

 文部科学省は16日、全国の公立小中学校の校舎や体育館約12万5千棟を対象にした4月1日現在の耐震調査結果を発表した。耐震性が不十分など問題のある建物4万1206棟のうち、震度6強の地震で倒壊の危険性が高く緊急の耐震改修が必要な建物は、前年より3347棟減ったものの7309棟に上った。そのうち兵庫は都道府県別で3番目に多い351棟。兵庫の耐震化率は全国14位となる67.8%で、前年から4ポイント伸びた。

 全国平均の耐震化率も4.7ポイント改善して67.0%だった。中国・四川大地震を受け昨年6月に施行した改正地震防災対策特別措置法で、国の補助率が上乗せされ地方自治体の耐震改修が進んだ。

 文科省は本年度の補正予算などで今後約1万6千棟を補助する予定で、来年度末には倒壊の危険性の高い建物はなくなり、耐震化率は78.0%程度にアップする。

 耐震診断は調査対象12万4976棟のうち、1981年以前の古い耐震基準で建てられた7万4796棟の95.7%で実施。この結果、問題がある建物は(1)耐震性が不十分と分かったが未改修3万8001棟(2)耐震診断未実施3205棟-の計4万1206棟で、うち7309棟が倒壊の危険性が高いと推計した。都道府県別では大阪527棟、北海道438棟に次いで兵庫が多い。

 地震防災対策特別措置法は、自治体に診断結果の公表を義務付けているが、小中学校などを設置する1880自治体のうち320(17.0%)が未公表だった。文科省は「学校施設は災害時の緊急避難場所にもなる」として公表を強く指導する方針。兵庫県内の自治体はすべて公表している。

 耐震性が十分なのは82年以降に建築された5万180棟と、診断で耐震性が確認されたか改修を終えた3万3590棟となっている。都道府県別で耐震化率が最も高いのは神奈川の93.4%。


 兵庫県内の小中学校の市町別耐震化率は、尼崎市が22.8%で最低。相生市36.8%▽川西市40.0%▽加西市42.6%▽神河町44.0%▽香美町46.3%▽宝塚市48.8%-と、計7市町で5割を切った。また、福崎町や高砂市など計11市町の小中学校で耐震診断をしていない建物が残っていた。

 県内の公立高校の耐震化率は59.4%(前年比8.4ポイント増)、特別支援学校は59.4%(同1.4ポイント増)、公立幼稚園は58.9%(同1.8ポイント増)だった。

学校の耐震化 
 幼稚園、小中学校、高校、特別支援学校のうち、特に建物数が多く、災害時の緊急避難先になる小中学校の対策が急務。耐震補強や改築には多額の費用がかかるため、財政難の地方自治体では進んでいなかったが、昨年5月の中国・四川大地震で多くの学校が倒壊したのを受け、地震防災対策特別措置法が改正、施行された。自治体が実施する耐震補強事業への国の補助率を2分の1から3分の2に引き上げるなど負担を大幅に軽減している。

(ek)


(2009/06/14) 「机に隠れる」「外に出ない」地震の鉄則、本当なの? 文科省が再検討

 「グラッときたら、机の下に隠れる」「外に飛び出さない」は、本当に安全なの?――。文部科学省は、大地震が起きた時に身を守るとされる行動が実際に有効かどうか、科学的な検証に乗り出す。

 再現実験と過去の地震の調査などを基に専門家らが議論を重ね、家庭や学校、職場で推奨できる退避行動の指針を、国として初めて策定する。

 大地震時の行動については、総務省消防庁や各自治体が、パンフレットなどにまとめ、住民に注意を喚起してきた。だが、その内容は、昔からの伝承や、過去の経験から引き出した心得などをまとめたもので、有効性を厳密に確認したものではない。

 阪神・淡路大震災級の揺れを再現できる施設が、2005年に兵庫県三木市で稼働した。ここでの実験で、机やテレビが飛ばされ、重いコピー機が走り回るなど、室内の意外な危険性が判明。耐震性が低い建物は、瞬時につぶれる1階より2階の方が安全など、建物による壊れ方の特徴も明らかになってきた。

 2007年の新潟県中越沖地震では、家がつぶれる前に外に逃げ出し、九死に一生を得た例も報告され、勧められてきた退避行動が必ずしも適切とは言い切れないことを示すデータも増えてきた。

 文科省は来月、専門家による検討会を開き、こうした再現実験のデータや、過去の大地震での住民の行動調査などを基に、退避行動の検証を始める。大型震動台に乗ってもらい、人が大きな揺れの時に、どこまで動け、どんな心理状態になるかも調べる。

 直下型地震や長周期地震動など、揺れのパターンや大きさの違いに応じて、効果的な行動が変わるかも検討し、今年度末までに報告をまとめる。緊急地震速報が出た時の対応、学校や医療現場で必要な防災教育なども加え、来年度中に指針をつくる予定だ。

 群馬大の片田敏孝教授(災害社会工学)は「防災研究者の中でも退避行動の効果について議論はあった。国が検証することは重要だ」と話している。

(ra)


(2009/06/13) 断層下に液状領域 ひずみ解消で地震? 東北大など合同調査

 日本列島の内陸部で起きる比較的規模の大きな直下型地震を起こす断層こは、その直下に軟らかい液状の領域がある。近年の地震の解析でこんな構造が分かってきた。この領域があることで真上にひずみが生じ、解消するために地震が起きるのではないかと推測されている。

 東北大などの合同観測グループは岩手・宮城内陸地震を受け、多数の地震計を使ってCTスキヤンのように地下で地震波の伝わる速度を調べた。

 その結果、地震を起こした断層直下に地震波の伝わり方が遅い領域があった。地震波は硬い岩盤だと速く伝わるが、温度が高く軟らかい領域では速度が減少する。このためグループは、断層直下に熱水やマグマなどによる液状の領域があるとしている。

 こうした領域は、阪神・淡路大震災を起こした兵庫県南部地震や鳥取県西部地震、新潟県中越地震、能登半島地震などでも確認され、地下約15〜30キロの場所にあるとされる。

 液状の領域は高温で軟らかく、変形しやすい。このため東北大の海野徳仁教授は、断層下の領域が変形することで、上部地殻と呼ばれる真上の領域に無理な力がかかると推測。ひずみを解消するために、断層が動くのではないかとみている。

 どうしてこういう領域ができるのか。海野教授は、地下深くから上昇してくる熱水やマグマなどが局所的に搾り出されて上がってくる領域があると分析。「内陸地震は、地下の浅い所ではなく、深部の状態が発生をコントロールしているのではないか」と話している。

 活断層による直下型地震は、日本列島が乗るユーラシアプレートが、下に潜り込んでいる太平洋プレートなどに押されることでひずみが生じて起こるとの推測もあるが、詳しいメカニズムはわかっていない。

(rt)


(2009/02/14) 長周期揺れ 超高層ビルでは震源から遠くても被害の恐れ 

近い将来の発生が予想されている東海地震や宮城県沖地震などの海溝型地震で、地面がゆっくりと大きく揺れる長周期地震動が、震源近くよりも遠く離れた首都圏の平野部などで広範囲に起きる可能性があるとの研究結果を、東京大などが11日までにまとめた。

 結果は、政府の地震調査委員会が「長周期地震動予測地図」として、近く公表する予定。

 纐纈一起(こうけつかずき)東大教授(応用地震学)によると、こうした揺れは震源からの距離よりも地下構造が影響する。堆積によってできた平野などの固有周期と一致するため、「広い平野ほど長周期地震動で揺れやすい」という。

 纐纈教授らは、地震波の分析やボーリングのデータなどから、各地の地下数キロまでの堆積層や岩盤などの構造を調べ、東海地震、東南海地震、宮城県沖地震による各地の長周期地震動を計算、揺れの強さを示す1秒当たりの「速度」を求めた。

 東海地震では周期が7〜10秒で約200センチの速度の揺れが、震源の真上に当たる静岡県内のほか、東京都区部や神奈川県東部、千葉県北西部など広範囲で起きると判明。

 東南海地震では、名古屋市や大阪市などで、周期5秒で約200センチの速度の揺れ、宮城県沖地震では、関東平野の各地で周期5秒で約50センチの速度の揺れになる。この二つの地震の震源近くは長周期の揺れは弱かった。

 纐纈教授は「超高層ビルや巨大な橋、石油タンクは何メートルも揺れるだろう。家具の固定や、エレベーターが停止しないようにするなどの対策を取っておく方がいい」と指摘している。

長周期地震動 
 揺れの周期が長い、ゆっくりとした地震動。超高層ビルや石油タンクのように長い周期で揺れやすい建物では、揺れの周期が一致して共振し、大きく揺れることがある。距離による減衰が少なく、地盤の構造によっては震源から遠くても影響が出るのが特徴。2003年の十勝沖地震や2004年の紀伊半島南東沖の地震では、長周期の揺れで石油タンク内の液面が波立つスロッシング現象を確認。2008年の岩手・宮城内陸地震でも、東京の六本木ヒルズで高層階用エレベーターが長周期地震動を検知し停止している。

(ek)


(2009/01/22) 東京湾北部地震想定 災害拠点病院にも限界

 首都直下地震のうち最悪の被害が想定されているマグニチュード(M)7.3の「東京湾北
部地震」が発生した場合、災害拠点病院などに対応能力を大幅に上回る重症患者が集中する可能性が高いとの分析結果を、東京大の大原美保准教授(防災計画)らがこのほどまとめた。

 1995年の阪神・淡路大震災を教訓に整備が進められた災害拠点病院は、負傷者の治療で中核的な役割を担い、都区部には約50カ所ある。だが特に東部では大規模な病院が少なく、患者の集中で混乱が懸念される。大原准教授は「隣県や都区部中心部の病院との連携や、災害拠点病院の態勢強化が必要だ」としている。

 東京湾北部地震は震源の深さが30〜50キロ。東京都東部から千葉県の一部を震度6強の揺れが襲うなどして最悪の場合、死者1万人以上、負傷者20万人以上と想定される。大原准教授らは2万人以上と予想される都内の重症患者が、災害拠点病院や救急病院など、どこで治療を受けるかを数学的モデルで分析。

 被災した場所から病院への距離を最も重視した場合、足立、葛飾、江戸川、墨田、江東の東部5区にある11の災害拠点病院には特に重症患者が集中し、総病床数の5割以上に上る病院が6カ所あった。病院規模を重視して治療場所を決めると混雑はやや緩和されたが、同様の傾向だった。

大原准教授は「通常、病院の空き病床は1割前後。総病床数の5割を超えるような多数の患者が来ても、迅速に対応するのは非常に難しい」と指摘。対応可能なのはせいぜい2〜3割との意見もあるという。

 一方、都区部中心部には大規模な災害拠点病院が多く、周辺からの搬送先になる可能性がある。大原准教授は「自治体の集めた被災情報を病院に伝える仕組みなど、病院が対応を準備して患者の誘導を適切に行える態勢を整備しておく必要がある。身の回りの人が被災した場合に備え、地域の災害拠点病院などは確かめておいた方がいい」としている。


災害拠点病院
 災害発生時に傷病者を受け入れる拠点として都道府県が指定した病院。多数の患者の受け入れが可能で、施設の耐震性が確保され、水や電気などの供給を維持する機能があり、重症患者の救命措置ができる診療設備などが必要となる。厚生労働省によると、昨年7月1日現在、全国に582カ所ある。詳しくは下記サイトに掲載されている。

  http://www.health.ne.jp/hospital/hospital/a130.html

(tn)


(2009/01/20) 首都直下地震3日後を想定 生存者救出へ総合図上訓練

 政府は16日、首都直下地震が発生してから3日後との想定で、被災対策を、東京シミュレーションする総合図上訓練を、東京都江東区の広域防災拠点施設「有明の丘」で実施した。

 有明の丘は直下地震が発生した場合、東京都と埼玉、千葉、神奈川3県の被災情報の収集などにあたる現地対策本部を置く施設として昨年6月に完成。政府と1都3県、4政令市から約210人が参加した。

 訓練は13日午後6時に東京湾北部を震源とするマグニチュード(M)7.3の地震が発生、首都圏で震度6強を観測したと想定。生存者を救出できる限界が迫る中で、食料や水など物資の調達、輸送や、医療チームの派遣などにどう対処するかを確認した。

(la)