地震予知と対策
(2013年1月1日〜      )

 


(2013/11/20) 南海トラフ地震でもビルの免震「大丈夫」 「E−ディフェンス」で実験

 大成建設などの大手ゼネコン4社と防災科学技術研究所などはこのほど、実際に揺れを発生させて建物の破壊実験ができる施設「E−ディフェンス」(三木市)で、将来想定される南海トラフ巨大地震の長周期震動に対するビルの免震装置の耐久性を調べる実験を行った。実物大の装置を使った世界初の実験で、油圧を利用する「オイルダンパー」は長時間の震動でも性能が衰えないことが分かった。

 建築基準の見直しに向けた国の事業の一環。東日本大震災では、多くの超高層ビルが長周期地震動で大きく揺れる現象がみられたため、免震装置の耐久性を調べることになった。

 実験は、南海トラフで東海、東南海、南海、日向灘の4連動地震(マグニチュード9.0)という最大規模の地震を想定し、愛知県津島市で免震ビルが揺れた場合の波形を採用。震動台にオイルダンパーを設置し、特別に設計した装置で約10分間揺らした。

 その結果、ダンパーは本来の免震性能を維持。内部のオイルの温度が、摩擦により室温から約40度まで上がったが、性能に問題ないレベルだった。実験結果の評価を担当する東京理科大の北村春幸教授(建築構造学)は「長周期地震は破壊力が大きいが、ビルの大きさや敷地の広さに応じて適切な免震設計を行えば耐えられる」と話した。

(ue)


(2013/10/17) 阪神淡路大震災を経た建物、南海トラフ巨大地震では揺れは通常の倍にも

 兵庫県と防災科学技術研究所は15日、実際に揺れを発生させて建物の破壊実験ができる施設「E−ディフェンス」(三木市)で、阪神淡路大震災を経験した建物が南海トラフ巨大地震に遭遇した際の耐久性実験を実施。昭和56年以降の新耐震基準を満たした建築物の場合、倒壊は免れたが、揺れ幅が通常の倍程度になる可能性があることが分かった。

 実験では、E−ディフェンスの震動台に新耐震基準を満たした鉄骨造3階建て(高さ約11メートル、重さ200トン)のビルを設置。阪神淡路大震災で被害の大きかったJR鷹取駅(神戸市須磨区)で観測された揺れを起こし、その後、紀伊半島沖を震源とした南海トラフ巨大地震で想定される震度5強の揺れを2分間続けた。

 ビルは倒壊はしなかったが揺れ幅は約87ミリを観測した。南海トラフ巨大地震だけの場合では、同じ建物で揺れ幅は約46ミリだった。

 神戸大学院工学研究科の難波尚准教授は「外観上、損傷がなくても阪神淡路大震災を経験した建物は揺れが激しくなり、ガラスが割れたり、屋内での被害が大きくなる可能性があるので、注意が必要だ」としている。

(rt)


(2013/09/03) 南海トラフ地震 M8級でも高層ビルは大損壊か?

 南海トラフで地震が起きた場合、最大想定ではないマグニチュード(M)8級の規模でも東京都内や大阪湾周辺で、30階を超える特定の高さの高層ビルが大きく損壊する可能性があるとの試算を、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)がまとめた。

 南海トラフ地震で想定される最大規模はM9級だが、それよりも小さな地震でもフロア全体が大きく変形し、建物への立ち入り禁止の措置も必要になるなどの深刻な被害が出る恐れが示された。

 政府の評価では、今後30年以内にM8以上の地震が起こる確率は60〜70%。新たな防災対策が急務となりそうだ。

 特定の高さのビルに被害が出るのは、ビルごとに振動しやすい「固有周期」があるため。高層ビルを揺らしやすい地震動は長周期地震動と呼ばれ、周期は長く、震源から遠く離れた場所へと伝わる特徴もある。

 研究所は、南海トラフ地震で生まれるさまざまな周期や大きさの地震動を仮定。振動が伝わる方向などを検討し30、45、60階建て相当の3パターンの建物で長周期地震動の揺れによる被害の大きさを試算した。

 試算によると、東京都庁付近では「宝永地震」(M8.6)級の地震が起きた際、30、45階建て相当のビルに、大阪市此花区の舞洲では30、45、60階建て相当のビルに同様の被害が生じる可能性がある。

 ほかの高さの建物は、これら3種類の高さの揺れから推測することになるが、高さが近いと同様の被害が出る可能性も考えられるという。

(rt)


(2013/05/26) 南海トラフ 3地震一元予測 M8級 30年以内70%

 政府の地震調査委員会は24日、南海トラフ(浅い海溝)のどこかでマグニチュード(M)8〜9級の地震が30年以内に起きる確率は60〜70%とする新たな長期予測を公表した。東海・東南海・南海の3地震の確率を個別に計算する従来の手法を見直し、トラフ全体を一元的に評価した。M9級の巨大地震の単独の確率は算出できないとした。

 東海沖から九州東部沖にかけて延びる南海トラフ沿いでは、100〜200年周期で巨大地震が発生している。

 調査委はこれまで3地震の確率を個別に計算してきたが、過去のケースでは複数の震源域が連動するなど起き方は多様なため、最大級のM9級を合めトラフ全域の地震を一括して評価することにした。

 30年以内の確率は今年1月時点で東海88%、東南海70〜80%、南海60%とされている。

 東海・東南海の確率は見かけ上、低くなるが、調査委は「切迫度が大きく変わったわけではなく、非常に高いことに変わりはない。対策を着実に進めて減災に努めてほしい」と注意を喚起している。

 新評価では、正平地震(1361年)以降の6回の地震を分析。発生間隔(平均117年)や、約70年前の昭和東南海・南海地震の規模が比較的小さかったことから、次の地震が起きるまでの間隔を過去最短の88.2年と推定し、発生が迫っているとした。

 M9級は過去に起きた記録がないため確率は計算できないが、発生頻度はM8級と比べて1桁以上低いとしている。政府は南海トラフ地震で巨大津波が発生した場合、最大32万3千人が死亡、経済的な被害額は最悪で220兆3干億円に上ると試算している。

(bd)


(2013/04/14) 野島断層延長線でひずみ? 専門家、南海トラフに警鐘

 13日発生した淡路島を震源とするマグニチュード(M)6.3の地震。近畿で震度6弱以上を観測したのは、1995年1月の阪神淡路大震災以来となった。専門家らは阪神・淡路のほか、近い将来の発生が懸念される南海トラフ地震との関連に注目。余震に加え、西日本での新たな地震への警戒を呼び掛ける。

 今回の地震は、六甲山から淡路島に延びる断層帯の南端付近で発生した。阪神淡路大震災のときに動いた野島断層の延長線上にあたる。

 神戸大学都市安全研究センターの吉岡祥一教授(地震学)は「阪神・淡路と同じ東西方向からの圧力で起きており、関連性が高い」と指摘。「その後のプレートの動きで、18年前には動かなかった断層にひずみがたまり、今回の地震につながったのだろう」と推測する。

 川崎一朗京都大名誉教授(地震学)も「大きな揺れを起こした断層の延長線上にはひずみが集中し、破壊が起こりやすい」と述べる。「今回の規模は日本では驚くほど大きいわけではない」としつつ「備えの面で、南海トラフ地震への警鐘とすべきだ」と強調した。

 南海トラフ地震は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下にもぐりこむ海溝「南海トラフ」で100〜150年周期で起きる。その発生が近づくとされる中、西日本では阪神・淡路を機に「地震の活動期に入った」と言われてきた。

 梅田康弘京都大名誉教授(地震学)は「2005年の福岡県西方沖地震以降、西日本で大きな地震がないのが不思議だったが、あらためて一連の動きが続いていることが分かった。今後も同じような地震が起こる可能性がある」と警告する。

 2011年3月には、三陸沖でM7.3の地震が起きた2日後に東日本大震災が起きた。吉岡教授は「予測もしない地震が起こるという気持ちを常に持っておいてほしい」としている。

(la)


(2013/03/20) 南海トラフ地震、被害220兆円想定 東日本大震災の10倍

 太平洋沖に延びる南海トラフでの巨大地震対策を検討する国の有識者会議は18日、マグニチュード(M)9.1の地震が起きると、最悪クラスで220兆3千億円の経済被害が出るとの想定を発表した。国内総生産(GDP)の42%、東日本大震災の10倍を超える規模。今回の公表で死傷者数などを含む被害想定が出そろったことになり、国は防災対策の基本方針を盛り込む大綱の策定を急ぐ。

 想定額には、原発事故や巨大地震後に懸念される火山の噴火の影響は含まれていない。また、同会議は「巨大地震の発生は千年に一度、あるいはもっと低い頻度」と指摘。そのうえで「東日本大震災の教訓を踏まえ、想定外をなくすという観点からとりまとめた。耐震化や防火対策を進めれば被害は確実に減らせる」とし、118兆円に半減できるとした試算も出した。

 同会議は「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」(主査=河田恵昭・関西大教授)で、安倍晋三首相が会長の中央防災会議のもとで昨春から議論を進めてきた。

 WGの想定によると、太平洋沿岸が最悪クラスの揺れと津波に襲われた場合、建物や工場内の設備が被災する「直接被害」が40都府県で169兆5千億円に達すると推計。大都市部の愛知県で30兆7千億円、大阪府で24兆円に達し、30メートル超の津波が押し寄せるとされる静岡県と高知県でそれぞれ19兆9千億円、10兆6千億円の被害が出るとした。沿岸部の平野に観光施設などが立ち並ぶ宮崎県も4兆8千億円になるという。
 さらに、製品やサービスの提供が不可能になることで生じる損失は被災後1年間で44兆7千億円、交通の寸断で6兆1千億円分の影響が出るとしている。

 WGはインフラやライフラインの被災規模も発表。上水道は3440万人、下水道は3210万人が断水で使えず、停電も2710万軒に拡大する。中部、関西、高知、大分、宮崎の5空港が津波で浸水し、このうち高知と宮崎は半分以上水浸しになるとみている。
 地震発生から1週間で、食料が9600万食、飲料水が1億4500万リットル不足し、500万人が避難所で暮らすことになると想定。震災で生じる廃棄物は東日本大震災の約12倍にあたる2億5千万トンに達するとみている。

 千年に一度以下の頻度だが、明日起きるかもしれない。南海トラフ巨大地震の経済被害想定を出した国の有識者会議は、こうした考えに立って最悪の数字を導き出した。最大でマグニチュード(M)8程度とされた宮城県沖で、M9が起きた東日本大震災を踏まえた対応だ。

 有識者会議は昨夏、先に死者32万3千人、全壊・焼失建物238万6千棟とする想定を公表した。この被害を前提に太平洋沿岸のライフラインや交通網、生産力、サービスの提供など主要な産業基盤が甚大な打撃を受けたケースを考慮。その結果、経済被害の想定は2003年に公表した81兆円の3倍近くに膨らんだ。

 「被害ゼロを目指すのは現実的ではない」。有識者会議は想定公表に合わせ、巨大地震への備えのあり方を示した。国は対策大綱と防災戦略の策定に動き出すことになるが、GDPの4割を超える被害規模に対して多額の予算をつぎ込んでも限界がある。

 備蓄、家具の固定、建物の耐震化など、市民や企業にできることは多い。「減災」をあきらめないことが大切だ。


 〈南海トラフ〉 静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く深さ約4千メートルの海底のくぼみ(トラフ)。海側の岩板が陸側の岩板の下に沈み込む境界にあり、1600年代以降だけでもマグニチュード(M)7〜8級の地震が繰り返し起きている。東日本大震災後、国は巨大地震発生時の被害想定の見直しに着手。最悪クラスでM9.1、20メートル以上の津波が8都県(東京都は島しょ部)に押し寄せ、32万3千人の死者が出るとした想定を昨年8月にまとめた。

(sk)


(2013/02/07) 南海トラフ巨大地震想定し防災講演会 16日、河田教授が解説

 西宮市と地盤工学会関西支部は、南海トラフ巨大地震を想定した防災講演会を16日午前10時から、西宮市小松南町の兵庫医科大学平成記念会館で開催する。入場無料。

 関西大の河田恵昭教授が「南海トラフ巨大地震と西宮の地震防災」と題して講演。昨年8月に発表された南海トラフ巨大地震の被害想定を解説し、西宮市で想定される被害と対策について話す。

 定員550人。応募多数の場合は抽選。申し込みなど詳しいことは、地盤工学会関西支部の下記ホームページをご覧下さい。

 http://www.jgskb.jp/japanese/gyoujipdf/h24/20130216bousaikouenkai.pdf

(pl)


(2013/01/30) 南海トラフ巨大地震 社会全体での防災を

 将来発生する可能性がある南海トラフ巨大地震への備えを考える「防災気象講演会」(神戸海洋気象台など主催)が29日、神戸市内で開催され、講師の奥村与志弘・京都大大学院助教(津波防災、巨大災害)が「防災の専門家だけでなく、すべての住民がそれぞれの立場で防災に取り組むことが必要」と訴えた。

 同講演会は近畿の各気象台が毎年持ち回りで開催。国が昨年、南海トラフ巨大地震の被害想定を公表したことから、今回は「巨大地震、津波にどう備えるか」をテーマとした。

 奥村助教は、東日本で被災した宮城県南三陸町で、津波に襲われた特別養護老人ホームの利用者を近隣の高校生が助けた事例を紹介し、「日頃の世代間交流の取り組みが意外なところで役立った」と指摘。「巨大地震には防災の専門家や行政だけでは対応できない。いかに社会のいろいろな分野の活動に(防災を)取り込んでいけるかが問われる」と強調した。

 その後、県や市の防災担当者らが地域防災計画などの取り組みなどについて意見を交わし、集まった約260人の市民も熱心に耳を傾けていた。

(qz)


(2013/01/08) コンビナート防災強化 政府、耐震調査に補助金

 政府が、南海トラフ巨大地震や首都直下地震など将来の大地震に備え、全国のコンビナートの防災強化を支援する方針を固めたことがこのほど分かった。1月中旬の閣議決定を目指す2012年度補正予算案に耐震調査などの補助金を盛り込む方向で検討する。

 大量の石油や高圧ガスを扱う事業所のある石油コンビナー卜等特別防災区域は33道府県に85カ所ある(うち兵庫県は神戸、東播磨、姫路臨海、赤穂の4カ所)。政府はこれらの区域内の40事業所程度を調査する考え。政府関係者は「老朽化したコンビナートも少なくない。被害を受ければ、燃料の受け入れや輸出入が危機的状況となる」としている。

 関係者によると、調査では地盤のボーリングなどを実施し、地震の際に液状化しやすいかどうかなどを調べる。費用は1事業所当たり数千万円とみられ、国が一部を補助する方針。

 12011年の東日本大震災では東北や関東に立地する9製油所のうち6カ所が稼働を一時停止し、被災地に深刻なガソリン不足などを招いた。コンビナートは南海トラフや首都直下で影響を受ける太平洋沿岸などに集中しており、操業開始から40年以上の施設も目立つ。

 経済産業省によると、大震災後のコンビナートなどへの調査では、高圧ガス配管の約9割、石油タンクの約3割が現在の耐震設計基準などに適合しているか確認できてい
ない。経産省は「防災対策を進めなければ災害復旧に時間がかかり、産業空洞化を招きかねない」と指摘している。

(la)