地震予知と対策
(2011年5月1日〜12月31日)

 


(2011/12/28) 南海トラフ巨大地震 規模M9、震源域2倍に 内閣府が想定引き上げ

 東海・東南海・南海地震が起きる南海トラフ(浅い海溝)沿いの巨大地震の想定見直しを進めてきた内閣府の検討会は27日、3つの地震が連動した場合の想定震源域を従来の約2倍に拡大し、地震の規模を東日本大震災と同じマグニチュード(M)9.0に引き上げる中間報告をまとめた。大きな津波が起きる津波地震との連動も新たに想定。津波の高さや揺れの範囲が拡大するのは確実で、沿岸自治体などの防災対策に大きな影響を与えそうだ。

 国の中央防災会議が平成15年に公表した東海・東南海・南海地震の3連動の従来想定はM8.7。これと比べてM9.0はエネルギーの大きさに換算すると約3倍に相当する。

 従来の想定は、過去数百年に起きた地震の被害記録を再現できるように作成されてきた。しかし、大震災で過去数百年の歴史記録になかった連動型の巨大地震が起きたことを踏まえ、科学的な知見に基づく最大級の地震を新たに想定した。具体的な津波の高さや震度分布などは来年3〜4月の最終報告で公表する。

 新たな想定では、強い揺れをもたらす範囲の想定震源域を3方向に拡大。南西側は従来、宮崎県北部沖の日向灘の手前までだったが、大震災で「想定外」だった福島県沖の断層が破壊されたことなどを受けて、宮崎県南部沿岸まで延長。

 また内陸側は、従来はフィリピン海プレート(岩板)と陸側プレートの境界が固着している深さ30キロまでの範囲だったが、これよりやや深い場所で固着を示す低周波地震が観測されたことを考慮し北西に拡大。愛媛、香川、奈良、長野各県が震源域に含まれた。

 一方、津波は想定の考え方を抜本的に変更。揺れは小さいが、高い津波をもたらす津波地震が大震災で発生したことを受け、津波地震が起きる南海トラフ沿いの深さ10キロより浅いプレート境界についても、津波の想定波源域に追加した。

 検討会は古文書や津波堆積物などの調査結果から、南海トラフの過去の地震も検証。約2千年前に起きた津波は、これまで最大級とされた江戸時代の宝永地震(1707年)の津波より大きかった可能性があるとした。また、ある程度大きな津波を伴う地震は300〜500年間隔で起きていると評価した。

南海トラフ 
 駿河湾から九州沖にかけて延びる浅い海溝。ここでフィリピン海プレート(岩板)がユーラシアプレートの下に沈み込んでいる。過去100〜150年間隔でマグニチュード8級の巨大地震と津波を繰り返しており、国は近い将来に発生が想定される東海、東南海、南海地震の対策を進めてきた。1707年の宝永地震は、この3地震が連動して起きたと考えられている。

(jf)


(2011/11/27) 三陸沖〜房総沖で「M9」30年以内に30% 地震調査委

 政府の地震調査委員会は25日、巨大津波で2万人以上の犠牲者を出した明治29(1896)年の明治三陸地震を起こした三陸沖北部から房総沖の海溝寄りで、大津波を伴う最大でマグニチュード(M)9.0の地震が30年以内に30%の確率で起きるとの長期評価を発表した。東日本大震災に伴う見直しで確率が10ポイント上昇した。

 三陸沖北部から房総沖の海溝寄りでは、太平洋プレート(岩板)と陸側プレートの境界部でM8以上と推定されるプレート間地震が過去約400年に3回発生。東日本大震災もこの領域を震源域に含んでおり、今回で計4回になった。

 この領域で起きる地震は、揺れは比較的小さいが、海底が大きく動いて津波が高くなる「津波地震」として知られ、明治三陸地震のほか江戸時代の慶長16(1611)年に三陸沖、延宝5(1677)年に房総沖でも起きた。

 また、東日本大震災の震源域の北端に当たる三陸沖北部では最大M7.6が30年以内に90%、南端の茨城県沖では同7.2が同90%以上の高い確率で起きるとした。

 一方、東日本大震災の発生直前の確率は30年以内で最大20%だったと試算。同87%とされる東海地震の発生確率などと比べて低い数字で起きたことも分かった。

 会見した阿部勝征地震調査委員長は「防災対策は数字にとらわれないで進めてほしい。  東日本大震災の震源域の隣接地域でM8前後を誘発する可能性も指摘されており、余震に注意してほしい」と話した。

(rt)



(2011/11/27) 東日本大震災の影響 11断層の地震発生率が10〜70倍に上昇

 マグニチュード(M)9.0を記録した東日本大震災の影響により、周辺での地震の発生率が震災前と比べて10倍以上に上昇した活断層が全国で11カ所あることが24日、東京大学地震研究所の研究チームの調査で分かった。

 特に断層帯の動きが活発化した可能性が高く発生率が上がったのは東北から中部にかけてで、長野県の境峠・神谷断層帯主部や岐阜県の猪之鼻断層帯、神奈川・静岡県の北伊豆断層帯など6カ所。北伊豆断層帯は最も高い約70倍となった。

 調査をまとめた東大地震研の石辺岳男特任研究員は、東日本大震災のようなプレート間での巨大地震の前後で、大地震が集中する傾向にあると指摘。「大地震に直結するわけではないが、活動が活発化しており、継続して監視すべきだ」と話している。

 チームは主要な断層帯約170カ所を調査。断層から5キロ以内の区域で、震災前1年間と震災後8ヵ月間に起きたM1以上の地震を抽出した。地震数が10未満のところは除き、1年間の発生率に直して比較すると、境峠・神谷断層帯が約66倍、猪之鼻断層帯が約11倍などとなった。

 石辺特任研究員によると、活断層が活発化した可能性が高い6カ所は大震災で活断層への力のかかり具合が増したことや、地震のメカニズムそのものが変わったことが要因と考えられるという。

 そのほかの5カ所のうち3カ所は、大震災の余震とされる3月12日に長野県北部で起きたM6.7の地震に伴うものとみられる。

 残り2カ所は宮城県や山形県で、大震災後に断層周辺で群発的に地震が発生したとみられ、これらは活断層の活発化との関連について検討が必要としている。研究結果は25日から千葉市で開かれた日本活断層学会で発表された。


活断層
 過去に繰り返し活動し、将来も活動することが予測される断層。主に約200万年前以降に活動したものが活断層と認定されることが多い。日本には約2千の活断層があると推定され、政府の地震調査委員会は主な活断層を対象に、今後30年以内といった長期的な地震の発生確率や規模などについて評価をしている。活断層は航空写真などで存在が確認されることが多いが、今まで知られていなかった断層が大地震を引き起こすケースもある。

(pl)


(2011/11/27) 日本列島広範囲で地震頻発 大震災の備え必要

 日本列島の広い範囲で地震が頻発している。25日明け方から朝にかけ、全国で震度3、4の地震が相次いだ。午前4時35分に起きた広島、島根の地震は、21日に同地域で起きた震度5弱の地震の余震とみられる。

 気象庁によると、25日午前2時39分ごろ、福島県会津地方を震源とする地震(マグニチュード3.1)が発生。福島・北塩原で震度3などを記録。

 4時35分ごろ、広島県北部を震源とする地震(マグニチュード4.3)が発生し、同県三次市、島根県美郷町で震度4の揺れを観測。約30分後にも同地域で地震があり、震度3などを記録した。

 また、5時14分ごろには、静岡県東部を震源とする地震(マグニチュード2.7)が発生し、同県富士市で震度3、富士宮野中で震度2などとなった。8時21分ごろには、岐阜県飛騨地方を震源とする地震があり、高山奥飛騨温泉郷と高山上宝で震度1を記録した。

 気象庁は広島・島根県で続いた地震について、「21日に震度5弱を記録した地震の余震とみられ、今後も続く可能性がある」としている。


 気象庁は、東日本大震災の影響による地震は減少傾向にあり、全般的に落ち着きつつあるとの見方を示し、専門家によると、西日本での地震は「大震災との関連性はない」という。ただ、同庁は引き続き新たな震災への警戒を呼び掛けている。

 東大地震研究所によると、東日本大震災と同様、マグニチュード(M)9だったスマトラ沖地震(2004年)では、その後6年間にわたってM7クラス以上の地震が起きた。東日本大震災はスマトラ沖と似たタイブとされていることから、今後も静岡以東では、大震災の影響による地震や火山活動の活発化が続くとみられる。

 一方、西日本の地震については、地震を起こすブレート(岩板)の違いなどから大震災の影
響は少ないとみられているが、7月5日に和歌山県で震度5強、今月21日には広島県で震度5弱が発生。「M9クラスの東海・東南海・南海地震の前触れか」などと心配する声も上がっている。

 こうした西日本の状況について、東大地震研究所の大木聖子助教(地震学)は「起こるべき所で起こっている地震で、直下型地震のため余震は続く」と分析。「津波地震も発生確率は時問とともに高まっており、備えは今からでも必要だ」と呼びかけている。

(qz)


(2011/10/26) 兵庫県、津波予測図を発表

 兵庫県は24日、従来想定の2倍の高さで津波が押し寄せた場合の浸水予測図を発表した。大阪湾から播磨灘に面した全ての自治体と淡路島3市で被害が出る恐れがあることが示された。国が来年度、津波高の予測を見直して発表するまで、避難経路の見直しなどの指針として使われる。

 兵庫県が作製しているのは、「浸水想定区域図」と「被害警戒区域図」の2種類。前者は津波が防潮堤を乗り越えて来た場合の浸水エリアを示している。防潮門扉が閉まっているかどうかで、浸水域が違う。

 一方、被害警戒区域図は防潮堤が破壊されるなどして、全く機能しなかった場合の浸水域を示している。津波の高さと同じ標高の地点で線引きしている。今回発表された図の大半はこれだ。

 現時点で浸水想定区域図ができているのは阪神地域の尼崎、西宮、芦屋の3市分のみ。播磨、淡路両地域は11月上旬、神戸地域は同月下旬に作り、順次公表していく。

 阪神地域では、防潮門扉が閉まっていた場合は、浸水域は3市で計8平方キロメートル(約5%)にとどまる。防潮門扉がすべて閉まらなかった場合は約36平方キロメートル(約20%)が浸水する。

 特に、標高が低い地域が多い尼崎市では門扉が閉まらなければJR神戸線付近まで津波が来て、市全体の4割が浸水するという。
 
 神戸地域では、元町周辺はJR神戸線付近まで浸水する恐れがある。ポートアイランドや六甲アイランドでは高くなっている中央部を除き、浸水すると予測。市東部では阪神本線付近が浸水想定エリアになる。兵庫区では神戸高速鉄道付近まで浸水する可能性がある。明石市でもJR明石駅付近の市街地一帯が浸水する恐れがある。

 淡路地域では、南あわじ市の福良、阿万地区などで津波高が10メートル前後になる恐れがあり、計9平方キロメートルが浸水、約7千人に影響が出るとみられる。洲本市では洲本川河口付近を中心に3平方キロメートルが浸水し、約8千人に影響が出るという。淡路市では北東部沿岸域を中心に6平方キロメートル浸水。約6千人に影響が出る可能性がある。
 
 播磨地域では、姫路市内で沿岸部から2〜4キロ近く内陸まで被害警戒区域が設けられている。たつの市や相生市でも、湾沿岸の平地一帯が浸水する可能性がある。播磨町や高砂市では市町域の半分が津波につかる恐れがあり、赤穂市でも中心部を含め、市域の約15%が浸水する恐れがある。

 県内で必要な防潮堤252キロのうち、242キロ(96%)は整備済み。残りの区間のうち、5キロは津波対策として今後5年以内の整備完了を目指す。ただ、防潮堤の高さは100年に1度程度の周期で発生する津波への備えとするにとどめるという。

 県は、千年に1度の東日本大震災級の津波では、従来の防潮堤のかさ上げをするなどのハード面の備えには限界があると判断。避難に重点を置いたソフト対策を充実させる。

 今回の浸水予測図をもとに、一時避難ビルの確保などを盛り込んだ津波災害対応マニュアルの改定を市町に求める。また、地下鉄や地下街の事業者にも避難対策をとるよう働きかけていくほか、住民にも避難場所や避難経路の確認を呼びかけていくという。

 予測図は県のホームページ(http://web.pref.hyogo.jp/contents/000190469.pdf)で閲覧できる。

(sk)


(2011/10/22) 海底津波計設置へ 南海地震などにも対応

 気象庁は21日、巨大地震の後に震源の沖合で発生、大津波を引き起こす恐れのある「アウターライズ地震」による津波の監視を強化するため、三陸沖100キロにブイ式海底津波計3基を設置する方針を明らかにした。同庁は「沖合での津波を観測することで、より正確な予想高を算出できる」としている。

 アウターライズ地震は東日本大震災の震源域東側のプレート内で発生が懸念されている。同庁は海底津波計3基の設置費9億5600万円などを平成23年度第3次補正予算案に盛り込んだ。設置に時問のかかる通信ケーブル敷設が不要で、今年度中の整傭を目指す。

 同庁によると、海底津波計3基は岩手、宮城、福島の三陸沖100キロの海底に南北に並べて設置。水深約3千メートルのセンサーで計測した水圧の変化を海上のブイで受信、衛星電波で同庁に送り、データを解析する。

 同庁は現在、津波が沿岸部に到達した際の予想高を地震規模から算出しているが、東日本大震災では地震計が振り切れたため、予想高の上方修正を繰り返した。

 今回の津波計設置で、沖合の実測値から沿岸部の到達予想高を正確に推定できるという。また、地震計の振り切れを教訓に、補正予算案には強い地震の揺れでも針が振り切れない地震計「広帯域強震計」の設置費3億2900万円も盛り込んだ。

 広帯域強震計はこれまでの地震計で想定していなかった地震規模がマグニチュード(M)9クラスの地震に対応。離れた地点まで減衰せずに届く長周期地震動の揺れもとらえることができる。

 観測地点を増やすことで、巨大地震観測の精度がより高まるといい、全国80カ所に設置する見込み。同庁は「15分以内でM9クラスの正確な規模を計算できる」としている。

 また、東海、東南海、南海地震の監視強化のために、西日本太平洋側での地震計の追加整備費用やひずみ観測施設の電源・通信機能強化費用など7億700万円も盛り込んだ。

(jf)


(2011/10/16) 4連動地震では四国・九州は津波20メートル超

 東海・東南海・南海地震に加え、南海トラフ付近での地震が連動する可能性について、東京大学地震研究所の古村孝志教授らがシミュレーションしたところ、それぞれの地震が時間差で発生した揚合、震源に近い大阪湾より東京湾の津波が増大し4メートルの津波こ襲われる可能性があることが分かった。四国や九州の津波が増大、高さが20メートルを超えるケースもあった。古村教授が14日、静岡市で開催された日本地震学会で発表した。

 古村教授は、東日本大震災をモデルに、東海・東南海・南海地震の3連動こ加え、南海トラフに近い揚所で別の震源域が連動する4連動地震のシミュレーション(マグニチュード8.8)を実施。3連動地震に比べ、西日本沿岸部では津波の高さが、これまでの被害想定の1.5〜2倍、10〜20メートルになることがわかった。

 今回は、連動に時間差があった揚合のシミュレーション結果を公表。それによると、3つの震源域が西から東の方向に時間差で発生した場合、駿河湾・東京湾の津波が増大、東から西の揚合は、四国や九州の津波が増大するという。特に4連動地震については、東南海地震が発生して15分後に東海地震が発生した場合、東京湾の津波はこれまでの3連動地震の被害想定の1.5〜2倍に増大する可能性が判明。湾奥では最大2.5メートルだが、湾口の横須賀などでは4メートルの津波が起き駿河湾は10メートル以上になる可能性があるという。

 一方、東海・東南海地震が先に起き、引き続き南海地震が発生する場合、四国や九州の津波は10〜20メートルからさらに増大する。

 大阪湾については時間差の影響は少ないが、4連動になった揚合、津波の総流量が増大。これまで津波の危険性が低いとみられてきた瀬戸内海について、津波の被害が増大するケースを想定した検討が必要だという。

 古村教授は「連動する巨大地震の対策は各地の特殊性に加え時間差によってもさまざまな被害の違いが生Uることに留意すべきだ」と讐戒を呼びかけている。

(jf)


(2011/10/15) 大阪の上町断層帯 横ずれ頻発 大規模地震の引き金を警戒

 大阪府を縦断する「上町断層帯」の一部で、断層が平行にずれる「横ずれ断層」型の微小地震が集中的に発生していることが、産業技術総合研究所(産総研)の研究チームの調査で分かった。静岡市内で開催中(12〜15日)の日本地震学会で明らかにした。横ずれ断層型の微小地震の頻発は、大規模地震の引き金になる可能性が指摘されており、研究チームは「周辺に比べて特異な現象で、上町断層帯の活動メカニズムの解明につなげたい」としている。

 調査したのは、産総研の地震発生機構研究チームで、平成14年6月〜今年1月の約9年間に、産総研などが観測した上町断層帯付近で起きた地震のデータを収集し分析。その結果、ごの間に、深さ20キロより浅い震源で起きたマグニチュード(M)1以上の地震が計256カ所で確認された。

 このうち233カ所を地震のタイプで分類したところ、大半は斜めの断層で乗り上げている側が上方にせり上がる「逆断層」型だったが、弓形になっている上町断層帯が最も屈曲している地域(弓形の頂点付近)では、横ずれ断層型が数十回集中して発生していることが判明した。

 上町断層帯は、大阪府豊中市から大阪市を経て、岸和田市内までの約42キロにわたって弓形に連なる活断層。国内の活断層の中でも地震発生確率が高い方に属しており、阪神・淡路大震災を上回るM7.5程度の直下型地震を引き起こすと推測されている。府内の住宅密集地を走っているため、巨大地震発生の際の被害が甚大となることは避け難い。

 研究チームの今西和俊主任研究員は「上町断層帯で大規模地震が起きれば甚大な被害が予想される。それだけに、断層の動きの特徴を把握し、大地震発生につながる兆候かどうか調べていきたい」と話している。

死者12000人、被害19.6兆円 大阪府予想
 上町断層帯の直下型地震をめぐり、大阪府はM7.5〜7.8の規模での発生を想定して地域防災計画を策定。震度6以上の地震になれば、大阪市中央区大手前の本庁舎別館に知事を本部長とする災害対策本部を立ち上げ、全職員と教員約2万1干人を、本庁舎や府民センター7カ所(池田、茨木、枚方、富田林、八尾、鳳、岸和田)、各市町村、学校などへ参集させることを決めている。

 府の地域防災計画によると、上町断層帯で平日のタ方にM7.5〜7.8の巨大地震が発生した場合、人的被害は死者約1万2千人(阪神・淡路大震災の約2倍)、負傷者約11万5千人、建物被害は全壌が約36万3干棟、半壊が約32万9千棟に上るとされる。

 ライフラインでは、約200万件が停電、ガスは293万戸で供給停止し、固定電話は91万加入者が不通となる。また、水道が断水し545万人に影響が出るという。復旧には電力で1週間、ガスが2〜3カ月、水道が40日間かかる見込み。道路や鉄道の破損などを合めた被害総額は19.6兆円に上るとみられている。

逆断層
断層とは、地下の地層か岩盤が力を加えられたことによって割れ、割れた面に沿ってずれ動いた状態を意味するが、断層面が斜めの揚合、乗り上げている側がせり上がった場合を逆断層、ずり落ちた場合を正断層と呼ぶ。「逆断層」型の地震は、岩板が水平方向に圧縮される揚合に起きやすい。

横ずれ断層
断層面が水平万向にずれた断層。阪神・淡路大震災やマグニチュード(M)7.8とされる1906年のサンフランシスコ地震は「横ずれ断層」型の地震に分類されており、専門家からは横ずれ断層型の微小地震の頻発が大規模地震の引き金になる可能性が指摘されている。

(qz)


(2011/10/09) 東日本大震災「なぜ想定できなかった」 地震学者が研究・防災見直し

 国内の地震学者が研究発表などを行う日本地震学会が、今月12日から静岡市内で開く全国大会の最終日に、「自省」の観点に立った異例のシンポジウムを行う。東日本大震災後初となる大会で、マグニチュード(M)9クラスの巨大地震を想定できなかった背景や間題点について学会内外のパネリストが意見を交わし、「地震研究の何がいけなかったのか」などを探り、提言にまとめる方針。

 シンポジウムは、「地震学の今を問う」と題し、同学会内の「東北地方太平洋沖地震臨時対応委員会」が主催。大会最終日の15日、静岡大学の大学会館で開催される。

 シンポジウムは4部構成となっており、第1部では「東北地方太平洋沖地震は何故想定できなかったのか」をテーマに、間題点の洗い出しを行う。臨時対応委員会の委員長を務める名古屋大学の鷺谷威教授(地震学)は「平成7年の阪神・淡路大震災以降、学会は科学的な知見を一般社会に伝える努力を行ってきたが、東日本大震災では、そもそも専門的見地からの地震の見立てが間違っていた」と話しており、合回の事態を「地震学全体の大きな敗北」と捉え、真摯に議論を交わすという。

 学会の姿勢としても、国の地震防災や原発の安全対策などについて、一部の研究者を除い
て、学会そのものは積極的に関与することを避けてきた」と反省し、第2部「地震学会は国の施策とどう関わるのか」で、地震防災や原発対策などの面で研究者コミュニティーの社会的役割も探る。

 第3部でも、主催する臨時対応委員会側は「地震や津波で人が死ぬという現実や原発を停止するかどうかの判断と、私たちの研究との関係について、まじめに考えてきただろうか」と、厳しい言葉で問題を投げかけており、研究と防災の関係を考え直そうとしている。

 「地震研究者は、巨大地震をなぜ想定できなかったのかという科学的な問題に加え、自分たちが杜会とどう関わるかという問題に直面している」と危機感を募らせる鷺谷教授は、「個々の研究者が今回の震災をどう捉え、何を考えているのかを知りたい。今回の震災を契機として、しっかり社会と向き合う方向性が出てくることを期待している」と話している。

(rt)


(2011/10/02) 気象庁 長周期地震動も速報

 気象庁は30日、大地震発生時に高層ビルなどに被害をもたらすことが懸念される「長周期地震動」でも、緊急地震速報のように情報発表することを目指し、分析装置の導入費6000万円を来年度予算の概算要求に盛り込んだ。到達直前にビル管理者などに知らせ、被害を減らすのが狙い。

 長周期地震動は周期2〜20秒くらいのゆっくりとした揺れで、高層ビルや石油タンクなど固有周期(地震などの際に揺れる周期)の長い大型構造物が影響を受けやすい。遠くまで伝わりやすい特徴があり、2003年十勝沖地震では震源から200キロ以上離れた北海道苫小牧市で石油タンク火災が発生。東日本大震災でも、700キロ以上離れた大阪市でエレベーターが止まり、5人が閉じ込められた。

 気象庁によると、大地震発生時、震源近くの地震計で観測したデータを新たに導入する装置で分析し、長周期地震動の到達が予想される地域と震度を速報することを目指す。発表方法は検討中だが、高層マンションの管理者に専用回線で伝え、上層階の住民に知らせてもらうことなどを想定。エレベーターを停止させることも考えられる。実施は2013年度以降の見通しという。

 速報に先立ち12年度内には、観測された長周期地震動の震度を発表する方針。気象庁の担当者は「消防などの防災機関にも有効な観測情報を伝えられるようになる」と話している。

(uh)


(2011/10/01) 南海トラフ 200年・100年間隔の2周期で発生

 東海・東南海・南海地震が警戒されている「南海トラフ」沿いでは、約200年間隔と約100年間隔の異なる2つの周期で地震が起きている可能性があるとする研究結果を、大阪市立大の岡橋久世氏(現・香港大学)らの研究グループが30日までにまとめた。グループは三重県で地層を調べ、これまで文献などで地震が確認されていない年代も合めて過去2400年間に十数回の津波によるとみられる堆積物を発見した。

 国は南海トラフ沿いの地震発生周期について、歴史記録を基に平均すると約110年間隔と想定。南海地震の30年以内の発生確率を60%程度(今年1月現在)としているが、グルーブの産業技術総合研究所の藤原治主任研究員は「2つの周期が繰り返しているとすると、発生確率を変える必要がある」と指摘している。

 藤原主任研究員によると、堆積物は三重県尾鷲市の「須賀利大池」で採取。池の底から深さ約4メートルまでの泥の中に、津波によると考えられる砂を合んだ15から16の層があるのを確認した。年代測定の結果、紀元前4世紀ごろから18世紀にかけての堆積とみられる。

 これまで地震の記録がながった13世紀前後の地層からも砂などの堆積物を発見。堆積物は11世紀以降では100〜150年間隔だったが、11世紀以前は約200年。2〜5世紀は100年間隔で、それ以前は再び200年間隔と、長めと短めの周期を繰り返しているようにみられるという。

 南海トラフ沿いの地震は記録の残る684年の白鳳地震から18世紀までに7回起こったとされ、今回見つかった堆積物の年代も地震の発生年とほぼ一致していた。研究結果は10月12日から静岡市で開催される日本地震学会で発表される。

南海トラフ
 東海沖から四国沖にかけての海底にある岩盤(プレート)とプレートの境界にあたる溝(トラフ)。海側のブレートが、陸側のプレートの下に沈み込んでおり、巨大地震の発生帯とされている。南海トラフ沿いでは、東海・東南海・南海地震の発生が懸念されており、今世紀前半にも発生の恐れがある。過去には1707年の宝永地震など、3地震が同時、もしくは連動して起こったケースもある。

(pl)


(2011/09/29) 中央防災会議 千年周期地震も考慮 南海トラフ沿いに巨大津波

 東日本大震災を受けて地震・津波対策を検討している政府の中央防災会議専門調査会(座長・河田恵昭関西大教授)の最終報告案が27日、明らかになった。従来は発生確度が低いとして被害想定から除外してきた千年周期の「歴史地震」も考慮に入れ、発生が懸念される西日本の東海・東南海・南海地震について、より具体的な複数の被害シナリオを作成する。

 28日に開く会合で正式に決定。政府は、国の防災基本計画を改定し、津波による浸水予測図や避難勧告に関する各ガイドラインなども見直す方針だ。

 報告案では、従来の地震や津波の想定手法には限界があったと反省。東日本大震災のような海溝型地震特有の長周期地震動による超高層ビルの被害、石油貯蔵タンクの火災なども詳細に検討を進めるとした。

 また、西日本太平洋沖の海底断層「南海トラフ」沿いでも巨大津波が発生する可能性があると指摘。東日本大震災の経験から、太平洋側の被災想定地のみを対象にした対策では限界があるとして、「日本海側の道路、鉄道、港湾の整備なども合めた国土全体のグランドデザインの検討も必要」と強調した。

 避難対策では、携帯電話で津波警報を伝えるなど「伝達手段の多重化」を提言。消防団員らが海岸へ向かい犠牲になることを防ぐため、沿岸の津波監視システム強化も盛り込んだ。

 避難完了の時間については地震発生後5分以内を目標に明記。そのため、津波避難ビルや避難路・階段を整傭し、避難用建物は最大クラスの津波でも強度が確保されるよう構造墓準の見直しが必要とした。このほか、条例による沿岸部の土地利用制限や建築物の構造規制にも言及。自治体の機能喪失や広域避難などに備え、災害対策法制の見直しも求めている。

(rt)


(2011/08/05) 今は巨大地震の世紀? 地震考古学者が警鐘

 東日本大震災規模とされる平安時代の貞観(じょうがん)地震(869年)や関東直下型地震、東海・東南海・南海地震の3連動とみられる仁和地震など9世紀に起きた地震が、阪神・淡路大震災(平成7年)以降の地震の状況と酷似していることが産業技術総合研究所の寒川旭招聰研究員(地震考古学)の分析でわかった。近い将来に首都圏直下型や3連動型地震が起きる可能性が高いとの見解を示し、「千年に一度の巨大地震の世紀になるかもしれない」と警鐘を鳴らす。

 寒川氏は、古代以降の文献史料とともに、各地の遺跡で発掘された地割れや液状化現象による噴砂などの地震痕跡を調査。9世紀前半に関東北部や東北などでマグニチュード(M)7前後の地震が相次いだ後、貞観地震が発生していることを確認した。

 貞観地震は当時の歴史書「日本三代実録」に、「海は猛り吼え、津波が怒濤のように多賀城下に押し寄せ、千人が溺れ死んだ」と記述。当時の海岸から約5キロ内陸の多賀城跡(宮城県多賀城市)周辺では道路が寸断された跡が見つかり、仙台市などでは津波で運ばれた堆積物もあった。.

 878年には関東南部でM7以上の直下型地震が発生。887年の仁和地震では、日本三代実録に「都(京都)の建物は倒壊し、圧死する者多数。海岸には海潮(津波)が押し寄せ、無数の人が溺れ死んだ。大阪湾岸も津波被害が甚大だった」と記録。東海から四国にかけて甚大な被害があったという。

 寒川氏の分析によると最近数十年間に秋田などで死者100人以上を出した日本海中部地震(昭和58年、M7.7)や阪神・淡路大震災(M7.3)、新潟県中越沖地震(平成19年、M6.8)など各地でM7前後の地震があり、その後東日本大震災が発生した点が、平安時代の状況と共通していると指摘した。首都圏直下型地震や東海・東南海・南海地震について寒川氏は、いずれもフィリピン海プレートの影響下にあり関連が深く、過去の首都圏直下型
や仁和地震に匹敵する3連動型地震が発生する可能性が高いとした。

 また、6月30日に長野県中部で起きた震度5強の地震は、千年あまり活動がなかった牛伏寺断層付近で発生。7月5日にも和歌山県北部で震度5強の地震があったことからも日本列島が活動期にあることが改めて浮き彫りになった。

 一方、古代以降、M8.2程度の元禄関東地震(1703年)や3連動型の宝永地震(1707年)があった「18世紀初め」、安政東海地震(1854年)や、高さ9メートルの津波が襲ったという翌日の安政南海地震、死者1万人といわれる安政江戸地震(1855年)が起きた「幕末」にも巨大地震が集中したが、三陸沖では東日本大震災に匹敵する地震はなかった。

 寒川氏は「東日本大震級では『想定外』という言葉がしばしば使われたが文献史料には過去の巨大地震が詳しく記されており、決して想定外ではない」と話した。

古村孝志・東大地震研究所教授(地震学)の話
 「これまで、江戸時代以前のデータは不確かさがあるということで、防災対策などでもあまり注目されなかったが、今回を教訓に文献史料などを見直さないといけない。東日本大震災後の余震は以前より落ち誉いてきたが、陸のプレート深部はまだ動いており、バランスをとるために再び大地震が発生する可能性が高く、対策が急がれる。

(rt)


(2011/07/27) 福井と山口の沿岸、大津波の可能性と学者指摘

 防災学者の河田恵昭・関西大教授は26日、内閣府原子力委員会で、福井県の若狭湾と山口県の瀬戸内海沿岸が大津波に襲われる恐れがあることを指摘、両地域の原子力発電所の津波対策の充実と、過去の津波被害の詳細な調査を求めた。

 両地域はこれまで、太平洋側ほどの大津波は考慮しなくていいと考えられていた。若狭湾沿岸には日本原子力発電の敦賀原発と関西電力の美浜、大飯、高浜の各原発、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」があり、山口県の瀬戸内海沿岸では中国電力が上関原発を計画している。

 河田教授は、〈1〉1586年の「天正大地震」の際、若狭湾沿岸が津波に襲われて多数の死者が出た〈2〉100年〜150年周期で発生する巨大地震「南海地震」では、津波が山口県の瀬戸内海沿岸に到達することがある、などの最近の知見を紹介。「最悪のシナリオを考え、津波対策に万全を期す必要がある」と訴えた。

(as)


(2011/07/08) 5管本部が昭和南海地震情報をホームページに掲載予定
 
 東日本大震災以降、東海・東南海・南海連動型地震の発生が心配される中、第5管区海上保安本部(神戸市)が1946年の昭和南海地震について、県内の前兆現象とみられる証言などを要約した情報を近く同本部のホームページに掲載する。

 情報は、海上保安庁の旧水路部(現海洋情報部)が作成した「昭和21年南海大地震調査報告」を基にした。淡路島の福良、淡路由良、洲本や和歌山・串本の聞き取り調査結果を要約。各地点の調査項目は津波(高さや到達時間など)▽地変(地割れや隆起など)▽被害に分類されている。

 前兆現象として、「発光」についての証言も掲載。福良では「地震と津浪の間に電雷の如き光を東方に見た。また、漁船は福良より撫養にわたる光を見た」。また、洲本では「光は柱状で斜角30度で点々と光っていた。この光が一周するのに2〜5分かかった様に思う」などとしている。

 同地震は、同年12月21日午前4時19分すぎ、和歌山・潮岬沖を震源に発生し、マグニチュード8・0を記録。四国を中心に1300人以上の死者が出た。

 同本部では「貴重な証言を一目で見てもらえるようにしたので、防災上の参考にして下さい」と話している。

5管本部のホームページのURLは下記の通り。
 http://www.kaiho.mlit.go.jp/05kanku/

(yi)


(2011/07/07) 大阪市中心部、津波で浸水想定 高さ2倍、大阪府が被害予測

 東日本大震災で想定を超す津波が発生したことを踏まえ、大阪府は、従来想定の約2倍の高さがある津波が大阪湾を襲った際のシミュレーション結果をまとめた。梅田や難波など大阪市中心部や湾岸の広い範囲で津波による浸水被害を受ける可能性が高いと判明。府は沿岸市町と連携し、住民の避難対策の強化を進める方針を決めた。

 府はこれまで、マグニチュード(M)8.4〜8.6クラスの東南海・南海地震が発生した場合、大阪湾岸に到達する津波の高さを最大3メートル程度と想定。沿岸のほぼ全域に高さ3〜6メートル程度の防潮堤があるため、水門や堤防の門扉を閉鎖すれば、浸水域は大阪市や堺市の湾岸部の一部などに限られると予想してきた。

 しかし、政府の中央防災会議は東日本大震災を受け、東海・東南海・南海の3連動地震が発生した際の地震規模や津波の推定値などを来夏までに検討する方針を決定。これに対し府は、3連動地震への対応を急ぐ必要があると判断。津波の高さを暫定的に2倍に引き上げた際の浸水域を想定し、同会議の検討を待たずに避難対策の準備などを進めることにした。

 橋下知事は「梅田や難波にいても大津波が来ると想定される場合はまず逃げてと訴えたい」と話した。これに対し「大阪市の平松市長は「住民の不安をあおるだけで発表の仕方として疑問。避難のあり方や対策とセットにして発表すべきだ」とコメントした。ここでも両人は角突き合わせ。大阪市民としては迷惑このうえないだろう。

(pl)


(2011/06/24) 東日本大震災 海底下の断層 54メートル以上もずれ

 東日本大震災では海底下の断層が54メートル以上ずれていたことが、国土地理院の今給黎(いまきいれ)哲郎・地理地殻活動総括研究官の解析で分かった。また、ずれがプレート(岩板)境界に近い場所で起こったことも判明した。こうした要素が重なって、海底が10メートル以上隆起し、巨大津波につながったという。23日に東京都内で開かれた報告会で発表した。

 地震を起こす断層が海にあると観測が難しくなる。これまでの断層のずれは、陸地での観測から24メートル以上とされていた。

 今給黎さんは、陸地の地殻変動をとらえる国土地理院のGPS(全地球測位システム)の観測網に、海上保安庁の観測船によるデータを組み合わせて調べた。その結果、陸地だけでは得られなかった海溝付近の状況が分析でき、正確なデータが得られた。【

(cj)


(2011/06/17) 東南海・南海地震がM9.0規模の場合、大阪周辺16市が津波被害

 30年以内の発生確率が60〜70%とされる東南海・南海地震が東日本大震災と同じマグニチュード(M)9.0規模で起きた場合、大阪湾岸から約15キロ離れたJR大阪駅などのほか、大阪府北東部の北摂、河内地域など約40キロ離れた地点まで浸水被害を受ける可能性があることが、専門家の試算で分かった。津波の規模は、これまでの南海地震の想定より3メートル高くなるとみられており、自治体は早急に暫定的な対策を打ち出すことが必要となりそうだ。

 試算したのは、東日本大震災復興構想会議の委員で、関西大学社会安全学部の河田恵昭学部長(社会安全学)。大阪府咲洲庁舎の安全性を検証する専門家会議への参加も内定している。

 河田氏の試算では、東南海・南海地震がM9.0規模で起きた場合、大阪湾岸では高さ5.5メートルの津波が発生する可能性がある。地盤の高さと照らして浸水域を描くと、被害は大阪市周辺などで計16市前後に及ぶことが分かった。

 大阪市内では、JR大阪駅(北区)や新大阪駅(淀川区)、市内のメーンストリートの御堂筋や市役所(北区)も浸水域に入るほか、府咲洲庁舎(住之江区)や市営地下鉄、地下街にも大きな被害が出ることが予想される。

 大阪市の南の堺市では、湾岸に近いJR阪和線以西が水没。さらに、津波は淀川などをさかのぼり、大阪府北部の北摂地域にある豊中、吹田、摂津、茨木、高槻の各市や、東部の河内地域にある守口、門真、寝屋川、枚方、四條畷、大東、東大阪、八尾の各市にも被害が広がる可能性がある。また、兵庫県尼崎市でも被害が想定されている。その場合、芦屋市、西宮市、神戸市も相当な被害が及ぶものと思われる。

 大阪市内では、海抜約20メートルの上町台地にある府本庁舎(中央区)や府警本部(同)、市立阿倍野防災センター(阿倍野区)などは被害を免れると想定。ただ、これらの建物も上町断層帯が近くを通っているため、津波とは別に直下型地震に見舞われるリスクを抱えている。

 国の中央防災会議ではこれまで、M8.4クラスの南海地震で大阪湾に到達する津波の高さを2.5メートルと想定。浸水想定域も、大阪市の湾岸部や堺市、尼崎市の一部にとどめていた。

 東日本大震災を受け、同会議は東海、東南海、南海の3つの地震について、連動被害想定の見直しを始める。しかし、各自治体が新たな地域防災計画の策定を終えるのは、平成25年ごろになる見通しだ。河田氏は「行政は、中央防災会議の結果が出る前に、津波対策を暫定的に示す必要があると指摘している。

東南海・南海地震
 フィリピン海プレートが陸側のプレートの下に沈み込むことで起こる海溝型地震。今後30年以内の発生確率が87%(参考値)の東海地震も同じ仕組みで、東日本大震災後、3つの地震が連動型で起きることへの懸念が強まった。国の中央防災会議が平成15年9月に発表した被害想定では、3つの地震が同時発生した場合、M8.7の超巨大地震となり、最悪の場合、揺れや津波などで死者は約2万8千人、経済的被害は約81兆円と想定されており、社会的損害は東日本大震災の比ではなくなる。

(rt)


(2011/06/15) 政府防災白書 東海・東南海など地震連動の対策確立を  
 
 政府は14日、関東大震災(1923年)以降で国内最多の死者・行方不明者を出した東日本大震災の被害状況を中心とする2011年版「防災白書」を閣議決定した。津波対策、広域災害への対応など今後検討すべき課題を挙げ、東海・東南海・南海の3地震が連動して発生した場合の対策の必要性も指摘している。

 約300ページの白書の3分の1を東日本大震災に関する特集と資料に割いた。特集は地震・津波災害と原子力災害の2編で構成している。

 マグニチュード(M)9.0は国内観測史上最大で、1900年以降の世界の地震でも4番目の規模。津波の遡上高(陸地をさかのぼった高さ)も、国内観測史上最大の40.5メートルだったと報告している。

 また岩手、宮城、福島県の死者の90%以上が溺死で、建物倒壊による死亡が多数を占めた阪神・淡路大震災の被害との違いが浮き彫りとなった。

 甚大な被害を受け、白書は「災害対策に関係する法制、体制などの見直しが課題」と指摘。国の災害対策の指針となる「防災基本計画」や、地震の被害想定を見直す必要性を示した。

 東海・東南海・南海地震などの広域災害の発生に備え、国と地方自治体の役割分担、市町村機能の補完についても検討するよう求めた。国や自治体の責務を定めた災害対策基本法は今年で制定50年を迎えるが、その抜本的な見直しにかかわる指摘となっている。

 一方、東京電力の原子力発電所事故は「事故調査・検証委員会の検証にゆだねる部分が多い」として、政府の対応などを15ページにまとめるにとどまり、課題を挙げることは避けた。

(pl)


(2011/06/10) 地震予測の手法見直し 発生例なくても想定 政府調査委

 政府の地震調査委員会は9日、将来起きる地震の規模や確率の予測手法を改めると発表した。過去の地震をもとに予測してきたが、発生例がなくても科学的に可能性がある地震や、多数の地震の連動も想定に加える。予想される地震規模が大きくなり、原発の耐震対策、学校や家の耐震補強策などに影響を与えそうだ。

 調査委は、これまで同じ場所で同規模の地震が繰り返し起きるという前提をもとに、将来、起こる地震の規模や発生確率を予測してきた。しかし、東日本大震災を起こしたマグニチュード9の巨大地震の発生を予測できず、この反省を踏まえ、大きな揺れや津波を引き起こす「海溝型地震」の予測手法を改めることにした。

 今後は、津波で内陸に運ばれた砂や海底の活断層を調べ、過去の地震も詳しく把握。さらに、海底の地殻変動を観測し、地震を起こすひずみを詳しく調べるなどして将来起きる地震を予測する。また、東日本大震災で複数の地震が起きる領域が連動したことを踏まえ、他の海域での連動も再検討。地震の規模やどの程度の確率で起きるのかを調べる。

(wg)


(2011/05/29) 「南海でも大津波の恐れ」と警告 東大地震研

 東日本大震災は震源の深さが異なる二つの地震が連動して起こったため、津波が巨大化した可能性が高いことが東京大地震研究所の調査で分かった。震源が浅いタイプは小さな揺れで津波は高く、深いタイプは揺れが大きく津波も長く続く。この2種が連動し、高い津波が断続して押し寄せたという。南海地震でも同様の現象が起きる可能性があり、専門家は「関西にも想定外の津波をもたらす恐れがある」と警告している。

 今回の地震は、太平洋プレートが北米プレートに沈み込む日本海溝付近で発生。この付近では、死者2万人以上を出した明治三陸地震(1896年)、死者・行方不明者3064人の昭和三陸地震(1933年)など過去に何度も地震による津波被害が出ている。

 岩手県や宮城県などは記録が残る江戸期以降で被害が最悪だった明治三陸地震などをモデルに被害想定をしてきたが、今回、岩手県の各地で津波が30メートルを超え、仙台平野などの浸水面積も予測を大幅に上回った。

 同研究所によると、明治三陸地震のように震源が浅いタイプ(深さ10キロ以内)と、宮城県沖地震などのように震源が深いタイプ(同10キロ以上)がある。死者千人を超えたとされる貞観地震(869年)も後者の可能性が高いという。

 震源が浅いと陸地から離れる上、地盤がゆっくりとずれることが多いため、揺れは小さいが、津波は高くなる。実際、明治三陸地震では大きな揺れを感じないまま、巨大津波が押し寄せた。逆に、震源が深いと陸地に近い分、揺れは大きく、津波も長く継続する。同研究所が今回の地震を解析した結果、両種の地震が連動し、津波が巨大化した可能性があるという。

 南海地震は、東海沖から四国沖の南海トラフ(海溝)で100〜150年周期で発生。東海・東南海と連動し、死者2万人以上を出した1707年の「宝永地震」も含め、震源が深いタイプが一般的とされる。ただ、1605年の「慶長地震」だけは揺れが小さい割に津波の被害は大きく、震源が浅かった可能性があるという。

 同研究所の古村孝志教授は「東日本大震災と同様、南海トラフでも『宝永』と『慶長』の2種の地震がほぼ同時に連動して起きる可能性は否定できない。起これば過去の記録からは想定できない大きな被害をもたらすだろう」としている。

(xr)


(2011/05/24) 紀伊半島、400〜600年ごとに大津波が襲来

 紀伊半島南部に400〜600年程度の間隔で大津波が襲来したとみられる痕跡を、産業技術総合研究所などが、和歌山県串本町の国指定名勝「橋杭岩(はしぐいいわ)」周囲の巨岩で確認した。

 東海・東南海・南海連動巨大地震の津波の可能性がある。前回から300年以上が経過し、次の大津波への警戒が求められる。24日の日本地球惑星科学連合大会(千葉市)で発表する。

 橋杭岩は潮岬近くの海岸にあり、約40の岩柱が一列に並んでそそり立つ。その周辺に、橋杭岩から崩れたとみられる巨岩(重さ数十トン以上、直径2〜3メートル)が多数、散らばっている。

 宍倉正展・海溝型地震履歴研究チーム長らの調査で、散在する巨岩には、カキやフジツボなどの生物の化石が、海水につかる下部ではなく、上部に付着していることがわかった。

 十数個の化石年代を測定すると〈1〉1700年前後と〈2〉1120〜1340年頃の二つの時期に集中。この時に起きた津波で岩が転がり、下部にくっついていた生物が水から離れて化石化したと考えた。

 巨岩が動くには、秒速4メートル以上の速い流れが必要と計算され、東海・東南海・南海連動型の宝永地震(1707年)を想定して計算した流速と一致した。台風の高波や南海地震の単独発生では、これほどの流速にはならなかった。

 研究チームは、〈1〉は宝永地震に当たり、〈2〉は、その約400〜600年前に起きた巨大地震とみる。

(wx)


(2011/05/23) 震源域の連動で津波の高さ倍増も 東海・南海沖地震

 東海・南海沖の巨大地震は、これまで想定されていなかった沖合の震源域も連動して地震が発生する可能性がありそうだ。東京大学地震研究所の古村孝志教授が22日、日本地球惑星科学連合大会で指摘した。あくまでも試算だが、津波は想定の2倍程度まで高くなる可能性もあるという。

 政府は、西日本の太平洋沖にある南海トラフ沿いでマグニチュード(M)8級の東海、東南海、南海地震の三つの地震を想定している。1707年の宝永地震はこれらが同時に動く「3連動」が起き、東海地方では高さ5〜6メートルの津波が押し寄せたとされる。

(fz)


(2011/05/23) 耐震性不足の住宅約1千万戸、全体の2割 2010年3月で

 国土交通省によると、耐震性が不足する住宅は2010年3月で全体の約20%に当たる約1050万戸に上る。国は15年までに10%まで引き下げるとしていたが、昨年6月には20年までに5%と決めた。

 国交省市街地住宅整備室は「地方財政の厳しさはわかるが、新たに補助率を上げるのは難しい」と言う。

 これに対し、地方財政に詳しい森裕之・立命館大教授は「国民の安全は国が守るという姿勢で、国は耐震化を進めねばならない。自治体の財政力に応じて補助率を変える制度も検討されるべきだ」と語る。

(ph)


(2011/05/21) 福島南部から茨城沖なお岩盤にひずみか 米の大学グループ研究

 福島県南部から茨城県までの沖合で将来、東日本大震災と同規模の地震が起きる可能性があるとする論文を、米カリフォルニア工科大のマーク・サイモンズ教授らの研究グループが米科学誌サイエンス電子版に20日、発表する。

 東日本大震災や過去の地震では、この地域の岩盤のひずみが解放されていないとみられるためだ。ただし、プレート同士がゆっくりすべれば、地震を起こさずにひずみはなくなるため、岩盤の状態を監視する必要性を強調している。

 研究グループは、東日本大震災について、全地球測位システム(GPS)や津波計のデータを分析。震源域の南側に位置する福島県南部沖、茨城県沖では、海のプレートが陸のプレートの下にもぐりこむ日本海溝付近に、ひずみが残っている可能性を指摘した。発生時期については「明日なのか500年後かは分からない」としている。

(ew)


(2011/05/20) 汚染水浄化データ公表検討 東電「非公開」一転し

 福島第1原発事故で東京電力は19日、放射性物質で汚染された水を浄化する装置について、どのぐらい放射性物質を除去できたか、データを公表する方向で検討することを明らかにした。

 浄化装置は、フランス原子力大手アレバ社などと契約して設計。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は同日の記者会見で「契約上の理由で、放射性物質をどれくらい取れるかは非公開」としたが、同席した細野豪志首相補佐官が「当然知るべき情報だ」と発言すると、会見後には一転「公開する方向でアレバ社と話したい」と方針を変更した。

 浄化装置は、汚染水を移送している集中廃棄物処理施設の1階に、タンクやポンプなどと一緒に設置。汚染水に薬品を入れて放射性物質を沈殿させ、上澄みを原子炉へ戻して冷却に使う。

 処理能力は1日に1200トン。1〜6号機の原子炉建屋やタービン建屋などには10万トン以上の汚染水があるとみられ、仮に今ある分をすべて処理すると100日近くかかる計算。

 東電はまた、原子炉などから新たに放射性物質が放出された場合の影響を正確に把握するため、敷地内の放射線を測定するモニタリングポストの周辺で、以前の水素爆発などの際に汚染された土壌やがれきを除去する計画を明らかにした。

 比較的低濃度の汚染水の貯蔵先として使うため、19日に福島県いわき市の小名浜港を出港する予定だった人工の浮島「メガフロート」は、波が高いため出発を延期した。

(qm)


(2011/05/16) 1号機冷えている、心配なのは3号機…細野首相補佐官

 細野豪志首相補佐官は15日のNHKの番組で、17日に予定している、東京電力福島第一原子力発電所の事故収束に向けた工程表の更新後も、原子炉安定化の目標期限は維持する方針を明らかにした。

 同原発1号機では工程表発表後、燃料が溶融して圧力容器の底部にたまる「炉心溶融(メルトダウン)」が判明したが、細野氏は「3か月で冷却機能を取り戻し、遅くとも9か月で冷温停止までもって行くスケジュールは守りたい」と明言した。

 一方、1号機の原子炉冷却の方法は、格納容器に水を満たす冠水(水棺)を見直す意向を示し、「汚染水を除染し、真水に近い状態にして、それを戻すことで冷却する大きなサイクルを考えることも含めて再検討が必要だ」と述べた。

 さらに、「1号機はある程度、きっちり冷えているが、むしろ心配なのは3号機だ。必ずしも順調に冷えていない。どう対応するか、頭の中で大きな比重を占めている」と語った。

(sd)


(2011/05/14) 政府地震調査委員会 津波の発生 長期予測へ

 政府の地震調査委員会は、大津波で甚大な被害が出た東日本大震災を受け、津波の長期予測に着手する方針を固めた。地域ごとに将来の津波の発生確率や波高などを推定し、沿岸部の防災対策に役立てる。長期予測は地震ですでに行われているが、津波では初めて。

 津波は大きな地震で海底が動くと発生する。ただ、津波の高さは地震断層の角度や動いた方向、海底や沿岸部の地形などによって大きく左右されるため、地震と比べて予測が難しく、これまで確率論的な長期評価は行われていなかった。

 地震調査委は今回の巨大地震と大津波を想定できなかった反省から、東海地震などの海溝型地震について発生確率の見直しを行う。これと並行して、将来の大地震に備えて津波の長期予測にも乗り出す考えで、今月中にも開く地震調査委・長期評価部会で、予測手法などの検討を開始する。

 地震調査委は阪神・淡路大震災以降、海溝型地震や活断層による直下型地震の発生確率を推定する長期評価を実施。これを基に強い揺れに見舞われる確率を地域ごとに示した「全国地震動予測地図」を平成21年に公表した。新たに作成を目指すのは、この津波版にあたる。

(rt)


(2011/05/13) 福島第一原子力発電所1号機、燃料棒すべて落下の可能性と発表

 東京電力は12日、福島第一原子力発電所1号機の原子炉圧力容器の水位が、当初の想定より大幅に低く、完全露出した核燃料が、容器底部に落下しているとみられると発表した。

 原子炉を冷やすため水で満たす冠水(水棺)作業が進む格納容器内の水位もはっきりせず、水は漏れだした可能性が高い。東電は「圧力容器の温度は100〜120度と安定しているが、冠水作戦は再検討が必要」と説明し、毎時約8トンの注水量を増加させる検討を始めた。

 東電によると、圧力容器の水位は、10日から原子炉建屋内に入った作業員が水位計を調整して判明。これまで水位は、燃料頂部から約1.6メートル低い位置で事故直後からほとんど変化しなかった。そのため、水位計を調整したところ、燃料頂部から5メートル以上低いことが明らかになった。

 燃料は長さが約4メートルであることから、完全に冷却水から露出した状態。東電は、既に燃料の大半は溶けたり、崩れたりして、底部に落下したとみている。経済産業省原子力安全・保安院は、圧力容器の温度も低いことから、「燃料は容器底部にたまった水によって冷やされている」と指摘した。

(as)


(2011/05/10) 中部電、浜岡原発の全炉停止決定 計画停電は回避へ努力 

 中部電力は9日午後に開いた臨時取締役会で、菅直人首相の要請を受け入れ、浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全炉を数日中に停止することを決めた。東海地震による原発事故への不安解消を優先したことに加え、2〜3年後の運転再開へのめどが立ち、菅政権から電力供給などの支援の確約も得られたと判断したためだ。

 水野明久社長が記者会見し、運転停止を発表した。「長期的には、いったん停止し、さらなる安全対策をとった上で運転再開することがお客様、株主にとって利益があると、取締役の意見が一致した」と述べた。

 水野社長は8日に海江田万里経済産業相と電話会談した。そのなかで、防潮堤建設などの津波対策を終え、経産省原子力安全・保安院の評価を得た時には全面再開できることなど5項目を確認した。停止に伴う火力発電所の燃料費増加負担に対して国が支援することも含まれている。中部電は2〜3年はかかるという防潮堤建設を急ぐ。

 中部電の発電電力量に占める浜岡原発の比率は2010年度実績で約15%。これを埋め合わせるため、今後、停止中の武豊(たけとよ)火力発電所(愛知県武豊町)3号機を急きょ稼働させ、東京電力や東北電力への融通をとりやめる。

 それでも、夏場の需要ピークを上回る余裕電力の比率は、7月には、適切とされる8〜10%を大きく下回る2%まで落ち込むため、関西電力など西日本からの融通も求めて計画停電の回避に努力する。

 ただ、火力発電の出力増強に必要な燃料調達は「大変厳しい」(水野社長)。調達量を増やすため中東カタールを訪問していた三田敏雄会長もこの日の取材に「調達できる量や価格はこれから」と述べた。このため、「電力需給対策本部」を立ち上げ、企業や家庭への節電も呼びかけていく。

 一方、中部電は1300億円の営業黒字を見込んでいた12年3月期業績見通しを白紙にした。原発停止分をすべて火力発電でまかなえば、年間2500億円の費用が余計にかかる計算。電気料金を値上げしない場合は、同社初の営業赤字に転落する可能性が高いが、水野社長は「現行料金の中で努力していきたい。値上げは現時点では考えていない」と述べた。

 中部電力が浜岡原発の全炉停止を決めたことを受け、菅首相は9日、記者団に「電力が足らなくならないよう力を入れたい」と話した。

 海江田経産相は臨時の記者会見で「多くの困難があったと思うが、迅速に対応していただいたことに深い敬意を表したい」と述べたうえ、「金融支援などを最大限検討する」と表明した。浜岡原発停止後の周辺自治体への交付金についても「2年間はこれまで通り交付され、2年後以降も減額されない」と明言した。

 一方、浜岡原発以外の現在運転中の原発の継続や、定期検査中の原発の再開については「安全上支障がないと考える」とした。

(mc)


(2011/05/08) 浜岡原発 停止の判断持ち越し 電力不足や地元雇用などで

 中部電力は7日午後、名古屋市内の本店で臨時取締役会を開き、菅直人首相が要請した浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の原子炉3基の全面停止について協議した。中部電は「首相の要請は重い」(幹部)としており、定期検査中の3号機に加え、稼働中の4、5号機も津波対策が完了するまで停止する方針を固めている。ただ、原発を全面停止した場合、夏場に電力不足に陥る懸念があるほか、燃料調達コストの大幅な上昇も必至。このため、この日の取締役会では「顧客や原発が立地する地元、株主などへの影響も大きい」(幹部)として全面停止の最終判断を8日以降に持ち越した。

 7日の臨時取締役会は水野明久社長らが出席し、午後1時から約1時間半行われた。会議では運転中の4、5号機と定期検査中の3号機をすべて停止した場合の夏場の電力供給や、原発の代替として増強する火力発電の燃料確保の見通し、経営に与える影響などを議論した。

 中でも、夏場の電力供給問題は深刻で、合計出力が約360万キロワットの浜岡原発の3基を全面停止すると、想定される夏のピーク時の最大消費電力(2560万キロワット)に対する供給余力は3%程度まで落ち込む。このため、会議では電力不足を起こさないか慎重に判断する必要があるとの意見で一致した模様だ。

 一方、原発停止に伴う地元自治体や下請け業者への影響も話し合われた。菅首相の突然の浜岡原発停止要請は、地元自治体などにも戸惑いの声を広げている。停止中の雇用問題などもあり、中部電はこの点からも議論を徹底する必要があると判断した。

(rq)


(2011/05/07) 首相、浜岡原発の全原子炉停止を要請 防潮堤完成まで

 菅直人首相は6日、東海地震の想定震源域である静岡県御前崎市にある中部電力の浜岡原子力発電所について、定期検査中の3号機のほか現在稼働中の4、5号機も含めてすべての原子炉停止を要請したと発表した。津波対策などで中部電が2〜3年後の完成を目指している防潮堤の新設までを期限とした。これらの要請は海江田万里経済産業相を通じて中部電に伝えた。

 中部電は判断を保留している。首相の政治判断で稼働中の原発が止まれば、初めてのこととなる。

 首相は同日夜、首相官邸で記者会見して停止要請を明らかにし、「国民の安全と安心を考えてのこと。浜岡原発で重大な事故が発生した場合、日本社会全体におよぶ甚大な影響を併せて考慮した」と強調した。

 首相は停止要請の理由に東海地震を挙げ、「30年以内にマグニチュード(M)8程度の地震が発生する可能性が87%という数字も示されている」と説明。特有の事情があるとの認識を示し、浜岡以外の原発への対応には言及しなかった。

 停止期間については「防潮堤の設置など中長期の対策が完成するまでの間」とした。中部電は海岸沿いの高さ10メートル以上の砂丘と原発の間に、高さ15メートル以上の防潮堤を2〜3年後をめどに新設する予定だ。

 首相は停止要請までの経緯について「先の震災とそれに伴う原子力事故に直面し、私自身、浜岡原発の安全性について様々な意見を聞いてきた。熟慮を重ねた上で内閣総理大臣として本日の決定をした」と語った。今後の中部電管内の電力不足対策については「需給バランスに大きな支障が生じないよう政府として最大限の対策を講じていく。全国民の理解と協力があれば夏場の電力需要にも十分対応できる」と語った。

 ただ、首相には法律上、原発の運転停止を指示する権限がない。首相も「指示とか命令という形は現在の法律制度では決まっていない」と認めた。首相は、中部電側が要請を断った場合の対応については「十分にご理解いただけるように説得して参りたい」と述べるにとどめた。

 政権が原発停止要請に踏み切った背景には、浜岡原発から20キロ圏に東海道新幹線や東名高速などが走っていることや、東京電力福島第一原発の事故を契機に国民世論に浜岡原発への危惧が高まっていることなどがある。川勝平太静岡県知事ら地元自治体の首長も、新たな安全基準を満たさない段階での浜岡原発の稼働に難色を示している。

 首相は4月下旬から側近らと調整を進め、この日、海江田氏や枝野幸男官房長官、仙谷由人官房副長官、細野豪志首相補佐官らと会談し停止要請を決めた。

 中部電力の水野明久社長は「経済産業大臣より、本日午後7時に、浜岡原発の運転停止に関する要請を受けた。当社としては要請内容について迅速に検討する」とのコメントを出した。

〈浜岡原発〉
 中部電力では唯一の原発で、静岡県御前崎市にある。1〜4号機は福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)、5号機は改良型沸騰水型炉(ABWR)。1号機(1976年運転開始)と2号機(78年開始)は2009年1月から廃炉の手続き中。現在、代替として6号機の新規建設の計画がある。中電が発電したり他社から受けたりした電力量実績は、10年度速報値で1423億キロワット時、そのうち浜岡原発の発電電力量は153億キロワット時と、1割強だった。

(xr)


(2011/05/05) 原発の安定冷却システム、5月中にも稼働 中旬から作業

 東京電力は4日、福島第一原発1号機について、今月中旬から原子炉を安定した状態で冷やすシステムづくりに向けた作業に入ると発表した。格納容器内の水を外に引き出して仮設の装置で冷やして戻す仕組み。今月末にもシステムを稼働させたいという。2、3号機も7月までに同じ仕組みを導入する予定。

 東電によると、1号機では核燃料の入った原子炉を格納容器ごと水に浸す「水棺(すいかん)」と呼ばれる作業が進められている。

 今回の冷却システムは、格納容器内に窒素を注入する配管を利用して新たな配管をつなぎ、核燃料で熱せられた水を外に取りだすというものだ。

 従来の運転で使われていた冷却システムの復旧については、高い放射線量の部屋に主要な機器があり、作業が困難なことなどから復旧は難しいと判断した。

 冷却の仕組みは2段階。まず格納容器の水は原子炉建屋の機器搬入口に設置した熱交換器にポンプ(毎時100トン)で送られ別のルートの水に熱を伝えて冷やす。熱を受け取った水もポンプ(毎時200トン)で建屋横の装置に送られ大型ファンによる風で冷却する。これまでの毎時数トン規模の注水と比べ格段に冷却能力は高まる。

 空冷式の装置の設置は8日に着手。熱交換器の設置や配管工事は、16日から始める。工事を終えて、冷却装置が稼働するのは早ければ5月下旬の見通し。これ以降、数日間で炉内の水の温度が100度未満になることを目指すという。

 一方、熱交換器の設置には、高い放射線量になっている原子炉建屋内での配管設置などの作業が必要だ。放射線量を少しでも下げるため、建屋内に浮遊する放射性物質の除去装置の備え付けに向けた準備作業が4日も行われた。

 5日には装置を作動させ、8日から作業員が建屋に立ち入れるようにし、原子炉建屋内の計測機器を修理、点検するという。

2、3号機も同じシステムを設置するが、いずれも格納容器が壊れて水がたまらない可能性が高い。壊れた部分をセメントなどで埋める作業も必要になるとみられている。

(oy)