ゆめまくら ばく
 
りたーん
 

 
夢枕 獏
 
初めての出会いは漫画版の「闇狩師」だった。
俺が高校生の頃か。
当時、いわゆる「バイオレンス・ホラー」が流行っていた。
友人が菊池秀行のFANで、面白いから読んで見ろといわれて
借りて読んだが俺の頭の中にはさっぱり妖精が飛んでいた。
故に「バイオレンス・ホラー小説」とは疎遠だった。
当時は筒井康隆とか栗本薫とか大藪晴彦を読んでた気がする。
 
しかし、「バイオレンス・ホラー漫画」は好きだった。
「魔人伝」「火炎魔人」あたりが大好きだった。
そして漫画版の「闇狩師」と知り合った。
漫画が面白かったので原作も読んでみるべい、となった。
面白かった。
そこからちょくちょくと夢枕さんの作品を読み始めた。
そして決定的に「この作家さん、好きだ。」と思うようになったのは
「餓狼伝」だった。
ジャンルで言うならば格闘小説だ。
格闘描写も素晴らしいのだが、
私は登場人物の「いきざま」に対する描写の濃さに引かれた。
そこから色々と読むようになっていった。
個人的には「バイオレンス・ホラー」よりも
他のジャンルの方が、「いきざま」の描写が濃くて好きだった。
 
物語の中心を担う登場人物のほとんどは、
病的なまでに何かに取り付かれている。
それは釣りだったり、将棋だったり、格闘技だったり・・・
それでしか自分を表現することが出来ない不器用な哀しい男達だ。
故に異様なまでに打ち込む。
そのいきざまに俺様は心打たれるのである。
読んでいると泣けてしまうのだ。
 
最近、ようやく「神々の山嶺」を読み終えた。
山に上ることでしか自分を表現できなかった男の物語だ。
泣けた。

新刊が出る度にまた泣かされるんだろうなぁ。



 
 りたーん