『サガってなんだ?』 by KOJI  「ロマンシング サ・ガ」、ロマンシングってのはなんか意味わかるけど、しかし 「サガ」ってなんだ?なんて思ってる人が居るかも知れないので、少々解説らしきモ ノを知ったか振りして書き散らかせて戴きます。宜しくおつきあいの程を・・・・  「サガ」って言うのは"Saga"でして、古代北欧語だそうで、「語り物、語られた出 来事、物語」って意味だそうです。ってことは自動的に古代北欧語で書かれた物語は 全部「サガ」ってことに成ってしまう訳ですが、普通「サガ」といわれるものは、12 世紀から13世紀ぐらいにアイスランドで成立した散文の史伝的物語群をさすそうです。  アイスランド人っていってもいまいちイメージがわかないと思うのですが、解りや すく乱暴に言ってしまえば、「ヴァイキング」ですわ(^-^; もちろん全ての「ヴァイ キング」がアイスランド人だったわけじゃないんでしょうが・・・。もともと、人の 居なかったアイスランドに故国の圧政から逃れたノルウェー人の400家族が植民したの がそもそものはじまりで、極寒の地で生き抜いて行くための手段のひとつとして略奪 の旅にも出たわけですね。で、さまざまな苦難を経て国として落ちついたのが丁度12 世紀から13世紀で、そのころに神話や、植民の歴史、英雄の生涯等の膨大な物語群が 散文で生み出されました。これが、「サガ」です。  面白いのはその文体で、飾り気が全くなく、事実を淡々と語る文章と会話で成り立 っており、それがかえっていきいきとその時代の人々や社会を浮き彫りにしています。  だいたいコンピュータゲームのRPGにはまった人は、テーブルトークのRPGにも興味 を持ち、コナン・ドイルの騎士ものや、トールキンの指輪物語などへと、その興味を さかのぼらせて行くのですが(ご他聞に漏れず、私もそのくちです(^-^;)、やっぱり モノホンが読みたくなって、マロリーの「アーサー王の死」やフランスのシャルルマ ーニュもの等に手を出して、その文体の古さや、キリスト教臭の強さ、キャラクター の人間性の無さに唖然としてしまうわけです(^-^;。 その点「サガ」は驚くほど現代 の文学に近いものを持っているといえます。  たいてい「サガ」は主人公の祖父の若い頃から話が始まります。で、祖父の結婚を 経て、主人公の父親の誕生、成長、結婚が語られ、読み手が忘れた頃に主人公が誕生 します(^-^; そこまでの間に様々な因縁、愛憎、歴史が語られるわけです。つまりサ ガの主人公達は、たとえそれが追放者であろうとも、常に社会や歴史の中の個として 語られるわけで、それが絵空ごとでない生きたキャラクターを描き出すとともに、そ の「時代」を見事に伝えてくれるのです。そんなわけで、個人的には、神話的なもの よりも史伝的な題材をあつかった「サガ」のほうが、より魅力的だと思っています。  残念ながら僕らが簡単に手に入れられる「サガ」は数が少ないのですが、幸いにも、 筑摩書房からちくま文庫の中世文学集IIIとして北欧神話の「エッダ」と一冊にまと まって「エッダ グレティルのサガ」が出ています。これが値段も手頃で、比較的手 に入れやすいでしょう。白い氷原、渦巻く暗雲と猛り狂う海原、ヴァイキングが斧を ふるい、ベルセルクが雄叫びをあげる「サガ」の世界に少しでも興味をもっていただ けたのなら、是非御一読をお勧めします。