『What is "KAIKETU" 怪傑ロビンと仲間達』 by KOJI  かって・・・・・ スクリーンがまだ銀幕と呼ばれ パソコンがSFの小道具でしかなかった頃、 人々の夢の中の暗闇には、 無実の罪で捕縛された人々や、 高い塔に幽閉された姫君を救うため、 神出鬼没の「怪傑」達が、夜毎跳梁していた。  ・・・というわけで(笑)。  ロマサガ3本編で大活躍した、「怪傑ロビン」。彼のキャラクターは、様々なヒー ロー達が元になって形づくられているといわれて居ります。  此のコーナーでは、そんな「元ネタ」の中から特に古いものを採り上げて、解説し てみようというコーナーです。  では、早速いってみましょう!  「怪傑ゾロ」  実は、「怪傑ゾロ」を知っている人が「怪傑ロビン」を見た場合、一目で「ゾロ」 のパロディだと判ります。それほど両者は似てるんです。  1、その容姿  怪傑ロビンのR頭巾を、黒のソンブレロ(メキシコ風の物ではなくスペイン風の小 振りの物)に変えて、ズボンを細身の黒ズボンにして下さい。それがゾロです。  2、その出没場所  18世紀後半の、スペイン領となっているアメリカ(正確には未だアメリカじゃない のか?)カリフォルニアはロスアンジェルス。  当時の新大陸は、未開人(?)への布教に燃えた宣教師や受け継ぐべき領地のない 下級貴族の次男、三男やらが夢を求め、血と汗と涙で開拓してきた土地。しかし町と して大きくなってくると、本国スペインより任命された総督や軍隊が派遣されてくる。 開拓者側としては、後から来て大きな顔をされたんじゃたまらないし、軍隊側は、何 の因果でこんなところまで都落ちせねばならんのじゃと、やけくそになっているしで、 ひどい軋轢が生じていたのです。  3、その行動  インディアン(ネイティブ・アメリカン?)、修道僧、貧しい人々など、「虐げら れている者の味方」と称し、迫害した者へ天罰を下す義賊。  総督や軍隊からは、「カピストラノの厄病神」と恐れられる強盗。  大抵、黒マントを翻し黒馬で疾走しているか、笑いながらチャンバラしているかの どちらかの場合を多く見かけます。  4、その得意技  THE MARKE OF ZORRO「ゾロのしるし」と呼ばれる"Z"のイニシャルをレイピアで刻 みつける。「これは、ゾロがやったことだよ」という意味のサイン。壁などに描かれ ることが多いようです。  人相手の場合は、敵の、前後左右にステップ踏んだ千変万化の突き込みや、フェイ ントからの秘術を尽くした連続攻撃を、笑いながら散々パリイしまくったのち、あま りの腕前の差に愕然とする相手の剣をディザームで空中高くはじきとばした直後、返 す刀で一瞬のうちに刻み込む。というのがパターンとなります。がっくりと膝をおと す悪役、マントを翻し高らかに笑いながら何処へともなく馬で駆け去るゾロ・・(^-^;  刻む箇所は、相手の悪役度によって変化。小悪党には、太鼓腹、尻、サスペンダー を切ってズボンを落とす、等のユーモラスな効果を狙ったものが多いが、大悪党の場 合は頬、額等に血文字で描かれる。  当時の決闘は「血を見せた方が負け」というものなので、基本的には「非殺」。  5、その正体  リーエル街道1の臆病者、怠け者として日夜人々の笑い話のネタと成っている、ド ン・ディエゴ・ベガがその正体。彼は、大農場主の息子で大金持ち、容姿もなかなか という恵まれた身分でありながら、詩と音楽にしか興味を示さず、近隣の女性の顰蹙 を買っている贅沢者です。  6、そして・・  怪傑ゾロは、もともとは小説でして、作者はジョンストン・マッカーレー創元推理 文庫から日本語訳がでてました。なぜかタイトルは「快傑ゾロ」になっていますが、 翻訳者も混乱しているようで、後書きのなかでは「怪傑ゾロ」と本来のタイトルで記 述しております。なんと書かれたのは、1920年!!ふるいですね〜。  因みに「ゾロ」とは狐のことです。  有名になったは、ダグラス・フェアバンクス主演で映画化されてからでしょう。  192X年、もちろん白黒無声映画。好評につき「ゾロの息子」という続編もつくられ たそうです。  このダグラス・フェアバンクスはハリウッドに剣戟映画というジャンルを確率した ひとで、ゾロもそのひとつ。この人はのちに映画芸術科学アカデミーを設立し、アカ デミー賞を制定した、ハリウッド史上に燦然とひかりかがやく永遠の大スターです。 後に英国王室からSirの称号をもらったっていうから、本物の騎士になっちゃったんで すねー。  怪傑ゾロは、1940年にタイロンパワー主演でも映画化され、その後、ディズニー社 がガイ・ウイリアムズ主演で長編TVドラマを作っています。私は、幼児期にこれを 見てるんだと思います。従って、前述したゾロの様子は、すべてガイ・ウィリアムズ 版に基づいたものであることをお断りしておきます。  あと、僕らが今見ることの出来る可能性の高いゾロ映画は1975年ぐらいの「アラン ・ドロンのゾロ」でしょう。たまにTVの映画劇場でもかかるし。ただしこのゾロは 史上初の髭無しゾロです(笑)。ほかのゾロには、「風と共に去りぬ」のレッド・バ トラーのようなダンディな口髭があるのだ(笑)。  「怪傑ハリマオ」  では、何故、「怪傑ロビン」は、帽子で無くRのレターが入った頭巾を被っている のでしょうか?。これの元ネタは「怪傑ハリマオ」なのです。  50歳以上のお父さんに「怪傑」と問えば必ず「ハリマオ」と答える(^-^;。 では、 いったい彼はどんな人物だったのでしょう・・・  1、その容姿  怪傑ロビンのR頭巾を白無地にしたものをかぶらせ、黒いセルフレームのサングラ ス、エスニックな柄のヘンリーネック半袖Tシャツ、白いズボン、ってとこかな?マ ントはありません。  2、その出没場所  TVドラマや、漫画(石森章太郎氏が若い頃に書いたモノで数年前に文庫化されて 再版していました。)などの「冒険活劇」としての「怪傑ハリマオ」では第2次大戦 開戦直前、東南アジアの「某小国」ってことになってます。えっ?冒険活劇としての ってどういう意味かって?それはまた後ほど・・・・  3、その行動  東南アジアの小国の独立運動を助けるため、敢然とたちあがった謎の日本人青年。 白い頭巾と黒いサングラスに身を隠し、民衆の平和を守るため、欧米列強の手先となっ た奴隷商人や武器商人と戦います。  4、その正体  「怪傑ハリマオ」は、1960年の大人気TVドラマでした。今でいえば、ドラゴンボ ールやセーラームーン以上でしょう。丁度その頃幼年期をすごしたと思われる年齢の 方に訊ねてご覧なさい、大抵ご存じです。  しかし、その方々の大半がたんに「冒険活劇のヒーロー」として「ハリマオ」を認 識しておられるのでは無いでしょうか。  実は、「ハリマオ」は実在の人物です。福岡県出身の谷豊氏という人物がその正体 で、マレーで床屋を営んでいた実弟の一家が襲われて妹が惨殺されたのを機に、単身 マレーに渡ることになります。しかし、当局(当時のマレーは英国の統治下にあった) の対応の酷さ(?)に怒り心頭に発し、自らの手での復讐を誓い、無法者となって強 盗団を組織し、政府に対しても抵抗活動を行ったそうです。人読んで「マレー(マラ イ?)のハリマオ(虎)」。おそらく太平洋戦争勃発前後の時代には、日本の英雄的 な扱いをされていたものとおもわれます。  ところが、事実は小説より奇なりって奴で、最近になって谷氏は日本陸軍の特務機 関(S機関)員であったことが判明しています。日本軍のスパイだったのです。おそ らくマレーで非合法活動を行ううちに軍からの接触があったのでは無いでしょうか。 日本軍としては、マレー進攻に先駆けて住民の反政府気運を高めるため、また日本国 内に対して戦争の正当性を印象づける為には、「マレーのハリマオ」を民衆の英雄に 祭り上げるのがもってこいだったのでしょう。  「ハリマオ」の研究本は数々書かれているようです。私も此の稿を書くに当たって、 いろいろとさがして見たのですが、残念ながら手に入りませんでした。したがって、 上記の文章には不正確な記述が含まれている可能性があることをお断りしておきます。 「ロビン・フッド」  さて、「怪傑ロビン」の元ネタ。ここまでは主にその容姿について書いて来ました がロビンという名前、これはどこから来ているのでしょうか?  ロマサガにおいて「ロビン」という名前は「2」のシティシーフが初お目見えとなっ ております。「ロビン」とは「こまどり」でシティシーフの名前は鳥の名が元になっ ております。では、なにゆえシティシーフ男は鳥の名前なのでしょうか?  ここは逆に考えるべきでしょう。ファンタジーで盗賊といえば「ロビン・フッド」、 「ロビン」は「こまどり」、なら、シティシーフの名前は鳥にしようか、・・てな順 番できまったのでしょう。っておもうのは俺だけだろうか・・・  ええい、なにはともあれ「ロビン・フッド」じゃ〜(^-^;  1、その容姿  これは、「怪傑ロビン」とはまったく異なります。最近はケヴィン・コスナーの映 画で見た人が多いと思いますが、これは時代考証に基づいた衣装でして、僕らのイメ ージの「ロビン・フッド」は、緑のチュニック、暗緑色のタイツにブーツをはいて、 何故かチロリアンハットに鳥の羽をさしたものをかぶり、肩から斜めに矢筒を掛けて、 手にはロングボウといった感じでした。これはいったいどの「ロビン・フッド」映画 の衣装なんだろ?(^-^;  2、その出没場所  中世イングランドは、ノッチンガム州とダービー州にまたがったシャーウッドの森。  3、その行動  代官の圧政に抵抗して、力持ちの大男リトル・ジョンや大食漢の生臭坊主タック、 赤のウィル、などの仲間達とともに森(中世ヨーロッパにおける「森」のイメージは、 日本における人に対して友好的なそれとは違い、人間の世界を浸食する「敵」であり、 一歩踏み込めば道に迷い、何が出てくるか判らない「暗く閉ざされた危険な場所」な のです。)にたてこもって、ゲリラ活動を行います。  つまり、「ゾロ」と同じく、代官側からみれば「盗賊」「強盗」であり、民衆側か ら見れば「義賊」ということになります。  大抵のロビンものでは、代官はロビンの恋人のマリアンに横恋慕しており、さらわ れたり取り戻したりするわけですな(^-^;  4、その得意技  なんと言っても、古今無双の弓の腕前。19世紀に書かれた「アイヴァンホー」とい う本で、「ロビン・フッド」らしき人物が、ロックスリーと名乗って弓の腕くらべを するシーンが出てきます。的の真ん中を射抜いて見せる相手に対して、ロックスリー は慌てず騒がず、その的につきたっている相手の矢に命中させ、縦に真っ二つに引き 裂いて的につき立たせるのです(^-^;  5、その正体  英国には、トラディショナルな「伝説的英雄」が目白押しですが、そのなかでも古 い時代における、最もポピュラーな二大巨頭が「アーサー王」と「ロビン・フッド」 です。「アーサー王」が支配者としての歴史的ヒーローであるのに対して、「ロビン ・フッド」は抵抗者としての民衆的ヒーローになります。  実は「ロビン・フッド」は実在の人物であるのかどうかよく判っていません。しか し、「1230年、ヨークシャーの州代官がロビンなるアウトローの財産競売にて、32シ リング6ペンスを得た。」という記録が、財務局に残っていまして(さすがは、イギリ ス(^-^;)、これが彼が実在したという根拠と主張する説もあります。  「ロビン・フッド」は昔からいろんな書物に出てきます。14世紀に書かれた「農夫 ピアス」や15世紀の「スコットランド年代記」にも登場しておりますし、チョーサー の「カンタベリー物語」の中にも語られています。つまり、中世の時点で既に伝説の 英雄だったわけですな(^-^)  そんな昔からのヒーローですので、作品によってその正体は違うんですよ〜(T^T) 前に書いた「アイヴァンホー」の中でロックスリーという名前で登場していることか ら、その正体を、リチャード獅子心王に仕える追放された騎士ロックスリーとしてい る作品が多いのですが、今もってその正体、活躍した時代共に正確には確定されてお りません。  6、そして・・・  「ロビン・フッド」の映画は数知れずあります。「ゾロ」の項で紹介したダグラス ・フェアバンクスをはじめ、エロール・フリン、ショーン・コネリー、などなど。  ショーン・コネリー版の「ロビンとマリアン」では中年になって再会したロビンと マリアン(オードリー・ヘップバーン)が繰り広げる悲喜劇が描かれます。最近では ケヴィン・コスナーのものがありました。パロディ版では、メル・ブルックス監督の 「ロビン・フッド−キング・オブ・タイツ」。あと、あまり有名ではありませんし、 作品としてはラストが今一なのですが、CBS/FOXビデオからでている、ジョン ・アービン監督パトリック・バーギン主演の「ロビン・フッド」はロビン・フッドと その時代に関する世界的権威である、ケンブリッジ大学のJ・Cホルト教授が時代考 証をしておりますので、その衣装風俗、社会の様子など、資料的な価値が高いと思わ れます。興味のある方にお勧めしておきます。  本で手に入れやすいものは、アメリカ人のハワード・パイルが昔からイギリスにつ たわる民謡や伝説の切れ切れを初めてつなぎ合わせて長編物語にしたてた「ロビン・ フッドのゆかいな冒険」が岩波少年文庫で全2巻としてでています。これは、その後 の様々なロビンフッドものの底本になっている作品のようです。  また、最近ハヤカワ文庫からジェニファー・ロバースンの「シャーウッドの森の物 語」シリーズ全3巻が出ています。これは、ついこのあいだ書かれた小説ですので、 いわゆる活劇モノではなく、女流作家らしい深い心理描写に富んだ作品にしあがって います。古い社会因習に凛として立ち向かうマリアンや、十字軍遠征の戦争体験で、 癒せぬ心の傷を負ってしまった悩めるロビンが新解釈のロビン・フッド物語を紬だし てくれます。森川久美さんのカヴァーイラストも(少々少女漫画風ではありますが) 大変美しく仕上がっています。こちらもあわせて御一読をお勧めしておきます。 「怪傑ロビン」  てなわけで、話はやっと「怪傑ロビン」に戻って来るわけですが・・(^-^; 今まで に挙げて来た「怪傑」達以外にも「怪傑ロビン」の元ネタになっているヒーロー達は まだまだ居ると思われます。  「怪傑ロビン」のマントの下の服装は、何となく望月三起也の漫画「ワイルド7」 の制服を思わせますし、「怪傑ロビンのいるかぎり、この世に悪は栄えない!」とい う台詞は、タツノコプロのアニメ、タイムボカンシリーズの「ヤッターマン」の登場 時の決め台詞そのものです。なにより、あのテーマソングはタイムボカンシリーズに おける山本正之氏の曲のパロディであることは広く知られております。  このように、数多くのヒーローモノの集合体である「怪傑ロビン」は、ロマサガ3 のなかにおいて特異なキャラクターとなっております。ロマサガ3の他のキャラクタ ー達は、それぞれ自分達の置かれた境遇のなかで生きていく過程において結果的にヒ ーローとなるのであって、決して自ら望んでヒーローたらんとしているわけではあり ません。唯一「怪傑ロビン」のみが例外なのです。彼が明らかに他のキャラクター達 から見ると「浮いた」存在であり、コメディリリーフ的な存在に描かれているのは、 ロマサガ3が「陳腐なヒーロー物語」とは一線を斯くするものであることを象徴する ためなのではないでしょうか。・・・・・・・・皆さんはどう思われますか?  「まだまだ残る謎(^-^;」  実は当「まにあっくガイド」作成委員会においても不明な元ネタがまだまだありま す(^-^;  「天知る、地知る、ロビン知る」この元ネタが判りません。「怪傑ズバット」じゃ ないのか、とか「仮面ライダーストロンガー」の「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ、 悪を倒せと俺を呼ぶ」じゃないのかとか、様々な意見が出ましたが確定できてません。 「元ネタ」とはちょっと違いますが、12世紀に中国で編纂された「小学」という書物 を紹介することは出来ます。「小学」の「何謂無知」という項目に「天知神知我知子 知」という箇所があるそうです。内容としては、役人が高官に「夜なら知っている者 はいない」として賄賂を贈ろうとしたところ「天が知っている、神が知っている、そ して私とあなたが知っている。どうして誰も知らないと言えるのか」と切り返すされ るという場面として登場するそうです。  「君たちが幸せならそれで十分だ」この台詞も出典が不明です。映画版「スーパー マン」にあったような気がするとか、ジョージ秋山の「パットマンX」かもしれない とかいろいろ思うのですが、わかりません(^-^;  このあたりの「元ネタ」がおわかりのかたは、是非「まにガイド」あてに御一報下 さい。もし、改訂版がでることにでもなれば、掲載させていただきますよ〜(^-^)/