リング 99/02/22 更新



このページは工事中です。今後、文章を追加し、見やすくする予定です。



(1) リングを初めてみる時の注意事項
(2) ストーリー分析
(3) 恐怖シーン


(1) リングを初めてみる時の注意事項

(1-1) 予備知識なしで見る

本文の「(2) ストーリー分析」以下は、映画の内容に触れていますので、これから見る人は読まないで下さい。原作は私は読んでいないのですが、これも読まないほうがいいかもしれません。

(1-2) ビデオで見ようとせず、上映している映画館を捜して見に行く

ビデオで最初に見た人は、映画館で見た人に比べて受けるインパクトが薄いようです。ですから、何とか上映している映画館を見つけて、そこで見ましょう。
でも、それはこれからは難しいでしょうから、次にビデオで見る場合の注意事項です。

(1-3) ビデオで見る場合

(2) ストーリー分析

(2-1) メインタイトル

タイトルバックの夜の海面から、テレビのホワイトノイズのアップへとオーバーラップし、ナイター中継の画面へと変わる。夜の海もテレビの粗い画面も、どちらもただ映っているだけで不気味さを感じさせる。この時の音も、気持ち悪さを感じさせるもので、ここから「リング」という、作り手たちが観客に挑んだ「心理戦」が始まる。

(2-2) プロローグ、9月5日 日曜日

プロローグのシーンは、観客の心を映画に引き込むために、短い時間の間に展開が二転三転する。雅美(佐藤仁美)が呪いのビデオの噂話を楽しそうにしているのに、大石智子(竹内結子)の表情が曇る。そして、自分もそのビデオを見て、今日そのために死ぬかもしれないことを雅美に話し始め、雅美も一転恐怖を感じるようになる。と思ったら、それは智子の作り話で、なあんだということになる。そこに電話のベルで智子の表情が凍りつき、やはり本当にビデオを見たとわかる。その電話は呪いの主のものかと、恐る恐る雅美が受話器を取るが、それは智子の親からであった。ここで緊張がとけるが、突然テレビが勝手につき、ナイター中継が流れる。智子がそれを消し台所に戻ると、背後に気配を感じて振り返るとそこには・・・。ということで、約6分間の間になんと6回も緊張状態と弛緩状態の間を行き来する。さらに、ビデオを見た直後に電話がかかってくること、ビデオを見た1週間後の同じ時刻に死ぬこと、呪いのビデオの噂がかなり広まっていることなどの、「リング」のキーとなる情報の多くがここで示される。短い時間でこれだけのことをやってのけている、全く見事な導入部である。 竹内結子と佐藤仁美という、若手実力派の2人の共演というのも憎いキャスティングである。

(2-3) ビデオを見るまで、〜9月13日 月曜日

ここでは、さまざまなエピソードで物語にリアリティを出し、プロローグで示された呪いがまぎれもない事実であることを観客に印象づける。同じような呪いのビデオの噂話をする女子中学生が3人現われ、噂の広がり具合を更に感じさせる。智子と一緒にビデオを見た3人もやはり死んでしまったことから、見た人は例外なく死ぬということ。お通夜での会話で、智子の遺体を母親が見ようとしなかったり、その場にいた雅美が気が変になってしまったこと、また智子と女友達の死に顔のすごさから、想像もできないほど凄い死に方であること。智子たちがビデオを見た伊豆の貸別荘で撮った写真の中の4人の顔が全部ブレていて、呪いの確かさを強調していること。そして、とどめはこの世のものとは思えないような呪いのビデオそのものである。鏡に向かって髪をといているところの、古い映画を思わせる質感が特に不気味で、それ以外にも意味不明なものが次々と映し出され、理由ははっきりしないが生理的に嫌なものを感じさせることで怖がらせるという、この映画の特徴を最もよく表しているものである。ビデオを見てしまった直後、浅川玲子(松嶋菜々子)はぼう然としてしまうが、自分が呪いを かけられ、1週間後に死ぬ運命にあることを彼女が素直に実感してしまうのと同様に、彼女のそうした態度に何の疑いも持たない状態に観客もなってしまっている。この時点で映画が始まって約30分で、これだけの時間をかけて呪いの存在にリアリティを与えている。

(2-4) それ以降、9月14日 火曜日 〜 9月22日 水曜日

これ以降の展開は、それまでのような手の込んだものがなく、基本的に1週間という制限時間がある謎解きのストーリーという、極めてありふれたものである。あとは、30分かけて築いたサスペンス映画としてのお膳立てを生かし、その緊張感を維持するために時々ホラー描写を入れればよい。このホラー描写がメインの見どころとなっていく。

(2-4-1) 霊能力者

高山が最初に浅川の部屋に入ったとき、何かの気配を感じたような仕草をしたり、ビデオを見ることに恐怖を感じないのだが、これはその後すぐ、高山がベンチで何かを読んでいるときに、彼の目の前に白い靴の女が立って、彼女に向かって心の中で「お前なのか。お前がやったのか。」と言うところで、彼に霊能力があるからであることがわかる。この霊能力者という設定は、展開を速くするための映画オリジナルのアイデアなのだが、確かに別れた男に助けを求めるのも、高山が戸惑うことなくビデオを見るのも、この後の謎解きで理論的なプロセスを経ないで新事実を次々とつかんでいくのもその設定の効果で、結果的に展開が速くなっている。

(2-4-2) 親子関係

高山竜司(真田広之)は、浅川との最初の会話で「陽一はもう小学校か」というが、呼び捨てにすることから陽一の父親らしいことがわかり、最近会っていないことから、浅川と高山は別れたらしいことがわかる。浅川と高山と彼らの息子陽一との親子3人の関係は、彼らの間の愛情を描くというよりは、あくまで謎解きの動機付けを強くしたり、ホラー描写をより怖くするための設定に過ぎないと考えた方がよい。それが最もよく表われているのが、浅川がビデオの謎を追うことに専念するため、息子の陽一を群馬の実家に預けに行って1泊するとき、夜中に目を覚ますと隣で寝ているはずの陽一がいなくて、となりの部屋のふすまを開けると、そこには例のビデオの最後のところが映ったテレビを前にして、陽一が座って見ているというシーン。ここは、自分の息子も巻き込んでしまったという思いが恐怖を強めている、「リング」でも1、2の名シーンである。

(3) 恐怖シーン

日付, 場所 恐怖シーンの内容 コメント
9月5日 日曜日, 智子の家 智子が一人で台所にいると、居間のテレビが勝手につく。 この竹内結子と佐藤仁美のシーンは、これといった怖い描写はないのだが、(2-2)で述べたように息もつかせぬ展開で、最後はびっくりさせて終わる。
テレビを消した後、智子は雑音を聞いて背後に気配を感じ、振り返ると
そこに何かを見て驚いた智子の顔。それがストップモーションになり、白黒の反転した絵になる。
お通夜, 智子の家 智子の家でお通夜が行われているとき、陽一が階段を下から見上げると、誰かが裸足で階段を駆け上がっていくのが見える。でも、二階には誰もいない。
お通夜のシーンで怖かったのは、「(母親が智子の)お棺をいっぺんも開けようとしない」「一緒だった子(の雅美)がおかしくなって入院して、テレビのある所に行かない」などの会話の内容である。
TV局 智子の友達ツジヨウコとノミタケヒコが車の中で慕いで発見されたところを撮影したビデオで、車のドアを開けたときヨウコが車の外へと倒れる。普通の再生速度ではわからないが、コマ送りすると彼女の恐ろしい死に顔が見える。 コマ送りの使い方が上手い。
後日, 智子の家 浅川が後日智子の家を訪ねたとき、二階に上がると誰かのはしゃぐ声が聞こえる。でも、二階には誰もいない。 .
智子の母親の回想シーンで、智子の恐ろしい死に顔。母親は相当ショックを受けていて、死に方のすさまじさが想像できる。 .
同日, 写真屋の前 智子が伊豆で撮った写真を見ると、4人全員の顔がブレているものがある。普通そんなことはありえないので、それが呪いの仕業であるとしか思えない。 これは「オーメン」が元ネタと思われるが、「リング」での見せ方はスマートである。
9月13日 月曜日, 伊豆の貸別荘 呪いのビデオ、全カット
  1. 井戸の中をのぞき込んでいる男を、井戸の底から見たところ
  2. 和服の女が鏡に向かって髪をといている
  3. 一瞬鏡の位置が画面の左から右に移り、鏡の中に髪の長い女の子が立っているのが映る。
  4. 鏡が画面の左に戻り、女の人が女の子の方を見ながら髪をといている。
  5. 新聞の記事。字が踊っている。
  6. 白黒の粗い画面になり、這いつくばった人々が映される。
  7. 頭巾のようなものをかぶった人が、海を背に何かを指さしている。
  8. まばたきする目のアップ。目の中に「貞」という字が左右反対に映る。
  9. 林の中の井戸
ビデオを見終わって、それがまさに呪いのビデオを思わせる内容だったため、浅川はぼう然としてしまう。
この意味不明なカットの連続がなんともいえない。和服の女が映るカットの古い質感の画面が特に不気味。浅川のぼう然としたのと同じ反応を観客もしてしまう。
テレビを消すと、その画面に人影が映る。驚いて振り返るが誰もいない。 この人影は貞子なのだが、はっきりと映っていないのと、このときは貞子の存在は観客はわからないので、映っているのを観客が知らないとしても影響はない。
智子の話や噂話のとおり、電話がかかってくる。内容はわからないが、浅川の態度からそれが死の予告であることがわかる。 まさにダメ押しの電話である。
9月14日 火曜日, 浅川の部屋 高山が浅川の部屋に入ると、何かの気配を感じる。高山が浅川の顔をポラロイドで撮ると、彼女の顔が歪んでいる。これで、高山も浅川が呪いをかけられたことを納得する。 .
9月15日 水曜日, TV局 浅川がテレビ局でビデオを見ていると、ビデオの最後の井戸の縁に何か動く白いものが見える この時点ではまだはっきりとは見えないが、直前の浅川の表情と、井戸のアップで、気づきやすくしている。
9月15日 水曜日, 阿佐ケ谷駅前ベンチ 高山がベンチで何かを読んでいると、目の前に白い靴の女が立つ。彼は彼女の足下を見るだけで見上げようとしない。そして、心の中で「お前なのか。お前がやったのか。」と言う。次の瞬間、彼女はその場から消えてしまう。 高山に霊能力があることがわかる。
9月15日 水曜日, TV局 ビデオをゆっくり再生させると「しょうもんばかりしてると、ごうこんが来るぞ」という声が聞こえる。 これは「エグソシスト」のリーガンの声を逆回転するのが元ネタと思われるが、「リング」ではさらっと扱っている。
9月17日 金曜日, 浅川の実家 浅川が彼女の実家で寝ていて、夜にふと目が覚めると、「おばさん」という死んだはずの智子の声が聞こえる。 ..
隣の陽一の布団を見ると、掛け布団がめくれていて、黒い人影が布団の中で寝ている。 .
一瞬ビデオの中の指を指している人のイメージが浅川によぎる。我に返ると、隣の布団には誰もいないことに気づく。 .
ビデオの中の金属音が聞こえて、どなりの部屋のふすまを勢いよく開けると、陽一がビデオを見ている。 「リング」でも1、2の怖いシーンで、何回見ても素晴らしい。
ビデオの最後の部分が前より更に長くなっていて、井戸のふちに何か動くものがはっきり見える。 井戸がアップで映され、前よりはっきり見えるので、気づきやすい。
9月18日 土曜日,大島への船 大島へ向かう船の上で高山が浅川に、智子はただ死んだのではなく、人間以外の存在になってしまっていると言う。 智子は死んだ後、智子のお通夜のとき階段を登って、陽一を2階の彼女の部屋に誘ったり、高山が浅川の部屋に現れた時にそこに霊のように存在していたり、陽一にビデオを見るように言ったり、浅川が彼女の実家で寝ていて目が覚めたとき、「おばさん」と呼びかけたりしている。
浅川が高山に「陽一にも(智子が)見えるのね」と言う。 ここで、高山の血を受けつぐ陽一にも同じ能力があり、そのためお通夜のとき智子の姿を見ることができた。
9月18日 土曜日, 大島の旅館 浅川と高山が山村志津子(雅子)の家だった旅館にはいると、そこのある部屋は、ビデオに出てきた鏡のある部屋そのものであった。 .
浅川と高山が、志津子と伊熊博士の写真を見ていると、「しょうもんばかりしてると、ごうこんが来るぞ」という声が聞こえる。 .
9月19日 日曜日, 大島 高山が山村志津子の従兄(沼田曜一)の腕をつかむと、静子の超能力実験の場面が見える。そばに来た浅川がそのイメージの中に入り込む。実験はインチキだと言いだした記者が突然苦しみだして死ぬ。死に顔は、智子らと一緒の恐ろしい形相である。 白黒の粒子の粗い画面が不気味である。
新聞記者を殺した志津子の娘の貞子の顔は、長い髪が覆っていて見えない。 これは、日本では怖い女性の古典的なイメージである。
貞子が浅川の腕をつかむ。その手の指の爪は全部はがれている。つかまれた左腕には、貞子の指の跡が残る。 .
9月20日 月曜日, 伊豆の貸別荘 伊豆の貸別荘の床下に、ビデオに出てきた井戸を発見する。その井戸に高山とともに触れた浅川は、志津子の研究をしていて貞子の父親と思われる伊熊博士が貞子を殺し、井戸に投げ捨てるイメージを見る。 この映像も、志津子の実験のシーン同様、白黒の粗い画面で不気味である。また、伊熊博士が貞子を殴るところのカット割りの唐突さも怖い。
高山が井戸の底に降りていこうとするとき、井戸の壁面にはがれた爪を見つける。それは、貞子が井戸に落とされた後もまだ生きていて、這い上がろうとしたためである。 爪がはがれる痛みと、それほどまでの必死さが、痛いほど感じられる。
浅川が井戸の中に降りるとき、井戸の上の高山に「下を見るな」と言われて見上げると、井戸の中をのぞき込む高山の姿に、ビデオの中の同じ映像がダブる。 .
井戸の底で貞子の死体を捜していた浅川の手に、長い髪の毛が引っ掛かる。次の瞬間水の中から手が現われ、彼女の腕をつかむ。しかしそれは実際の出来事ではなく、彼女の見たイメージである。それは、超能力実験のシーンで腕をつかまれるのと同じである。 水の中からいきなり手が出てくるのは、反則気味のショックなのだが、これはあくまで妄想なので、唐突さも納得できる。
髪の毛に引き寄せられ、貞子の頭部が現われる。そして、髪は頭からずり落ち頭蓋骨があらわになる。頭蓋骨の目の部分からドロッとしたものが流れ出る。 この映画では数少ない、グロテスクなシーンである。
9月21日 火曜日, 浅川の部屋のベランダ 貞子の死体を発見できたことで、呪いがとけたはずなのに、何故か「9月21日 火曜日」という字幕が出る。 「そんなばかな・・・」と思うが、ここから先は、「そんなばかな」と思ってしまうことが連続して起こる。
9月21日 火曜日, 高山の部屋 高山が自宅で書き物をしていると、ビデオの中の金属音が聞こえる。テレビを見ると、ビデオの最後の井戸が映っている。 .
井戸の縁に何か動くものが見えるが、それが、井戸から貞子が這い上がろうとしているところの最初の部分であることがわかる。テレビは引き続き映し続け、貞子が井戸から出て画面のこちら側に向かってくる。 ここでビデオの最後にチラっと映っていたものが明らかになり、そのことが恐怖を倍増させている。
貞子は腕や肩をカクカク動かす歩き方をしている。貞子はさらにこちらに向かって来て、ついにテレビの画面から抜け出し、畳の上を這って尚も高山の方に向かって来る。爪の無い手で畳を掻きむしるようにして進む。そして、高山の前に立ちすくみ、顔全体を覆う長い髪の毛の間から大きく飛び出した目がのぞいた瞬間、高山が苦しみだし、智子が死んだときと同じように画面が白黒の粗い画面、そして反転する。 この貞子の動きは中田監督が考えたもので、「リング」の怖さの一番の特徴である、生理的に気味が悪いものを描いてみせることで怖がらせるというのが、最もよく現われている部分である。
このシーンのインパクトはかなり大きくて、ここだけ取ってもアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの「悪魔のような女」のショックシーンを越えるものになっている。
9月21日 火曜日, 浅川の部屋 浅川がどうすれば本当に呪いがとけるのか悩んでいると、消えているテレビの画面に、ビデオの中の頭巾のようなものをかぶった人のように、高山が同じものをかぶって浅川のバッグを指さしているのが映っている。振り返ってそちらの方を見るが誰もいない。 テレビの画面に人影が映っているのを見て振り返るのは2度目だが、今回は前回に比べてはっきり見える。
9月22日 水曜日, 車の中 呪いをとくには、ダビングして人に見せることだと知り、浅川は陽一を救うため自分の父親にビデオを見せようとする。 いくら息子のためとはいえ、自分の父親を犠牲にするのが何ともいえず怖い。
車を運転する浅川の姿にかぶさる少女達の噂話は、呪いをとくにはダビングするという内容である。 ビデオが実際に広まっていて、呪いを解く人も出てきたほど多くの人々が呪いをかけられたことを暗示させる。

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