老化チェック

 老化の進行状況をチェックする質問事項に、「あなたは階段を上り下りするときに手すりに掴まりますか」というのがある。
 私は、それを見ると、なんと馬鹿げた質問だろうといつも思う。
 私はずっと以前から、階段を上り下りするとき、なるべく手すりに掴まるようにしてきた。それはただの習慣であって、理由があってのことではない。強いて言えば、私が用心深い(あるいは、臆病な)性格だから、ということになるだろうか。まして年齢が進行してますます用心深くなっても、それを直ちに老化と決めつけることはできないだろう。それは老化の問題ではなく、心構えの問題である。
 また、「あなたは昨日の夕食に何を食べましたか」というのもある。それでいつも私はそれを思い出そうとするのだが、思い出せたためしがない。私は夕方に「あなたは今日の昼食に何を食べましたか」と聞かれても、めったに思い出せないだろう。
 それって、老化現象なのか? もともと記憶力が悪いだけのことではないか?
 かつて小耳にはさんだ、アメリカ映画のヒーローと女性との会話。
「あなた、昨夜は誰と一緒にいたの?」
「そんな昔のことは覚えてないよ」
「今夜は誰と会うつもりなの?」
「そんな先のことは分らないよ」
 私もヒーローと肩を並べる存在であるようだ。

《了》

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