マレーシア旅行レポート その6
マレーシア4日目、朝6時。
ホテルのロビーで、僕ら日本チームと、ドイツチームがカイルディン達の迎えを待っていた。
約束の時間にやや遅れ、迎えの車登場。ここから郊外に移動し、フライトをする事になる。
僕らは3人も迎えの乗用車に乗り込み、まだ暗いクアラルンプールの町を抜けてゆく。
多国籍女は、助手席に座り、運転手のおじさんとマレー語で何やらしゃべっている。
僕と
八戸塾長は後部座席で、黙ってそれを見ていた。
「またなんかしゃべってるよ…」
4日目ともなると、二人とも、もう大して
驚かない
と言うより、
『絶対こいつは、国籍を偽っている…』と言う確信を得ていた。
車で移動する事、1時間弱、目的地のグランドに着いた。
広さは十分にある。
早速、インフレの準備をしようとしたら、ゼッケンのような物を渡され、これをバスケットに貼れ、と言われた。
何か書いてある。何これ、清水…?
「あーこれはですねー、『スラマン、ハリラヤ』つまり、『断食明け、おめでとう』って事ですよ。」
そうか、そうか、やっぱりここはイスラム圏なのだな。
失礼の無いように
行儀良く
と思ったが、カイルディンさんが娘さんを連れてきていて、実はこの子が非常に
美人
先ほどまでの行儀良く、の舌の根も乾かぬうちに、反イスラム的な
よこしまな気持ちがむくむくと心に芽生えてしまった。
我ながら、マレーシアまで来て何やってるんだ?



娘さんに未練を残しつつ、インフレ作業開始。
気球はカメロンなので、セットから立ち上げまで問題なく作業を終了したが、肝心なパイロットの八戸さんが首をひねっている。
「バーナーにパワーがないなぁ…」
「バーナーの型が古いのかな?でも、北海道にある奴より後期型ですよ。」

僕は答えたが、八戸さんはしきりに首をひねっている。
そう言えば、窒素だって充填してたし、何でバーナーの圧力が上がらないんだ?
あれ?何だろう?何か気に掛る事が…
そうこうしている内に、ドイツチームの2機も立ち上げが完了して一斉離陸の準備が完了した。
カイルディンさんの合図で、塾長は僕らを地上に残し、
マレーシアの空に浮かんでいった
最初からショートフライトが宿命のようなこのフライト、八戸塾長は、すぐに降下、中間着陸をおこないクルーチェンジを指示した。
クルーチェンジで、なるべく一人でも多くの人を乗せたい、と言う事なのだろうが、いかんせん、道が一方通行だったりして、チェイスカーがなかなか気球まで辿り着かない。
この時点で、けっこうチェイス担当もアップアップである。
海外のフライトに行くたびに思うが、パイロットよりチェイスの方が遙かに大変だ。フライトそのものは、知らない土地でも、上から俯瞰して行動できるが、チェイスはその『土地』に縛られて行動しなければならないからである。チェイスクルーはパイロットより、知識やカンが要求されるのだ。





どうにかこうにか気球まで辿り着き、清水がゴンドラに乗り込んだ。
八戸さんは、相変わらず、バーナー出力が弱い、とぼやいている。
再び気球は飛び立ち、10分程度のフライトで学校のグランドに着陸した。
ドイツチームも同じところに着陸している。
学校の門番のおじさんにお願いしてゲートを開けて貰い、車をグランドに入れる。
「全然平気、けっこう降りる所もあるし」
塾長は余裕のコメントだが、でも、やっぱりバーナーが変だ、と不満そうだ。
清水は、初マレーシアフライトで感動している。
僕はと言えば、
『とりあえず、借り物気球を傷物にしなくて良かった』と、とりあえずほっとしていた。
別に塾長を信用してない訳じゃないけど、やっぱり、マネージャーが一番気にするのはその事なのだ。
無事に回収も終わり、記念撮影も終えて、僕らは帰路についた。
グランドから撤収する際に、学校の門番のおじさんに、
カイルディンがこっそりいくらか握らせていたのが印象的だった。
スマートなオヤジだ…

続く…



←一目会ったその日から……
 と、行きたい所だが、この子の為に、
 イスラム教に改宗するのは、ちょっとねぇ。
←マキシム高度500フィートの筈だったが…
 下から見ると、うーん、微妙だな。
 超えてないよね、塾長?