マレーシア旅行レポート その5
マレーシア3日目。
ようやく、気球の姿を拝むことが出来る。と言っても、フライトは、まだ明日。
今日は、フライト前の機材準備と、確認事項の打ち合わせだ。
朝8時にカイルディンさんが、ホテルに迎えに来た。
車で一緒に、AKAバルーンのオフィス兼倉庫に向かう。
渋滞のクアラルンプールを抜け1時間弱、僕らはAKAバルーンに到着した。

AKAバルーンは1回が倉庫、2回がオフィスになっていて、倉庫内には気球が7,8機置いてある。
説明を受けると、今回僕らが使用するのは、カメロンの77で、バーナーは旧式のマークW。
しかも、球皮は新品発注で、先月届いたばかりの品物だという。
もちろん、フリーフライトは初だそうだ。
この一件をしても、彼らがいかに僕らゲストに対して気を遣っているか判るという物だ。
「ニューバルーンだから…」という彼らの言葉に、気が引き締まる。
あだや、球皮を傷つける事など出来ない。そんな事になったら、この地で腹を切らねばならなくなる。
その後、彼らがガスの差圧充填を始めた。
この光景は、世界共通である。
マレーシアでは一般的なのか明るいグリーンに塗った10キロのボンベと、カメロンの20キロのアルミシリンダーを繋いで中身を移す。元タンクが10キロなので、けっこう時間が掛る。
僕らはその作業をぼんやり見ていたのだが、充填の終わったはずのアルミシリンダーを、更に何やら黒い大きなシリンダーに繋ぎ変えて、再びガスを入れ始めた。
「あれは何だ?」
塾長が言うので、作業をしているAKAの社員の人に訊いてみる。すると、
「うん、ナイトロジェン(窒素)をちょっとネ」との答え。
「ちっそ〜!?」
冬の北海道ならいざ知らず、赤道直下のこの国で、何故に窒素を充填しなければならない?
そんな事をしたら加圧しすぎで危険じゃないのか?
「だから、ちょっと…」
イヤ、ちょっとだろうが何だろうが、プロパンに窒素って…
「プロパンじゃないから」
はぁ?いよいよ訳が判らない。
彼らは忙しそうだし、なんだかラチが明かないので会話はそこで終わったが、実は、彼の言葉に重要な秘密が隠されていたのを後で知る事になる…。
そんなやりとりの後、ドイツチームが到着した。
今回一緒に飛ぶドイツチームは、なんと気球を自前で持ってきていた。しかも2機も。
「へぇー、お金有るなあ」と思っていたら、どうやらビール会社がスポンサーらしく、そのコマーシャルバルーンとの事だった。
球皮に大きく、ビール会社のロゴが入っている。
ところが、これが問題で、マレーシアはイスラム圏の為、ビール会社のコマーシャルバルーンがおおっぴらにフライトするのは差し障りがあるという。
アルコールに対しては、けっこうキビシイのである。
(「展ちゃんをAKAバルーンに奉公に出したら、品行方正になるんじゃないか」などと思ったが、日本に帰国した瞬間に、と言うより帰りの飛行機の中で酒を飲み出すと想像されるので、あまり良い案ではないようだ。
いっそ、イスラム教に改宗させる方が良いのかも知れない。)
結局ドイツチームの気球は、ビール会社のロゴの一部を別の布地で隠す、と言う事で、話が付いた。
早速エンベロープ、布地、安全ピンを持って近くの駐車場に行き、作業を始めた。
南国の直射日光の中、エンベロープを広げて申し訳程度の布を張っていく。

実は、この作業がけっこう辛かった。
頭にがんがん直射日光を浴びながら、屋外で作業していると、非常に体力を消耗する。
僕は元々体力に自信がないから無理はしないが、ドイツ人は延々2時間近くかけてこの作業をやっていた。
手伝った清水も、かなりへばっている。
塾長は、のんきにそこら辺に生えている果物の木などをカメラに収めていたが、やっぱり南国の太陽にやられたらしい。
その日、作業を終え、ホテルに帰った後、八戸塾長は体調を崩し寝込んでしまった。
うーん、明日はいよいよフライト本番なのに…。
続く…
←1階は倉庫になっている。
機体はサンダーとカメロンが主。
他にリンドも有った。
←炎天下での作業は、辛かった…
次第にみんな無口になる。
それにしても、
この大きさの布地を、安全ピン6個で留める、
と言うのは、アバウト過ぎはしないか、ドイツ人?